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紅麹菌と青カビ

2024-06-05 03:09:15 | 暮らし


 発酵の世界はまだ未開の部分の方が多いのだろう。人間の健康にとって大切な物である事は確かだが、命の危険を伴うような物質を作り出すこともある。素人が適当な知識で、思い込みで適当なことをするのは極めて危険なことなのだろう。

 素人ながら長年、納豆菌で魚のあらを発酵させていた。1トンぐらい入る大きなミキサーに米ぬかやそば糠を入れてその中に魚のあらを入れていた。納豆も入れる。良いタイミングでかき回すと80度を超える。マグロの頭が1週間で皮だけ残して消える。皮は防御機能が強い。

 もう一つが嫌気発酵である。嫌気発酵はおからをドラム缶に詰めるのだ。ヤクルトミルミルを入れて踏みつけて密封する。2つの発酵で出来た飼料を混合して与えていた。家で出る生ごみなどもすべて、餌になる。糞は臭わなくなるし、良い卵を産んでくれる。良い卵とは何か。

 発酵飼料を与えると良い卵を産んでくれる。良い卵とは生命力の強い卵だ。3ヵ月生きている卵を目標に作っていた。好気性発酵と嫌気性発酵を組み合わせて、与える飼料は、3カ月保存して、孵化して雛になったのだ。これが出来て初めて発酵飼料を体得したことになる。卵の味も重要なバロメーターで、味がないはずの白身が美味しくなる。

 この飼料の作り方を家畜保健所では危険だからやめろと言ってきた。何十年も毎日このエサを使っていて、問題がないどころか、最高の卵が出来ている。こんな生命力の強い卵を作れるなら、作って見せろ。そして、鶏の血液検査をさせた。ワクチンなどしたことがないが、免疫が出来ていることを証明してもらった。

 青カビが作り出すプベルル酸が腎臓尿細管「壊死」させると、厚生省が発表した。今回の小林製薬の紅麹菌サプリでの、死亡事故は原料を作る前の段階にあたる紅麴菌の培養過程で、工場内の青カビ(Penicillium adametzioides)が混入したとみられている。どれほどずさんな管理であろうか。製薬会社と名乗りながら、紅麹菌の培養過程で青カビが混入するなど考えられないことだ。

 これが正にサプリの危険だ。医薬品であれば、さすがにこんなずさんな製造過程は許されないだろう。養鶏で危険な発酵になれば、卵がすぐ悪くなる。サプリだからという甘さが、死亡事故にまで繋がってしまったのだ。この事故は日本社会の劣化の結果とも言える。拝金主義から来たものだ。あらゆる現場で、モラルや誇りが失われている、と思われる問題が起きている。

 話は飛んで変わるが、ここからがもう一つ描きたかったことだ。私は石垣島のこの家で死ぬつもりでいる。だから100歳までの30年は維持できる大丈夫な老人向きの家をお願いした。100年住宅など全くいらないとお願いした。設計の輝喜名さんと言う方が、とても優秀なかたで、あと25年たたないとわからないが、お願いしたように作ってくれたようだ。

 74歳になり、老人ホームの記事を読むようになった。ネットは狙い撃ちで広告を入れる。高級老人ホームの問題点だ。いわゆる詐欺商法と大差がないものがあるらしい。年寄が寝たきりになっても安心できるようなきれい事を並べて、大枚払って入居させる。そして、適当なところで動けない老人を強制退去させる。怪しげなところが多いようだ。

 安心できる死の看取りまでしてくれると言う謳い文句が、実はウソなのだ。人間の死に方と言うことは、実に難しいものだ。葉隠れの口伝では、「武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり。」と伝えられている。道元禅師は、「生を明らめ死を明らむるは仏家一大事の因縁なり 」と書かれている。

 死をどのように受け止め、迎えるかは老人になれば誰もが直面する問題である。野垂れ死にの覚悟。人生至る所青山あり。と言うつもりでも、いざとなれば惚けたりして、強がりばかりではどうにもならない。死を明らめられない迷いや苦しみが生まれる。そこにつけ込む詐欺が横行する。

 この現世極楽のような老人施設に来れば、安心して、死を迎えられる。と思い込まされてしまう。美味しいものが食べられる。医療施設も万全。優しい人達に囲まれて日々を過ごす。私のようなひねくれ者は、そんなうまい話があるわけがないと、今は考えている。

 どのような施設であれ、死への道のりは厳しいものがあるに決まっている。だから、死は覚悟が必要なのだ。死を見極め理解し、受け入れる。それ以外に死を迎える安心はない。死後の世界のようなものを想定するのは、正に詐欺宗教である。死後の世界で信者を騙しているに過ぎない。

 死後などあるわけがない。産まれる前の世界がないように、死後の世界もないと断言したのが道元禅師である。だから今生きると言うことにどれだけひたすらになれるかである。刻々ひたすらに生切ること以外に、やれることもない。それが自分という存在を生き切ると言うことだと示されている。

 こんな風に書いてみたところで、何かそういう立派な覚悟があるわけでもない。昨日は1歳からの友達だった上野剛が死んだという連絡があった。それで文章が変わってしまった。74年間付き合ってきた中だ。私のいとことの結婚を仲人として進めた。先月会った。お互い身体に気をつけようと言い合って分かれて、1ヶ月も経たない突然の死だ。

 ガンだったという。何も私に言わなかった。「元気ないなあー、大丈夫かよ。」と言ったら「もうだめだよ。」「そんなことを言ってないで病院に行けよ。」と言ったら。病院など行かないと言っていた。あの言葉の意味を理解できなかった。複雑な顔をしていたのだ。半年前に路上で倒れていて、救急車で搬送されたことがあったのだ。

 その時に、精密検査を受けて、どこも悪い所はないと言われたので、却って安心になったと言っていた。半年前の倒れたときには実は悪い所が在ったのだ。あの頃からどうも元気がなくなった。東京に行ったとき、心配で電話をしたこともあったのだが、電話に出なかった。それでも毎月1度は会うと寝ていて気付かなかったと言っていた。

 救急病院の精密検査では発見できなかったのかもしれない。ガンかも知れないという検査ではなかったのだから、仕方がない事だったかも知れないが、あのときにガンを発見できれば、とつい考えてしまう。命には運というものもつきまとう。受け入れるほかないのが死だ。

 老人ホームビジネスは死を安楽に迎えられるという事が売りなのだろう。しかしどれほどの施設であれ、あくまで商売である。利益が出ないことなどしない。介護が困難になれば、出されてしまう。ホスピスではないのだ。何とも難しいものである。

 話が戻るが、紅麹菌の培養に青カビが混ざる環境では、製薬会社とは言えない。薬を作る環境で、雑菌が混入する施設というのはあり得ない。これがサプリだから許されている、工場の衛生管理状態だったのだろう。サプリには製造者責任はあるが、医薬品としての国の監督下にあるわけではない。

 今回の事故を受けて、錠剤やカプセルといったサプリメント形状の食品を機能性表示食品として販売するためには、品質・衛生管理に関する「適正製造規範(GMP)」に沿って製造するようメーカーに義務づけることなどを盛り込んだ。

  米に紅麴菌を植え付けて培養し、加熱・粉砕する。それを成分が一定になるように混ぜ合わせて紅麴原料はできる。 青カビが大阪工場の種菌培養室や、今年から生産を引き継いだ和歌山工場の培養タンクのふた、乾燥室などから見つかった。サプリ工場内に青カビがある程度の衛生管理が、普通なのだろうか。 

 大阪工場で、床にこぼれた材料を拾って再び使った不適切事例があったという。そんな製薬会社あり得るだろうか。昨年6月に商品を自主回収していたことを明らかにした。 粉を混ぜ合わせる機械のふたを閉め忘れ、33キログラム分の粉が床に散乱。このうち、床や機械に触れていない11キログラムをすくって再び使い、120キログラムの紅麴原料を生産した。当時の生産管理の担当者らの判断だったという。 すごい製薬会社である。
  
 
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