アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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「黎明之塔」参拝「報告文書」の存在が示す自衛隊の危険な実態

2022年06月10日 | 自衛隊・日米安保

   

 琉球新報は9日付の1面トップで、沖縄の陸上自衛隊(第15旅団)トップらが毎年「慰霊の日」(6月23日)未明に「黎明之塔」(糸満市摩文仁、写真中)を制服着用で「参拝」(写真左は2020年)していることについて、陸幕が「報告文書」を作成し陸幕長らに回覧していた事実を報道、「私的な行動」としてきた陸自・防衛省の「主張が揺らぐ」と断じました。

 「黎明之塔」は沖縄戦で15万人を超える住民を巻き添えにした帝国日本第32軍の牛島満司令官と長勇参謀長(いずれも南京大虐殺の当事者)をまつったものです。

 「報告文書」の有無にかかわらず、「黎明之塔」への旅団長らの「参拝」が自衛隊の組織的行動であり、帝国日本軍を美化する行為であることは明白です。その点では新たな驚きはありませんが、注目したのは今回の件に関する小西誠氏(軍事評論家・元自衛官)のコメントです。

 小西氏は、「「参拝」について情報共有していたということは、陸幕が、組織として隊員の行動を監督していたことになる」としたうえで、こう指摘しています。

「「黎明之塔」への「参拝」が、空自、海自では行われず、陸自の第15旅団だけが毎年実施しているということは、部隊の「伝統」になっているのだろう。陸幕が、こうした慣例化した部隊の行動を組織として是認しているということにもなる。…近年、いわゆる制服組の「現場」の権限の肥大化が顕著で、今回の件もその典型的なケースだ」(9日付琉球新)

 「制服組の「現場」の権限の肥大化」が具体的にどのようなものかは分かりませんが、小西氏はそれが「顕著」に進行している情報を入手しているのでしょう。これは「文民統制」という建前が公然となし崩しにされ、「現場」部隊の「権限」が肥大化していることで、きわめて重大です。

 こうした自衛隊(軍隊)の権限強化が、日米軍事同盟(安保条約)による米軍との従属的一体化の深化、軍事費の大幅拡大(「今後5年で2倍化」)、さらに「ウクライナ戦争」に乗じたNATO(北大西洋条約機構)との「連携強化」など、一連の戦争国家化政策と一体となって進行しているところに、かつてない危険な実態があると言わねばなりません。

 なお、琉球新報の記事は「「参拝」は2004年から実施」としていますが、これは正確ではありません。沖縄タイムス(2021年5月30日付)によれば、最初に行われたのは1976年です。しかし批判を受けていったん頓挫。それが復活したのが2004年です。

 復活させたのは、君塚栄治・第1混成団団長(当時)。君塚氏は強烈な天皇信奉者です(2021年6月22日のブログ参照https://blog.goo.ne.jp/satoru-kihara/d/20210622)。

 そして、君塚氏が「参拝」を復活させた2004年とは、陸上自衛隊が初めてイラクに派遣され(1月9日)、「有事関連7法」が成立し(6月14日)、沖縄国際大に普天間基地の米軍ヘリが墜落した(8月13日)年です。

 それらはすべて連関しており、自衛隊の「黎明之塔」参拝の意味を考える上で見落とすことはできません
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