アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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沖縄・うるま市長選でなぜ「辺野古・基地」を争点にしないのか

2017年04月18日 | 沖縄・翁長知事

    

 「辺野古新基地」の本格着工となる護岸工事について、沖縄防衛局は「作業の進捗具合や気象状況を踏まえて決定する」(18日付沖縄タイムス)としていつでもGOサインを出す構えで、情勢はきわめて緊迫しています。

 折しも、うるま市長選挙が16日公示(23日投票)されました。新人で前県議の山内末子氏=社民、共産、社大、自由、民進推薦と、現職の島袋俊夫氏=自民、公明推薦の一騎打ちです。
 「名護市辺野古の新基地建設を巡り対立する翁長雄志知事ら『オール沖縄』勢力と自民は、来年1月の名護市長選や11月の知事選に影響する重要選挙と位置づける」(18日付沖縄タイムス)選挙で、このタイミングに「辺野古新基地阻止」の民意をあらためて示す絶好の機会です。

 と思いきや、不思議なことに、この市長選では「辺野古新基地阻止」「基地撤去」が争点になっていないのです。当然争点にすべき「オール沖縄」の山内陣営があえて争点化を避けているからです。いったいどういうことでしょうか。

 告示第一声で山内氏は、「一番の政策として子育てナンバーワンの市をつくりたい」(17日付琉球新報)と述べ、「辺野古」には一言も触れませんでした(琉球新報、沖縄タイムスの報道)。玉城デニー衆院議員(自由)ら応援弁士も「辺野古」は一切言及しませんでした(同)。

 「第一声」だけではありません。山内氏は3月20日に7項目の「選挙政策」を発表しましたが、その中にも「辺野古」はありません(琉球新報の報道)。その後の新聞インタビューでも、「争点は」と聞かれて「辺野古」や「基地」を挙げることはなく、「基地問題は」と質問されても「辺野古」には言及していません(3月23日付琉球新報)

 山内氏だけではありません。翁長知事は応援のため山内氏の事務所開き(2月19日)に出席しましたが、「辺野古」にはまったく触れませんでした(2月20日付琉球新報)。

 山内氏や翁長氏をはじめ「オール沖縄」陣営が、うるま市長選であえて「辺野古」を争点から外していることは明らかです。
 なぜなのか。その背景が沖縄タイムスで報じられています。

 「『辺野古反対』が『オール沖縄』が結束するワードだが、うるまでは「『建白書』の実現」と表現される場面が多い。背景には反辺野古を全面的に打ち出して敗れた宮古と浦添(両市長選ー引用者)の経験がある。政党幹部も「『建白書』で辺野古反対を明確にしつつ、教育や経済など生活に近い政策を打ち出す必要がある」とし、こうした手法が今後の主要選挙での戦い方の試金石にもなるとの考えを示す」(18日付沖縄タイムス)

 驚くべき話です。宮古と浦添で「反辺野古を全面的に打ち出して敗れた」から、うるまでは「反辺野古」を打ち出すのはやめ、「建白書の実現」をその代わりにする。これは今回に限らず「今後の主要選挙」の試金石にする、というのです。

 これは翁長氏の考えと一致するでしょう。「建白書」を掲げることで「オール沖縄」の支持を繋ぎ止めながら、「辺野古」は全面(前面)に出さない。たたかう前から「辺野古」を下ろす敗北主義であり、「新基地建設」を事実上容認しながら「オール沖縄」の票で「知事再選」を目指そうとするものです。

 再三述べているように、翁長氏は今すぐ「承認撤回」すべきなのです。それをしないで、これからは重要な選挙の争点からも外そうというわけです。
 「オール沖縄会議」は「辺野古新基地反対」の民意をあらためて示すために「県民投票」を検討していると報じられていますが、目前の重要選挙で「辺野古」を争点から外しておいて「県民投票」とは支離滅裂です。

 「辺野古」だけではありません。トランプ大統領が北朝鮮への軍事圧力を強める中、17日には嘉手納基地から大気中の放射性物質を観測する米軍機が初めて飛び立ち(写真右)、早期警戒機も飛来しました。朝鮮半島情勢は一触即発であり、沖縄がまた戦争の前線基地にされようとしています。

 こうした情勢の中で行われる「保革一騎打ち」の市長選で、「辺野古新基地阻止」「米軍基地撤去」を争点に掲げない「オール沖縄」とは、いったい何なのでしょうか。

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