shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Jazz Pictures / Rita Reys

2017-03-19 | Jazz Vocal
 自分で言うのも何だが私はめちゃくちゃセコい貧乏コレクターなので、たとえどんなに欲しいレコードであっても自分が設定した予算を少しでも超えたらその盤は見なかったことにしてスパッと諦めるようにしている。逆にそうやって泣く泣く諦めた盤をどこか他所でめちゃくちゃ安く買えた時の嬉しさは筆舌に尽くしがたい。つい最近もそういう経験をしたので今日はそのレコードについて書こうと思う。そのレコードというのはリタ・ライスの「ジャズ・ピクチャーズ」オランダ・フィリップス・オリジナル盤(P 08062 L)である。
 リタ・ライスは1950年代後半から60年代にかけて活躍したオランダのジャズ・シンガーで、英語の発音がちょっとオランダ訛りなのが気になるが、その歌声自体は癖が無く、アルバムの選曲も有名なスタンダード中心なので非常に聴きやすい。私的には逆にその “癖の無さ” がちょっと物足りない感じで、もうちょっと強い個性があった方がエエのになぁ... というのが正直なところだが、スタンダード中心主義なのは大歓迎だ。
 そんな彼女の代表作と言えるこの「ジャズ・ピクチャーズ」を初めて聴いたのはオリジナル盤を集め始めて間もない頃で、難波にあったジャズ・レコード専門店「しゃきぺしゅ」の壁面を誇らしげに飾っていたこのレコードを店主の方が聞かせて下さったのだ。彼女のヴォーカルはハッキリ言ってあまり印象に残らなかったが、バックの演奏、特にドラムから白煙を上げそうな(?)勢いで強烈にスイングするケニー・クラークのブラッシュに完全KOされ、そのレコードがめちゃくちゃ欲しくなった。
 しかし、値札を見ると何と32,000円である。まぁレコ屋の壁を飾るぐらいやから安くはないとは思っていたが、ブルーノートやプレスティッジならまだしも、数千円がほとんどのヴォーカル物でウン万円となるとさすがに腰が引けてしまう。私は “やっぱりヨーロッパ盤は高すぎて手ぇ出ぇへんわ...(>_<)” と思いながら後ろ髪をひかれる思いでお店を出た。
 その後、この盤のことは高嶺の花とすっかり諦めていたのだが、あれから15年以上たった先月のこと、たまたまディスクユニオンの検索でこの盤を見つけたので値段を確認してみると、両面スレ多めでチリノイズありにもかかわらず21,600円だという。 “やっぱりハナシにならんな...” と思いながら興味本位に他のサイトでも検索してみると、何とDiscogsに €25で出ているではないか! しかも商品説明には “Plays nice VG+” とある。日本で何万円もする盤が送料込みでも3,000円台で買えるなんてホンマかいな??? 私は変な再発盤をつかまされるのだけは絶対に嫌だったので、念のためセラーにメールしてレーベルの写真を送ってもらったところ青銀レーベルに内ミゾありで、どこをどう見ても本物だ。私は小躍りしながら “注文する” をクリックした。
 届いた盤は nice VG+ どころかピッカピカの NM盤。ほとんどノイズなしでケニー・クラークのブラッシュが思う存分堪能できるのがめっちゃ嬉しい(^o^)丿  手持ちのCDと聴き比べてみても音の厚みが段違いで、改めてオリジナル盤の凄さを再認識させられた。特に強烈だったのは「チェロキー」と「アイ・ゲット・ア・キック・アウト・オブ・ユー」における超高速ブラッシュ・ワークで、そのめくるめくようなスピード感は圧巻の一言に尽きる。又、「アイム・ゴナ・シット・ライト・ダウン・アンド・ライト・マイセルフ・ア・レター」での盤石と言えるリズム・キープも流石と言う他ない。この人やっぱり名手やわ(≧▽≦)
 ケニー・クラークの名演の陰に隠れがちだが、歌伴に徹するピム・ヤコブス・トリオのプレイも素晴らしい。特に「枯葉」や「プア・バタフライ」におけるルウト・ヤコブスの闊達なベースはこのアルバムの聴きどころだと思う。ツボを心得たピム・ヤコブスのピアノも軽快そのもので、ややベタつく感のあるリタのヴォーカルも強烈にスイングするバックの演奏のおかげで気持ち良く聴けるのだ。
 ジャズはスイング!を明快に物語るこのアルバムを15年越しで、しかも安く手に入れることが出来てめっちゃ嬉しい。ジャズに限らずロックや昭和歌謡でもまだ手に入れていない垂涎盤が何枚かあるので、これからは一枚一枚、一撃必殺の気合いで獲りにいくとしよう。

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