蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

高砂コンビニ奮闘記

2012年07月29日 | 本の感想
高砂コンビニ奮闘記(森雅裕)

著者の商業ベースでの刊行は10年ぶりだそうで、ご存じの方も少なくなっていると思います。
たまたま私は乱歩賞を受賞した作品を含むベートーベンを主人公にしたシリーズを読んでいます。このシリーズは、(乱歩賞受賞作は、まあ良かったのですが、その後)ダレたかなあと思っていたのですが、その後に読んだ自伝的?青春小説「歩くと星がこわれる」はとても良かったです。

この本は本屋でも見かけたのですが買うまでには至りませんでした。
しかし、その後、地元の図書館でも所蔵されているのを見つけました。今となってはマイナーな著者、マイナーな出版社なのによく買い入れたものだなあ、と思ってよくみると、開架にけっこう何冊も森さんの著書が並んでいました。もしかして購買担当者がファンなのでしょうか。

東京芸大出て、乱歩賞で華々しくデビューしたものの、今ではホームレス同然の暮らしをしている著者が、仕方なく近所のコンビニで1年強働いた体験記。
私も学生時代2年間コンビニの夜勤バイトをしていたので、共感できるところもたくさんありました。
ここは違うなと思ったのは、クレーマーが多いことで、私の頃は、アルバイトの店員に向かってクレームを言うお客さんなんてめったにみかけませんでした。
まあ、私の場合は20年以上前の話だし、東京郊外のロードサイドの店だったので、下町で駅近くの店とは環境、地域性が異なるのでしょう。
ただ、著者が主要出版社と絶縁状態なのも、そのあまりに圭角のある性格のせいのようなので、店番の態度が少々横柄なのが原因かも。。。。

体験記の部分はそれなりに楽しく読めましたが、終わりの方のボヤキのようなところは、ナントカの遠吠えにしか思えず、見苦しかったです。
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マージンコール

2012年07月28日 | 映画の感想
マージンコール

アメリカの大手証券会社でポジション管理の責任者がリストラされる。

この責任者は、会社が不動産証券化商品?の過大なポジションを抱えすぎてしまったことをほぼつきとめていて、残る同僚にデータを提供する。
その同僚はデータをもとに会社がヤバいというレポートを完成させて上司に報告する。
会社の命運がかかっていることを察して、上司は主要役員を召集する。深夜の役員会は、即日ポジション解消を命じるが・・・という話。

と、いうあたりまでは、緊張感もリアリティ(即日ポジション解消はありえないが)もあったが、その後は間延びした感じ。
トレーダー達がポジションを解消するために悪戦苦闘する様子がクライマックスシーンなのかと思ったら、そこは軽くスキップしてしまった。
ケビンスペイシー(クビになった管理責任者の上司役)が役員に慰留されて会社に残る決断をするところも不自然というか、説得力がなかった。
ロケは本物の証券会社のフロアらしく、暗闇に数多くのスクリーンが浮かび上がるシーンはいかにもそれらしかったし、ある種の美しさもあった。

リストラされた管理責任者が、会社が危機にあることがわかって助けを求めに来た上司に対し、その昔自分が橋の設計に携わっていたことを話すシーンが印象的だった。
橋ができたことによって周辺住民が節約できた時間は膨大なものになったと言う。(それに比べて証券会社の仕事はむなしいと間接的に言っている)
いわゆる「地図に残る仕事」論だが、「じゃ、なんで証券会社に来たの?」と訊かれたら「それはまあ、おカネがね・・・」ということなるわけで、まあ、ないものねだり とか 隣の芝生は青い にすぎないと思った。
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ラストダンス

2012年07月28日 | 本の感想
ラストダンス(堂場瞬一 実業之日本)

プロ野球 東京スターズのかっての主戦投手・真田は40歳になり、シーズン途中で今シーズン限りの引退を宣言し、残りのシーズンを派手にしめくくろうとする。
真田の同期入団のキャッチャー・樋口は引退を勧められているが、シーズン終盤にレギュラー捕手がケガをしたことから一軍でプレーすることになる。樋口は真田よりドラフト順が上だったのに、一軍半でたいした実績がなかったことが、いつもひっかかりになっている。真田と樋口は相性が悪く、バッテリーを組んだ実績は1回しかなかったが、リーグ戦最後の試合で組まざるをえなくなった。そして真田から思いがけない依頼を受けるが・・・という話。

悪者が登場せず、真田や樋口はやたらと恵まれた環境にあり、「そんなにうまくいくわけないでしょ」という筋書きではあるのだけれど、同じ野球小説の「BOSS」とは違って散漫な感じはなく、ラストまで一気に読めたので、エンタテイメント小説として高品質だったと思う。タイトルが悪くて損してる感じ。

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池上彰の「ニュース、そこからですか!?」(池上彰 文春新書)

2012年07月25日 | 本の感想
池上彰の「ニュース、そこからですか!?」(池上彰 文春新書)

中3の長男の社会の模擬テストをみたら、APECの問題が出ていて、それなりに時事的でそれなりに難度の高い問題だった。で、長男の正答率もいまひとつ、ということで、これまで洪水のように書店にあふれている著者の作品は、意識的に避けていたのだけれど、現代社会?と勉強にはもってこいじゃないかと思って、この本を買ってしまった(で、長男に読ませる前に自分で読んでみた)。

まあ、確かに読みやすいし、知っていそうで実はあまり詳しくなかった次のような事項がよくわかったような気がした。
で、凡百の解説書とは違って、確かに要点が短く的確にまとめられているように思われた。

・なぜ、アメリカ大統領選挙の投票日は11月第一月曜日の翌日なのか。
・中国が低コストでレアアースを算出できる理由。
・日本の「動的防衛」導入の背景
・中国が北朝鮮を見離せない理由(←説明には説得力があったが、やや違和感も)
・なぜシリアが本格的介入を受けないのか(←常識だとは思うが、私には耳新しいことが多かった)
・イランのクルド人自治区は開発ラッシュ
・アメリカの大陪審と検察審査会の類似点
・民主党の自民党化
・大阪都をめざす背景
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生、なお恐るべし

2012年07月25日 | 本の感想
生、なお恐るべし(アーバン・ウェイト 新潮文庫)

非合法ドラッグの運び屋である主人公は、大口荷物の輸送中に保安官に見つかって逃亡する。
そのために、依頼元からさらに困難とみられる運びを受けざるをえなくなるが、依頼元はその仕事完了とともに主人公を始末してしまおうと殺し屋を派遣する。
主人公の生存をかけた逃亡劇に複雑な過去を持つ保安官とプロそのものの殺し屋の執念を絡めて描く。

映画の「ノーカントリー」と似ているなあと思った。「ノーカントリー」と同じように主人公と同じかそれ以上に殺し屋が不気味でかつ魅力的。

ストーリーは比較的単純だし、直線的に話が進むので読みやすい。しかし、登場人物の来歴や麻薬組織の内幕が、ところどころ思わせぶりに描かれながらもなかなか全貌が見えてこない構成がいい味付けになっている。
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