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台湾包囲の軍事演習の意味

2024-05-27 04:02:26 | Peace Cafe


 台湾包囲と言う威嚇は、より台湾を独立意志を強くすることだろう。台湾が中国の一部であるっとしても、台湾の人々が、こんな横暴な軍事国家に従いたくないのは当たり前の事だ。中国の軍事力の誇示は、台湾侵攻が近づいたことを意味していない。むしろ、中国習近平政権の焦りが浮き上がってくる。

 台湾の新総統頼清徳 就任式に、日本の国会議員およそ30人が出席した。山中石垣市長や与那国島町長も出席した。こうした行為に中国の呉江浩駐日大使が「日本という国が中国分裂を企てる戦車に縛られてしまえば、日本の民衆が火の中に連れ込まれることになる」と恫喝と言えるような発言をした。

 中国在日大使の発言は外交官としては、異例の過激発言であった。台湾を実質国家として扱う日本に対して、がまんならないと言うところなのだろう。何故ここまで中国が台湾問題でいきり立っているかと言えば、台湾の民主主義が、中国人民には危険思想であり、目障りだからに違いない。

 中国にしてみれば、香港を中国化することに成功した。次は台湾を中国に従えたいと考えている点では間違いがない。しかし、台湾がこれほど中国からの圧力にもかかわらず、より中国から距離を持つようになっている現実がある。平和的な手段での統一の希望が、一向に近づかない焦り。

 中国の力による現状変更を、目の前の台湾が拒否していると言うことになる。中国政府にしてみると中国国内に潜在的に存在する、反政府勢力に悪い影響を与えかねないと考えているのだろう。脅せば、従うだろうという一方的な姿勢は、習近平政権が独裁化して悪い方向に進んでいることを示している。

 台湾を統一することは実は簡単にできる。中国が自由を求める民主主義国家に変われば、良いだけのことだ。こうして独裁政権がより頑なになれば、統一は遠のくばかりである。中国人は古代から外交に長けた有能な人達だ。統一に重要なことは、軍事力よりも経済力である事は十分に承知なのだ。

 それでも、軍事力を示さずにはいられない事情があるのは、やはり国内問題も影響していると考えておいた方が良いのだろう。経済成長が鈍化し始めている。ここ20年中国人は暮らしが、具体的に良くなってゆくことを実感してきたはずだ。ところが、少し不安が生じている。

 高度経済成長下では問題にならないようなことも、前ほど給与が上がらないとなれば、「共同富裕」を政府も主張せざる得なくなる。社会主義国家のなかでの、不自然な富裕層への反発は何時爆発するか分らないものがあるのだろう。それが、政府への不満に変る可能性がある。

 「共同富裕」の実効性の問題である。そもそも共同富裕は毛沢東が1953年に主張した思想だ。毛沢東時代には共同という考え方のために、むしろ経済は停滞をしていた。それが鄧小平時代になって、国家資本主義を導入し、高度経済成長に突入する。この矛盾した考え方が、中国人には合っていたのだろう。

 経済成長の恩恵は都市中心のものであった。不動産バブルやインフラ整備に見られるように、膨大な先行投資を行い、経済成長に成功し、富裕層が表れる。それでも農村部の貧困はなかなか解消されなかったが、都市部の経済の活況が農村部にもそれなりの恩恵をもたらした。

 こうした経済成長期では、農村部の人達も頑張って働けば、頑張って勉強して良い大学に入れば、農村から脱出が出来て、暮らしが良くなると言うことが実感できた。ところが、いつまで経っても富裕層ばかりに恩恵が集中し、地方の農村は停滞は解消が出来ない。

 それで、2021年8月から、習近平政権もあらためて共同富裕を提唱する。富裕層を抑えようと不動産投資を抑え始めた。汚職賄賂撲滅を掲げて、富裕層に圧力をかけている。企業や富裕層への富を、社会全体に分配するよう主張を始めたのだ。これは国家資本主義から言うと、矛盾したことでもある。

 李克強首相も2020年5月「毎月の収入が1000人民元程度(日本円で1万7000円程度)の人がまだ6億人いる」と述べ、中国政府も収入が低い人が依然として多い実態を認めている。中国の上位1%の富裕層1000万人が中国全体の資産の30.6%を保有している。

 高度成長をするために資本を集中させる国家資本主義政策の結果、日本どころではない格差社会になってしまったのだ。それでも、下層階層にも希望や恩恵がある間は良かったのだが、経済成長が鈍化して、このところ農村部の経済成長の希望が、危うくなってきたという所だろう。

 その社会全体に漂い始めた、経済成長鈍化の意識が、台湾への軍事圧力の強化に表れている。もし国内で不満分子がいれば容赦しないという政府の姿勢の誇示だ。だから台湾包囲はあくまで、圧力行為である。脅しで済まそうとしているのだ。今実際の軍事力行使は行うことが出来ない。

 もし軍事力を行使すれば、習近平政権は崩壊する可能性が出てくる。軍事力を威圧行為として効果を高めようとして、在日中国大使が脅迫めいた暴言まで吐いてしまったのだ。このように中国の焦りは強まっている。実際には軍事力を行使できない焦りでもある。

 台湾を軍事侵攻で制圧することは、ウクライナをロシアが侵攻しているよりも、軍事的にはるかに難しいことだ。間に150キロの巾の海があるのだ。そして台湾島には2357万 人の人が暮らしているのだ。この距離の海を挟んで侵攻作戦をするとして、今行っている台湾包囲の軍事力程度では到底無理なことだ。

 台湾包囲の軍事演習の意味は、台湾を包囲して、台湾を封鎖する作戦なのではないか。外界との遮断を模索しているのでは無いだろうか。台湾の封鎖が出来るのかどうか。また出来たとしてどのくらいの期間可能なのか。封鎖を続けた上で、恫喝外交をしようというのでは無いだろうか。

 もし、中国が台湾を侵攻を実行したとなれば、当然近隣諸国、およびアメリカは反撃することになるだろう。台湾の問題は近隣諸国にとって、明日の我が身で他人事では無いからだ。当然対中国の経済封鎖も起きるだろう。その経済圧力に中国が耐えられるとは思えない。この点ではロシアとは違い、人口が大きすぎる。

 それでも台湾侵攻を行うかと言えば、あり得ない。そこまで愚かな国などない。日本の右翼政治家が今にも軍事侵攻があるという妄想発言は、軍事予算を増額したいからだけだ。中国仮想敵国論で、日本を軍事国家にすべきと考えている人達の、扇動発言は無視したほうがいいだろう。

 中国に行き、それなりに中国の人と関わってきた。中国人は人間としての能力が高い。立派な人にたくさん出会った。実行力もあるし働き者だ。政府の言いなりになるような人達ではない。今政府支持を声高に発言するのは、その方が有利だからに過ぎない。経済が変ればどこかで変ると見て良い。

 台湾に行きすっかり台湾が好きになった。台湾という国柄が素晴らしい。中国にこれだけ圧力をかけられながら、民主主義国家として成功し、今や東アジア1番の経済の国になったのだ。日本が学ばなければならない国だ。そんな台湾を軍事力で潰して良いはずがない。いつか、台湾と中国が仲良くなる日は必ず来るはずだ。
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