世界自然遺産に指定された西表島では、2023年4月から入島者数の制限を導入している。入島者数の上限を1日あたり1,200人、年間33万人に設定している。また、島内の一部地域では、さらに厳しい上限を設け、ガイドの同伴無く立ち入れないように求めるほか、車両の速度制限も設けるなど、さまざまな規制・制限がある。
この西表島の制限に義務や強制力はない。あくまでも現時点では協力を求めるものとされている。イリオモテヤマネコの交通事故件数は、1978年から2024年1月12日までの間で101件発生している。そのうち93件でヤマネコの死亡を確認されている。
100匹しか生息していない、世界でも貴重なヤマネコがこれだけ交通事故死しているのだ。世界遺産に指定されて、入島者が増加して交通事故死も増えた。緊急的対策として、入島者制限が導入されたと言うこともある。最後の交通事故死したヤマネコは、高梨さんが撮影したものではないか。
幸いなことに入島制限が始まった、2023年から現在までの所、ヤマネコの事故は報告されていない。イリオモテヤマネコの無事故日数が7月に555日を達成した。この数値は過去無かったほどの無事故日数である。西表の自然保護の希望を感じる数字である。これから永遠に事故なし日が続くように祈るばかりだ。
イリオモテヤマネコの交通事故は道路の形状が、自然保護という意味では全く不十分と言うことがある。ヤマネコが草むらから道路に突然現われるような箇所が十箇所はある。40キロ以下で走行するようにとされていても、突然出現すれば、避けられない箇所がまだまだある。
道路が作られたときに、動物の保護に対する意識が足りなかったのだろう。この道路際の草を刈る活動が行われている。道路際のアスファルトの継ぎ目から草が出てきている。これをドライバー状の器具で引き抜いている。大変な手間が必要になる。この経費は申請によって環境省から出るときがある。
道路側面に西表に自生している芝草を生やして、見通しをよくする活動もある。いずれも祖内に住まわれている高相さんという方が主導している。自宅で地元の芝の養成を行われている。こうした地道な活動が効果を出してきた側面もあると思う。環境省への申請が、世界遺産になって認可されやすくなったかも知れない。地元の人達の仕事を創出している。ここは大切なところだと思う。
西表島は亜熱帯の自然環境の残る特別な島と言える。そこに暮らす動植物をまるごと保存しなければならないことは当然のことだ。イリオモテヤマネコは1965年 学術上の発見がされた。島ではそれまでも捕獲され食べられるようなこともあったという。
西表島の人口は2400人あまり。その半数に当たる、1200人を一日の入島の上限にしている。西表島では2019年より入島料を設置している。一人300円を石垣島の舟乗り場で購入することが出来る。実績は約730万円で収受率は14%にとどまっていた 。自由意志による購入では、300円すら払わない。
それを今度は2000円に変更するという案が今検討されている。富士山の入山料と同じになる。今不足している、環境保全のための対策費用を入島料から捻出すると言うことは当然のことだ。世界遺産の西表の環境は徹底して保護するだけの価値がある特別な場所だ。環境を保護する役割を世界に約束したのだ。
西表島の自然に入る者はその島の特別な自然から恩恵を受けるのだから、それを守るための費用を負担するのは当然の事だろう。西表の自然環境は、完全な保護地区として、人間の関わらない自然として保護して行くべき環境だ。その意味では石垣島とは全く違う条件である。
イリオモテヤマネコが学術上発見されたとき、その保護と西表島での人の暮らしとの兼ね合いで、人より猫が大事なのかと、住民からの自然保護反対の声が上がった。一部の環境保護至上主義者からの、島で暮らす人達をないがしろにするような発言があり、島は大いにゆれて、選挙の際には、猫か人間かの論争が行われたという。
竹富町にある7島の来訪者の増加に対応するための港湾や道路、水道施設などのインフラ整備に10億円ほどかかる。救急患者の輸送や防災対応も含めると、計20億円程度の費用が必要になると見積もっている。私にはこれからの世界遺産地域の自然保護に対する準備としては、到底その程度では不十分に思われる。
世界遺産の西表島では自然環境を保護するためエコツーリズム推進法に基づく一部エリアでの入域制限を24年度にも始める。訪問税は「財源不足に伴う行政サービスの低下を防ぐ」(町税務課)狙いがあり、観光客数に制限をかける目的ではないとの位置づけだ。としている。
観光客はこれから、さらに増加すると考えなければ成らない。また増えて貰わなければ、離島の生活は出来ない時代が来る。無制限に増やせば良いと言うことでは無い。観光業に関わる者自身が、これからの特別地域での観光の在り方を、入島の人数制限を含めて、考える必要があるのは当然のことだろう。
「人間が大事か、猫が大事か。」ではない。猫も人間も大事なのだ。西表に暮らすと言うことは、猫と共存する暮らしにならざる得ないことなのだ。その意味では竹富町には自衛太吉は作らないのは当たり前の事だ。竹富町の島々には今のところ、自衛隊基地はない。せめてもそのくらいの意識は必要だろう。
ガラパゴス諸島の入島費は15000円だそうだ。当然のことだと思う。西表島に関しては、2000円でも安すぎるくらいだと思う。ただし、それだけの自然の回復を図るという前提での2000円である。まだまだ、西表島の自然環境の回復は不十分だ。特定外来生物の除去は徹底する必要がある。
猫が交通事故に遭うような道路を改修できないのでは、入島費は無理だ。西表で観光で暮らしている人達の中には、入島費2000円で観光客が減る事を心配している。観光関連の仕事で生計を立てている人が多いのだから、当然であるが、その人達にも、その2000円が還元されるような仕組みが必要なのだ。
毎日1200人が現状で、1000人に減る可能性はある。2000円払うのが嫌で、西表島に行かないというような人は、来て貰わない方が良いだろう。環境が整備された島になれば、むしろ観光客は入島制限数一杯まで増えるに決まっている。富士山以上に魅力がある。
日々西表島の入島料として、200万円が入るとして、この一部を当面減少した200人の観光客分として、何らかの形で補填すれば良い。最初はアンバランスになるかも知れないが、必ずあれだけの環境を持つ島なのだ良い形で、観光立島が出来るようになる。
富士山に登りたいという人が2000円を払いたいと考える以上の価値を、西表島は作る必要があるということだろう。西表島に暮らすと言うことはやはり特別なことなのだ。今暮らしている方々には、例えば飼い猫にはマイクロチップを付けるというような不便をかけることだが、協力をお願いするほか無い。
そして、説明会の開催や、議論を重ねる中で、この入島料は2000円から、1000円と言うことになった。これでは全く不十分な金額だが、仕方がない当面の選択かも知れない。条件が整ってきたら、値上げも考えに入れておいた方が良い。
また、修学旅行生は無料というのは、かなり問題ではないか。私が見たところ、大量の修学旅行生の列が、奥深いとこまで歩いて行く、遊歩道を踏み固めていると思う。自然への付加は変らないのだから、文科省が特別補助を出すべきだろう。何らかの条件を付けた、対応策の検討はあるはずだ。