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shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Elvis '56 / Elvis Presley

2009-12-26 | Oldies (50's & 60's)
 今日は年末恒例の “阪神百貨店 中古廃盤レコードCDセール” に行ってきた。先週末に案内ハガキが届いた時はいまいちテンションが上がらず今回はパスするつもりだったのだが、一昨日 plinco さんからお誘いの電話を頂き “忘年会のノリでどうよ?” と言われ、すっかりその気になって参加を決めた。特に今 “コレが欲しいっ!!!” という盤は無いが、行けば行ったで何か面白い盤に巡り合えるかもしれないし、何よりも会場を出た後 plinco さんや 901 さんと茶をシバキながらそれぞれの獲物を肴にウダウダやるのが最高に楽しい。
 頑張って早起きして大阪に向かう。最近はレコード・CD・DVD の99%をネットで買っており、レコ屋巡りも年に2・3回というテイタラクなのでちょっと歩くだけで息が上がってしまう。毎週大阪京都を歩き回っても平気だった数年前とはエライ違いだ。人間一旦ラクを覚えたらあきまへんな(>_<)
 苦手な人混みをかき分けフーフー言いながら午後1時に会場に到着すると予想通りの暖房地獄... いつも思うのだが冬になると何故どこの店もまるで親の仇でも取るようにガンガン暖房するのだろう?客は厚着をして外出してきてるわけだから、店内に入ると暑くてたまらない。店員は薄着でちょーどエエかもしれないが、こっちは脱いだ分厚い上着を抱えながら買い物しなくてはならず、鬱陶しくてたまらない。これまでも真冬に汗だくで買い物するハメに陥ったことが何度もあったので、今回はエサ箱に向かう前にセーターも脱いで準備万端だ(^.^)。
 どこから取り掛かろうかと会場を見渡してみて気付いたのは前回までとは違い、“ジャズ”、“ロック”、“ソウル”、“クラシック”、“J-Pops”、“演歌”という風に完全にジャンル別にコーナーが分かれていたこと。これまでは参加している店ごとに商品が並べられていたので不便で仕方がなかったのだが、今回はキッチリと棲み分けが出来ていて非常に見やすい。クラシックは当然問題外として、ソウルやJ-Popsにはあまり興味がないし、ジャズも欲しい盤は殆ど入手済みなので、今回は “ロック” と “演歌”(というか “歌謡曲” ですわ...)がメイン・ターゲットだ。まずは買いそびれているうちに廃盤になってしまってそれ以降滅多に見かけなくなってしまったジョージ・ハリスンの「ダーク・ホース」CD(2000年ヴァージョン)を1,470円でゲット、これでようやくジョージの公式盤 CD のコンプリート達成だ。そうこうしているうちに 901 さんから “こんなんあるでぇ~” と会場の一角の書籍コーナーにある「フェラーリ・サウンド DVD & CD BOX」を教えてもらい即決!定価880円のところを新品で330円だ。一言で言えばカーグラ TV の DVD 版みたいなモンだが、DVD-VIDEO では “激走する美しいエンジン音が堪能できる迫力の映像” が楽しめ、DVD-ROM には “パソコンで使えるフェラーリの高画質画像” を収録、更に CD にはフェラーリ各車種のエンジン・サウンドが入っており、私のようなティフォシには堪えられない。ドライヴの BGM には最高だろう(笑)。
 再び音楽コーナーに戻ってエサ箱を引っかき回してエルヴィス・プレスリーの「エルヴィス '56」DVD を発見、昔NHKで放送されたものを録画したビデオ・テープは持っているが、やはり DVD で欲しかったので迷わずゲット、1,800円也。エルヴィスの DVD と言えば映画にもなった「エルヴィス・オン・ステージ」や NBC の「'68 カムバック・スペシャル」が好きでよく取り出して見ているのだが、やはり彼の全盛期は1950年代。そんな彼の若き日々の映像がモノクロながら存分に楽しめるのがこの「エルヴィス '56」なのだ。腰を振りながら歌う彼のスタイルが全米の保守的な大人たちの間で物議を醸し、スティーヴ・アレン・ショーで無理やりタキシードを着せられ、腰も振らず爪先立ちもせず、ただ悲しそうな目で本物の犬に向って「ハウンド・ドッグ」を歌いかけるシーン(下に貼り付けた YouTube では2分50秒あたりから)なんか何度見ても笑えると同時にエルヴィスが気の毒で仕方がない。エド・サリヴァン・ショーでも腰から下は映してもらえなかったという。要はそういう時代だったということだろうが、そういった諸々の事情を含めて実に見事な構成のドキュメンタリー作品であり、エルヴィス・ファンだけでなく全ロック・ファン必見の DVD だと思う。

Elvis '56 Part 4
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Johnny Get Angry / Joanie Sommers

2009-08-28 | Oldies (50's & 60's)
 ジョニー・ソマーズというと私は長い間、高校時代にラジオのオールディーズ特集でエアチェックした「内気なジョニー(ジョニー・ゲット・アングリー)」しか知らず、シェリー・フェブレーやダイアン・リネィ、リトル・ペギー・マーチといった同時代の女性シンガーたちと同じ “美しき一発屋” だと思っていた。その後LP時代からCD時代へと切り替わり、レコード各社から様々なオールディーズ・コンピレーション盤が出た(特にテイチクとセンチュリー・レコードが多かった...)時もここぞとばかりに色々買ってはみたものの、どれもこれも似たり寄ったりの選曲で、ジョニー・ソマーズの場合も「すてきなメモリー」はおろか、「ワン・ボーイ」すら入っていないという悲惨な状況で、私はいつまでたっても “ジョニー・ソマーズ = 内気なジョニー” から抜け出せなかった。
 そんな私に新たな展開がやってきたのが今から約10年前のこと、ちょうどジャズ・ヴォーカルに目覚めた頃で、私はジュリー・ロンドン、ペギー・リー、ドリス・デイ、クリス・コナー、アニタ・オデイらを中心にオリジナル盤を集めており、もっともっと色んな女性シンガーも聴いてみたいと思いながら虎視眈々と中古レコード屋を廻っていた。そして関西一円のレコ屋を狩り尽くした私は長期休暇を利用して東京・横浜まで足を伸ばすことを考えた。わざわざ新幹線に乗って2泊3日でレコードを買いに行くというのは今から考えると滑稽に聞こえるかもしれないが、当時はまだパソコン導入前でイーベイもヤフオクも知らず、欲しいレコードを手に入れるには関東進出(笑)しかなかったのだ。私はレコ屋廻り以外は県外へ出ることすらなかったので、東京なんて右も左も分かるはずがない。そんな私の強い味方が “レコードマップ” という、日本全国のレコ屋が載っているガイドブックだった。ビニール・ジャンキー御用達ともいうべき“レコマ” 片手に颯爽と(?)東京へ乗り込んだ私は首都圏一円に散らばるディスク・ユニオンを始め、悪名高い JARO から今は無き trot-n-gallop ことヴィンテージ・マインまで、ありとあらゆる中古屋を廻ったのだが、中でも一番収穫のあったのが梅ヶ丘のノスタルジア・レコードというお店だった。
 そこはヴォーカル・ファンにとってはまさに聖地、パラダイスのような所で、関西のどこを探しても置いてなかったような希少盤や、見たことも聞いたこともないようなマイナー盤がゴロゴロしていた。そんな中、コーフン状態でエサ箱を漁っているとめちゃくちゃエエ雰囲気の女性ヴォーカルがかかった。温厚そうな店主の方に “今かかってるの誰ですか?” と聞くと “ジョニー・ソマーズですよ。” といわれビックリ。それは彼女がローリンド・アルメイダのギターとストリングス・アンサンブルをバックにボサノヴァを歌った「ソフトリー・ザ・ブラジリアン・サウンド」というアルバムで、笑い転げるような彼女の天真爛漫な歌い方がウキウキするようなボサノヴァ・サウンドと見事に合っていた。めちゃくちゃ気に入った私は彼女がジャズを歌った「ポジティヴリー・ザ・モスト」も一緒に購入、その翌日に行った川崎の TOPS というお店で「ジョニー・ゲット・アングリー」を格安でゲットし、結局その買い付けツアーで彼女のアルバム全8枚中ベストの内容を誇る3枚を入手することができたのだった(^o^)丿 
 帰阪してから彼女の CD も何枚か買ったが、一番嬉しかったのが「ジョニー・ゲット・アングリー」にアルバム未収録シングル音源を追加したこのお徳用CDで、彼女唯一の全米Top 10入りシングル①「ジョニー・ゲット・アングリー」(62年、7位)はもちろんのこと、チャート上の不成績が信じられないデビュー・シングル③「ワン・ボーイ」(60年、54位)や日本語ヴァージョンも出た⑦「すてきなメモリー」、ニール・セダカあたりが歌いそうな日本でのデビュー・シングル④「いとしのルビー」、映画「若さでブッ飛ばせ!」の中で歌った弾けるような⑭「恋のレッスン」etc、キャッチーな曲が一杯詰まっており、そのどれもが彼女のキュートな歌声の魅力を活かしたドリーミーなポップスで、まさにアメリカン・オールディーズの王道そのものだった。又、しっとりと聴かせる②「シーム・フロム・ア・サマー・プレイス(避暑地の出来事)」や可憐な歌声に萌えてしまうジャズ・スタンダード⑨「リトル・ガール・ブルー」もたまらない魅力を持っているし、ビッグ・バンドをバックにスインギーに歌う⑳「ティル・ゼア・ウォズ・ユー」(ビートルズのカヴァーで有名)なんか出色の出来だと思う。
 70年代後半にカムバックして以降も「ドリーム」、「タンジェリン」、「ア・ファイン・ロマンス」といったアルバムで相変わらず舌っ足らずで可愛い歌声を聴かせてくれたジョニー・ソマーズ。オールディーズ・ポップスからジャズ、ボサノヴァ、そしてペプシのCMソングまで何でも器用にこなす彼女は、決してチャート成績とかの記録云々で語るような存在ではなく、そのキュートな歌声で人々の記憶に残る庶民派アイドルなのだ。

内気なジョニー/ジョニー・ソマーズ

Then & Now / The Monkees

2009-08-27 | Oldies (50's & 60's)
 ロック/ポップスの世界では “ポップな” という形容詞は否定的なニュアンスを伴うことが多い。 “ポップになった” ということは “大衆に迎合して売れ線に走った” ということを意味し、硬派のファンはこの手の音楽を心底軽蔑し、蛇蝎の如く嫌ったものだ。70年代のベイ・シティ・ローラーズしかり、80年代の産業ロックしかりである。私なんか “ローラーズが好き!” というと “アホか、コイツは...” というような目で見られたものだし、エイジアやフォリナーを褒めると “ロックの何たるかが分かってない風俗ファン” のレッテルを貼られたものだった。私は他人にどう思われようと屁とも思わない性格なので、ポップで悪かったな、せいぜいピンフロでもイエスでも聴いてヨガっとれや!と思いながら肩で風を切って生きてきた(笑)のだが、そういう意味ではこのモンキーズなんかも風当たりが強いバンドの一つだろう。
 しかし彼らが軽んじられてきたもっと大きな理由としては、所詮はオーディションで集められた “人工的に作られたグループ” であるということと、最初の2枚のアルバムではヴォーカル以外はすべてスタジオ・ミュージシャン達が演奏していたということが後になってバレたことetc が挙げられるだろう。私はグループ結成の経緯をいちいち考えながら音楽を聴くような趣味はないし、ちゃんと本人達が歌ってるんなら立派なヴォーカル・グループとして楽しめば問題ないやんと思う。口パクがバレてグラミー賞を剥奪され、赤っ恥をかいたミリ・ヴァニリみたいに全部他人がやってたワケじゃあるまいし...(>_<) 私は昔から自分の感性を信じて好き嫌いだけで音楽を聴いてきたせいか、実際に聴いてみて音楽そのものが気に入れば別に誰が演奏していようが、音楽のスタイルがどうであろうが、全く気にならない。だからキング・クリムゾンも、フランス・ギャルも、青江三奈も、ウエス・モンゴメリーも、ドリス・デイも、ウクレレ・ジブリも全部好きなように、モンキーズも大好きなのだ。そんな彼らが “ザ・モンキーズ・ショー” の再放送をきっかけに起こったリバイバル・ブームに乗って1986年に出したベスト・アルバム(マイク・ネスミスを除く3人で再結成した新録3曲を含む)がこの「ゼン & ナウ」である。
 彼らのテレビ・シリーズの主題歌で 1st アルバムのオープニング・ナンバーでもある①「モンキーズのテーマ」はイントロなんかいかにもそれ風の作りだが、よくよく聴くと実に単調なメロディーの繰り返し。それに比べるとデビュー・シングル②「ラスト・トレイン・トゥ・クラークスビル(恋の終列車)」はギターにタンバリンが絡むイントロからキャッチーなコーラス・ハーモニー、終盤の “オ~ ノノンノォ~♪” に至るまで、まるで「ラバー・ソウル」のサウンドで「ハード・デイズ・ナイト」の雰囲気を再現してみました、というような計算され尽くした構成の、実によく出来たヒット・ポテンシャルの高い曲で、全米№1になったのも当然だろう。ファン・クラブの楽曲人気投票でこの曲が17位というのが信じられない... 一体どこを聴いとんのじゃ(>_<) ゴフィン=キング作の③「テイク・ア・ジャイアント・ステップ(希望を胸に)」は聴き易いポップンロールだが、妖しげな雰囲気を醸し出す間奏の不協和音の使い方なんかはストーンズの「ウィー・ラヴ・ユー」譲りか。
 2nd シングル④「アイム・ア・ビリーバー」はニール・ダイアモンドの作で、7週連続全米№1に居座り彼らにとって最大のヒットになったナンバーだが、私は去年この曲と「ペイパーバック・ライター」をマッシュ・アップした「ペイパーバック・ビリーバー」を聴いて以来、このイントロを聴くとどうしてもミッキー・ドレンツではなくポール・マッカートニーのヴォーカルが聞こえてくるような気がしてしまう(笑)。まぁあんまり道に外れた聴き方ばかりしてるとこうなってしまうのでお遊びは程々にしときましょう...(>_<)
 ⑤「ステッピン・ストーン」は単調なメロディーの繰り返しで、彼らにしては珍しくシャウト気味のヴォーカルを聴くことができる。④同様ニール・ダイアモンド作の 3rd シングル⑥「ア・リトル・ビット・オブ・ミー、ア・リトル・ビット・オブ・ユー(恋はちょっぴり)」は彼ららしいホノボノ・タイプのポップなナンバー。新録音の⑦「エニタイム、エニプレイス、エニウェア(いつも どこかで)」は何か無理して80's風の音作りをしているように聞こえるのだが、正直言って全然合ってないと思う。曲のメロディーもイマイチだ。それに比べて同じ新録でもシングル・カットされた⑧「ザット・ワズ・ゼン、ジス・イズ・ナウ(君がいて僕がいる)」はさすがにツボを押さえた作りになっており、80'sでありながらいかにも60'sというメロディーと雰囲気を持った⑥⑨⑩路線の曲。レトロな感じのバック・コーラスといい、間奏のシンプル極まりないギター・ソロといい、実によく出来たポップ・ソングだ。マドンナの「パパ・ドント・プリーチ」やバナナラマの「ヴィーナス」が支配していた当時の全米チャートで20位まで上がったのはある意味大健闘だと思う。
 ⑨「ザ・ガール・アイ・ニュー・サムウェア(どこかで知った娘)」は⑥のB面でありながらチャート39位まで上がった軽快なナンバーで、彼らの持ち味が上手く活かされていると思う。ゴフィン=キング作の⑩「プレザント・ヴァレー・サンデー」はウキウキワクワクするような曲想が楽しい1曲。この誰もが口ずさめるポップ感覚こそがモンキーズなのだ。⑪「ホワット・アム・アイ・ドゥーイング・ハンギン・ラウンド(恋の冒険)」は初期 S&G のテンポを上げてカントリー&ウエスタン風に仕上げてみましたといった趣の、彼らにとっては異色のナンバーだ。
 4週連続全米№1を記録した⑫「デイドリーム・ビリーバー」はモンキーズの、というよりもアメリカン・ポップス史上屈指の大名曲で、21世紀になった今聴いても “最高!!!” という言葉以外思いつかない完全無欠のエヴァーグリーン・ポップスだ。アン・マレーのカヴァー・ヴァージョンも超オススメ。どことなく懐かしい雰囲気の⑬「すてきなヴァレリ」は私の大好きな曲で、まるで日本のGSを想わせるような哀愁漂う演奏がたまらない。新録の⑭「キックス」は「ミナミの帝王・エンディング・テーマ」やサザンの「ビッグ・スター・ブルース」の元ネタになったポール・リヴィア & ザ・レイダースのカヴァーで、シャープでエッジの効いた音作りがエエ感じだ。洋楽邦楽を問わず最近の曲はどうも薄味で面白くない、小難しくって楽しくないとお嘆きの方はぜひ一度真っ白な心でモンキーズのシンプルでポップな世界を楽しんでみてはいかがだろうか?

The Monkees - Daydream Believer
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Boots / Nancy Sinatra

2009-08-22 | Oldies (50's & 60's)
 私の座右の銘に “女性ヴォーカル盤はジャケットで買え!” というのがある。もちろん中身の音楽を聴くために買うというは正論中の正論なのだが、ジャケットが魅力的であれば万が一中身がハズレでも救われるし、好ジャケ盤はたとえ聴かずとも見るだけで永久保存の価値があると思う。ジャズ・ヴォーカルを聴き始めた頃、ジュリー・ロンドンやティナ・ルイスはその魅惑のジャケット目当てにオリジナル盤を買い集めたものだったが、ポップ歌手ではこのナンシー・シナトラがジャケ買い候補の筆頭(笑)である。
 彼女はその名の示す通りあのフランク・シナトラの長女で、61年に父フランクが設立したリプリーズ・レーベルからレコード・デビュー。当時の音楽界の状況を反映してカワイコちゃんアイドル路線で売り出し、日本ではイントロの “ジョニボーイ、テイキッスロー... ♪” の悩ましい囁きがたまらない「レモンのキッス(ライク・アイ・ドゥー)」を始め、「イチゴの片想い(トゥナイト・ユー・ビロング・トゥ・ミー)」や「フルーツ・カラーのお月さま(アイ・シー・ザ・ムーン)」、「リンゴのためいき(シンク・オブ・ミー)」といったフルーツ路線の邦題もあって “フルーツ娘” として親しまれたが、本国アメリカではテディ・ベアーズの「会ったとたんに一目惚れ」(アメリカではこの曲のB面が「レモンのキッス」だった...)やコール・ポーターの「トゥルー・ラヴ」といった名曲のカヴァーをシングル・カットしたものの、まったくの鳴かず飛ばずで、チャートの100位にすら入らなかった。まさにナンシー不遇の時代である。そんな彼女に転機が訪れたのがプロデューサー、リー・ヘイゼルウッドとの出会いだった。彼はアストロノウツ一世一代の名曲名演「太陽の彼方」(例の “ノッテケ ノッテケ ノッテケ サーフィン♪” ってヤツです)の作者として有名で、ナンシーのキャラを “親の七光りカワイコちゃん歌手” から “攻撃的でセクシーな大人の女” へと変身させた。それが見事に当たり、フォーク・ロック調の⑧「ソー・ロング・ベイブ」が初のトップ100入り、続いてリリースされた⑤「にくい貴方(ジーズ・ブーツ・アー・メイド・フォー・ウォーキン)」が初の全米№1に輝く大ヒットを記録したのだ。とてもあの「レモンのキッス」でブリブリとカワイコぶってたアイドル歌手と同一人物とは思えないパンチの効いた歌い方がめちゃくちゃカッコ良いナンバーで、特に1分52秒で彼女が叫ぶ “ハッ!!!” なんかもうたまらんなぁ... (≧▽≦)  「ラバー・ソウル」の残り物のようなドデカいタンバリンの音といい、音が少しずつ下がっていく印象的なベース・ラインといい、妙に耳に残るバックの演奏がいかにもこの時代の音と言う感じで私はこのチープさ加減が大好きだ。このアルバム「ブーツ」はそんな彼女のファースト・アルバムで、先にシングル・カットされた2曲以外は大半が当時の人気バンドのカヴァー曲で占められている。
 ストーンズの①「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ」は当時世界的に流行していたボッサを巧みに取り入れたアレンジが秀逸で、続くビートルズの②「デイ・トリッパー」と共に彼女のロックンロール志向を如実に物語っている。その②ではアルマ・コーガンを不良化させたようなヴォーカルが面白い。「ブリリアント・ディスガイズ」なメロディーが清々しい③「アイ・ムーヴ・アラウンド」、タートルズがカヴァーしたディラン曲④「イット・エイント・ミー・ベイブ(悲しきベイブ)」の2曲はビリー・ストレンジのポップなアレンジが活きている。ウォーカー・ブラザーズの⑥「イン・マイ・ルーム(孤独の太陽)」とニッカ・ボッカーズ⑦「ライズ(いつわり)」は可もなく不可もなくといった感じだが、アルバム全体を⑤のカラーで統一しようという意図はよくわかる。⑨「フラワーズ・オン・ザ・ウォール」は③④同様、ビリー・ストレンジのカラーが強く出たキャッチーな曲。⑤の使い回しのような例の音が少しずつ下がっていくベース・ラインの大盤振る舞いがめっちゃ笑えるなぁ(^.^) アルバムのラストは再びビートルズのカヴァーで⑪「ラン・フォー・ユア・ライフ」なのだが、この曲の歌詞の内容から言っても女性シンガーによるカヴァーはかなりレア。歌詞の girl を boy に変え、I’d rather see you dead, little boy, than to be with another girl(アナタが別の女といるのを見るくらいなら、死んでもらった方がマシよ)とか、Catch you with another girl, that’s the end... you hear me?(浮気の現場を押さえたら、ただで済むと思わないでね、わかった?)とドスの効いた低い声で凄むナンシー姐さんにはクラクラする。この⑪は⑤と並ぶ私の愛聴曲で、 “名門シナトラ一家の不良娘” の面目躍如たる1曲だと思う。
 最初に書いたように彼女のアルバムはフェロモン度数の高いジャケットが多くてどれか1枚、と言われると悩んでしまうが、内容で言えば文句なしにこのデビュー・アルバムを推したい。

Nancy Sinatra - These Boots Are Made For Walking (1966)


RUN FOR YOUR LIFE / Nancy Sinatra (Music Only)

Elvis In Person at the International Hotel

2009-08-16 | Oldies (50's & 60's)
 毎年お盆の時期になるとテレビでは終戦記念日ということで第2次大戦がどーのこーのとか、首相が靖国参拝をするとかせんとか、相変わらずな話題がよく取り上げられるが、私は日本の歴史にも政治にも何の関心もないのでハッキリ言ってどーでもいい。お盆を迎えるにあたって私の頭に浮かぶのはキング・オブ・ロックンロールこと、エルヴィス・プレスリーなのだ。
 今日8月16日はエルヴィスの命日である。彼が42才の若さで亡くなってかれこれ32年の月日が流れたわけだが、私がまだ人並みにテレビやラジオを見たり聞いたりしていた1980年代には、8月半ばを迎えるとFMでプレスリー特集が組まれたりBSで彼の映画が放映されたりで、根が単純な私はいつの間にか “お盆=プレスリー” という刷り込みがなされていった。ちょうど土用の丑の日と聞くとウナギを食べたくなるようなものかもしれない。
 私は当初エルヴィスに関して “50年代のパワフルなロックンロールの数々は凄かったが60年代に入ると毒にも薬にもならん映画出演にうつつをぬかして失速していった人” という認識を持っていた。実際、56~57年にかけては「ハートブレイク・ホテル」、「ハウンド・ドッグ」、「冷たくしないで」、「ラヴ・ミー・テンダー」、「オール・シュック・アップ」、「監獄ロック」と、まさに怒涛のような名曲名演ラッシュだったものが、それ以降の楽曲レベルのパワーダウンは否めず、真の名曲名演と呼べるのは「イッツ・ナウ・オア・ネヴァー」や「好きにならずにいられない」ぐらいではないだろうか?個人的にはポールのカンボジア難民救済コンサートでロバート・プラントがカヴァーしていた「リトル・シスター」(61年)なんかはかなりの名曲だと思うのだが、それすらチャートでは5位になるのがやっとだった。だから “ロッカーとしてのエルヴィスは50年代で終わった” と思っていたのだ。
 そんな私の目からウロコを落としたのは「エルヴィス・オン・ステージ」(原題:Elvis - That’s The Way It Is)というコンサート・フィルムだった。そこで見たのは白いジャンプ・スーツに身を包み、派手なアクションでロックンロールからゴスペル・ブルース、ロッカ・バラッドに至るまで、縦横無尽に歌いまくるエルヴィスの雄姿だった。確かにそこで聴けるのは相も変わらずの「ハウンド・ドッグ」であり「ハートブレイク・ホテル」である。しかしそれがどーしたソーホワット、これがオレの音楽なんだという強い説得力がウムを言わせず堂々と迫ってくるのである。その熱気、勢いにはもうひれ伏すしかない。大きな衝撃を受けた私はすぐにCDカタログ(当時はまだCDが普及し始めたばかりでレコ屋に置いてある分厚いカタログだけが頼りだった...)を調べ、ラスベガス・インターナショナル・ホテルでのライブ盤が Vol. 1 から Vol. 3 まで出ていることを突き止めた。曲目を見ると私の好きな曲が Vol. 3 に集中していたので早速購入。それがこの「エルヴィス・イン・パーソン(邦題はエルヴィス・オン・ステージ Vol. 3)」である。尚、後でわかったことだが3枚ともこの映画とは違うライブ音源で、Vol. 1 は70年8月の、Vol. 2 は70年2月の、そしてVol. 3 は69年7月のラスベガス公演のものだった。
 オリジナルのカール・パーキンス盤よりもエルヴィス盤のインパクトの方が強烈だった①「ブルー・スウェード・シューズ」は彼の十八番で、ここでも9年ぶりのライブ・パフォーマンスとは思えないような素晴らしい歌声を聴かせてくれる。1分40秒で炸裂する「ベイベッ!!!」は言葉を失うカッコ良さだ。②「ジョニー・B・グッド」ではさらにテンポを上げて疾走感溢れるロックンロールを炸裂させる。このプリミティヴなパワー、この凄まじいまでのエネルギーの奔流は “過去の人” どころか現役感バリバリだ。③「オール・シュック・アップ」はオリジナルではミディアム・テンポだったものを思いっ切り高速化、12年後の再演でただでさえ素晴らしかったオリジナルを凌駕してしまうというとんでもない1曲だ。
 スローな④「今夜はひとりかい」で一旦クール・ダウンした後、火の出るようなシャウトから始まる⑤「ハウンド・ドッグ」で再加速、初レコーディングから13年経ってなおこの破壊力だ。彼こそまさにロックンロールを歌うために生まれてきた男なのだと改めて実感させられた。⑥「愛さずにはいられない」、このレイ・チャールズ色の濃いナンバーをラクラクと自分の色に染め上げてしまうエルヴィスのヴォーカリストとしての懐の深さには脱帽だ。⑦「マイ・ベイブ」でもソウルフルなヴォーカルを披露し、キング健在を満天下に知らしめる。⑧「ミステリー・トレイン~タイガー・マン」のメドレーはメジャー・デビュー前のサン・レコード時代を彷彿とさせるようなカントリー調のロカビリーだ。この手の曲を歌わせたらエルヴィスの右に出るものはいないだろう。
 箸休め的なバラッド⑨「ワーズ」に続く⑩「イン・ザ・ゲットー」は、シカゴのゲットーに生まれた少年が貧困から犯罪に走りやがて逃げ疲れて自殺するまでの短い生涯を歌った歌詞が感動的で、エルヴィスの後半の盛り上げ方も圧巻だ。この曲は69年にエルヴィス久々の大ヒット(全米3位)を記録した “キング・エルヴィス・イズ・バック” 的なナンバーで、ちょうどこのライブが行われた7月時点では最新のヒットだったせいか、拍手も一段と大きい。
 “発売されたばかりの新曲です。気に入っていただければいいのですが...” というMCから始まる⑪「サスピシャス・マインド」はこのライブが行われた3ヶ月後にエルヴィスにとって8年ぶりの、そして最後の全米№1ヒットになるのだが、ここでは⑩で完全復活を遂げたエルヴィスが約7分にわたる熱唱を聴かせてくれる。⑩⑪と客席の興奮がピークに達したところでラストの⑫「好きにならずにいられない」、エルヴィス本人のスタジオ・テイクも含めてこの曲の様々なヴァージョンを聴いてきたが、誰が何と言おうとダントツに素晴しいヴァージョンがコレだ。映画では確か曲のエンディングで客席が映るのだが、ステージ上で両手を大きく広げて歌うエルヴィスに対する万雷の拍手喝采、スタンディング・オべージョンの嵐が今でも瞼の裏に焼きついている。それにしても何と感動的な歌声だろう。エルヴィスがエンタテイナーとして優れていただけでなく、素晴らしい声質、底知れない声量、そして抜群の歌唱力に恵まれた天性のヴォーカリストであったことがよくわかる。 
 エルヴィスはこの後も「アロハ・フロム・ハワイ・ヴィア・サテライト」の制作etc 順調に活動していくのだが、カムバックの一つのキッカケになったのがこのアルバムであり、かつての私のように50年代のエルヴィスしか知らない人に超オススメの逸品だ。

Elvis Presley - I can't help falling in love with you - live 1970


Elvis Presley - Suspicious Minds
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エンド・オブ・ザ・ワールド / スキーター・デイヴィス

2009-08-14 | Oldies (50's & 60's)
 曲のタイトルというのはいわば顔のようなモノである。今と違い情報が限られていた60年代において、特に洋楽ポップスの邦題はその曲のイメージを決定づける重要なな要素だった。テディ・ベアーズの「To Know Him Is To Love Him → 会ったとたんに一目ぼれ」やバリー・マンの「Who Put The Bomp? → シビレさせたのは誰?」のような名訳も多かったが、その一方でミスリーディング、つまり曲の内容を誤解させるような、いわゆる “誤訳” もあった。その最たるものがこのスキーター・デイヴィスの「エンド・オブ・ザ・ワールド」で、何をトチ狂ったのか「この世の果てまで」とやってしまったがために、何も知らない純真無垢な人達が “永遠の愛を誓う歌” だと誤解し、あろうことか結婚式のBGMに使われたりしているらしい。曲調だけを考えれば確かに心を洗われるような屈指の名バラッドなのだが、歌詞はといえば “なぜ太陽は今も輝き、海辺には波が押し寄せ、小鳥たちは今もさえずっているの?もう世界が終ったのを知らないのかしら?私があなたの愛を失った時に終わったというのに...” という暗~い内容なのだ。しかも単なる失恋ソングではなく、元々は作詞者のシルヴィア・ディーが父親を亡くした悲しみを綴ったもので、そのせいか愛する者を失った深い悲しみ、絶望感が行間から滲み出ている。つまり “愛する者の死” についての歌であって、欧米では葬儀の際に流されているという。結婚式で流すなど不謹慎この上ない。尚、スキーター・デイヴィスはソロ・デビューの数年前にデュオの相棒だった親友を自動車事故で亡くしており、彼女はこの曲のレコーディングに際し、亡き友への想いを込めて歌ったとのこと。まさに名曲の陰に人生ありである。それにしてもこのメロディー、シンプルなのに聴けば聴くほど心に染みわたってきてジーンとなってしまう。この曲のカヴァー私的Top 3はジュリー・ロンドン、カーペンターズ、そして竹内まりや姐さんなのだが、カレンとまりや姐さんには毎回のように登場願っているし(笑)皆さんよ~くご存知と思うので、今回はあえてこの日米トップ・女性シンガー2人以外で5つのヴァージョンをご紹介:

①Skeeter Davis
 ポップ・カントリー・シンガー、スキーター・デイヴィス一世一代の名唱。チェット・アトキンスのプロデュースでナッシュビルの一流ミュージシャンたちがバックアップしている。彼女の歌声は素朴そのもので、一人二重唱も効果抜群だ。特に語りの部分は胸を締め付けられるような説得力に溢れている。
Skeeter Davis - The End Of The World (1963)


②Julie London
 以前タバコのCMで流れていたジュリー・ロンドンのこのヴァージョンは私の大のお気に入り。セクシーな魅力全開のハスキー・ヴォイスは特にムーディーなスロー・バラッドで威力を発揮するが、そんな彼女の持ち味と曲想とがピッタリ合って心に染みる名唱になっていると思う。
The End of the World -Julie London-


③Herman's Hermits
 この曲の男性ヴォーカル・ヴァージョンは非常にレアで、私はディオン、ジョン・メレンキャンプ、そしてこのハーミッツの3つしか知らない。下手なアレンジを受け付けない完璧な曲なので、ピーター・ヌーンもしっとりと歌い込んでいる。
Herman's Hermits - End Of The World


④Twinkle
 夢シャン・カヴァーを漁っていて出会ったイギリス人ポップ歌手トゥインクル。チャート上の成績はイマイチだったが、サンディー・ショウらと共にモッズのアイドル的存在だったらしい。その素人っぽい歌い方は “イギリスの浅田美代子” みたいな感じで私は結構気に入っている。それにしても目がイッちゃってる写真が多いのは何故?
End of the World - Twinkle


⑤Agnetha Faltskog
 元アバのアグネッタが劇的なカムバックを果たしたアルバム「マイ・カラリング・ブック」に入っていたのがコレ。そうそう、この声、懐かしいなぁ...(^.^) まるで「チキチータ」あたりとメドレーでつなげれそうだ。アバ・ファンにはたまらないあの伸びやかな歌声は今も健在で、やはり歌とは最終的に声の魅力に尽きるということを改めて実感させられた。
Agnetha Faltskog (ABBA) : The End of the World (2004)
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Singles Collection / The Chiffons

2009-08-13 | Oldies (50's & 60's)
 ローリー・レーベルは60年代に数々のドゥー・ワップやガール・グループ・クラシックスの名曲を世に送り出した名門である。そんな中でドゥー・ワップの最高峰ディオン&ザ・ベルモンツと並んで同レーベルを支えたのがこのシフォンズだった。シフォンズというと “例の「マイ・スウィート・ロード」の元ネタとなった「ヒーズ・ソー・ファイン」を歌ってたグループ” という認識が一般的でそれ以上のことはあまり知らないという音楽ファンも多いかもしれないが、実にもったいない話だと思う。スプリームズやロネッツといった一部の例外を除けば、一発屋で消えていった多くのガール・グループの中で10曲近いヒットを放ったシフォンズは黒人ガール・ポップ・グループの代表格なのだ。
 彼女たちの魅力は何と言ってもそのポップ感覚溢れるコーラス・ワークとそれを存分に活かしたキャッチーな楽曲群にある。私の知る限りでは1曲中に占めるコーラスの割合は全ガール・グループ中ダントツではないだろうか?もちろんコーラスが売りというレーベル・カラーもあるだろうし、プロデュースがトーケンズ(「ライオンはねている」で有名なコーラス・グループ)というのもあるだろう。とにかくシフォンズの歌声にはワクワクさせてくれる理屈抜きの楽しさが溢れており、まさに “ガール・グループの鏡” と言える存在だった。
 私が初めて聴いたシフォンズは多くの人と同じく「マイ・スウィート・ロード」つながりで③「ヒーズ・ソー・ファイン」だった。その時は “確かによぉ似とるなぁ...” と2つの曲の類似性にばかり関心が行ってしまって曲そのものを純粋に楽しむことが出来なかった。こーなってくると一種の弊害である。今では “ドゥー ラン ドゥー ラン ドゥラン~♪” という軽快なコーラス・ハーモニーを目一杯楽しんでいる。
 次にシフォンズを耳にしたのはFMのオールディーズ特集か何かの番組で①「ワン・ファイン・デイ」を聴いたのだが、この曲のインパクトは絶大でめちゃくちゃ気に入ってしまった。何と言ってもイントロの躍動感あふれるピアノを聴いただけでこれから素晴らしい音楽が始まる雰囲気が醸し出される。そして実際、キャロル・キングが弾いてるこのピアノに先導されたシフォンズの溌剌としたコーラス・ハーモニー“シュビドゥビドゥビ ドゥビドゥワッワァ~♪”がウキウキした気分を盛り上げる。お約束のハンド・クラッピングも効果抜群だ。ジェリー・ゴフィン=キャロル・キングが書いたこの曲は全米5位にまで上がるヒットを記録、カーペンターズが名盤「ナウ&ゼン」でカヴァーしたヴァージョンも忘れ難い超愛聴曲だ。
 又、ちょうどその頃買ったガール・グループのオムニバス盤にたまたま⑪「スウィート・トーキング・ガイ」が入っており、その見事なコーラス・ハーモニーの波状攻撃にも完全KOされてしまった。リード・ヴォーカルとバック・コーラスの絶妙なコール&レスポンスはまさに円熟の境地といえる素晴らしいもので、特に2分6秒からの“スウィ スウィ スウィー トーキン ガァ~イ♪” とたたみかけるようなコーラスが耳に焼き付いて離れないキラー・チューンだ。これはもう絶対にシフォンズ単独のCDであのコーラス・ハーモニーを思う存分聴きたい!と思い、早速買ってきたのがこの「シフォンズ・シングル・コレクション」である。
 このベスト盤、全21曲 約50分に渡って目も眩むようなコーラス・ハーモニーの大展覧会というか、万華鏡のような楽しさ溢れるポップ・ワールドが展開される。4週連続全米№1となった③に続く 2nd シングルの②「ラッキー・ミー」は作者が③と同じロナルド・マックということで “シャグラン シャグラングラン...” というコーラスで始まるところとか曲の作りもそっくりだ。まぁ2匹目のドジョウ狙いがミエミエだが、この手のポップスが大好きな私としては大歓迎。必殺のメロディーに必殺のコーラス・ワーク... これこそオールディーズ・ポップスの王道なのだ。ジェフ・バリー=エリー・グリニッチ作の⑤「アイ・ハヴ・ア・ボーイフレンド」は “バーンシュバン バーンシュバン♪” というコーラスが耳について離れない胸キュン・ソング。わかってはいてもハマッてしまう、絵に描いたようなブリル・ビルディング系ポップスだ。
 思わず口ずさんでしまいそうな楽しいコーラスやハンド・クラッピングを多用した④「ラヴ・ソー・ファイン」や⑥「トゥナイト・アイ・メット・アン・エンジェル」はシフォンズの魅力全開のポップ・チューンだが、⑦「セイラー・ボーイ」や⑧「ストレンジ・フィーリング」あたりは少しこじんまりとまとまりすぎかもしれない。⑨「ノーバディ・ノウズ」は曲自体は単調だが “ウォウ ウォウ ウォウ ウォウ ウォウ ウォウォウ~♪” という重厚なコーラスと要所要所を引き締めるスプリングスティーンの「ブリリアント・ディスガイズ」なメロディーが耳に残る。⑫「アウト・オブ・ジス・ワールド」はメロディー展開といい、コーラス・ワークといい、バックの音作りといい、何から何まで⑪にそっくりだが、エエもんはエエんで何か2倍得したような気分だ。
 ⑬「ストップ・ルック・アンド・リッスン」ではブリル・ビルディング系ポップスにスプリームズを意識したモータウン・サウンドのエッセンスを塗して往年の溌剌としたムードが復活、シフォンズ最後のヒット曲(66年)である。それ以降は完全に失速してしまったようで、エンジェルズのカヴァー⑭「マイ・ボーイフレンズ・バック」はシフォンズならではの個性に乏しいし、「マイ・スウィート・ロード」の逆カヴァーも話題性は十分ながら肝心の音楽(特にバックのサウンド・アレンジ)はトホホな出来だった。まぁこのあたりの凋落ぶりは彼女らに限ったことではなく、60年代前半に活躍したブリル・ビルディング系シンガー/グループはほぼ壊滅状態で、大輪の花を咲かせてパッと散る、それもまたポップスの宿命というものだろう。
 ⑳「ホエン・ザ・ボーイズ・ハッピー」はシフォンズの前身であるフォー・ペニーズ時代のナンバーで、ジェフ・バリー=エリー・グリニッチ作の楽しさ溢れるポップスだ。やっぱりガール・グループはこうでなくちゃね(^.^) とにかくこのシフォンズはコーラスの楽しさを教えてくれる、オールディーズ・ポップスには無くてはならない存在なのだ。

ONE FINE DAY - The Chiffons

The Honeys Capitol Collector's Series

2009-08-10 | Oldies (50's & 60's)
 ガール・グループはオールディーズの華である。彼女たちはそれまでのスタンダード・ナンバーを主体としていたマクガイア・シスターズやレノン・シスターズらとは違った、ドゥー・ワップやロックンロールのフィーリングを織り込んだ斬新なコーラス・スタイルで人気を集めた。実際、1961年頃から63年くらいまでの、いわゆるブリティッシュ・インヴェイジョン前夜におけるガール・グループたちの活躍は目覚ましいものがあった。私の場合、ロネッツやクリスタルズといったいわゆるフィレス系グループとの出会いでその楽しさ溢れるポップ・サウンドに目覚め、エンジェルズやシャングリラス、シフォンズらを聴いて完全にガール・グループ中毒(笑)になり、しまいにはヒット曲があろうがなかろうが関係なしに、とにかくその手のガール・グループ・サウンドでありさえすれば満足と、片っ端から聴き漁っていった。そんなガール・グループ・ジャンキー時代に出会ったグループの中でピカイチの存在がこのハニーズである。
 彼女らは日米ともにヒット・チャート上ではそれほど目立った成績を残してないが、そのサウンドはまさに “女声版ビーチ・ボーイズ” といった感じで、実際ブライアン・ウィルソンからソングライティングやプロデュースといったサポートを受けながらサーフィン・ソングを歌う “BB5の妹分” 的な存在だった。メンバーはマリリンとダイアンのローヴェル姉妹に従妹のジンジャーの3人で、マリリン(ジャケット真ん中の女性)は後にブライアン・ウィルソン夫人になる人だ。グループ名の “ハニーズ” はBB5のヒット曲「サーフィン・サファリ」の歌詞の中にも登場するサーファー用語で、 “サーファーの女の子たち” という意味らしい。そんな彼女らのキャピトル時代の音源をまとめたのがこの「ザ・ハニーズ・キャピトル・コレクターズ・シリーズ」である。
 まずはこのキュートなジャケット、サーフボードに頬杖ついて3人揃ってハイ、ポ~ズって感じが胸キュンだ(≧▽≦) で、よくよく見ると彼女らのバックに描かれた音符が蜂の柄というのも凝っててエエなぁ。構成としては①~⑫までが60年代の録音で、①②、⑤⑥、⑦④、⑪⑫がキャピトル時代の4枚のシングル両面、⑧⑨がワーナー・ブラザーズからのシングル両面、③⑩がキャピトル時代の未発表音源となっており、⑬以降は77年以降の録音である。
 “39313, Shoot The Curl, Take 7, lucky 7...” というブライアンらしき声に続いて始まる①「シュート・ザ・カール」は典型的なガール・グループ・サウンドで、“シューシュー、シュータ カール~♪” というコーラスが楽しいキャッチーなナンバー。②「サーフィン・ダウン・ザ・スワニー・リヴァー」はブライアンがフォスターの「スワニー河」に新しい歌詞を付けた、ハニーズのデビュー・シングル。絶妙なコーラス・ハーモニーといい、必殺のハンド・クラッピングといい、ウキウキするようなワクワク感に溢れた実に楽しい曲だ。③「レインドロップス」は “コーデッツの「ロリポップ」を裏返しにしたようなメロディーを「ダ・ドゥ・ロン・ロン」なスペクター・サウンドでキメてみました” というような、ガール・グループ・サウンドの魅力を凝縮したような曲で、こんな素晴らしいトラックをリリースしなかったなんて信じられない。④「フロム・ジミー・ウィズ・ティアーズ」はダジャレではないが地味な曲で、メロディーも単調だ。そのせいかすぐにはリリースされず、後になってシングルB面として日の目を見ることになる。
 ⑤「プレイ・フォー・サーフ」はハニーズの 2nd シングルで、ジャン&ディーンみたいなサーフィン・ミュージックをブライアン風ウォール・オブ・サウンドで表現した感じ。⑥「ハイド・ゴー・シーク」は初期BB5っぽい曲想のナンバーで、彼女らのヴォーカルもバックの分厚いサウンドに負けじと実にパワフルに響く。 “オリ オクセン フリフリフリ~♪” というコーラスが耳に残るキャッチーな曲だ。⑦「ザ・ワン・ユー・キャント・ハヴ」はハニーズの 3rd シングルで、多分彼女らの代表曲といえるナンバー。流れるようなメロディーに思いっ切りスペクター全開のサウンドが耳に心地良い(^o^)丿 ズンドコ・ドラムにタンバリンの多用、仕上げはお約束のハンドクラッピングとくればもう言うことなしのガール・グループ・クラシックだ。
 1964年にワーナーに移籍してリリースした⑧「ヒーズ・ア・ドール」は⑦に勝るとも劣らないワクワクドキドキ系のキャッチーなナンバーで、コーラス・アレンジとい、エコーのかけ方といい、カスタネットの波状攻撃といい、ブライアン流スペクター・サウンドの極めつけといえるだろう。ロネッツやクリスタルズ好きには涙ちょちょぎれるキラー・チューンだ。そんな名曲名演が何故ヒットしなかったのか... このシングルが発売された64年の4月というのはビートルズが全米チャートの1位から5位までを独占したB4旋風吹き荒れる真っ只中だったのだ。せめてあと1年、いや半年早くリリースされていれば大ヒット間違いなしだったと思うのだが...(>_<)
 ⑨「ザ・ラヴ・オブ・ア・ボーイ・アンド・ガール」はおセンチ系バラッドで、サウンド面も至ってシンプルな作りになっている。⑩「カム・トゥ・ミー」は68年の録音と言うことで①~⑦までとは全く違う傾向のサウンド、例えるならダイアナ・ロス&スプリームズを漂泊したような感じとでも言えばいいのか、とにかく時代が歪み始めたのを反映したような淡白な音作りだ。⑪「トゥナイト・ユー・ビロング・トゥ・ミー」は古いアメリカのポピュラー・ソングのカヴァーで、彼女らの見事なコーラス・ワークが思う存分堪能できる。エンディングの “トゥナイト!!!” がたまらない。同趣向の⑫「グッドナイト・マイ・ラヴ」はハニーズにとって60年代最後の録音で、アン・ルイスあたりが歌いそうな夢見るしっとり系のバラッドだ。
 ⑬~⑳までは先述のように70年代後半のハニーズ音源で、もはやガール・グループ・サウンド特有の楽しさはなく、時流を意識した普通のソフト・ロックという感じに変貌してしまっている。思えばシングル盤中心でメロディーを大切にする60年代が終わり、混沌とした70年代に入ってワクワク・ドキドキするような楽しいポップスが時代遅れになり、ガール・グループたちはその使命を終えたのである。

The Honeys - "He's A Doll"

サニー / ボビー・ヘブ

2009-08-09 | Oldies (50's & 60's)
 私はビートルズのような一部の例外を除けばアーティストよりも曲そのものに入れ込む傾向がある。だから好きな曲をどんどん集めているうちに自然とCDやLPが増えていって、そうこうしながら未知のアーティストと出会っていく。例えばこの「サニー」という曲、オリジナルは1966年のボビー・ヘブによる全米№2ヒットで、追いはぎに兄を殺されたヘブが悲嘆にくれ、神に祈る日々の中で浮かんだ旋律を歌にしたものだという。歌詞だけ見ると甘いラヴ・ソングのようだが、実はサニーという名を借りて神に語りかける一種のブルースであり、どこか物悲しさを感じさせるのはそのせいかもしれない。初めて聴いたのは多分ボニーMのヴァージョンだったと思うが、気が付いた時にはその不思議な哀愁を湛えたメロディーが心の中に刷り込まれていた。一説によるとカヴァー・ヴァージョンは軽く100を超えるというこの曲を本気で集め出したのはここ数年ぐらいのことで、まだ50そこそこしか集まっていないが、驚くべきことにジャズ、ロック、ソウル、ディスコ、GS、昭和歌謡からマヌーシュ・スウィングに至るまで、ありとあらゆるジャンルでカヴァーされているのだ。きっとこの旋律には歌手やミュージシャンを惹きつける特別な何かがあるのだろう。ということで、今日は超愛聴曲「サニー」大会です。

①Bobby Hebb
 黒人ということでコテコテのソウルフルなヴォーカルをイメージしていたが、聴いてみるとこれが意外なほどのあっさり味。淡々と歌うソフトロックという感じで、清涼感溢れるヴァイブが良い味を出している。素朴そのものの歌い方だが、さすがはオリジナルだけあって原点の光が輝いている。
Bobby Hebb "Sunny" (1966).


②Dusty Springfield
 私の大好きなダスティ・スプリングフィールドもこの曲をカヴァー。彼女のメランコリックな歌声、キメ細やかな表現力はこの曲の魅力を120%引き出しているし、バックのオケのジャジーなアレンジも絶妙で、ひいき目を抜きにしても同曲のベスト・ヴォーカル・ヴァージョンに認定したい素晴らしさだ。
Dusty Springfield - Sunny


③Oscar Peterson
 このサニーという曲は不思議とジャズ・ミュージシャンにも人気があって様々なカヴァーが出ているが、ウエス・モンゴメリーのものと並んで私が最も愛聴しているのがこのオスピー・ヴァージョン。コロコロ転がるようなピアノの音色でスインギーかつダイナミックに弾きまくるピーターソンの魅力が全開だ。
オスカー・ピーターソン


④平山三紀
 日本人シンガーのカヴァーとしては弘田三枝子が「ミコ・イン・ニューヨーク」で歌ったものが有名だが、隠れ名演として私のイチオシがミキティーのこのヴァージョン。彼女独特の投げやりな歌い方を上手く活かしたノリノリ・アレンジが絶品だ。エンディングの “ラララ!!!” なんかもうたまらんなぁ... (≧▽≦)
サニー


⑤Boney M
 1976年のボニーMによるディスコ・カヴァー・ヴァージョン。当時アメリカで全盛を誇っていた軽薄ディスコ・ミュージックを私は大嫌いだったのだが、何故かこのボニーMだけは好きだった。他の凡百ディスコ・アーティストとは激しく一線を画す選曲に彼らの音楽的センスが現われていたが、この「サニー」なんかその最たるものだろう。名曲はジャンルを超越するという絶好の見本だと思う。
Boney M. - Sunny (1977) HQ

風のささやき / ダスティ・スプリングフィールド

2009-07-27 | Oldies (50's & 60's)
 「風のささやき」という曲は元々スティーブ・マックイーン主演の映画「華麗なる賭け」の主題歌としてミシェル・ルグランが書き、ノエル・ハリソンが歌ったものがオリジナルとのことだが、映画を見ない私はまったく知るよしもなかった。そんな私が初めてこの曲を知ったのはその約30年後のこと(←遅っ!)、ダスティ・スプリングフィールドのベストCDに入っていた彼女のカヴァーを聴いて “めっちゃエエ曲や!” と感動し、それ以降この曲が入っていると必ず買ってしまう(←いつものパターンです...)ようになった。と言うことで今回は、選ばれし名曲だけが持つ風格に溢れたドラマチックな曲想が素晴らしいこの曲の愛聴ヴァージョンをご紹介:

①Dusty Springfield
 ダスティ・スプリングフィールドというと彼女最大のヒット曲「この胸のときめきを」を思い浮かべる人が多いと思うが、私はベイ・シティ・ローラーズの「二人だけのデート」から遡って彼女を知ったクチ(←結構多いと思うけどな...)である。で、「二人...」目当てに買ったベスト盤に入っていたこの曲にすっかりKOされてしまったというわけ。キメ細やかな女の情感を見事に表現した彼女のソウルフルなヴォーカルにグイグイ惹き込まれ、3分53秒がアッという間に過ぎ去っていく。
風のささやき(訳詞付) - Dusty Springfield


②ザ・ピーナッツ
 このブログでは毎度おなじみのザ・ピーナッツ。彼女らが私の超愛聴曲をレコーディングしていることが多いのは偶然ではなく、多分宮川先生の音楽の趣味が私と近いということだろう。伝説のさよなら公演ではなかにし礼氏が作った日本語詞で歌っていたが、初出にあたる1971年の「華麗なるフランシス・レイ・サウンド」に収録されたこのヴァージョンでは何と終始スキャットで歌い通しているのだ。当時の邦楽の状況を考えれば実に斬新かつ大胆な発想だ。透明感溢れるハーモニーを活かし切った宮川アレンジが素晴らしい。
華麗なるフランシス・レイ・サウンド


③Phil Woods
 私はジャズを聴き始めた頃、ジャズ・ミュージシャンがオーケストラと共演した、いわゆる “ウィズ・ストリングスもの” に対して偏見を持っていて、“あんな軟弱な音楽は年寄りが聴くもんや!” と決めつけ、バリバリのハードバップばかり聴いていきがっていた。それから数年後、ブヒバヒ吹きまくるパーカー派アルト・サックスの急先鋒であるフィル・ウッズがミシェル・ルグラン・オーケストラと共演したこのヴァージョンを聴いてそのアホな考え方を木っ端微塵に吹き飛ばされた。音楽はスタイルじゃない、歌心なんだということを痛感させてくれたこのレコードは私にとっては忘れられない大切な1枚なのだ。
風のささやき


④竹内まりや
 私が一番好きな日本人女性歌手、竹内まりやが2003年にリリースした全編オールディーズ・カヴァー・アルバム「ロングタイム・フェイヴァリッツ」に入っていたのがこのヴァージョン。まりや版「ナウ・アンド・ゼン」と言えるこの大傑作アルバムの中でも抜群の存在感を誇っていたこの曲、彼女の言葉を借りれば “イギリスの女性歌手の中で一番好きなダスティの足元にも及ばないことはわかっているものの、どうしても歌ってみたかった” とのこと。いやいやどうして、その艶のある歌声といい、あくまでも自然体で歌うスタイルといい、ダスティに迫る名唱ですよ、まりやさん!
風のささやき


⑤Connie Evingson
 コンテンポラリー女性ヴォーカリストの中で私の大のお気に入りがこのコニーちゃん。彼女の魅力は一にも二にもその “声” にある。ちょっと鼻にかかったようでいてシルクのように滑らかなその歌声だ。初めて彼女を聴いた時に、一瞬にして “あっ、この声だ!” と天啓のごとく好きになった。彼女の声に惚れ込んだのだ。理屈ではない。溢れんばかりの歌心も素晴らしい。そんな彼女がホット・クラブ・オブ・スウェーデンのジプシー・スウィングな演奏をバックにパリのエスプリ薫るこの曲を切々と歌うこのヴァージョン、哀愁舞い散る屈指の名演だと思う。
コニー・エヴィンソン
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タミー / デビー・レイノルズ

2009-07-24 | Oldies (50's & 60's)
 毎日色々な曲を聴いていると、その曲の出自が何となく想像出来るようになってくる。これはあの曲をベースにしてるなぁとか、ギターでジャムってて出来たような曲やなぁとか、これは無理やりくっつけてでっち上げたような感じやなぁとか、まぁ色々である。少し前に “J-Popsの世界には日本人好みの王道コード進行がある云々...” という話をネットで見た記憶があるが、最近の曲なんてまぁ大体そんなもんだろう。
 それに比べ昔の曲、特にオールディーズの楽曲には作曲したというか、あまり “考えた” ような形跡は見当たらない。例えばこの「タミー」という曲、まるで最初からそこにあったかのような、そんな錯覚に襲われるほど自然なメロディの洪水である。聴いているだけで心が洗われるような美しいメロディだ。さすがはshoppgirl姐さんご推薦の大名曲である。オリジナルのデビー・レイノルズを筆頭に、どのカヴァー・ヴァージョンも名唱なのだが、それもこれもこの「タミー」という曲の持つチカラのなせるワザなのだろう。

①Debby Reynolds
 ジーン・ケリーの「雨に唄えば」でブレイクした女優デビー・レイノルズが1957年の「タミーと独身者」の主題歌として歌ったのがこの曲で、プレスリーやポール・アンカを始めとする男性ヴォーカルの天下だった56年夏から58年冬までの2年半で唯一の女性歌手による全米№1ソング。思春期の淡い恋心を歌ったデビーの甘酸っぱい歌声にはオールディーズ・ポップスのエッセンスが詰まっている。特にストリングスのイントロに続いて滑り込んでくる彼女の “アイ ヒア ザ カァトゥンウッズ ウィスパリィ ナバァ~ヴ♪” は胸キュンものだ(≧▽≦)
Debbie Reynolds : Tammy


②Teddy Bears
 あのフィル・スペクターがハイスクール卒業後に結成した男女混成3人組グループが「会ったとたんに一目ぼれ」の全米№1で有名なこのテディ・ベアーズ。彼らがインペリアル・レーベルからリリースした唯一のアルバム「テディ・ベアーズ・シング!」でカヴァーしていたのがこのヴァージョンで、ヴォーカルのアネット・クラインバードの初々しい歌声、そしてそのひたむきな歌い方に好感が持てる。
テディ・ベアーズ タミー


③Joni James
 デビー・レイノルズの「タミー」のようにオリジナル・ヴァージョンが完璧と言っていいほど素晴らしいとカヴァーする方は辛い。ましてや同じソロ・女性ヴォーカルというフォーマットでは尚更だ。そんな中で健闘しているのが “アメリカの恋人” ジョニ・ジェイムス。自らの持ち味であるコケットリーな魅力全開で迫るジョニの愛くるしい歌声がたまらない。
Joni James - Tammy


④Beverley Sisters
 “お姉さま声” が主流の女性コーラス・グループ界において “唯一のキュート派コーラス” といえるのが、このベヴァリー・シスターズ。ヴォーカル通から“3人ペット・クラーク” と絶賛されるのも頷ける素晴らしさで、私は一聴してそのドリーミーなコーラス・ハーモニーにハマッてしまった(≧▽≦) デビー・レイノルズで聴き慣れたメロディが、まるで天上の音楽のように優雅に優しく私を包み込んでくれて、寝る前に聴くと心地良い眠りが約束される。夢見心地とはこのことだ。
ベヴァリー・シスターズ


⑤ザ・ピーナッツ
 ザ・ピーナッツ63年のアルバム「ピーナッツのポピュラー・スタンダード」に入っていた名唱で、④のベヴスといい、このザ・ピーナッツといい、この曲は美しいコーラス・ハーモニーで更に映えるように思う。そして当時の日本でこの曲をこれほど見事に歌いこなせるのはザ・ピーナッツをおいて他にはいなかった。宮川先生もその辺のところを十分承知されていたのか妙な小細工をせずに実に自然なアレンジで、ザ・ピーナッツの魅力を存分に引き出していると思う。
タミー
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ビキニスタイルのお嬢さん / ブライアン・ハイランド

2009-07-09 | Oldies (50's & 60's)
 “パッパッパッパッパ ラッパッパッパッパ...”というあまりにも有名な女性コーラスから始まるこの曲を初めて聴いたのはまだ高校生だった頃のこと、ケイシー・ケイサムのアメリカン・トップ40をベースにした湯川れい子さんのヒットチャート番組がラジオ関西でオンエアされていて、その中でジングルとしてこのコーラス部分が使われていたのだ。だから単純な私はまさかこれが曲の一部だとは思わず、“パッパッパッて... 面白いジングルやなぁ...(^.^)”と感心していた。だから後日別のラジオ番組のオールディーズ特集でブライアン・ハイランドのこの曲をフル・ヴァージョンで聞いた時は目からウロコ状態で、 “へぇ~、そういうことやったんか!” と妙に感心したものだった。 “初めてビキニの水着を着たので恥ずかしくて更衣室から出られない...” という歌詞から若い女の子のことを歌ったものだと思ってしまうが、実は作詞家のポール・ヴァンスが黄色い水玉模様のビキニを着てビーチで遊んでいた2才の自分の娘を見てこの歌詞を思いついたとのこと。因みに作曲はシェリー・フェブレーの「ジョニーエンジェル」を書いたリー・ポックリス。愉快な歌詞といい、キュートな曲調といい、甘~い歌声といい、もう絵に描いたような60'sオールディーズ・ポップスの名曲である。ということで今日は「ビキニスタイルのお嬢さん」大会でいきます!

①Brian Hyland
 50年代に一世を風靡したロカビリー・ブームに翳りが差し始めるのとちょうど入れ替わるように台頭してきたドリーミーな甘いポップスの先陣を切って1960年に全米№1に輝いたこの曲を歌っていたのは当時16歳のブライアン・ハイランド。まさにオールディーズ・クラシックスの定番と言っていい名曲名演だ。
Brian Hyland - Itsy Bitsy Teenie Weenie Yellow Polka Dot Bikini


②Connie Francis
 子供達の歌声を大胆にフィーチャーし、アネットと化したコニー・フランシスが歌うチャーミングなヴァージョン。カーペンターズの「シング」はこのスタイルを踏襲・発展させたものではないか。イントロが「可愛いベイビー」に傾きかけるも辛うじて踏みとどまるところがこれまた楽しい。
Connie Francis - Itsy Bitsy Teenie Weenie Yellow Polka Dot Bikini


③Lill-Babs
 スウェーデンの女性歌手リル・バブスが母国語でカヴァーしたレアなヴァージョン。スウェーデン語って何か発音がドイツ語に似ていて巻き舌が結構キツく聞こえることが多く、私の大好きなモニカ・ゼタールンドなんかもう、曲によっては聴いててこっちが叱られてるような錯覚に陥ってしまう(笑)
Lill-Babs - Itsy Bitsy Teenie Weenie Yellow Polka Dot Bikini


④Dalida
 “悲しき天使大会” にも登場したフレンチ美女、ダリダ(もう “ダリダって誰だ?” なんて言わないでね...)のヴァージョンも大好きで、特に “アン、ドゥ、トロワ”ってとこがフレンチしててエエなぁ(←何のこっちゃ!)
dalida-Itsy bitsy petit bikini


⑤Bombalurina
 90年の夏にイギリスで3週連続№1に輝いたボンバルリーナの大胆不敵なカヴァー・ヴァージョン。原曲のチャーミングなメロディーを活かしながらアップテンポのダンス・ナンバーに仕上げたところが勝因か。音楽は理屈抜きで楽しけりゃそれでエエのだ!さすがはイギリス、このハジけ方がタマランなぁ...
Bombalurina - Itsy Bitsy Teeny Weeny Yellow Polka Dot Bikini


【オマケ】こんなんもありますけど...(^o^)丿
タモリ3 23 テキヤスタイルのお兄さん・ダニー池田とパラゾールキング
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My Boyfriend's Back / The Angels

2009-06-22 | Oldies (50's & 60's)
 私はオールディーズ、とりわけガール・グループが大好きで、一頃なんか寝ても覚めてもガール・グループばかり聴いていた時期があり、周りから白い目で見られていたものだった(笑) ロネッツ、クリスタルズらのフィレス軍団、スプリームズやマーヴェレッツといったモータウン勢、シャングリラスやデキシー・カップスといったレッド・バード連合、シフォンズやジーンズらのローリー一派と、アメリカン・ポップスの明るくて楽しい “陽” の部分を最も分かりやすい形で提示してくれたのが彼女たちだった。時は1963年、ビートルズの全米上陸前夜である。そんな “ガール・グループ百花繚乱の時代” にひときわ輝く全米№1ヒットで歴史にその名を刻んだのがエンジェルズだった。
 彼女らは当初、40年代の白人女性コーラス・グループ直系のソフト&メロウなスタイルで活動しており、62年にカプリス・レーベルから1枚のアルバムを出し、そこからシングル・カットされた清純路線のバラッド「ティル」(愛の誓い)が全米14位まで上がるヒットを記録したものの、その後はジリ貧状態に陥り、リード・ヴォーカリストも交代、レコード会社もマーキュリーの子会社であるスマッシュに移籍する。この頃彼女らはフェルドマン=ゴールドスタイン=ゴッテラーというソングライター・トリオと出会い、「マイ・ボーイフレンズ・バック」を書いてもらう。このあたりの展開はスプリームズとホランド=ドジャー=ホランドとの関係にそっくりだ。彼らの所属していた音楽出版社はその曲をシュレルズに歌わせようとしたが彼らはそれをエンジェルズに廻し、スマッシュからの初シングルとしてこの曲をリリース、全米チャートでは75位→31位→10位→1位というとんでもないジャンプ・アップ(少しでも全米チャートを追っかけたことのある人ならこの数字がどんなに凄いことかおわかりですね...)で見事1位を獲得、3週に渡ってその座をキープした。
 同名タイトルのアルバムも、それまでの“古き良きアメリカ”を彷彿とさせるような洒落たコーラス・グループから60'sらしい元気印の典型的な“ガール・グループ・サウンド”へと変貌している。①「マイ・ボーイフレンズ・バック」は邦題が「あたしのボーイフレンド」で、活きのいいハンド・クラッピングを多用したキュートなコーラスがたまらない(≧▽≦) コール&レスポンスもばっちりキマッて完全無欠のガール・グループ・クラシックスの出来上がりだ。尚、この曲のカヴァーでは以前に紹介した「アメリカン・ドリームス」の中でステーシー・オリコが歌ったヴァージョンがダントツに素晴しいと思う。
 ②「サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム」(いつか王子様が)は泣く子も微笑むディズニーの名曲で、ジャズの世界ではスタンダード・ソングと化しているが、オールディーズ・ポップスの世界では結構レア。このエンジェルズのヴァージョンは彼女らのドリーミィーなコーラス・ワークが美しいディズニー・メロディーとバッチリ合っていて、この曲の隠れた名唱になっていると思う。私のようなディズニー好きのオールディーズ・ファンにはたまらない1曲だ。
 ①をアップテンポにしたような③「ハズ・エニイバディ・シーン・マイ・ボーイフレンド」やボビー・ヴィーのカヴァー⑤「ザ・ナイト・ハズ・ア・サウザンド・アイズ」(燃える瞳)ではエンジェルズお得意のキャピキャピ・コーラスが楽しめる。④「ティル」(愛の誓い)はカプリス時代の再録ヴァージョンで、先代ヴォーカリストとの違いを聴き比べるのも一興だ。⑦「ヒーズ・ソー・ファイン」(いかした彼氏)は言わずと知れたシフォンズの№1ヒットのカヴァーで、コーラス・アレンジもほぼ同じ。オリジナルと甲乙つけ難い名唱だ。
 ⑥「ホワイ・ドント・ザ・ボーイ・リーヴ・ミー・アローン」、⑨「ザ・ハーディ・ガーディ・マン」、⑪「ラヴ・ミー・ナウ」... これらのアップテンポな曲はそのどれもがはちきれんばかりの健康的なコーラス・ワークが全開で、頭の中を空っぽにして聴くに限る。⑩「ワールド・ウィズアウト・ラヴ」はレノン=マッカートニーが作り、ピーター&ゴードンが歌ったあの曲とは同名異曲。他の曲に比べるとかなり地味やね。⑫「ザ・ガイ・ウィズ・ザ・ブラック・アイ」は曲想からメロディー、コーラスに至るまで①にそっくりの曲で、ラストにこの曲を持ってきたのには何か意図があるのだろうか?まさかサージェント・ペパーズ的リプリーズの先駆け... なわけないか!(笑)
 ガール・グループの作品をアルバム単位でみた場合の完成度はフィレス・レーベルのロネッツ盤が史上最強だが、エンジェルズのこの「マイ・ボーイフレンズ・バック」はシフォンズのローリー諸作と共に、気楽に楽しめるガール・グループ・アルバムの最右翼に位置する好盤だと思う。

The Angels : My Boyfriend's Back

Le temps des fleurs / Mary Hopkin

2009-05-30 | Oldies (50's & 60's)
 ロシア民謡の愁いを帯びた旋律には何故か人の心を魅きつける不思議な力がある。ポーリュシカポーレ、ダーク・アイズetc、挙げていけばきりがない。みんな哀愁たっぷりでメロディーはあくまでも美しく、それでいでどこか物悲しい。暑い国で生まれた音楽が主にリズム主体なのに対し、ロシアや北欧といった寒い国の厳しい自然と風土から生まれた音楽は郷愁を誘う美しいメロディーを湛えていることが多いのだ。この「Those Were The Days」も「長い道」というロシアの古い曲にジーン・ラスキンというアメリカ人が詞を付けロンドンの方々のクラブで自作曲として歌っていたものをポール・マッカートニーがたまたま聴いて気に入り、 “絶対に売れる” アレンジを施してアップルからデビューさせる新人歌手メリー・ホプキンに歌わせたというもので、やはり心の琴線をビンビン震わせる、哀愁舞い散るキラー・チューンに仕上がっている。歌詞は “若かったあの頃はよかったなぁ...” と青春時代をノスタルジックに振り返るという内容で、邦題の「悲しき天使」は “お約束ともいえる「悲しき」シリーズ” + “メリー・ホプキンの清楚なイメージ” からでっち上げたものだろう。
 彼女はこの曲をフランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、ヘブライ語(!)でも吹き込んでいるのだが、面白いのはフランス語ヴァージョンで、タイトルが Le temps des fleurs (花の季節)、歌詞の内容も英語ヴァージョンとはかなり違うものになっている。私の大好きなヨーロピアン・ポップスの歌姫たちも色んな言語で吹き込んでいるので、ここでいくつかご紹介:

①Mary Hopkin
 さすが本家である。英語ヴァージョン同様の可憐なヴォーカルが楽しめるが、何より凄いのはポールが仕切ったオケの完成度の高さ。イントロにバラライカの演奏をもってきたり、隠し味にクラリネットを使ったりと、曲の持つ哀愁を最大限まで引き出す見事なサウンド・プロダクションだ。こういうのを天才の仕事というのだろう。ピンク色が効いた好ジャケットゆえに愛蔵する1枚だ。
Mary Hopkin -Those were the days (le temps des fleurs)


②Dalida
 ダリダって誰だ?(笑)なんてアホなことを言っている場合ではない。エジプト生まれの彼女は映像からも分かるようにエキゾチックな超美人で、ちょっとハスキーにかすれる歌声がたまらない。本家そっくりのアレンジにより、メリー・ホプキンとは又違った彼女の魅力が浮き彫りになっている。
DALIDA Le temps des fleurs


③Gigliola Cinquetti
 ジリオラ・チンクエッティが歌う「悲しき天使」は当然イタリア語ヴァージョンだ。歌い上げるのを得意とする彼女の歌唱スタイルがこの壮大な曲にピッタリ合っていて、日本盤ベストCDに入ってないのが不思議なぐらいの名唱だ。
Gigliola Cinquetti - quelli erano i giorni (1968) live


④Vicky Leandros
 以前にも紹介したヴィッキーはギリシア系のポップ・シンガーで、高音部を伸ばす個性的な歌い方がこの曲と怖いぐらいに合っている。同じハイトーン・ヴォイスでも、メリーホプキンをあっさり系とすれば、こちらはこってり系と言えるかも。
Vicky Leandros -Le temps des fleurs


⑤Sandie Shaw
 “モッズのアイドル” こと、サンディー・ショウの少し鼻にかかったような、丸みを帯びた歌声が実にユニークで、ヴィブラートを効かせた堂々たる歌いっぷりも貫録十分だ。ファースト・コーラスをフランス語で歌った後、英語にスイッチするところがたまらなく好き。
Sandie Shaw - Les Temps Des Fleures (16:9)


う~ん、聴けば聴くほど名曲だ(笑) これ以外にもドリー・パートンの “ブルーグラス・ヴァージョン” や、ベンチャーズの “エレキシタール・ヴァージョン” なんかも面白い。尚、この曲は全英チャートでは見事6週連続№1に輝いたものの、全米チャートでは9週間1位に居座ったビートルズの「ヘイ・ジュード」の牙城を崩すことは出来ず、3週連続の2位に甘んじた。

【おまけ】日本人が作曲したロシア民謡(笑)の最高峰といえばコレ!!
     関西人なら知らぬ者はいない “モスクワの味” です↓
パルナス
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The Album / Jive Bunny & The Mastermixers

2009-04-28 | Oldies (50's & 60's)
 私が80年代にビルボード誌やラジオ&レコーズ誌といった全米ヒットチャートを毎週ほぼ欠かさず追いかけていたことは以前どこかで書いたような記憶があるが、同時にミュージック・ウィーク誌の全英チャートも追いかけていた。その週に新しく英米のチャートに入ってきた曲をラジオでいち早くチェックし、週末には大阪や京都のタワレコへ買いに走るという、ほとんど洋楽ヒット中心の生活が丸々10年続いたわけだが、今思い起こしても実に懐かしい充実した日々だった。特に日本では中々紹介されないような “自分だけのお気に入り曲” を発掘した時なんか喜びもひとしおで、毎週オムニバス・テープを作っては自室や車の中で聴きまくって楽しんでいた。
 1989年の8月のこと、ジャイヴ・バニー&ザ・マスターミキサーズという謎のアーティスト(ヨークシャーのDJ集団らしい... まぁ “イギリス版クボタタケシ” みたいなモンか...)の①「スイング・ザ・ムード」という曲が突如全英チャートに登場した。曲そのものは単なるオールディーズのサンプリング・メドレーだったのだが、ありそうでなかったその発想自体が実に斬新だったし、様々なアーティストの “どの曲のどの部分をどう繋げていくか” というあたりのセンスも抜群だった。結局イギリス人のオールディーズ好きな国民性を反映して大ヒットを記録し、5週連続で全英№1を独走したのだが、私もこの曲をちょうど80年代初頭の「スターズ・オン45」や「フックト・オン・クラシックス」の “オールディーズ版” と捉えて大いに気に入り、早速12インチ・シングルを買いに走った。曲のベースになっているのは「イン・ザ・ムード」で、古式ゆかしいグレン・ミラー・サウンドがノリノリの楽しいダンス・リミックスを施され、「ロック・アラウンド・ザ・クロック」「トゥッティ・フルッティ」「起きろよスージー」「カモン・エヴリバディ」「ハウンド・ドッグ」「シェイク・ラトル&ロール」「オール・シュック・アップ」「監獄ロック」「アット・ザ・ホップ」といった珠玉の名曲たちが現われては消え、消えては現れるという、オールディーズ、特にロカビリー好きにはたまらない6分10秒だった。
 その2ヶ月後の10月に早くもシリーズ第2弾としてリリースされた⑤「ザッツ・ホワット・アイ・ライク」もあっという間に全英を制覇、3週連続№1をマークした。今度はベンチャーズの「ハワイ-5-Oのテーマ」をベースに「レッツ・ツイスト・アゲイン」「レッツ・ダンス」「ワイプ・アウト」「グレート・ボールズ・オブ・ファイア」「グッド・ゴリー・ミス・モリー」「ザ・ツイスト」「サマータイム・ブルース」「浮気なスー」がまるで “オールディーズ組曲” のように見事に繋げられて1つの曲として成立していた。
 そして年の瀬も押し詰まった12月にこの「ジャイヴ・バニー・ジ・アルバム」のUK盤CDが発売され、私は速攻でゲットしたのだが、待った甲斐があったとはこのことだ。2大ヒット曲①⑤以外にもワクワクウキウキするような懐かし楽しいサンプリング・メドレーのアメアラレで、T.レックスやゲイリー・グリッターをフィーチャーした④「ドゥ・ユー・ウォナ・ロック」やアンドリュース・シスターズの古~いヒット曲を網羅した⑦「スウィング・シスターズ・スウィング」も良かったが、ダントツに気に入ったのがラストの⑧「ホッピング・マッド」で、「ダ・ドゥ・ロン・ロン」や「ポエトリー・イン・モーション」、「朝からゴキゲン」なんかもう、イントロが聞こえてきただけで鳥肌モノだ。正調オールディーズ・ポップス・ファンは一聴の価値アリだと思う。
 これはオールディーズ・ポップス・ファンには理屈抜きで楽しめるいわゆるひとつの “パーティー・アルバム” だが、私にとってはただ単に楽しいだけでなく、クリス・モンテスの「レッツ・ダンス」やザ・ダーツの「カム・バック・マイ・ラヴ」といった隠れ名曲を教えてくれたという意味でも、忘れられない1枚だ。

Jive bunny and the real videos In the mood