shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

チエミのスタンダード・アルバム / 江利チエミ

2017-08-26 | Jazz Vocal
 多くのレコード・コレクターがやっているように、私もWANT LIST なるものを作っている。ビートルズ関係の盤が多いが、もちろん昭和歌謡やジャズのアーティストもリストアップしており、過去にレコ屋やネットで見かけたのに買いそびれてしまって今ではどこを探しても売ってない盤だとか、オークションで何度も獲り損ねて未だに入手できていない盤だとかがネットオークションに出品されたら絶対に逃さないように寸暇を惜しんでチェックしている。その甲斐あってか前々から欲しかった昭和歌謡歌手のレコードを最近何枚か手に入れることが出来たので、今日はそんな中から江利チエミの「チエミのスタンダード・アルバム」(LKF-1025)を取り上げよう。
 このレコードは1959年にリリースされた10インチ盤で、A面は東京キューバン・ボーイズをバックにラテン・ナンバーを4曲、B面は原信夫とシャープス&フラッツをバックにジャズのスタンダード・ナンバーを4曲歌っている。楽譜をあしらったオレンジ色の背景と彼女の白いドレスのコントラストが映えるジャケット・デザインも素晴らしい。
 A①の「ベサメ・ムーチョ」はトリオ・ロス・パンチョスやアート・ペッパーのようなスロー/ミディアム・テンポのアレンジが主流だが、私が一番好きなカヴァーはビートルズのスター・クラブ・ライヴに入っている疾走系ロックンロール・ヴァージョン(←映画「レット・イット・ビー」でポールが朗々と歌い上げるヴァージョンは正直言って苦手です...)。ここで聴けるチエミ・ヴァージョンは前半部分こそ切々と歌っているが2分を過ぎたところで一気にギアを上げてペースアップ、速射砲のようなスペイン語で一気呵成に突っ走るコモエスタな展開がク~ッ、タマラン! 更に2分35秒の “which means!” で英語に切り替え、“ベッサメ ベッサメ ベッサメ ムゥ~チョ~♪” とたたみかける “ベッサメ三段攻撃” の凄まじい吸引力... (≧▽≦) ここだけでメシ3杯は喰えそうだ。とにかく初期ビートルズ・ヴァージョンの次いで私が好きなベッサメ・カヴァーが他ならぬこのチエミ・ヴァージョンなのだ。
江利チエミ Chiemi Eri - ベサメ・ムーチョ Besame Mucho


 このアルバムでは途中でテンポを変えて曲にメリハリをつけるという彼女お得意の手法が多用されており、A④の「タブー」でも2分を過ぎたところでスローな前半部分から一転して高速シャバダバ・スキャットに突入、さすがは “和製エラ・フィッツジェラルド” の異名を取るだけあって縦横無尽にメロディーを操る歌唱は凄いの一言! 彼女の塩辛い声を活かした見事な歌いっぷりは何度聴いてもスリリングだ。又、B②「ザ・マン・アイ・ラヴ」でも2分08秒から漂白されたハンプトン・ホーズみたいな(笑)中村八大のスインギーなピアノ・ソロ(←バックのドラムの叩き方がもろにスタン・リーヴィーしててクソワロタ...)が炸裂し一気にヒートアップ、ノリノリの演奏をバックに変幻自在のヴォーカルで聴く者を一気にチエミ・ワールドへと引き込む展開がめちゃくちゃカッコ良い(^.^)  まさに彼女のジャズ・シンガーとしての魅力が堪能できる1曲だ。
 B③の「ラヴァー・カム・バック・トゥ・ミー」は1955年にSPでリリースしたものとは違うヴァージョンで、曲の後半部で唐突に “三日月ほのかにかすむ夜~♪” と日本語に切り替えるSPヴァージョンに対して全編英語で歌い切ったこちらのヴァージョンの方が断然カッコいい(^o^)丿 日本人が歌う「ラバカン」としては美空ひばりがナット・キング・コール・トリビュートLPでカヴァーしたヴァージョンと双璧を成す名唱だと思う。
 B④の「スワニー」も彼女は複数回レコーディングしており、1回目がこのアルバムの半年前に出たSPヴァージョン、2回目がこのアルバムのヴァージョンで、3回目が1963年にステレオ・レコーディングされたヴァージョンなのだが、ステレオ版は “I've been away from you a long time~♪” の前半部分をバッサリとカットしていきなり“Swanee, how I love you, how I love you~♪” で始まるという奇抜なアレンジに違和感を覚えるし、ステレオ感を出したかったのかバックの演奏に過剰なエコーがかかっており彼女の歌声だけが浮いてしまっているので私的にはNG(>_<)  SPヴァージョンとアルバム・ヴァージョンはほぼ同時期の録音ということもあってかアレンジがほとんど同じだなのだが、より伸びやかで表現力豊かな歌声が楽しめるという点でアルバム・ヴァージョンに軍配を上げたい。
 ジャズ・シンガーとして取り上げたスタンダード・ナンバーの数々でスキャットを交えながらスイングする “高速スキャットの女王” 江利チエミの魅力が存分に味わえるこのアルバム、復刻CDで持ってはいたが、やはりオリジナル盤の豊潤かつ濃厚な音で聴ける喜びは格別だ。やっぱり江利チエミはエエなぁ... (^o^)丿
Swanne江利チエミ

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