shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Ventures On Stage

2010-07-08 | エレキ・インスト
 私は “日本の夏” といえば “金鳥の夏” と続けたくなるコテコテの昭和世代だが、エレキ・インスト・ファンにとっては “夏だ、エレキだ、ベンちゃんだ!” ということで、 “夏といえばベンチャーズ” がお約束。まぁ土用の丑の日が近づくとウナギが食べたくなるのと似ているのかもしれないが、私も毎年この時期になるとなぜか無性にベンチャーズが聴きたくなってくる。
 彼らが信じられないくらいのハイ・エナジー、ハイ・テンションを維持し、ロックンロールの王道を行っていた1960年代のアルバムはどれもこれも甲乙付け難い出来で、特に1965年前後のアルバムなんかもう神懸かり的とでも言えそうな物凄い演奏が目白押し。私はスリリングでグルーヴィーな彼らのプレイを大音響で聴きながらユルユルに弛んだ精神にカツを入れ、明日への活力にしている。
 数年前に plinco さんのおかげでナツメロ・サーフィン・インスト・バンドではなく超一流のロックンロール・バンドとしてのベンチャーズに開眼した私は、彼らのディスコグラフィーを参考にしながら eBay で彼らのオリジナル盤を集めていったのだが、この「ベンチャーズ・オン・ステージ」は大名盤「ライヴ・イン・ジャパン」と時期も曲目も殆ど被っていたこともあって、その “60's ベンチャーズ音源・根こそぎ(?)ゲット・プロジェクト” の最後の最後に買った1枚だ。落札価格はたったの $3.00で、ほとんど送料のみで入手できてめっちゃ嬉しかった。尚、このアルバムは当時日本だけで発売されていた「ライヴ・イン・ジャパン」が大ヒットしていたこともあり英米のみで発売され、日本ではここから3曲がEPとして出されたのみで、フル・アルバムとしてのリリースはそれから12年後の1977年になってからという非常にややこしい状況を引きずる1枚だ。
 LP のライナーによるとこのライヴ盤は1ヶ所で収録されたものではなく、A面の4曲①「ワイプ・アウト」、②「ジャーニー・トゥ・ザ・スターズ」、③「10番街の殺人」、④「キャラバン」が日本、B面前半の3曲①「ペダル・プッシャー」、②「アパッチ '65」、③「バンブル・ビー」がイギリス、後半の3曲④「ドライヴィング・ギターズ」、⑤「ウォーク・ドント・ラン~パーフィディア~ララバイ・オブ・ザ・リーヴズ」、⑥「イエロー・ジャケット」がアメリカでのライヴということになっている。 “へぇ~、日本公演以外のライヴも聴けるなんてラッキー(^o^)丿” と期待に胸を膨らませて LP に針を落とすと聞こえてきたのは明らかに不自然な拍手や歓声が被せられたベンチャーズの演奏で、特にB面の英米ライヴなんかもう断続的に黄色い歓声が乱れ飛ぶというめちゃくちゃなオーヴァーダブ(←ビートルズのパリ・オランピア・ライヴみたいな感じ...)が施されており、何か割り切れないものを感じながら聴いていた。もうちょっとマシな編集はでけへんかったんかねぇ...(>_<)
 その後、ベンチャーズ版「ウルトラ・レア・トラックス」というか「アンサーパスト・マスターズ」というか、いわゆるひとつの未発表音源集「イン・ザ・ヴォールツ」シリーズの Vol. 4 がイギリスのエース・レコードからリリースされ、その中でA②④B①③④⑤⑥の拍手・歓声ナシ “アンダブド・ヴァージョン” が聴けた時は大感激!寄せては返す波のような不自然な歓声のうねりに邪魔されずにベンチャーズの演奏が楽しめてめっちゃ嬉しかった。
 結局この「ベンチャーズ・オン・ステージ」はペギー・リーの「ビューティー・アンド・ザ・ビート」etc と同じく偽装ライヴ盤だったワケだが、この頃のベンチャーズは観客を前にしたステージ演奏であろうとノー・オーディエンスのスタジオ・ライヴであろうと関係なしに凄まじい演奏を繰り広げていたことは厳然たる事実。特にノーキー・エドワーズのスリリングなギター・ワークとメル・テイラーの爆裂ドラミングには言葉を失う。中でも「ライヴ・イン・ジャパン」に入っていないB①「ペダル・プッシャー」は必聴の名演だ。このアルバムは音質の面でも編集の面でも「ライヴ・イン・ジャパン」には遠く及ばないが、ベンチャーズ・ファンならこの1曲のためだけにでも買う価値はあると思う。

ペダル・プッシャー