shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Jaguar Hard Pain 1944-1994 / The Yellow Monkey (Pt. 2)

2012-02-13 | J-Rock/Pop
 戦争、麻薬、売春といったダークでネガティヴな題材を扱った歌が多いこのアルバムだが、そんな中でポツンと浮いた感じがする超ポップなナンバーが我が愛聴曲④「ROCK STAR」だ。バブルガム色の濃いキャッチーなメロディーも魅力的だが、何と言ってもこの曲は後半部で繰り返される必殺の名フレーズ “死んだら新聞に載るようなロックスターに~♪” に尽きるだろう。 “テッテッテレッ テッテッテレレ~♪” という彼らお得意のフックの効いたサビも効果抜群で、この曲の名曲度アップに大きく貢献している。
 それともう一つ、この曲を聴いて感じたのはヒーセの “歌うベース” の圧倒的な存在感だ。ロックの世界におけるベースという楽器の立ち位置はどうしてもギターやドラムスに比べると地味な存在になりかねないが、ヒーセの場合は別に派手な事をやっているワケでもないのにその歌心溢れるプレイで聴く者の心に強烈な印象を残すことが多い。私見だが、彼こそがイエロー・モンキー・サウンドのカギを握っているキー・パーソンであり、彼のベースが無ければ決してイエロー・モンキーの音にはならない。ちょうどリンゴのあのドラムの音が無ければビートルズにならないのと同じような感じだ。他の曲でもヒーセは大活躍で、私はこのアルバムのキモはアルバム・コンセプト云々ではなく、ヒーセを中心としたバンド・サウンドの確立だと思っている。
 鼻血 PV(笑)のインパクトが強烈だった 3rd シングルの⑨「悲しきASIAN BOY」も大好きだ。イントロだけでもうめっちゃ盛り上がるこの曲は、軽快なメジャー・キーの曲なのに不思議な哀愁があって、この曲の良さが分かる日本人でよかったなぁと思ってしまう。まぁ、アジアとか兵士とかいったイデオロギー的な話はさておいて、吉井さんのおセンチな面がすごくよく出た歌詞が絶品で、好きな女性と愛し合いたいのにその勇気がなくて悶々としている男心を見事に表現した “桜色の口唇に 触れたいのに口唇に 強い弱さに縛られた~♪” のラインなんかもうめちゃくちゃ好き。この切なさがタマランなぁ... (≧▽≦)
 ライヴでこの曲のイントロが響き渡ると会場の盛り上がりが最高潮に達することも多く、オーディエンスとの一体感もハンパないキラー・チューンになっており、実際、120曲以上ある彼らの全公式録音曲の中で “ライヴで演奏された率” は恐らく№1だろう。とにかくほぼすべての時期のライヴ DVD に収録されており、手持ちのを数えてみたら8ヴァージョンもあった。私が “イエロー・モンキーというバンドのテーマ曲” を選ぶならこの曲以外に考えられない。
 私の嗜好のツボは “アッパーな疾走系チューン” なので、⑩「赤裸々Go!Go!Go!」なんかもうスウィート・スポットを直撃しまくりだ。曲想はズバリ、チェッカーズあたりが歌えばピタリとハマりそうな歌謡ロック。その妖しげでチープなノリはこの手の音楽が大好きな私にとってはたまらない魅力で、 “蟻地獄で逢いましょう~♪” のフレーズが耳に残るキャッチーなナンバーだ。ここでもヒーセ、めっちゃエエ仕事してますな(^.^)
 同じアッパー系の②「FINE FINE FINE」は「太陽にほえろ!」のメイン・テーマみたいなイントロが面白いが(←エマ大活躍!)、サビのメロディーの決着の付け方はイマイチ中途半端な感じがする。ちょうどエイジアの「ドント・クライ」みたいに途中まで期待が大きかった分、後半部の旋律的な尻すぼみ感が悲しいが、そんな中でアニーのパワフルなドラミングは必聴だ。
 ③「A HENな飴玉」は読んで字の如く “あっ! 変な” と “アヘンな” を引っ掛けたダブル・ミーニングのタイトルで、麻薬でラリパッパな状態を示唆する歌詞(←“汗だく 絶倫 バイブレーション... からみつけ子宮のマウスピース” とか...)が面白いが、イントロでエマの突き刺さるようなギター・リフにシタール(?)みたいな音が絡んでいく瞬間から怪しげなメロディー全開で突っ走るところがたまらなくカッコイイ(^o^)丿 万人ウケするタイプの曲ではないが、私は大好きだ。
 日本の歌のタイトルとは思えない⑤「薔薇娼婦麗奈」は、彼らには珍しくアンダルシアの風が似合いそうな(?)ラテンの薫り溢れるナンバーで、フラメンコな味わいを巧く取り入れている。特に扇情的なギター・ソロがめちゃめちゃカッコ良く、後半部でバイオリンが絡んでくる辺りなんかも彼らの音楽性の幅の広さ、懐の深さ如実に物語る、彼らの隠れ名演の一つと言っていいと思う。いやはや、それにしてもホンマに凄いバンドですわ。
 大衆の嗜好やロック・シーンの流れなどは一切無視し、自らの父親と母親をオーヴァーラップさせたジャガーとマリーの物語をイエロー・モンキーというロック・ユニットを使って表現したこのアルバム、吉井さんにしてみれば一表現者としてコレをやらねば先に進めなかったのだろう。そういう意味でも、カルト的なバンドとしてのイエロー・モンキーの最後を飾る1枚といえるが、私としては小難しいアルバム・コンセプトを抜きにしてカッコ良いロック・アルバムとして聴くことをオススメしたい。この後、バンドはいよいよ “死んだら新聞に載るようなロック・スター” への階段を上り始める...

Asian Boy - Tokyo Dome - The Yellow Monkey


[LIVE] THE YELLOW MONKEY - ROCK STAR


赤裸々GO!GO!GO!


薔薇娼婦麗奈
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