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アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

ウクライナ駐日大使が靖国参拝、批判で削除

2024年12月03日 | 国家と戦争
  「韓国がなぜウクライナに兵器を供与しなければならないのか」と題したハンギョレ新聞の論評記事(11月30日付日本語電子版)に、注目すべきことが報じられていました。

 記事の要点は「ウクライナは韓国の同盟国でもないのに、なぜ当然の権利を行使するかのように兵器の請求書を突きつけるのだろうか」「ウクライナにとっては北朝鮮がロシアを助けるのが問題だが、韓国にとってはロシアが北朝鮮を助けるのが問題」「朝ロ密着を遮断することに外交的努力を集中するのが賢明」と、「兵器供与」でなく「外交」の重要性を主張したものです。その中に次のくだりがありました。

<ウクライナはロシアの侵略戦争を批判し、韓国に兵器支援を要請しながらも、韓国が被害を受けた日本の侵略戦争には無神経な歴史認識を示した。9月3日、駐日ウクライナ大使館はXに「セルギー・コルスンスキー大使が靖国神社に参拝し、祖国のために命を失った方々を追悼した」という文と写真を投稿した。靖国神社の参拝が日本の戦争犯罪を擁護する行為という批判が高まったことを受け、駐日ウクライナ大使館は翌日、この投稿を削除した。>(11月30日付ハンギョレ新聞、写真は削除されたコルスンスキー大使の靖国参拝写真=同紙より)

 ウクライナ大使館が公式にXに投稿し(9月3日)、「批判が高まった」というのですから、日本のメディアは当然知っていたはず。にもかかわらず、(私が見た限り)報道しませんでした。政府が進めている「ウクライナ支援」に不都合な事実は(大きく)報道しない。メディアの劣化がここにも表れています。

 ゼレンスキー政権が「日本の侵略戦争には無神経な歴史認識」しかもっていないことを示すのは今回の「靖国参拝」が初めてではありません。

 ロシアの軍事侵攻から間もない2022年4月、ゼレンスキー政権は公式アカウントで、プーチン政権を「現代のファシズム」と非難する内容のツイッターを掲載しました。この中で、「ファシズムとナチズムは1945年に敗北した」として、ヒトラーとムソリーニと天皇裕仁の顔写真を並べて載せました。

 これに日本政府(岸田政権)が抗議。ゼレンスキー政権は4月26日、裕仁の写真を削除しました。コルスンスキー駐日大使は25日のツイッターで「制作者の歴史認識不足。深くおわび申し上げます」と謝罪したのです(22年5月4日のブログ参照https://blog.goo.ne.jp/satoru-kihara/d/20220504)

 天皇裕仁をヒトラー、ムソリーニと並べて「ファシスト」と批判したことは正当です。にもかかわらず日本政府の抗議を受けて削除し、「歴史認識不足」として謝罪した。このことは、日本政府から支援を得る政治的思惑のためには「歴史認識」を公式に変更する(投げ捨てる)ことをも辞さないゼレンスキー政権の体質を示したものです。

 駐日大使の「靖国参拝」もその延長線上にあったと思われます。ところが今回は逆に、「靖国参拝」が侵略戦争を美化するとの批判を受けてXを削除する事態になったわけです。

 政治的思惑を優先して右往左往するゼレンスキー政権の「歴史認識」が問われます。

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最重要課題は、紛争下の子どもの生命・人権擁護

2024年11月23日 | 国家と戦争
   

 内外共に混迷・迷走を深めている今日。課題は山積していますが、中でも最も重要な緊急課題は、紛争下の子どもの生命と人権を守ることです。

<6つの重大な権利侵害>

「世界中で起きている紛争や武力衝突下で、子どもに対する深刻な人権侵害が繰り返されています。
 2023年に国連が検証した、紛争下における子どもに対する重大な権利侵害は、26の紛争地域で3万2990件に上り、過去最多となりました。
 紛争下における子どもに対する重大な権利侵害とは、①子どもの殺傷、②徴兵と(軍事)利用、③性的暴力、④拉致・誘拐、⑤学校や病院への攻撃、⑥子どもへの人道支援の妨害をさします」(「ユニセフニュース」vol.283・2024秋号)

<外傷・感染症・救命>

「極限状態が続くガザ地区。戦闘の激化により受け入れ可能な病院が減少し、保健医療体制の崩壊状態が続いています。ガザ保健省によると、今年8月までに、1万人以上の子どもたちが命を落としています。
 ガザの紛争で保護者と家を失い、孤児になった子どもはすでに約1万7000人(2月現在)にも。この極限体験が今後、何年にもわたり心の傷となって残る懸念があるため、心のケアも急務となっています」(「国境なき医師団ニュースレター」2024年10月号、写真中)

「昨春、スーダンの各地域で紛争が勃発して以来、人びとは国内外の避難民キャンプに逃れています。ここで暮らす子どもたちには、はしかが大きな脅威。栄養失調と合わさると重症化する、命を脅かす感染症だからです。
 マラリア、はしか、コレラ、髄膜炎などの感染症が猛威を振るうナイジェリアでも昨年、MSF(国境なき医師団)は感染症と栄養失調外来で20万人以上の子どもを治療しています」(同)

<飢餓・飢きん>

 「2023年に飢餓に直面した人は最大約7億5700万人にのぼると新たに報告されました。これは世界の11人に1人に相当します。飢餓に瀕する人びとの割合が最も高いアフリカでは、5人に1人が飢餓に直面しています。
 ガザ地区は、人口の96%が深刻な急性の飢餓に直面しており、50万人以上の人びとが最も重いレベルの壊滅的な飢餓に瀕しています。
 
 ガザで紛争の激化のあとに生まれた娘を抱きながら、母親のサマさんは話します。「ミルクもなく、清潔な水もない。娘の体には発疹がでて、お腹もよく下します。私自身も貧血症を患っています。この子が私の腕の中で死んでしまうのではないかと心配でなりません」(写真右)」(「国連WFP<食料支援機関>ニュースvol.74・2024年10月号」)

 子どもの命と人権を守るのは世界の大人の責任です。「国を守る」は「戦争の論理」であり、「子どもの命と人権を守る」は「停戦・終戦の倫理」です。ガザで、ウクライナで、世界の紛争地で、一刻も早く停戦しなければなりません。

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ウクライナ戦争「北朝鮮の参戦」が示す2つの道

2024年11月11日 | 国家と戦争
  ウクライナ戦争への朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)の「参戦」をめぐって情報戦が繰り広げられています。

 ゼレンスキー大統領は10月16日の最高会議の演説で、「ロシアによる侵攻に北朝鮮が「参戦している」と述べた」(10月17日付京都新聞=共同)のに続き、4日の声明で、「「ロシア西部クルスク州に「1万Ⅰ千人の北朝鮮兵がいる」と指摘」(6日付京都新聞=共同)しました(写真は「ロシアに派遣された北朝鮮軍」としてウクライナが発表した映像)。

 さらに5日の声明では、「北朝鮮との戦闘は「世界の不安定化の新たなページを開く」…「対抗措置は十分で、強力でなければならない」と述べ、各国に支援を呼びかけ」(7日付京都新聞=共同)ました。

 一方、「韓国大統領室は6日、「ロシアに派遣された北朝鮮軍がウクライナ軍と初めて交戦した」というウクライナ政府の公式発表を否定」(7日付ハンギョレ新聞日本語電子版)しました。

 ハンギョレ新聞には次のような記者コラムが掲載されました。

「ウクライナは北朝鮮軍の派遣と参戦を積極的に広める。その理由は、ゼレンスキー大統領の発言によってあらわになる。彼は、派遣された北朝鮮軍は脅威だと述べつつ、先制攻撃が行えるよう、西側が支援した長距離兵器でロシア領内を攻撃することを認めるよう要請する。西側がこれを認めれば、西側の人材がウクライナに公式に派遣されなければならない」(9日付ハンギョレ新聞)

 
 「北朝鮮参戦」の実態はまだはっきりしませんが、ゼレンスキー氏がこれを強調する意図はハンギョレ新聞の指摘通り明確です。

 ロシアと共和国は、「包括的戦略パートナーシップ条約」を結んでいます。その第4条では、一方が戦争状態になった場合は「遅滞なく保有するすべての手段で軍事的およびその他の援助を提供する」と定めており、共和国がウクライナ戦争に「参戦」しても不思議ではありません。

 こうした動向をけっして拱手傍観することはできません。

 「北朝鮮の参戦」がウクライナ戦争の新たな拡大であることは明白です。同時に、それは共和国がロシアの戦争に加わることであり、共和国自身にとっても、そして東アジアにとってもきわめて重大な問題です。

 この現実を前にして、2つの道の選択が迫られています。

 1つは、ゼレンスキー氏が要請しているように、NATO・日本、韓国を含む西側諸国がウクライナへの軍事支援をさらに強化してロシア・共和国に対抗する道。

 もう1つは、戦争が新たな拡大をしないうちに一刻も早く停戦する道です。

 戦争の犠牲者をこれ以上出さないために、どちらの道を選択すべきか明白です。

 共和国の核軍拡・軍事国家化の根源には日本の植民地支配の歴史と日米軍事同盟(安保条約)があります。私たち日本人がこのことを忘れることは許されません。

 ウクライナ戦争の即時停戦はロシアの軍事侵攻直後からの課題ですが、共和国の「参戦」が現実になろうとしている(なっている)今、それは文字通り喫緊の課題です。


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「ウクライナ戦争と日本」伊勢崎賢治氏の近著から

2024年11月04日 | 国家と戦争
   

 誰が次のアメリカ大統領になろうと、イスラエルのジェノサイドとウクライナ戦争は一刻も早くやめさせなければなりせん。どうすれば停戦できるのか、そもそもウクライナ戦争と日本の関係は―伊勢崎賢治氏(元国連職員、写真中)の近著『14歳からの非戦入門―戦争とジェノサイドを即時終わらせるために』(ビジネス社2024年6月)を手掛かりにあらためて考えます。

 伊勢崎氏は、「近年とくに顕わになった「安全保障化」と、日本人の大半が気づいていない「緩衝国家」という2つのキーワードを軸に、世界と日本の危機をどう克服するかのヒントを提示したいと思い、急きょ書き上げた」(ブックカバー)と述べています。同書のポイントを抜粋します。

「安全保障化」…「安全保障化」とは、一般大衆に「恐怖」を植え付け、集団ヒステリーの凶行に走らせる一つの手法である。一例が、関東大震災朝鮮人虐殺事件である。
 直近の2年間にわれわれは2つの大きな「悪魔化」を経験している。2023年10月7日に「奇襲攻撃」を引き起こしたハマスと、2022年2月24日にウクライナに侵攻したプーチンだ。
 その喧伝が功を奏すればするほど、「悪魔がなぜその蛮行に至ったのか」を追及しようとする言説空間が消滅してゆく。
 「プーチンの絶対悪魔化」に、保守右派勢力ならともかく、9条護憲を掲げる日本共産党などリベラル左派勢力まで、みごとに「安全保障化」で翼賛化してゆく。

▷「緩衝国家」…「緩衝国家」とは、地理的に敵対する大国や軍事同盟の狭間に位置し、大国のどちらにつくかによって、その「代理戦争」の戦場となる国のことである。大国の本土を無傷にとどめ、敵対する相手国を弱体化する戦争の戦場になる国々である。
 ウクライナと同様に典型的な「緩衝国家」が日本だが、ウクライナにも存在しない国家の特質が、日本にはある。アメリカとの異様な関係性である。それを象徴するものが、「朝鮮国連軍」という「ゾンビ」である。

▷ウクライナ戦争の終結とは…ウクライナ戦争は2014年から始まったウクライナ東部紛争、つまり大国ロシアが介入した「ドンバス内戦」の延長である。ウクライナ戦争はこの段階から、ロシアといわゆる西側(アメリカ、EU&NATO)の対立が生む「代理戦争」だったのである。
 だから、「親ロシア派住民が標的になったその内戦が起きた根本の原因に対処しない限り、この戦争に終わりはない」と考えるのが真っ当な学問的姿勢である。
 つまりこの戦争の「終わり」とは、親ロシア派住民と親ヨーロッパ派住民の「和解」もしくは「民族融合」が達成されることである。

▷「停戦」と「終戦」…「停戦」は「終戦」ではない。人命を一人でも多く救うため、とにかく「戦闘を停止する」こと。
 領土の帰属問題、戦争犯罪の裁定などの正義の追求は、停戦後に一つ一つ最大限の中立性を演出しながら実行する。そして「民族融和」へ導かれる復興と同時に、戦争で壊れてしまった社会正義を修復すること。

▷「同調圧力」…停戦を訴えることは、ウクライナの人々の戦う意志を侮辱するものでも揶揄するものでもない。「勝利する」という同調圧力の熱狂の結果、日本は(先の戦争で―私)どういう末路を迎えたか。末路を現実視することは、決して愛国心の敗北ではないということを、ウクライナの人々に訴えるのはわれわれ日本人の責務ではないのか。

▷「代理戦争」…この戦争は【ロシア】対【アメリカ・NATO】の「代理戦争」である。戦況の趨勢に最大かつ直接的な影響を与えるのは、当事者ウクライナではなく、「代理戦争」のマスターであるアメリカである。
 「代理戦争」は、どんなものであれ、絶対に「成功」させてはならないのだ。それが一度起きてしまったら、関係するすべての国家間の対話と外交交渉で、一刻も早い停戦を実現することだ。それが「代理戦争」の処理に対する基本姿勢であるべきだ。

▷「新しい戦前」…国民が戦争と、それへの動員を受け入れる土壌と文化をつくるには、かならず仮想敵国を標的にする「絶対悪魔化」が、戦争に至る前の“平時”において必要となる。これが、ウクライナ戦争を機に、平時であるはずの今の日本で起きていることだ。
 特記しなければならないのは、こういう状況では、単に愛国主義勢力が大手を振るだけでなく、その真逆に位置するはずの反戦勢力が、「平和を自衛する」ために、「絶対悪魔化」に加担し、翼賛体制をつくるということだ。こうなると、国家は戦争へのブレーキを完全に喪失する。「新しい戦前」とは、こういうことだ。(以上、同書より)

 同じ「緩衝国家」でありながら「ウクライナにも存在しない日本の特質」。その元凶、日本がアメリカの「代理戦争」にいま加担している、そして新たな「代理戦争」の戦場になろうとしている、その危機の根源が、日米軍事同盟=安保条約であることを改めて銘記する必要があります。

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イスラエル軍人の宿泊を拒否して解雇されたホテル支配人

2024年10月23日 | 国家と戦争
  

 「今すぐ戦争止めよう!万博・カジノ・原発STOP!希望はここだ!」をスローガンにした「団結まつり」(主催・平和と民主主義をめざす全国交歓会)が14日、大阪市内でありました。

 そこでブラジル出身の男性(京都在住)がパレスチナへの連帯をアピールしました(写真左は8月末のガザ)。男性の名前はジェロニモ・ゲレスさん(写真右)。とても明るい人でしたが、ゲレスさんはことし6月、ガザでジェノサイドを続けているイスラエル軍関係者の宿泊を拒否しキャンセルを要求したことによって解雇されていました。経過はこうです。

 6月11日、ゲレスさんが支配人を務めていた京都市内のホテル(全6室)に1人の男性から予約が入った。ゲレスさんは質の高い接客を行うため、予約者の情報をネットで検索するのが通例だった。その結果、男性はイスラエル国防軍の現役の軍人であることが分かった。

 ゲレスさんはメールで「ガザの紛争でイスラエル国防軍による戦争犯罪の可能性が報告されているため、イスラエル軍と関係があると考えられる方からの予約を受け付けることができません」とキャンセルするよう要求した。

 男性は「予約は取り消す」と応じると同時に、「ガザで何が起きているのか勉強することをお勧めする」などと述べた。

 その直後からネットでゲレスさへのバッシングが始まった。同17日にはイスラエルでも報道された。駐日イスラエル大使館は同じく17日付でホテルの運営会社に抗議文を送った。同日、ネットで情報を得た京都市が調査を開始。市は「実際に軍関係者かどうかに関係なく、違法(旅館業法)であると判断」(6月22日付京都新聞)し、運営会社に20日口頭で、21日には文書で行政指導を行い、同日記者会見で発表した。

 一方、上川陽子外相(当時)は同じ21日、京都市の会見より早い日午前中の記者会見で、この件について読売新聞記者の質問に答え、「国籍を理由とする宿泊拒否は許容できない」と述べた。

 運営会社はゲレスさんを10日間の出勤停止処分にしたのに続き、7月11日解雇した。
 ゲレスさんは「解雇は不当」として京都地裁に提訴した。

 以上の経過で特徴的なのは、外務省、京都市の対応の速さです。京都市は調査を始めて3日で口頭指導、4日目に文書指導し記者会見しました。外務省は京都市の会見前に外相が記者会見で見解を述べました。イスラエル政府からの要請(抗議)あるいはイスラエル政府への忖度が推測されます。

 問題の焦点は、国際人道法違反の戦争犯罪(あるいはその容疑がある)組織に属する者の宿泊拒否は正当か、ということです。

 ゲレスさんは国籍(イスラエル)で宿泊を拒否したのではなく、あくまでも男性がイスラエル国防軍の軍人だったためキャンセルを要求したのです。

 ゲレスさんは男性にこう説明しました。「ジュネーブ諸条約及び追加議定書に基づく国際人道法で禁止されている戦争行為の実行を支援した、または支援している可能性がある人々に宿泊施設を提供することは、紛争が終わり次第、当ホテルが、戦争犯罪で起訴される可能性のある人物の共犯者または補助者と見なされるリスクを伴います」

 旅館業法では「正当な理由」があれば宿泊を拒否できるとしています。ゲレスさんは「戦争犯罪のイスラエル国防軍関係者」であることは「正当な理由」になると考え、京都市や外務省はそうではないという見解を示しました。

 旅館業法はおそらく「国際法違反の戦争犯罪関係者」の宿泊は想定していないでしょう。法的にどう考えるべきか、新たな課題が提起されています。

 しかし明らかなことは、ジェノサイドは許されない、許さないという基本的立場で対応したゲレスさんの行為は、称賛されこそすれ、けっして非難されるものではないということです。ましてそれを理由とした解雇は不当解雇と言わざるをえません。

 いまこの瞬間も多くの子どもを含む市民が犠牲になっているイスラエルのジェノサイド。それを一刻も早くやめさせるために自分には何ができるか、何をすべきか。ゲレスさんは常日頃そういう意識を持って生活し仕事をしていたからこそ以上のような対応をしたのでしょう。
 その思想、行動力を、私は見習いたいと思います。

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停戦・和平のカギはウクライナのNATO非加盟・中立化

2024年09月30日 | 国家と戦争
   

 バイデン米大統領との会談(26日)でウクライナのゼレンスキー大統領は「勝利計画」を提示し、バイデン氏は約1兆1560億円(80億㌦)の追加軍事支援を約束しました。戦争の激化は必至です。

 ゼレンスキー氏が示した「勝利計画」の内容は、事前に報じられていたましたが(9月20日のブログ参照)、ウクライナ大統領府長官はニューヨークでの講演で、「勝利計画」に「ウクライナを北大西洋条約機構(NATO)に招待するとの項目が盛り込まれている」(25日付共同配信)ことを特に公表しました。

 このことは逆に、停戦・和平のカギが何かを示唆しています。それは、ウクライナがNATOに加盟せず中立化することです。

 それはプーチン大統領が停戦・和平の条件としている「初期の目的」でもあり、ロシアが和平交渉のテーブルにつく可能性は大です。

 ここで強調する必要があるのは、ウクライナのNATO非加盟・中立化はけっしてロシアの一方的な要求ではなく、ウクライナ自身が目指していたものでもあるということです。

 第1に想起すべきは、「今回のロシアによるウクライナ侵攻の直接の契機になったのは「NATOの東方拡大」問題」(下斗米伸夫・法政大名誉教授著『プーチン戦争の論理』集英社インターナショナル新書2022年10月)だということです。

 その「NATOの東方拡大」は、ベイカー米国務長官(当時)がソ連のゴルバチョフ大統領(同)とのあいだで交わした「NATOは東方へ1インチも拡大しない」という約束(1990年2月)を破棄し、米クリントン政権によって1990年代半ばから計画。ジョージ・ケナンなど対ロ政策の米専門家も「最大の誤り」と警告しました。
 そして2009年、オバマ政権時代にバイデン副大統領(当時)がウクライナをNATO加盟に誘い、ロシアを激怒させたのです(以上は下斗米氏の前掲書より)。

 今回のウクライナ戦争に直接つながる「マイダンクーデター(革命)」(2014年2月)も、バイデン氏を中心にアメリカ政府が裏で操ったものでした。

 第2に、ゼレンスキー氏自身、大統領就任当初はNATO加盟は考えていなかったけれど、「民族右派やネオ・ナチの圧力」で態度が一変しました。

「2019年に行われた大統領選挙で、ゼレンスキー氏が、対ロ和平を掲げることで東部・西部双方から支持を受けて圧勝、同年5月に第6代大統領に就任する。就任当初のゼレンスキーは、ミンスク合意Ⅱの和平案(2015年2月)を推進するかと思われた。ところが2019年末には対ロ強硬派の主導により、ゼレンスキーはNATO早期加盟へと態度を豹変させる。その背景には民族右派やネオ・ナチの圧力に加え、大統領の人気低下もあった」(下斗米氏、前掲書)

 第3に、ウクライナとロシアの間では2022年4月15日にいったん和平案が合意されており、そこにはウクライナのNATO非加盟・中立化が明記されていました。

「米紙ウォールストリート・ジャーナル電子版は(24年3月)1日、ロシアがウクライナに侵攻してから50日後に、両国の交渉担当者がまとめた和平草案を確認したと報じた。
 ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)のような軍事同盟に加わらない永世中立国となり、外国兵器は配備しないことなどが盛り込まれていたという。(中略)
 17㌻の草案は2022年4月15日付。ウクライナが欧州連合(EU)加盟を目指すことは可能とするが、軍事同盟入りはしないとした」(24年3月3日付共同配信)

 第4に、上記の「和平合意」を潰したのは米バイデン政権とNATOだということです。

「ロシアのウクライナ侵攻翌日の2月25日、ゼレンスキー大統領は直ちに和平の模索のためにスイス政府と連絡を取った。そして翌3月から6月にかけて3度にわたって和平交渉が試みられた。しかしそれら全てが、米英欧の圧力によって潰された事実は、西側メディアでは重要視されなかった。米国の主要目的が、ロシアの弱体化だったからだ」(荻野文隆・東京学芸大名誉教授の論稿、藤原書店「機」2月号所収)(3月7日のブログ参照)

 今回の戦争は、ウクライナを前面に立てたアメリカ・NATOとロシアの代理戦争と言って過言ではありません。アメリカが国内の反対世論を押し切って巨額の軍事支援を続けているのもそのためです。

 戦争を終結させるカギは、アメリカ・NATOの干渉を排除し、ウクライナも当初同意していたNATO非加盟・中立化へ舵を切り直すことであることを改めて銘記すべきです。

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ウクライナ支援に反対して躍進する独左派新党の注目すべき主張

2024年09月23日 | 国家と戦争
   

 ドイツのシュルツ政権を批判する右派が躍進したことは広く報じられましたが(4日のブログ参照)、躍進しているのは右派だけではありません。左派の新政党もそうです。

 両者に共通しているのは、ウクライナへの軍事支援に反対していることです。

 その左派新党は、ザーラ・ワーゲンクネヒト党首(56)が率いるザーラ・ワーゲンクネヒト同盟。20日のNHK BS・国際報道2024(21日総合で再放送)が同党首の主張を紹介しました。番組から引用します(写真も)。

<新党立ち上げ>

・現政権は戦後ドイツで最低の政権だ。有権者は投票すべき党が分からず絶望し、右派「ドイツのための選択肢」を選ぼうとしている。この状況を放置できないので新党を立ち上げた。

・我が党は、ドイツに変化をもたらす平和、繁栄、安全保障のための新たな力となる。

<ウクライナ支援に反対>

・この2年半(ウクライナへ)次々と兵器を送ったが、戦争は終わったか?

・流血を止めるために、いまこそ真剣な外交努力が必要だ。

・戦争を始める政治家は犯罪者だが、この基準をウクライナ戦争だけに適用することはできない。ユーゴスラビア、イラク、リビア、アフガニスタンで(欧米が)始めた戦争も犯罪だ。

<ロシアとの対話重視>

・ドイツは偉大な社会民主党の“緊張緩和”を今こそ思い起こすべきだ。

・市民の暮らしを危険にさらす政策より、緊張緩和・平和・外交を求める。

 番組では、こうしたワーゲンクネヒト党首の主張に共感し、これまでの与党支持から同党支持に変えた男性の声も紹介しました。

「本当に感銘を受けた。(欧米とロシアの)対立はもう十分だ。彼女が言う通り、これ以上武器はいらない。より多くの苦しみが生まれるだけだ。(対ロ制裁にも)反対だ。(制裁の影響は)自分たちが傷つくだけだから」

 ドイツの専門家は、ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟は、ブランデンブルク州選挙(22日)に続き、来年の連邦議会選挙へ勢いを維持する可能性があるとみています。

 ワーゲンクネヒト党首の主張はたいへん共感できます。同党の躍進に注目し、応援したいと思います。

 同時に思うのは、同党の存在・主張が20日の上記番組まで詳しく報道されることがなかったことの問題です(私の情報収集不足もありますが)。ウクライナ戦争の軍事支援に反対するこうした意見は、ドイツにおける同党だけでなく、他の欧州各国でも広がっているのではないでしょうか。

 日本メディアの偏向報道に日々影響されている現状の危険性をあらためて痛感します。

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ウクライナ・必要なのは「勝利計画」ではなく「即時停戦交渉」

2024年09月20日 | 国家と戦争
  

 ウクライナのゼレンスキー大統領は近く訪米し、バイデン大統領らに<戦争終結案「勝利計画」>を提示します。その内容が19日付の京都新聞(共同配信)に掲載されました。

<戦争終結案「勝利計画」のポイントは、①必要な米欧製兵器の種類、数量、納期、使用の狙いを説明し、長射程ミサイルによるロシア領攻撃の容認を要求②ウクライナの軍需産業への投資要請。必要額提示③ロシア西部クルスク州への越境攻撃の成果を説明④対ロ制裁の抜け穴を指摘。ロシアへの外交圧力を強化⑤ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)早期加盟を要求>(19日付京都新聞=共同)

 一見して明らかなように、これは停戦・和平案ではなく、あくまでもウクライナが「勝利」するために、アメリカはじめNATO諸国に軍事支援のさらなる強化を求める「計画」です。ウクライナが「勝利」する以外に「戦争終結」はありえないというゼレンスキー氏の持論を具体化したものです。

 この「計画」がもたらすものは戦争の一層の激化・長期化以外にありません。

 ウクライナ、ロシア両軍の死傷者はすでに100万人に上っています(17日の米紙ウォールストリート・ジャーナル)。これに市民の死傷者数を加えればその数ははるかに上回ります。「勝利」以外に「終結」はないとする姿勢に固執すれば犠牲者は増えるばかりです。

 いま必要なのは即時停戦であり、それに向けた国際世論と仲介です。

 その動きがこの1年数カ月まったく見られない(表面化しない)のはいったいどうしてでしょうか?

 昨年の2~4月ごろには、中国やブラジル、アフリカなどグローバルサウスの国々からも和平案が提示されました。

 日本でも、和田春樹氏、羽場久美子ら学者・ジャーナリスト31氏が連名で即時停戦を訴える「声明」を発表しました(23年4月5日、写真右)。(23年4月8日のブログ参照)

 「声明」は、「いまやNATO諸国が供与した兵器が戦場の趨勢を左右するにいたり、戦争は代理戦争の様相を呈しています」「G7支援国はこれ以上武器を援助するのではなく、「交渉のテーブル」をつくるべきなのです。グローバルサウスの中立国は中国、インドを中心に交渉仲裁国の役割を演じなければなりません」と指摘していました。

 その指摘はきわめて適切であり、いままさに強調されるべき視点です。31氏の中にはすぐれた学者が多く含まれています。パレスチナ情勢などその後の経過も踏まえ、第2の「声明」を今こそ発表することを強く期待します。


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ウクライナ戦争を「第2のベトナム戦争」にしないために

2024年09月11日 | 国家と戦争
   

 ハンギョレ新聞(3日付日本語電子版)に、「ウクライナ戦争は誰にとっての「ベトナム戦争」になるのか」と題したコラム(同紙国際部専任記者、チョン・ウィギル氏)が掲載されました。きわめて的確な分析・論評と思います。要点を抜粋します。

<ウクライナのドネツクに住んでいたロシア系高麗人のナタリア・ソさん(34)にとって戦争の開始は、ロシアがウクライナ侵攻を始めた2022年2月24日ではなく、1週間前の2月18日だ。ドネツク西部の衛星都市で生活していたソさんは、その日からウクライナ軍の砲撃を受け、避難せざるをえなかった。

 ウクライナにとってこの戦争は「ロシアの侵略戦争」であり、米国などの西側にとってはロシアの本能的な拡張野心を防ぐ戦争であり、ロシアにとってはウクライナ国内のロシア系住民を保護する「特別軍事作戦」だ。ウクライナ系住民にとっては「祖国防衛戦争」であり、ロシア系住民にとっては「自治と独立の戦争」だ。
 このような主観を取り払うと、ウクライナ戦争は西側とロシアの勢力圏戦争だ。その客観的状況はいま、ロシアにとっての第2のアフガニスタン戦争になるか、西側にとっての第2のベトナム戦争になるかという地点だ。

 戦争後はグローバルサウスの浮上が明確になった。西側の同盟国であるサウジアラビアやブラジルなどは対ロシア制裁に参加せず、ロシアとの交易を拡大した。非西洋の新興大国の集まりであるBRICSには、サウジアラビア・アラブ首長国連邦(UAE)・エジプト・エチオピアの加盟が昨年8月に決まった。

 米国の1000億ドルなど、西側は2000億ドルを超える軍事経済援助をウクライナに提供したが、この戦争で死活的な砲弾はほぼ10対1の水準でロシアが優位だ。ウクライナのクルスク攻撃後、両者は相手の領土、特にエネルギー施設に対する攻撃を強化している。このような消耗戦で誰が有利なのかは明確だ。

 相手の領土内のエネルギー施設などに対する攻撃は、ロシアが戦争1年目の2022年10月に始めた。その直前の9月末、ロシアとドイツを結ぶパイプラインのノルドストリームが爆破された。当時西側はロシアの自作自演だと示唆したが、ロシアは西側とウクライナに相応の報復を誓った。最近になりドイツはこの事件がウクライナ側の仕業だとして、ポーランドに逃亡した関連者を指名手配した。

 この戦争で確実なことは、もはやウクライナはロシアから完全に分離するしかないということだ。ウクライナ国内のロシア系地域や住民問題も、当該地域に自決権を付与するレベルで処理し、ウクライナは西側とロシアの間の緩衝地帯として残らなければならない。これを認めないのであれば、現時点ではウクライナ戦争は、ロシアの「第2のアフガン戦争」というよりも、むしろ西側の「第2のベトナム戦争」になる公算が大きい。>

 ベトナム戦争(1964~73)はアメリカのプロパガンダ(「トンキン湾事件」)に端を発したアメリカの覇権戦争で、多くのベトナム人、米兵が犠牲になりました。

 ウクライナ戦争を「第2のベトナム戦争」にしてはいけません。そのためにはウクライナは「西側とロシアの間の緩衝地帯として残る」、すなわち中立化することです。領土問題は「当該地域に自決権を付与」することで処理することと合わせ、即時停戦・和平のための現実的で有効な主張と考えます。

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ドイツ「右派」の躍進とウクライナ戦争

2024年09月04日 | 国家と戦争
   

 ドイツ東部2州で1日にあった州議会選挙で、「ドイツのための選択肢(AfD)」がデューリンゲン州で初めて第1党に、ザクセン州でも僅差の第2党に躍進しました。日本のメディアはこの結果を、「欧州で広がる右傾化がドイツでも鮮明になった」(3日付京都新聞=共同)と評しています。

 AfD躍進の背景については、「(ショルツ)政権が移民に寛容な政策を進める一方、地域住民の生活はないがしろにされているとの反発は大き(い)」(同)と、同党の「反移民」の主張が躍進の要因だと論評しています。

 こうしたメディアの評価・論評は正しいでしょうか。

 共同通信の現地リポート(3日付)によると、選挙戦の中でAfDの州支部代表は確かに「全ての元凶は移民だ」と「反移民」を強調しています。しかし、同時にこう続けています。

貧困にあえぐドイツ国民を救わず、ウクライナへの支援を語る政権は恥を知るべきだ

 「ウクライナへの軍事支援反対」がAfDの主要政策の1つでした。

 「ウクライナへの軍事支援停止を訴え、予算を生活支援などに使う姿勢を強調し、物価高で政府に不満を持つ人々の受け皿となった」(2日付朝日新聞デジタル)のです。

 さらに、「(AfDと)同じく(ウクライナへの武器)供与に反対する左派新党「ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)」はデューリンゲン、ザクセン両州で第3党となった」(3日付共同)ことから考えると、AfDの躍進は「反移民」というよりむしろ「ウクライナ軍事支援反対」の方が主要な要因だったとさえ言えるのではないでしょうか。

 6月の欧州議会選挙でも「ウクライナ軍事支援反対」の「右派」が躍進しました。欧州ではウクライナへの軍事支援に反対する世論が確実に広がっていると言えるでしょう。しかもそれが「貧困にあえぐ国民を救わず」と、市民の生活防衛と一体となっているのが特徴です。

 まさに「軍事費を削って福祉・教育・生活に」というスローガンがドイツ、フランスはじめ欧州市民の切実な要求になっているのです。「右派」(あるいは「極右」)であろうと「左派」であろうと、良い主張・政策は良いのです。

 ところが、日本のメディアはこうした実態をほとんど無視するか過小評価して「反移民の右派の躍進」という論調に終始しています。

 NHKはドイツ州議選の結果を2日の朝から再三報じていますが、AfDが「ウクライナ軍事支援反対」を主張したことには一言も触れませんでした(写真右)。他のメディアも(私が見た限り)大同小異です。

 これは、日本を含むG 7が推し進めるウクライナへの軍事支援に不都合な事実は伏せる(あるいは過小評価する)というきわめて意図的・政治的な報道です。 

 政権の意向を忖度し、あるいは政権に同調し、戦争の拡大・継続に通じる報道を行う。これは戦前・戦中の最悪の戦時報道の再現にほかならないことをメディアは肝に銘じるべきです。


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