shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Retro Active / Def Leppard

2012-06-03 | Hard Rock
 私はレコードであれ CD であれ、アルバム・カヴァーのデザインに拘る人間である。だからジャケットも何もない楽曲ダウンロードなどという今時のシステムは問題外。音楽はLPなりCDなりの器としてのカヴァー・デザインと中身の楽曲をトータルで楽しむのが当然と信じているので、音楽を聴くのにジャケット・イメージは不可欠だ。まぁケータイやMP3プレーヤーで音楽を聴くような今の若い世代にはダウンロードで十分なのかもしれないが...
 かく言う私も若い頃はそんなことは何も考えずにただ “ハイ、ポーズ!” 的なアーティストの写真で満足していた。しかしやがてジャズも聴くようになり、ベツレヘムのバート・ゴールドブラットやブルーノートのリード・マイルスといったジャケット・デザイナーが手掛けた作品の素晴らしさに開眼、アルバムをジャケット・デザインをも含めた一つのパッケージとして楽しむようになった。
 そういう目で改めて手持ちのロックLPを眺めてみると、「ラバー・ソウル」、「リヴォルヴァー」、「サージェント・ペパーズ」、「アビーロード」といった一連のビートルズ盤は言うに及ばず、フロイドの「狂気」やクリムゾンの「宮殿」、デレク&ドミノスの「レイラ」のように “聴かずして音が聞こえてくるような” ジャケット名盤が少なくない。特に60年代後半から70年代前半にかけてのいわゆる “ブリティッシュ・ロック黄金時代” にリリースされたアルバムには素晴らしいデザインの盤が多く、部屋のインテリアとしても最適だ。
 しかしハードロックのバンドは概してそういうことに無頓着なのか、エエなぁと思えるようなアルバム・カヴァーは極端に少ない。デフ・レパードも例外ではなく、どのアルバムもジャケット・デザインはイマイチだ。初期の2枚なんかほとんど印象に残らないようなトホホなデザインだったし、絶頂期の3枚もジャケットに関しては可もなし不可もなしという感じで中身の素晴らしさを全く反映していない。初のベスト盤「ヴォールト」や起死回生の大名盤「ユーフォリア」に至ってはホンマに売る気あんのか?と疑いたくなるような無味乾燥なデザインで、彼らのジャケット・センスを疑ってしまう。そんな中で私が唯一気に入っているジャケットがこの「レトロ・アクティヴ」である。
 最初このジャケットを見た時は一瞬 “ドクロかよ...” と呆れたのだが、よくよく見るとこれが “化粧鏡に映る女性” なのだ。目の錯覚を巧く利用した、いわゆるひとつの “だまし絵” というヤツなのだが(←元ネタはコレらしい...)、私はこういうセンス溢れるジャケット・デザインが大好きなんである。確かエアロスミスのベスト盤にもフランス人形を使ったドクロのだまし絵ジャケットがあったが、出来としてはこっちの方が遥かに洗練されていると思う。
 このアルバムはスティーヴ・クラーク在籍時代のシングルのB面や未発表曲などを集めた “アルバム未収録曲集” なのだが、単なる “企画盤” と侮ってはいけない。バンドに最も勢いがあった頃の曲ばかりなのでクオリティーの高さはハンパないし、ダークな曲から美しいバラッド、名曲カヴァーに疾走系ロックンロールと、非常にヴァラエティーに富んだ内容になっている。しかも新たにヴォーカル・パートを録り直したりギターを追加したりしてリミックスをやり直した完全な “ニュー・ヴァージョン” になっている曲がほとんどなので、元々のオリジナル・ヴァージョンとの聴き比べというマニアックな楽しみ方もできるのも◎。
 全14曲中で断トツに気に入っているトラックがスウィートの名曲をカヴァーした③「アクション」だ。彼らはスウィートの大ファンで(←2006年リリースのカヴァー・アルバム「イェー」でも「ヘル・レイザー」を取り上げている...)、その音作りにおいて多大な影響を受けていることは明らかだ。特にキャッチーなサビを強力なコーラスで歌うところなんかもうスウィート一子相伝の秘奥義(?)と言っても過言ではなく、この「アクション」でも本家に勝るとも劣らないくらい分厚いコーラス・ハーモニーを聴かせてくれる。ここに収録されているのはシングル「メイク・ラヴ・ライク・ア・マン」のB面に入っていたのとは違うニュー・ヴァージョンで、ピック・スクラッチを多用したアグレッシヴなギター・プレイやリック・アレンのたたみかけるような爆裂ドラミングによって更にパワーアップされ、まるでレップスのオリジナル曲かと思わせるくらいノリノリで迫力満点の演奏が楽しめる。コレは圧倒的に「レトロ・アクティヴ」収録のニュー・ヴァージョンの方が優れている。
Def Leppard - Action Official Music Video・1994


 元々アルバム「ヒステリア」用にレコーディングされたものの、アルバムの流れに合わないとの理由で外され(←確かにあの中にこの曲の居場所はないな...)シングル「アルマゲドン」のB面に入れられた⑩「リング・オブ・ファイアー」は疾走感バリバリのロックンロールでありながら、そこはかとない哀愁を感じさせる隠れ名曲。サビで “Are you ready, ready for burning~♪” とハモるところ、そしてそこに絡んでいく荒々しいギター・リフがたまらなく好きだ。ここに収められているのは「レトロ・アクティヴ」用にヴォーカル・パートを一部録り直してギターをオーヴァーダブし、ドラムスも入れ直したもので、ギター・リフがフェイド・インしてくる元のヴァージョンに比べ、いきなり鋭いナイフのようにアグレッシヴに切り込んでくるギターのイントロがめちゃくちゃカッコ良い。ドラムスのサウンドはエレクトリック・ドラムの元ヴァージョンもアコースティックな生ドラムのニュー・ヴァージョンもそれぞれの良さがあって甲乙付け難いが、私的には僅差でニュー・ヴァージョンに軍配を上げたい。こういう聴き比べってファンとしてはホンマに楽しいなぁ(^o^)丿
Def Leppard - Ring Of Fire


 ⑤「シーズ・トゥー・タフ」は「アドレナライズ」の日本盤のみに収録されていたボーナス・トラックで、最初聴いた時はジョーのヴォーカルといい、バック・コーラスの付け方といい、ギターのフレーズといい、どこを取ってもシンデレラのデビュー・アルバム「ナイト・ソングス」を想わせるメタル・サウンドでビックリ(゜o゜) ホンマに一瞬トム・キーファーが憑依してるんちゃうかと思ってしまうくらいハイトーンでシャウトしっ放しのジョー・エリオットが楽しめるという、今となっては非常に貴重なナンバーだ。ここでもやはり録り直したリック・アレンのドラムスが功を奏し、よりパワフルでダイナミックなナンバーへと昇華されている。私の経験では再レコーディングやリミックス(←リマスターじゃないよ...)すると大抵はロクな結果に終わらないものだが、このアルバムはここで取り上げた③⑩⑤以外にも随所でリ・レコーディング&リミックス効果が現れており、そういう意味でもレップス・ファンなら外せない1枚ではないかと思う。
Def Leppard - She's Too Tough