shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

アニメンティーヌ / クレモンティーヌ

2010-07-26 | World Music
 フレンチ・ボッサの歌姫クレモンティーヌの魅力にハマってせっせと CD を買い集めて盛り上がっていたのが今年の5月、あれからまだ2ヶ月しか経っていないというのに早くも彼女の新作がリリースされた。これまでもジャズ、ボサノヴァ、シャンソンの名曲はもちろんのこと、スティーヴィー・ワンダーやビーチ・ボーイズ、ギルバート・オサリヴァンといった英米のヒット・ポップスから中島みゆきを始めとする邦楽に至るまで、その脱力系ウィスパー・ヴォイスでジャンルを軽く超越したカヴァーの数々を聴かせてくれた彼女のこと、“へぇ~、もう新作が出るんか... 次はどんな曲をカヴァーしてるんやろ?” と興味津々で曲目を見てみてビックリ...(゜o゜) 「ラムのラヴ・ソング」?「バカボン・メドレー」?... 何これ??? で、タイトルが「アニメンティーヌ」って...(爆) 賛否両論あるだろうが、少なくともアルバム・タイトルだけでつかみはOKという感じだ。
 まぁシリアスな音楽ファンなら歯牙にもかけないかもしれないが、アニソンをバカにしてはいけない。「ウクレレジブリ」や「ウクレレウルトラマン」の時に書いたかもしれないが、わずかな時間でリスナーの心をつかむことを要求されるアニソンの旋律には非常に優れたものが多く、 “アニソン=子供向け音楽” というのはあまりにも短絡的な発想だと思う。少なくとも私はメロディーが希薄で聴いてて全然面白くも何ともない凡百のオリジナル曲を聴かされるぐらいなら、鼻歌感覚で一緒に口ずさめるようなアニソンの方がずっと良い。このアルバムもネットで試聴してその楽しさの一端に触れ、即買いを決めた。
 原題は「ボッサ・ドゥ・アニメ」で CD オビの謳い文句が “パリジェンヌもアニメがお好き? ~1億3千万人が聴いた名曲アニメ・ソングをオシャレにボッサ・カヴァー~” ときたもんだ。確かにフランスでは日本のアニメを始めとするポップ・カルチャーが大人気で、パリで開かれたジャパン・エキスポが連日の超満員という記事をどっかで見た覚えがあるが、その時はまさか自分がクレモンティーヌ嬢の歌声でボッサ・アレンジのアニソンを楽しむことになろうとは夢にも思っていなかった。
 昭和テイスト溢れるいかにもなジャケットもアレだが、何と言っても収録曲が面白い。①「ラムのラヴ・ソング」、②「バカボン・メドレー」、③「崖の上のポニョ」、④「おどるポンポコリン」、⑤「風の谷のナウシカ」、⑥「はじめてのチュウ」、⑦「ロマンティックあげるよ」、⑧「サザエさん・メドレー」、⑨「ドラえもんのうた」、⑩「とんちんかんちん一休さん」、⑪「タッチ」、⑫「キャッツ・アイ」という全12曲がオシャレなボッサ・アレンジを施されてフランス語や英語で歌われているというのだから、ファンでなくても “どんなんやろ?” と聴いてみたくなるのが人情というものだ。
 どの曲もアレンジに工夫があってめっちゃ面白いのだが、一番の衝撃と言えばやはり②だろう。ボッサなギターのイントロをバックに例のメロディーに乗って “ボンボンバカボン バカボンボン~♪” と囁くクレ嬢のか細い歌声を聴いた時の不思議な感覚はとても言葉では言い表せない。それは③も同様で、彼女のウィスパー・ヴォイスで “ポーニョ ポニョポニョ~♪” と歌われるのだから、その脱力感はハンパではない(笑) ラテン・フレイバー全開の④も曲想とバッチリ合っているし、日本人なら耳タコの⑧がこんな風にボッサ化されるなんて目からウロコというか、とにかくこんなオシャレなサザエさんは聴いたことがない。超カッコ良いイントロで始まる⑨もオッシャレ~なのだが、1分5秒あたりで突如炸裂する彼女の “ハ~イ、タケコプター♪” にはワロタ(^o^)丿
 私的ベスト・トラックは⑪と⑫。あの「タッチ」にこんな哀愁が潜んでいるとは思わなんだ。間奏のアコギ・ソロにも涙ちょちょぎれるし、何と言ってもクレ嬢の歌声が曲の髄をコワイぐらいに引き出しているのが凄い。私としてはこの1曲のためだけに買っても損はないと思うぐらいの名演だ。「キャッツ・アイ」は杏里のオリジナルを聴いた時から大好きだった曲で、数多いアニソンの中でも「キューティー・ハニー」と並ぶ私的2大名曲の一つ。そんな超愛聴曲がパリのエスプリを感じさせるオシャレなフレンチ・ポップスに大変身するなんて... ホンマに長生きはするもんですな(≧▽≦)
 ①は彼女自身がオリジナルのアニメを常日頃から子供たちと一緒に楽しんでいるというだけあって何の違和感も感じさせずに実に自然なノリで歌っており、知らない人が聴いたら彼女の新曲だと思ってしまうかもしれない。実際私も⑥⑦は元になったアニメ(キテレツ大百科とドラゴンボール)を見たことが無く当然曲も初めて耳にするものだったが、オシャレなフレンチ・ポップスとして楽しめた。
 この「アニメンティーヌ」は届いたその日から家でも車でもスーパー・ウルトラ・へヴィー・ローテーション状態で聴きまくっているのだが全然飽きない。クレモンティーヌの軽やかな歌声が醸し出す洒脱な雰囲気と昭和のアニソンが持つキャッチーなメロディーとが絶妙に融け合って実に新鮮な感覚で聴けるのだ。和の食材をフレンチの鉄人シェフが見事に料理して仕上げたかのようなこのアルバム、違いの分かるグルメな音楽ファンに超オススメの逸品だ。

Touch


Bakabon Medley

コメント (2)