shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

星のナイトクラブ / 西田佐知子

2011-08-24 | 昭和歌謡・シングル盤
 音楽ファンの楽しみの一つは、あまり人の話題には上らないが内容的には最高!という、いわゆる “自分だけの名曲” を見つけることである。だから古き良きムード歌謡からバリバリのリズム歌謡まで様々なタイプの楽曲を違和感なく歌いこなす西田佐知子のレコードは、私にとってはまさに宝の山みたいなものなのだ。そんな中でも私がとりわけ気に入っている1曲がこの「星のナイトクラブ」である。
 この曲は前回取り上げた「くれないホテル」に続くシングルで、作詞作曲も同じ “橋本淳&筒美京平” だ。この黄金コンビと西田佐知子の初コラボレーション作品である「くれないホテル」がどちらかというと洋楽テイストを巧く取り入れて時代を先取りしたような洗練されたナンバーだったのに対し、その4ヶ月後にリリースされたこのコラボ第2弾「星のナイトクラブ」は従来の歌謡曲ファンにも強くアピールするようなコンテンポラリー感覚溢れるキャッチーな歌謡ポップスに仕上がっている。
 筒美京平作品の一番の魅力は思わず鼻歌で歌いたくなるようなその親しみやすいメロディーにあると思うのだが、この曲でもキャッチーな “筒美メロディー” が全開だ。そしてそんな美メロを引き立てているのが京平先生お得意のゴージャスなストリングス・アレンジ。イントロに始まり、歯切れの良いストリングスを絶妙なタイミングで大量投下、この曲に更なる高揚感を与えることによって、煌びやかな夜の世界を小粋に表現している。
 さっちゃんのちょっと鼻にかかった歌声も憂いを帯びた曲想にピッタリとマッチしており、柔らかさと温かさを併せ持った力みのない独特の歌唱法でたんたんと歌い上げるところなんかもうたまらない(≧▽≦) この曲を聴いていると、西田佐知子って曲を完全に自分のモノにしてるっていうか、微妙なニュアンスの表現がホンマに上手いなぁと感心してしまう。その歌声を聴いていて、私は思わずいしだあゆみを思い出してしまったのだが、そういえばこの曲自体、雰囲気が何となく「ブルーライト・ヨコハマ」に似ているような感じがするのだ。
 これはあくまでも私の想像だが、あまり売れなかった「くれないホテル」のリベンジに燃えた京平先生が、同じ橋本淳とのコンビで1969年の2月から4月までヒットチャート1位を独走した「ブルヨコ」の再現を、あゆのノンビブラート唱法の源流とでも言うべき西田佐知子で狙った... というのは考え過ぎだろうか? 特に間奏の雰囲気なんか「ブルヨコ」を彷彿とさせるものがあり、それに続く“甘くて~ 甘くて~♪” のラインを “あるいてもぉ~ あるいてもぉ~♪” と歌ってもあまり違和感なさそうだ(^.^)
 この曲は初めて聴いた時に “夜の銀座に 夜の銀座に い~るという♪” のラインが脳内リフレインを起こして一発で気に入った私的キラー・チューンなのだが、考えてみると60年代昭和歌謡にはこの曲以外にも「二人の銀座」や「銀座ブルース」、「銀座の恋の物語」など、「銀座」をテーマにした名曲が多い。これらの歌を聴けば、行ったことのない人間にも何となく “夜の銀座” がイメージできてしまう。これは「ヨコハマ」(←「横浜」じゃないところがミソ!)にも言えることだが、ある特定の地名が作り手側の創作意欲をかきたてると同時に、聴き手側のイマジネーションをも増幅させる好例だと思う。

西田佐知子 星のナイトクラブ (ステレオ)