蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

銃・病原菌・鉄

2021年11月19日 | 本の感想
銃・病原菌・鉄 (ジャレド・ダイアモンド 草思社文庫)

東南アジアで研究活動をしていた著者が、助手の現地人から、地域によって文明の発達度合いが全く異なるのはなぜなのか?と素朴に問いかけられて、その原因を考察したのが本書。

貯蔵可能で短期間に育成できる栽培植物があったか否か、家畜にできる動物がいたか否かがその大きな要因という。栽培植物の収穫・貯蔵により人口密度があがり、家畜動物から感染症をもらうことでいろいろな病原菌に抗体を持てたことも重要としている。

確かに最も多くのヒトを死亡させてきたのは、戦争でも飢餓でも自然災害でもなくて病原菌かもしれないなあ、と昨今の状況を見ると考えざるをえない。ヨーロッパ人も意識して感染症を新大陸とかに持ち込んだわけではないし、(アジアの熱帯雨林地域などで)抗体を持たない感染症が彼らの進出を拒んだことも知らなかっただろう。

ユーラシア大陸は東西に長く、同緯度の地域が多い(=気候が似ている)ことから栽培や牧畜その他の技術の伝搬スピードが早かったのではないか(逆に南北に長いアメリカ・アフリカ大陸は遅い)という説は単純だが、「言われてみれば」という納得感があって興味深かった。

それにしても本書における(人類や文明の)タイムスパンは恐ろしく長い。○○が伝わるのにたった千年しかかからなかった、的な記述がやたらに多くて気が遠くなる思いがした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする