shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

アカシアの雨がやむとき / 西田佐知子

2011-08-05 | 昭和歌謡・シングル盤
 またまたスカイプ・ネタで恐縮なのだが、一昨日サムがコールしてきてくれた。私にとってはスカイプ初体験である。受信したらどんな音がするんやろ?(笑)とワクワクしながら待っていると、事前にメールで決めておいた時間きっかりに着信ウインドウが開き、 “応答” をクリックするとコンピューター画面にいきなりサムが現れた。私の方にウェブカメラが無いから単なる音声通信だと思っていたのでコレにはビックリ(゜o゜) サムの方には音声だけが聞こえるらしく、 “まるでコンピューターがしゃべっているようで何か spooky な感じがする” とか言いながらも缶ビール片手にすっかりリラックスムードだ。TV電話初体験で大コーフンした私は結局1時間ほどしゃべり倒したのだが、絶対にウェブカメラを買おうと心に決めて電話を切った。サム、これまで色々と最先端のテクノロジーを教えてくれてホンマにありがとう。感謝してるで!!!

 スカイプの話はこれぐらいにして、ここからは音楽の話。実はこの2ヶ月ほど、ザ・フーや清志郎と並行して密かに(?)昭和歌謡熱が再燃していて、特に60年代半ばから70年代前半の女性歌手のレコードを買いまくっているのだ。事の発端は6月の初め頃にヤフオクで沢知美の「人の気も知らないで」(←例のグリーンのジャケットのヤツね)と小山ルミの「ベンチャーズ・ヒットを歌う」のピッカピカのオリジナル盤を立て続けに安値でゲットしたことで、CD とは比べ物にならないくらいの生々しいアナログ・サウンドにすっかりハマってしまったのである。これまでロックやジャズのオリジ盤の音の良さは知っていたが、まさか昭和歌謡のレコードにこんな優秀録音盤があるとは思わなんだ(^o^)丿
 特に目からウロコだったのがヤフオクでは100円~300円ぐらいで買えるシングル盤で、めちゃくちゃ芯のあるごっつい音がスピーカーから飛び出してくる。 LP よりも傷に強いのかノイズも少なめなので、コスト・パフォーマンスは抜群に高い。私にとってそんな “シングル瞠目盤” の嚆矢と言えるのが今日取り上げる西田佐知子の「アカシアの雨がやむとき」である。
 この昭和歌謡史上屈指の大名曲は彼女にとっての4枚目のシングルで、1960年に原田信夫の「夜霧のテレビ塔」とのカップリングで発売されたものがオリジナルの 1st プレス。ただ、名前の表記はまだ古い「佐智子」のままやわ(←“佐知子” になったのは60年9月から)、ジャケの顔写真はモノクロのショボイやつが使われとるわというトホホな盤で、レアではあるが私的には購買意欲はそそられない。その後ジャケットを彼女一人のカラー写真に差し替えた 2nd プレス(←ブルー・バックの黄色いタイトル文字で、有名なトレンチコート・ジャケのやつ。レコード番号は 1st と同じ DJ-1062、290円)が有線を中心にジワジワとヒットしてロングセラーとなり、1962年の紅白でこの曲を歌ったという。
 私が買ったのは「東京ブルース」とカップリングされた 3rd プレス(DR-2006、370円)で、この番号や値段から類推すれば60年代後半にリリースされたものかもしれない。この盤は 2nd のトレンチコート・ジャケットと同じ時に撮影されたジャケ写が雰囲気抜群で、 “これぞ西田佐知子!” と言いたくなるような大人の女を見事に演出している。 “女性ヴォーカルはジャケットを聴くべし” とはよくぞ言ったものだ。
 何だかジャケットの話ばかりになってしまったが、中身の方はもう何の説明も不要なぐらいの名曲名唱で、私の考える昭和歌謡はこの曲から始まったと言っても言い過ぎではない。初めてこの曲を聴いた時に最も印象に残ったのがその不思議な歌詞で、1番の詞で “このまま死んでしまいたい~♪” とまるで自殺志願のようなフレーズが飛び出してくるのにもビックリしたが、特にインパクトが大きかったのが3番の詞だ。 “ベンチの片隅で冷たくなった私の抜け殻” や “あの人を探して飛び立つ影” というフレーズはどう考えても幽体離脱をイメージさせる。当時の “流行歌” の歌詞とは激しく一線を画す文学的薫りが立ち込めている。何処かへ消えた “あのひと” を探して魂が身体を離れ、鳩となって飛び立っていくという、凄まじいまでの女の情念を見事に表現した歌なのだ。この歌が私の心を魅きつけて離さないのは一にも二にもこれらのフレーズが放つ不思議な魅力のせいだろう。因みに “アカシアの雨” というのはアカシア並木に降る冷たい雨のイメージだ。
 旋律面でも “夜が明ける 日がのぼる 朝の光のその中で~♪” と一気にたたみかけ、エンディングで “涙を流してくれるでしょうか~♪” とオトシマエを付けるあたりなんかもう見事という他ないし、器楽アレンジが際立つポリドール・オーケストラのバッキングも絶妙だ。オルトフォン・カートリッジで聴く重心の低いモノラル・サウンドもたまらない(≧▽≦)
 カップリングされた「東京ブルース」(1964年)も「アカシア」と同じ “水木かおる&藤原秀行” コンビの曲で、イントロの雰囲気も女の恨み節を綴った歌詞も「アカシア」を彷彿とさせるモノがあるが、私の受けるイメージとしては「アカシア」をよりモダンにしたような感じで、彼女のヴォーカルもより洗練されているように聞こえる。この2曲の間に横たわる4年という歳月を彼女の歌声から感じ取るのもこのレコードの楽しみ方の一つではないだろうか。

※このジャケットの盤は4thプレスで69年盤ということが判明しました。因みに 3rd プレス盤は67年頃に出ており、2nd ジャケと同じ構図でさっちゃんの写真だけが 4th ジャケのもの(←襟に手をやり視線がこっち向いてるヤツ)に差し替えられてます。(9.18追記)

アカシアの雨がやむとき  西田佐知子


[t] 東京ブルース(西田佐知子)
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