shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

コーヒー・ルンバ / 西田佐知子

2011-08-08 | 昭和歌謡・シングル盤
 今日も西田佐知子である。彼女は決して強烈な個性があるとか、歌がめちゃくちゃ上手いとか、そういう歌手ではないが、そのハスキーで物憂げな歌声が独特の雰囲気を醸し出し、60年代ニッポンの懐かしい空気を運んできてくれるところに魅かれるのだ。ノンビブラート唱法を受け継いだいしだあゆみも、デビュー前に師匠の鈴木淳氏から得意の “コブシ” を禁止され徹底的にハスキーなストレート・ヴォイスで歌うレッスンを受けたちあきなおみも(←「アカシア」を数ヶ月にわたって歌い続けされたらしい...)、そのルーツを辿ればみんな西田佐知子に行き着く。彼女こそ私にとって理想的な昭和歌謡の歌手なのだ。
 彼女は1956年にマーキュリー・レコードから “西田佐智子” という名前でデビューし、58年にコロムビアへ移籍した時に出身地の大阪を意識したのか “浪花けい子” というドサ回りの演歌歌手みたいな名前に改名。翌59年のポリドールへの移籍で再び “西田佐智子” へと戻し、60年9月から今の “西田佐知子” になったらしい。芸名の変遷一つを取っても不遇時代の彼女の紆余曲折の一端が垣間見れるが、やはり都会的で清楚なイメージを持った彼女には “佐知子” という名前がピッタリだ。そんな彼女が世間に名前を知られるきっかけになった大ヒット曲が1961年の8月にリリースされた「コーヒー・ルンバ」だった。
 この曲は元々ベネズエラのウーゴ・ブランコの1958年のヒット曲で、タイトルの Moliendo Cafe とは “コーヒーを挽きながら” という意味。当時スペイン語圏を中心に大ヒットして様々なカヴァー・ヴァージョンが作られたようだ(←私はミーナの巻き舌全開ヴァージョンが好き!)。日本では西田佐知子とザ・ピーナッツの競作となったのだがこの2つのカヴァーは日本語詞がそれぞれ違っており(←以前特集した「さすらいのギター」と同じ状況やね...)、大ヒットしたのは西田佐知子の方だった。ストーリー性のある歌詞とさっちゃんの気怠い歌声、そしてエキゾチックなムード横溢の演奏が見事に解け合ってカヴァー・ポップス史上屈指の名演になったのだ。
 何を隠そうこの曲は私が初めて買った西田佐知子のアナログ・レコードで、そういう意味でも忘れられない1枚だ。当時はまだ本格的に昭和歌謡を聴き始める前で、フランス・ギャルやミーナといったイエイエからの流れで60年代のカヴァーポップスにハマっていた時に音楽仲間の 901 さんに教えていただいたのがきっかけだった。シングル・トーンのつたないギター・オブリガート(←こーゆーのをヘタウマっていうんやろな...)を “グラント・グリーンみたい” と言ったら大笑いしておられたっけ(^_^) 又、歌詞の「コーヒー・モカ・マタリ~♪」が「コーヒーも鎌足」に聞こえて仕方なかったのを今でもよーく覚えている。
 聞かせていただいたその日の晩に早速ヤフオクでシングル盤を検索したところ、同じデザイン(←彼女の写真は「日曜はいやよ」の使い回しという超手抜きっぷり... ポリドール、ちゃんと仕事せぇよ!)で「欲望のブルース」のB面扱いになってるこげ茶っぽいジャケットのヤツ(DJ-1157)とAB面が逆転した赤茶っぽいジャケットのヤツ(DR-2007)の2種類があり、レコード・ジャンキーの直感でこげ茶ジャケの方を取ったのだが(←300円でした...)コレで大正解! このレコードはB面扱いの方がオリジナルで、A面扱いの方は69年に出た再発盤だということを知ったのはそれからずっと後のことだった。尚、赤茶ジャケのオリジ盤(DJ-1157)というのも存在するようなのでコレクターは要注意だ。
 確かこのブログを始めた頃に「コーヒー・ルンバ」特集をやった記憶があるが、それ以降に見つけたカヴァーの中で面白かったのがアントニオ古賀の「クスリ・ルンバ」。コレもやはり 901 さんに教えていただいたものだ。やっぱり持つべきものは趣味の合う音楽仲間ですね。901さん、これからもご指導の程、どうぞよろしくお願い致します m(_ _)m

コーヒールンバ / 西田佐知子


ナンセンス歌謡 『クスリ・ルンバ(アントニオ古賀)』1971年
コメント (8)