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shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ジブリ・ミーツ・ボサノヴァ

2011-01-26 | TV, 映画, サントラ etc
 またまたジブリである。一昨年のビートルズで味をしめて以来、このブログでは祭りと称して本能の趣くままに特定のアーティストや楽曲、テーマを集中して取り上げてきたが、2011年最初のお祭りは、様々なカヴァー盤が粗製濫造されているジブリ・ミュージックの中から私が特に愛聴している盤を特集したい。ということで、ジブリの名曲をピアノ・トリオで見事にジャズ化した前回の「ジブリ・ミーツ・ジャズ」に続く “ジブリ・カヴァー祭り” 第2弾はボサノヴァである。
 ネットで調べてみたらジブリのボサノヴァ・カヴァー盤は何種類か出ており、色々試聴してみると正に玉石混交と言っていい状態で、タイトルが似ているだけに一歩間違うととんでもないカスをつかまされるハメになる。特に酷かったのは「ジブリBOSSA」という盤で、これのどこがボッサやねん!と怒鳴りたくなるようなハウス・ミックス系の軽薄ダンス・ミュージックのオンパレード。 “渋谷系” だか何だか知らないが、何でもかんでも「ジャズ」とか「ボッサ」というタイトルを付けて堅気の衆を騙すのは一種の詐欺行為に近い。ジブリに関して言えばジャケットにオシャレな女性のイラストがアップで描かれているような盤は要注意だ。
 そんな偽物が横行するジブリ・ボッサ盤の中で私が気に入ったのがこの「ジブリ・ミーツ・ボサノヴァ」というコンビ盤である。ジャケットに写っている耳が大きくて目がクリクリした可愛い動物は、ナウシカのペットの “キツネリス” のモデルになったと言われるフェネック。やはりジブリのジャケットはこうでなくてはいけない。
  ボサノヴァという音楽は本来、クラシック・ギターを指でつま弾きながら抑揚に乏しいメロディーを呟くように歌うというスタイルだったものが、世界的に広まるにつれて徐々にその形態も変化していき、今ではゆる~いヴォーカルをフィーチャーした心地良い脱力系サウンドの総称として広義に解釈されている。このアルバムも大半はそのような “新感覚ボッサ” で、メロディーの分かり易いジブリ・ナンバーを洗練されたラウンジ・ミュージックに仕上げている。
 収録曲は8曲とやや少なめだがそのサウンドはゆったりまったりで快適そのもの。私はボサノヴァに関しては門外漢なので参加しているアーティストは一人も知らなかったのだが、実際に聴いてみるとどのトラックも実に工夫を凝らしたアレンジでボッサ化されており、そのセンスの良さに唸ってしまう。
 中塚 武 with 土岐麻子の①「となりのトトロ」、viola with Kaori Okano の②「君をのせて」と、親しみやすいオシャレなボッサが続く。 Jazztronik の③「崖の上のポニョ」は Ponyo Nova Arrangement という副題が付いているだけあって、サンバを想わせるような軽快なリズムに乗ってノリノリのボッサに仕上がっている。涼しげな雰囲気を演出するフルートや弾むようなハンド・クラッピングなど、実に秀逸なアレンジだ。 COJIROU with カコイミクの④「さんぽ」もその脱力系ヴォーカルが曲想とバッチリ合っていてめっちゃ和めてしまう。このラフでレイドバックした感覚こそがボサノヴァの本質ではないか。
 大橋トリオによる⑤「風の谷のナウシカ」はこのアルバム中唯一の男性ヴォーカル・ボッサ。やる気があるのか無いのかワカランような朴訥とした歌い方はボッサ・マイスターの 901 さんが聴かせて下さる本場ブラジルのボサノヴァを想わせるもので、正統派ボッサの風格が漂うそのサウンドはオシャレなクラブやカフェで映えそうな女性ヴォーカル群の中で異彩を放っている。付かず離れず寄り添う女性バック・コーラスとのハモりも絶品で、これこそまさに聴けば聴くほど味が出るスルメ・チューンの典型と言えるだろう。
 私がこのアルバムで一番好きなトラックが wyolica という2人組ユニットの⑥「もののけ姫」で、女性ヴォーカルの声質と唱法がボッサ化されたバックのサウンドと絶妙に溶け合い、原曲に潜む神秘性を見事に引き出している。一度聴いたらずっと耳に残りそうなカッコ良いヴァージョンだ。 Lumiere with ellie の⑦「いつも何度でも」も大好きなトラックで、囁き系のソフト・フォーカスなヴォーカルが聴く者の心を優しく包み、ほんわかした気分にさせてくれる。ここまでくると歌唱力がどうとかアレンジがこうとかいう問題ではなく、ただただその美しいメロディーに酔い、そしていつの間にかその歌声に酔いしれているという、そんな稀有な名曲名演だ。
 ジブリの音楽はアニソンというジャンルを軽く超越して、日本が生んだスタンダード・ソングという次元で語られるべきものである。天才的なメロディー・メーカー、久石譲氏の名曲の数々を軽やかなボッサ・アレンジで楽しめるこのアルバムはすべてのジブリ・ファンに自信を持ってオススメできる逸品だ。

もののけ姫(Bossa Nova version)wyolica


Lumiere with ellie


大橋トリオ

ジブリ・ミーツ・ジャズ

2011-01-22 | TV, 映画, サントラ etc
 私にとって YouTube と共に欠かせない音楽情報源がアマゾンである。先日、ジブリ・カヴァーの最愛聴盤である 6% Is Mine を聴いていて、ふと “他にもジブリのカヴァー盤でエエの出てへんかな?” と思い付き、早速アマゾン検索してみると驚いたことに292件もヒット、改めてジブリ音楽の需要の高さに驚かされた。確かにジブリの音楽は作品のクオリティが高くて国民的認知度も抜群という超優良コンテンツであり、カヴァー作の中にはレゲエや和太鼓、それに二胡を使った中国音楽みたいな盤まであってまさに何でもアリの状況だが、多いのはクラシックやオルゴール、それにデジタル臭いダンス・ミュージックの盤で、いくらジブリが好きと言ってもそんなんまで聴きたいとは思わない。
 ジャズ・アレンジの盤も少数ながら出ていたので片っ端から試聴してみたが、正統派モダンジャズとは程遠い、無機質な打ち込みドラムで軽佻浮薄な女性ヴォーカル入りの似非ジャズ盤ばかりでガッカリ(>_<) “ジャズ” というタイトルを付けてちょっとオシャレっぽいジャケットにすれば売れるだろうという魂胆がミエミエなのだが、どこをどう聴いてもカフェバー向けの使い捨てダンス・ミュージックだ。そんな有象無象盤の中で唯一 “おぉ、これは!” と思ったのが立石一海トリオの「ジブリ・ミーツ・ジャズ」だった。
 演奏はピアノ、ベース、ドラムスというオーソドックスなフォーマットで、耳に心地良いジブリ・メロディを親しみやすく料理した、万人受けしそうなピアノ・トリオ・ジャズ。その温かみ溢れるサウンドはまさにジブリの世界にピッタリで、方向性としては80年代にアルファ・ジャズ・レーベルから出ていたケニー・ドリュー・トリオみたいな感じなのだが、その芯にあるのは50年代ピアノ・トリオのエッセンス満載の王道を行くプレイだ。
 ①「いつも何度でも」、②「となりのトトロ」と、心にポッと暖かい灯がともる様な癒し系ジャズが続く。原曲のメロディを慈しむように優しいタッチで弾いているところが素晴らしい。③「崖の上のポニョ」では意表を突いてファンキーなイントロからサビ→Aメロと展開し、Bメロに入ると(1分16秒)アップテンポに転じて奮然とスイングを開始、1分57秒からドスドスと切り込んでくるベースといい、2分15秒からのトリオが一体となってノリノリで疾走するインプロヴィゼイション・パートといい、ジブリ・ソングスの中でも特にお子様志向が強い「ポニョ」がこんなスインギーなジャズになるとは思わなんだ。私の知る限り最高の “ポニョ・カヴァー” である。
 スインギーと言えば⑤「海の見える街」も負けてはいない。スイングの根底をキッチリ支える安定感抜群のリズム・セクションに鼓舞されて気持ち良く弾むピアノがたまらない。インプロヴィゼイション・パートも聴き応え十分で、めちゃくちゃカッコ良いピアノ・トリオ・ジャズが展開されていく。ジブリだと言われなければ “50年代ジャズ・ピアノ・トリオ屈指の名演” で十分通用しそうなキラー・チューンで、私がこのアルバム中で一番好きなトラックだ。
 ④「アリエッティズ・ソング」では静謐で叙情味溢れるトリオ・プレイに唸ってしまうし、⑧「君をのせて」はデューク・ピアソンを彷彿とさせるような品格したたり落ちるジャズ・ボッサに仕上がっている。⑪「風の伝説」ではベースの佐藤忍さんがスコット・ラファロばりのアグレッシヴなプレイでグイグイ煽りまくるスリリングな展開が楽しめるし、瀟洒なブラッシュがたまらない⑬「カントリー・ロード」でもスイングするピアノ・トリオのお手本のようなプレイが堪能できる。ドラムスの鈴木麻緒さんが⑮「テルーの唄」で聞かせる妖艶なブラッシュ・ワークはエヴァンス・トリオのヴィレッジ・ヴァンガード・ライヴにおけるポール・モチアンの如き吸引力だ。
 「さくらんぼの実る頃」は⑥ノーマル・ヴァージョンに加えて⑯レトロ・ヴァージョンがボートラとして収録されているが、私は50'sっぽい音作りの⑯の方が好き。まるでプレスティッジのレッド・ガーランド・トリオを聴いているような感じで、左手のコードが作り出すテンションがゆったりとしたスイング感を生んでいる。絶妙なタイミングで切り込んでくるブラッシュの “シュパッ!” という一撃にもゾクゾクしてしまう。
 老若男女に愛される人懐こいジブリ・メロディを見事な音楽センスでフォービート・ジャズ化したこのアルバム、まさに “大人のためのジブリ・ミュージック” と言うに相応しい大傑作で、メロディ良しスイング良し歌心良しと三拍子揃ったジブリ・カヴァーの金字塔的な1枚だ。

いつも何度でも


崖の上のポニョ


海の見える街


君をのせて

アニメイヤ ~ジブリ・ソングス~ / メイヤ

2010-12-17 | TV, 映画, サントラ etc
 数ヶ月ほど前だったか、クレモンティーヌが日本のアニソンをボッサ風にアレンジして歌った CD 「アニメンティーヌ」という盤をこのブログで取り上げた。頬に渦巻きマークを付けた三浦友和のCMで有名になったアレである。ところがリリースからまだ4ヶ月しか経っていないというのに販売元のソニーはあろうことかその盤に「ゲゲゲの鬼太郎」、「元祖天才バカボンの春」、「バカボン・メドレー(サントリーCMフル・ヴァージョン)」という新曲3曲を追加、「アニメンティーヌ・プラス」として新装発売したのだ。アホか!旧ヴァージョンを買ったファンの気持ちを逆撫でするような姑息な売り方だ。しかも悔しいことにアマゾンで試聴してみると「ゲゲゲ...」の出来が良さそうなんである。コレはもうレンタルするしかない。こんなことしとったら益々 CD が売れへんようになるのがアホバカ・レコード会社には分からんのかな?
 今回の一件で私は益々ソニーが嫌いになったが、ひとつだけ収穫があった。アマゾンで「アニメンティーヌ・プラス」を調べた時に、例の “この商品を買った人はこんな商品も買っています” 欄に何気なく目をやると、そこにたまたま載っていたのがこの「アニメイヤ~ジブリ・ソングス~」だったのだ。これまで何度も書いてきたように私は “ジブリ” に目がない。で、早速試聴してみるとコレが中々エエのである。よくよく見るとレコード会社も発売日も「アニメンティーヌ」と同じだ。多分2枚とも “ヨーロッパのオシャレ系女性シンガーに日本のアニソンを歌わせ、アルバム・タイトルに「アニメ」の3文字を入れて一般のファンにも広くアピールする” という企画だったのだろう。
 私はクレモンティーヌのことはよく知っていたが、このアルバムのメイヤという歌手は名前すら知らなかった。ウィキペディアで調べてみるとスウェーデンのストックホルム出身のシンガーで、90年代にはかなり人気があったらしい。彼女の歌声はちょっと甘~い感じの癒し系で、ジブリ・ワールドとの相性は抜群。この「アニメイヤ」ではそんな彼女の持ち味を活かした巧みなアレンジがなされており、原曲の良さを損なうことなくちょっとオシャレに生まれ変わったジブリ・ナンバーの数々を楽しめる。
 まずは何といっても①「となりのトトロ」である。メイヤの柔らかい歌声が愛らしいメロディーとバッチリ合っていてほのぼのとした雰囲気を醸し出しているところが素晴らしい。耳に馴染んだあの旋律に乗せて歌われる英語詞も実に新鮮で、 “Now begins a new adventure for you(素敵な冒険始まる)~♪” から “And you’ll be with Totoro, Totoro ♪” へと続くサビの部分なんかもう最高だ。トトロ・マニアの私としてはこの1曲だけでも “買い” である。
 ユーミンの名曲④「ルージュの伝言」(魔女の宅急便)もめちゃくちゃ気に入った。ウキウキワクワクするような60's風アレンジで、レトロな雰囲気溢れるヨーロピアン・ポップスになっている。この曲の英語詞はトトロのような逐語的な訳ではなく(←曲によって訳者が違います...)原曲の大意を汲んで新たに書かれた意訳調なのだが、それが又実に巧くメロディーに乗っかっているのである。特に “Maybe you'll grow up when you go home and read the mirror, I've left a lipstick message there, my darling~♪” のラインなんかお見事!と言いたくなるような名訳だ。私はビートルズを始めとする洋楽ポップスの歌詞とその対訳を見ながら独学で英語を覚えたので、この「ルージュ」のオリジナル日本語詞との比較は中々面白かった。
 大胆なアレンジで驚かされたのが⑧「風の谷のナウシカ」だ。バーシアの「クルージング・フォー・ブルージング」を想わせるようなオシャレなサウンドで、バリバリのヨーロピアン・ポップスになっているのにビックリ(゜o゜) “ナウシカァ~♪” のパートがなければジブリ・ナンバーだとは気付かない人も多いだろう。コアなジブリ・ファンの中では賛否両論分かれそうなトラックだが私はもちろん気に入って聴いている。こんなオシャレなナウシカがあっても良いではないか。
 そういう意味では③「もののけ姫」も必聴だ。日本人の心の琴線にビンビン触れるマイナー調の原曲の魅力を存分に引き出しながら様々な楽器を大量投入してコンテンポラリーな哀調ポップスに仕上げたアレンジは見事と言う他ない。特にアコギの使い方なんて絶妙だし、隠し味的に使われているコンガが生み出すグルーヴ感もたまらない。
 スロー・バラッド系では⑤「テルーの唄」(ゲド戦記)が最高だ。無伴奏で歌い始めるところなんかもう背筋がゾクゾクするほどの素晴らしさで、オリジナルの持っていた “儚さ” とは又違った魅力が溢れている。曲を慈しむように歌うメイヤの透明感溢れる歌声が心に染み入ってきてジーンときてしまうのだ。心が洗われるような名唱というのはこういうのを言うのだろう。この盤は BGM というか、ながら聴きに最適なのだが、この⑤だけは思わず手を止めて聴き入ってしまう。
 聴き入ってしまうといえば⑩「いつも何度でも」(千と千尋の神隠し)も甲乙付け難い出来栄えだ。心なしか他のトラックよりもメイヤがのびのびと歌っているように聞こえるのだが、ひょっとしたらこの曲が彼女にとっての “ジブリ・フェイヴァリット・ソング” なのかもしれない。アレンジャーも心得たもので、あれこれと策を弄さず彼女の歌声の最大限引き出すような “シンプル・イズ・ベスト” を地でいくヴァージョンに仕上げている。それにしてもジブリの音楽ってホンマにレベル高いなぁ...(≧▽≦)
 ②「Arrietty's Song」はこのアルバムとほぼ同時期に封切られたジブリ最新作「借りぐらしのアリエッティ」の主題歌でアコーディオンをフィーチャーしたケルト/アイリッシュ調のナンバーだが、私はまだ映画を見ていないので(←早よ DVD レンタル始まらへんかな...)何とも言えない。⑦「崖の上のポニョ」はクレモンティーヌも歌っていたが、メイヤの歌う “ポーニョ ポニョ♪” もキュートで中々面白い。⑨「カントリー・ロード」(耳をすませば)は唯一日本語で歌っているが、コレはまぁご愛嬌といった感じだ。
 北欧の癒し系女性シンガーが名曲揃いのジブリを歌ったこの「アニメイヤ」、日本人ならどこかで耳にしているはずのジブリ・ナンバーを英語のポップスとして聞けるこのアルバムはオシャレなカフェなんかで流せばぴったりハマりそうな1枚だ。

Meja ★☆★ Tonari no Totoro ★☆★ ANIMEJA ★☆★


Meja ★☆★ Rouge No Dengon ★☆★ ANIMEJA ★☆★ Kiki's Delivery Service ★☆★


Meja ★☆★ Therru No Uta ★☆★ ANIMEJA ★☆★


Meja ★☆★ Itsumo Nando de mo ★☆★ ANIMEJA ★☆★
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ジブリティック・パンク・カヴァーズ / 6% is MINE

2010-11-22 | TV, 映画, サントラ etc
 最近ひょんなきっかけでK君という音楽好きの若者と知り合った。彼はまだ若いのに、ビートルズを始めとしてディープ・パープルやキング・クリムゾンといった昔のロックが大好きなだけでなく(←父親が筋金入りのビートルズ・マニアらしく、小さい時からそんな音楽を聴いて育ったらしい...)、私のライフワークである “面白カヴァー” にも並々ならぬ興味を示すなど、驚くほど私と感性が似ているのにビックリ(゜o゜) しかもオーディオや車も大好きということですっかり意気投合、今では私の若い衆(?)の中でも一番の話し相手だ。
 そんな彼といつものように音楽の話をしていた時のこと、ビートルズの楽曲をラモーンズ・スタイルで高速演奏するパンクルズやメタリカそっくりのサウンドでメタル化してしまうビータリカといった、いわゆるひとつの “異種格闘技” 的パロディー・バンドの話題で盛り上がり、 “めっちゃ面白いッスね。僕も色々探してみます!” とすっかりこの世界にハマッたようだった。そしてその翌日、満面の笑みを湛えて “こんなん見つけました!” と彼が教えてくれたのがこの「ジブリティック・パンク・カヴァーズ」だ。何という速攻!それでこそ我が若い衆だ(笑)
 早速 YouTube で試聴してみるとコレがもう私の嗜好のスイートスポットを直撃する面白さ!発想の原点は YouTube でついに230万ヒットを超えた “トトロック” あたりだろうが、全体の雰囲気としてはリンドバーグを想わせるガールズ・ガレージ・ロックといった感じで、「となりのトトロ」も、「カントリー・ロード」も、「いつも何度でも」も、竹を割ったようなストレートなロックンロールにアレンジされている。 “エレクトリック・ヴォイス” とでもいうのか、ヴォーカルにエフェクトがかけられていて聴きやすく加工されていることもあって、 “パンク” を期待して聴くとちょっと物足りないかもしれないが、そのソフト・フォーカスなヴォーカルとギター・ピック・スクラッチを多用したロック・サウンドのバランスが絶妙で、大人から子供まで理屈抜きに楽しめる “お茶の間ロックンロール” に仕上がっている。この手の盤に目がない私はすぐにアマゾンでゲットした。
 収録曲は①「いつも何度でも」(千と千尋の神隠し)、②「となりのトトロ」、③「テルーの唄」(ゲド戦記)、④「ナウシカ・レクイエム」(風の谷のナウシカ)、⑤「崖の上のポニョ」、⑥「カントリー・ロード」(耳をすませば)、⑦「やさしさに包まれたなら」(魔女の宅急便)、⑧「君をのせて」(天空の城ラピュタ)の全8曲で、22分31秒というからミニ・アルバムと言えるが、つまらないオリジナル曲を延々70分近く聴かされる昨今の CD よりもこっちの方がずっと密度が濃くて良いと思う。
 どのトラックも甲乙付け難い素晴らしさだが、トトロ・マニアの私としてはやはり②が一番のお気に入り。親しみやすい原曲のメロディーの良さを巧く活かしてウキウキワクワクするようなロックンロールに仕上げている。哀愁舞い散るメロディーが印象的な原曲をハードなロック・サウンドで高速化した④はその斬新な発想に目からウロコという感じ。ナウシカを見たことがない人も、コレはもう聴くシカないだろう。イントロから一気に突っ走る⑤からはロックの楽しさがヒシヒシと伝わってくるし、原作者のジョン・デンバーが聴いたらひっくり返りそうな⑥のドライヴ感も圧巻だ。
 心に沁みる癒し系の原曲を大胆不敵なアレンジでロック化した①も面白い。コアなジブリ・ファンなら怒り出すかもしれないが、私はこういうのもアリだと思う。同じ曲でこうも印象が変わるものかと広~い心で両方楽しむのが通のファンというものだろう。原曲のインパクトが強烈な⑦もアレンジに工夫を凝らしてロック化されており、ユーミンのオリジナルとの聴き比べも一興だ。③⑧は映画を見ていないので原曲との比較は出来ないが、どちらもそのメロディーだけは「ウクレレジブリ」シリーズを通して知っていた。ウクレレであれ、ロックンロールであれ、ジブリの曲って親しみやすいメロディーの曲が多いので、アレンジャーにとっては最高の素材なのだろう。
 このアルバムは全トラックが聴き応え十分な疾走系ロックンロールなので、車内 BGM としてヘヴィー・ローテーション状態になっている。ただ、唯一の難点は美的センスのかけらもない醜悪ジャケット(←パンクをバカにしてんのか!)で、中身の音楽を聴かなければ絶対に買う気の起こらないような代物だ。まぁ私のようにジャケットに拘る音楽マニアではなく、ネットで音楽をダウンロードするような若者層をターゲットにしているのだろう。それ以外の点では文句のつけようがない1枚で、ジブリの名曲をウキウキするようなロックンロールで聴けるこのアルバムは、企画良し、アレンジ良し、雰囲気良しの好盤だと思う。私の持っているジブリ・カヴァー盤の中で文句ナシの№1だ。

6% is mine - Tonari No Totoro cover


6% is MINE - カントリーロード (Country Roads)


6% is MINE(GIRLS)_GHIBLITIC PUNK-COVERS_digest_2010.06.23
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ウクレレジブリの森

2010-07-22 | TV, 映画, サントラ etc
 私は「となりのトトロ」の大ファンなのだが、「トトロ」以外のジブリ映画は見たことがない。だからまかり間違ってもジブリ・ファンとは言えない。しかし「トトロ」1曲を目当てに買った「ウクレレ・ジブリ」を聴いてそこで使われている音楽の素晴らしさに瞠目、もちろん「トトロ」がベストだったがそれ以外にも「もののけ姫」の哀愁舞い散るテーマ曲や「魔女の宅急便」の「海の見える街」と「やさしさに包まれたなら」、「風の谷のナウシカ」の「遠い日々」など、キャッチーで美しいメロディーを持った楽曲の数々に出会えて大満足だった。
 そんな「ウクレレ・ジブリ」の続編として2008年末にリリースされたのがこの「ウクレレジブリの森」である。たぶん映画「崖の上のポニョ」の大ヒットに便乗して2匹目のドジョウを狙ったんじゃないかと思うが、便乗であれドジョウであれ演奏さえ良ければ文句はない。前作はリコーダーの音がウクレレよりも目立っている曲がいくつかあったのだが、リコーダーというのは脇役に徹してこそ活きる楽器であり、あまり前面に出すぎると何か小学生の合奏を聞かされているようでちょっとカンベンしてほしい。「ウクレレ・ジブリ」を名乗る以上、主役はあくまでもウクレレなのであり、製作サイドもそのあたりを軌道修正してきたようで、今回は基本的にウクレレ主体のサウンドなのが嬉しい。
 このCDの目玉は①「崖の上のポニョ」(オーケストラ・ヴァージョン)らしく、アマゾンの紹介文にも “ウクレレ界のベストメンバーが集結!46人の大編成のウクレレ・オーケストラ・オブ・ジャパンによる「ポニョ」カバーは必聴!” とある。確かにウクレレで大編成のオーケストラを組むなんて発想は実に独創的で興味深いし実際に聴いてみてもコレはコレで面白いが、何となくマンドリンの合奏を聴いているみたいな感じで、ウクレレでやる必然性が感じられない。何よりも大編成で合奏することによってウクレレの美点であるホンワカした音色や独特のスイング感がスポイルされてしまっているように感じられるのが惜しい。まぁ話題作りという点では成功していると思うし、そのために1曲目に持ってきたのだろう。
 私がこのCDのベスト・トラックに挙げたいのは同じ「崖の上のポニョ」を①とは対照的にウクレレ・ソロでカヴァーした⑯だ。演奏者は私が日本一のウクレレ奏者と信ずるキヨシ小林氏。マヌーシュ・スウィング・ギタリストでもある彼の一番の魅力は他のウクレレ奏者たちとは激しく一線を画す絶妙なスイング感と、チャボロ・シュミットやロマーヌといった世界の超一流ギタリストたちが絶賛した歌心溢れるプレイだ。他のプレイヤー達が “楽器を弾いている” のに対し、彼は “楽器で歌っている” という感じなのだ。
 彼はこれまでも「ウクレレ・ビートルズ」の「オール・マイ・ラヴィング」、「ウクレレ・ビートルズ2」の「シー・ラヴズ・ユー」、「ウクレレ・ウルトラマン」の「ウルトラマン・エース」と、参加したオムニバス・アルバムの中で常にベストの演奏を聞かせて格の違いを見せつけてきた人だが、今回も上記の⑯と⑦「わたしのこころ ~魔女の宅急便より~」の2曲こそがこの CD のベスト・トラックであり、そのハートフルなプレイがジブリの名曲と見事にマッチして素晴らしいヴァージョンに仕上がっている。
 映画「耳をすませば」(←恥ずかしながらタイトルすら知らなかった...)の②「バロンの歌」はウクレレ・カフェ・カルテットによる見事なアンサンブルが聴き所。ツボを抑えた演奏が耳に心地良い。⑤「ねこバス」は①と同じウクレレ・オーケストラによる演奏で、イントロを聴いた時は思わずゼッペリンⅣの3曲目「バトル・オブ・エヴァーモア」を思い出してしまった(笑) ①とは違いこちらは大編成が功を奏したようで、アレンジもユニークな曲想にぴッタリ合っており中々楽しいトラックになっている。
 この手の続編というか Vol. 2 というのは多くの場合 Vol. 1 に比べると楽曲のクオリティーは落ちるのが普通で、この盤も前作に比べるとやや地味な印象は否めない。しかし愛らしいジャケットと突出した何曲かの名演のために、ず~っと手元に置いて聴き続けたい1枚になっている。

ウクレレジブリの森
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Television's Greatest Hits 70's & 80's

2009-07-03 | TV, 映画, サントラ etc
 先週マイケル・ジャクソンが亡くなってから早くも1週間が過ぎた。彼への想いはこのブログに書き綴ったが、同じ日に亡くなったファラ・フォーセットの死も又私には大きなショックで、彼女のことをボーッと考えていたらチャーリーズ・エンジェル(映画の元になった70年代のテレビ・シリーズの方です)に行きつき、懐かしさが込み上げてきた。
 私は昔から外国のテレビドラマが大好きだった。日本のドラマって脚本に深みがないというか、予定調和というか、どれも似たり寄ったりでイマイチ面白みに欠けるのだが、海外、特にアメリカのドラマはストーリー展開ひとつとっても次元が違うほど面白く、俳優さんたちのキャラも立っていた。私が一番好きなのはスタートレック・シリーズで、中でも「宇宙大作戦」、「ザ・ネクスト・ジェネレーション」、「ディープ・スペース・ナイン」、「ヴォイジャー」の4シリーズ計605話はすべてストーリーを覚えてしまうくらい何度も繰り返し見た。
 そうそう、「ダラス」にもハマッたなぁ...(≧▽≦) 70年代から80年代初めにかけて全米で13年間に亘って放送され、最高視聴率が50%を超えた全米ドラマ史上に残る屈指の名作で、テキサスの石油王ユーイング一族の愛憎劇や権力抗争を通して人間の微妙な心の綾が見事に描かれていたし、シーズンの最後に劇的な幕切れを用意して次のシーズンへの期待を持たせるいわゆる“クリフハンガー方式”を定着させたのもこのドラマである。特に主人公のJRがオフィスで何者かに撃たれたところで終わった第2シーズンの衝撃的な幕切れには度肝を抜かれたものだ。
 この2作品を別格とすれば、あとは刑事モノ、探偵モノが圧倒的に多かった。私の中学・高校時代、日曜夜の10:30から読売テレビ系でこの種の海外ドラマが入れ替わり立ち替わり放送されていて、私はそれらのシリーズを欠かさずに見ていた。「ロックフォードの事件メモ」を始めとして「華麗な探偵ピート&マック」、「ベガス・私立探偵ダン・タナー」、「地上最強の美女・バイオニック・ジェミー」、そして「地上最強の美女たち!チャーリーズ・エンジェル」など、挙げていけばきりがない。特に「チャーリーズ・エンジェル」には我が愛しのファラ・フォーセットがジル役で出ており(第1シーズンのみ)、その美しさにすっかり魅了された私は毎週日曜の晩にジルに会えるのが楽しみだった。
 これらの海外ドラマの魅力の一つに音楽面での完成度の高さがあった。特にオープニングのテーマ曲は耳にこびりついて離れないキャッチーなものばかりで、1分ちょっとで多くの人々の心をつかむ絶妙なアレンジがなされていた。適当なBメロやCメロ、それに歌詞を用意できれば大ヒットしそうな曲も何曲かあったので “勿体ないなぁ~” と思いながら自分でオムニバス・テープを作って楽しんでいたのだが、ある時ミナミのタワーレコードで「テレビジョンズ・グレイテスト・ヒッツ 70's & 80's」という盤を見つけた。
 そこには上記の番組の主題歌の多くが収録されていただけでなく、他にも「スピード・レイサー」(懐かしさ全開の日本アニメ「マッハGO GO GO」のUSヴァージョン)、「ラバーン&シャーリー」、「探偵ハート&ハート」、「特攻野郎Aチーム」、「刑事スタスキー&ハッチ」、そして知る人ぞ知る名作「ヒル・ストリート・ブルース」なんかも入っていて海外ドラマ・ファンの私には涙ちょちょぎれる内容だった。ヤン・ハマーで全米№1になった「マイアミ・ヴァイスのテーマ」まで入っている。これであと「ナイトライダー」、「エアーウルフ」、「ハイテク武装車バイパー」(←これカッコイイです!)が入ってたら完璧だったのにね...(>_<)
 もう一つ嬉しかったことは、日本未放送ドラマ音源で良い曲を何曲か見つけたこと。中でも「バーナビー・ジョーンズ」という番組主題歌が絶品で、英文ライナーによると私立探偵モノらしいのだが、これが実に印象的なメロディーを持った曲で、演奏もダイナミックで中々カッコイイのだ。エエ曲やなぁ...と感心しながらよくよく見ると作曲したのは「ナポレオン・ソロのテーマ」(ベンチャーズもアルバム「バットマン」で演ってましたネ)を書いたジェリー・ゴールドスミス。う~ん、さすがですな(^.^)
 話がファラ・フォーセットから大きく逸れてしまった(>_<) 彼女はマイケルのように一つの時代を作った大女優ではないかもしれない。しかしYouTubeに無数にアップされている彼女へのトリビュート映像とその死を悼むコメントの数々が、彼女が如何に大衆から愛された存在であったかをハッキリと物語っている。Rest In Peace, Angel...

Charlie's Angels: Ultimate Opening Credits


Viper intro 4


Barnaby Jones TV show theme song

ウクレレジブリ

2009-05-09 | TV, 映画, サントラ etc
 最初に正直に白状するが、私はジブリの大ファンというわけではない。何しろ音楽とF1以外にはほとんど興味を示さずに生きてきたので、数年前までは “ジブリ” と言われても何のこっちゃだったし、宮崎駿... 誰それ?って感じだった。だから「風の谷のナウシカ」も、「魔女の宅急便」も、「千と千尋の神隠し」も、「もののけ姫」も見ていない非国民(笑)である。テレビもあまり見ないので世間で何が流行っているのかもまったく知らない。そーいえば、ジブリではないが以前職場で同僚が “セカチュウ” の話題を振ってきた時「エエ年こいてポケモンなんか見るかいな!」と真顔で答えて笑い物にされたこともある。一事が万事そんな調子の私だが、一旦ハマると徹底的に極めなくては気が済まない。まぁ好き嫌いのハッキリした非常に分かり易い性格であることだけは間違いない。
 そんな私に友人がトトロを薦めてくれた。私は外見に似合わず可愛らしい動物キャラが大好きでこれまでもピングーやミッフィーにハマッた前科があり、そんなに言うならとツタヤでDVDを借りてきて初トトロを体験したのが3年前のこと。今の高校生が初めてビートルズを聴いて感動するのと同じように、私も封切り18年目にして初めてトトロを見てすっかり気に入ってしまった(←凄いレトリックやな)。それにしてもトトロって何と心の和むキャラだろう。大トトロも中トトロも小トトロもみんなめちゃくちゃ可愛いではないか!お調子者の私は次の日にはもうヤフオクでトトロのマスコットを落札し、愛車である RX-7 のフロントガラスにゾロゾロとぶら下げてみた。リスニング・ルームにも大小2匹飼っていて、アルテックの大型スピーカーの上にデーンと鎮座ましまして私と一緒に毎日音楽を聴いている。
 一方「ウクレレ・ビートルズ」に始まった私のウクレレ熱も「ウクレレ・レノン」、「ウクレレ・エルヴィス」、「ウクレレ・ウルトラマン」と徐々にヒートアップしていき、ついにこの「ウクレレ・ジブリ」に辿り着いた。届いて真っ先に聴いたのは当然⑤「となりのトトロ」で、そのあまりの素晴らしさに感激してしまった。演奏は栗コーダー・カルテットで、ウクレレとリコーダーの素朴なサウンドがゆる~いトトロ曲と絶妙のマッチングを見せ、実に心の和むラヴリーなヴァージョンに仕上がっている。私のようなトトロ・ファン、通称トトラーにとってはこの1曲だけでもCDを買った甲斐があるというものだ。栗コーダーの演奏では他に軽やかな①「風の谷のナウシカ」も良かったし、⑪「もののけ姫」なんてウクレレとリコーダーだけでここまでの哀感を醸し出せるのかと驚かされた。
 バンバンバザールが演奏する⑥「海の見える街」も素晴らしい。こちらはウクレレとウッドベースを中心としたジャズっぽいサウンドが特徴の先進的なユニットだが、0分15秒と1分40秒で炸裂するウクレレ合奏の分厚い音が圧巻だ。2分38秒からのベース・ソロは弦の擦れが目に見えるほど生々しいサウンドだし、特別参加のソプラノ・サックスの柔らかい音色も楽曲に彩りを添えており、まるでスティングの「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」を彷彿とさせるような実にカッコ良いジブリ・カヴァーだ。
 他のトラックも、ウクレレの弦だけでなく聴く者の心の琴線をも震わせる②「遠い日々」(はじめにきよし)やウクレレ独奏でその超絶技巧が堪能できる③「君をのせて」(キヨシ小林)、ベット・ミドラーの「ザ・ローズ」の日本語カヴァー⑧「愛は花、君はその種子」(はじめにきよし)など、ウクレレというシンプルな楽器で演奏することによって、ジブリ主題歌には実に良い曲が多いことが浮き彫りになるという按配だ。こんな時代だからこそ、あれこれ堅苦しいことを考えずにジブリの名曲を奏でるウクレレの素朴な音色に酔いながら疲れた心を癒す時間を大切にしたいと思う。

ニコ動で①→⑤→⑦→⑥→⑭と5曲をフル・ヴァージョンで聴ける動画を発見!↓



トトロといえばやはりコレ! ロック・スピリット溢れるトトロがたまりません(^o^)丿
ヒット数は驚異のミリオン突破(゜o゜)
最近のシロートさんは凄いなぁ... トトラーは必見でしょう↓

トトロック となりのトトロを弾いてみたら【ミリヲンヒットw】したw



探偵物語 Remix ~これにて一件落着~

2009-05-07 | TV, 映画, サントラ etc
 私は松田優作の大ファンである。初めて “凄ぇ~(゜o゜)” と思ったのは高校生の時に深夜テレビでやっていた「暴力教室」で、舘ひろしとのタイマン勝負がめちゃくちゃカッコ良く、インパクト大だった。続く「最も危険な遊戯」、「殺人遊戯」、「処刑遊戯」のいわゆる “遊戯三部作” でのシリアスでハードボイルドな演技にシビレまくった私は日本映画史に残る大傑作「蘇る金狼」で完全にとどめを刺され、すっかり優作信者になっていた。
 そんな頃テレビで始まったのが「松田優作の探偵物語」である。多分映画同様のハードボイルド路線だろうという私の予想は良い意味で裏切られた。明らかにアドリブ連発と思えるやり取りやコミカルな演技という一見オチャラケたストーリー展開の根底には、ただの笑いでは終わらせないぞという松田優作の役者としてのクールでシニカルな世界観が色濃く投影されており、軟派と硬派な要素が入り乱れる異色のドラマだった。彼の演じる工藤俊作、愛称 “工藤ちゃん” に憧れたミーハー人間の私は、タバコも吸わないのにライターを持ち歩いて火力を最大に設定して火傷しそうになったこともあったし、コーヒーも “工藤ちゃん” のマネをして味の違いも分からんくせに「ブルマン3、モカ2、キリマン1」のブレンドにして悦に入っていたものだ。そうそう、真っ赤なギョロ目アイマスクも買ったっけ(笑)
 このドラマでは服部刑事役の成田三樹夫も実に良い味を出していて、それも大きな魅力の一つだった。彼は「仁義なき戦い」を始めとする一連の実録ヤクザ映画シリーズでの “姑息で憎めない悪役” イメージが強かったのだが、「蘇る金狼」での経理部長役といい、服部刑事のオトボケ・キャラといい、個性派俳優としての演技には更に磨きがかかり、山西道弘演ずる相棒役の松本刑事をも含めた3人のやり取りは絶妙なトリオ漫才に聞こえた。
 それから約20年経ったある日のこと、京都の十字屋烏丸店でいつものようにCDハンティングをしていて何の気なしにふと壁に目をやると、そこに飾られていた多数の新譜CDの中でひときわ目立っていたのがサングラスにソフト帽でビシッとキメた “工藤ちゃん” のモノクロ・ジャケットだった。他の凡百のCDジャケットが霞んでしまうような圧倒的存在感を放つそのCDを慌てて手に取った私の目に飛び込んできたタイトルが「探偵物語 Remix ~これにて一件落着~」で、CDのオビには小西康陽を始めとする錚々たる顔ぶれがリミックスを担当していると書かれていた。「松田優作の探偵物語」に対して人一倍思い入れの強い私は即購入した。
 まずは何と言っても小西康陽①「Bad City –readymade 524 mix-」がめちゃくちゃカッコイイ。いきなり電話のベルの音に続いて工藤ちゃんの声で「ハイ もしもし 工藤探偵事務所ですが...」ときて激しいビートが響き渡り、ベース音が右へ左へと振り分けられ、「サンダーバーズ・アー・ゴー」みたいなノリでショーグンの“バッシティ バッ、バッシティ、ファッシティ バッ♪” へとなだれ込む。息をもつかせぬ疾走感溢れる展開が圧巻だ。小西も持てるテクニックを集中投下してサバービアなミックスに仕上げている。
 池田正典⑦「Mansfield Loves Shunsaku mix」でも工藤ちゃんのセリフがサウンド・コラージュ的に随所に散りばめられていて涙ちょちょぎれる。2分15秒の「帰ったらキスしてやるから」もファンにはたまらないし、3分33秒の「服部さ~ん!」でイスから転げ落ちる人もいるかもしれない(笑) しかし何と言っても0分59秒に挿入される「熱いぜ、ベイビー!」が最高だ。
 間奏の歌心溢れるスパニッシュ・ギター・ソロがエエ感じの須永辰雄②「Shunga t'Experience's mix」や「リッジレーサー」(←古い!)のBGMみたいなKURO@③「Goa Trance mix」、ジャジーなピアノが絶妙なグルーヴを生む奥原貢の⑧「SWINGIN LONELY 329 mix」も聴き応え十分だ。
 私のような “優作ファン” は日本中にゴマンといると思うが、工藤ちゃんのセリフを楽しみながらのハイスピード・ドライビングのBGMには最適の1枚だ。

探偵物語 OP ED


手、入れたな?

キイハンター・ミュージックファイル

2009-01-16 | TV, 映画, サントラ etc
 最近テレビを見なくなった。見るのはF1レースやB'z特番といった趣味関係か、「ラオウ外伝・天の覇王」(笑)くらいでそれ以外はほとんど見ない。だから「好きなテレビ番組は何?」って聞かれても答えにつまってしまう。しかし子供の頃に好きだった60's後半から70's前半のテレビ番組をケーブルテレビの再放送なんかで目にすると懐かしさのあまりついつい見入ってしまうことがよくある。当然テクノロジーの進歩した今の目で見ると稚拙な部分が多々見受けられるのは仕方のないことだが、それらを差し引いてもシンプルなのに今でも覚えているほど内容の濃い番組が多く、どんどん画面に引き込まれていってしまう。ノスタルジーを遥かに超越した次元で、今のテレビが失ってしまった面白さに溢れており、心に訴えかけてくるモノがあるのだ。
 私の場合、子供の頃の思い出はテレビが中心で、中でも冨士眞奈美の「加代!犬にやるメシはあってもおみゃーにやるメシはにゃーだで!」というセリフのインパクトが絶大だった「細腕繁盛記」(木曜)、クールな宇津井健がやけにかっこよかった「ザ・ガードマン」(金曜)、そしての千葉真一のハイパー・アクションにシビレまくった「キイハンター」(土曜)と、週末に向けての3本は何があろうと欠かさずに見ていた超お気に入り番組だった。
 時は流れ、音楽一筋の生活をするようになったある日、大阪日本橋の Disc JJ で偶然この「キイハンター・ミュージックファイル~伝説のアクションドラマ音楽全集~」CDを見つけた。その瞬間、例のオープニング・テーマが「チャ~ チャララ チャラララ ラ~ララ~♪」と頭の中で鳴り始め、私は小躍りしてレジへ直行した。帰って早速聴いてみると①「オープニング・テーマ」(千葉真一が地下駐車場で車に追われ天井の柱に飛びついて間一髪で難を逃れるシーンが目に焼きついて離れない!)のメロディーを様々にアレンジしたヴァージョンが入っており、中でもジャズ・アレンジを施して涼しげなヴァイブ演奏がめちゃくちゃクールな②には完全に参ってしまった。他にも前面に出たギターがカッコ良い⑨、音程の怪しいトランペットのプレイが笑える⑱、そこはかとなく漂う哀愁に涙ちょちょぎれる⑳と、この不朽のメロディーの素晴らしさを十分堪能できた。それ以外のもろサウンドトラックに当たる音源も中々よく出来ているし、ボーナス・トラックとして野際陽子のヴォーカル入りヴァージョンも入っており、至れり尽くせりだ。これはCDプレーヤーのプレイボタンを押すだけでタイム・マシーンさながらに古き良き昭和の時代へとトリップできる、思い入れ一発で聴く1枚だ。

キイハンター(key hunter) オープニング&エンディング japanese tv series



Lupin ! Lupin !! Lupin !!! (ベスト・オブ・ルパンジャズ)

2008-11-10 | TV, 映画, サントラ etc
 凄いCDを見つけた。同一曲の全22ヴァージョン入り2枚組、しかもその曲というのがあの有名な「ルパン三世のテーマ」なのだ!日本人ならおそらく誰も知らぬ者はいないであろうこの国民的名曲を、作者の大野雄二さんがそれぞれ異なった編成、アレンジで22通りの解釈を聞かせてくれる... それも大半がジャズ・フォーマットというのが嬉しい(^_^) 私自身この曲の80年ヴァージョンをテレビで見て、いや聴いて衝撃を受けた覚えがあるのだが、それが「'80 New Mix」である。ビッグバンド編成で「ニュー・ヴァイブ・マン・イン・タウン」のゲイリー・バートンみたいなヴィブラフォンが例のメロディーをスインギーに奏でるわ、絡みつくようなピアノのオブリガートがめちゃくちゃカッコエエわで、文句なしの最強ヴァージョンだ。ジェリー・マリガンとシャーリー・スコットとミルト・ジャクソンが特別参加したような(笑)「'99 Version」は原曲がアニメ・ソングなんて死んでも言えないくらいコテコテのジャズに仕上がっている。これは痛快だ!ラテン・アレンジで歌う akiko のヴォーカルがめっちゃカッコ良い「Featuring akiko」、ラムゼイ・ルイスが憑依したかのような「Funky & Pop Version」、ソニア・ローザが気だるく歌うムード満点のボッサ「Featuring Sonia Rosa」、ケニー・バレルの「ミッドナイト・ブルー」そっくりのブルージーな世界が展開する「JAZZ Version」、キース・ジャレットもビックリのシビアなインプロヴィゼイションの応酬が凄まじい「PLAYS THE “STANDARDS” Version」、絵に描いたようなジャジーなヴォーカルが聴ける「Featuring Salina Jones」、ワルツのリズムに乗せてマイルス・デイビス風ミュート・トランペットが舞い踊る「Waltz Version」、シャカタクみたいなオシャレ・サウンドを再現したサバービアな「'97 Version」、フィリー・ジョーみたいなブラッシュに乗ってベイカーとマリガンがピアノレスでスイングするような「More Lupintic Version」と、実際に聴いてみればわかるが、とにかくバリバリのストレートアヘッドなジャズが満載で、ジャケットに騙されてこの盤をたかがアニメ・ソング・コンピレーションと侮っていたらその凄さに腰を抜かすだろう。偏見や先入観抜きで音楽を楽しむ人に超オススメの「羊の皮をかぶった狼」盤である。

ルパン '80 New Mix