蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

日本史の謎は「地形」で解ける

2014年12月27日 | 本の感想
日本史の謎は「地形」で解ける(竹村公太郎 PHP文庫)

本屋の平台でよく見かけましたし、いつも読んでいるとあるサイトで「とても面白い」と紹介されていたので、読んでみました。

著者は国土交通省で長年河川管理に携わり、局長まで務めた人だそうです。
なので、地形の中でも河川絡みの話題が多くなっています。

例えば、関ヶ原の後、家康が(天下取りのためには有利と思われる)京都・大阪にとどまらず、江戸に帰った理由は、東京湾に流れ込んで流域を湿地化していた利根川(を付け替えて現在の流れに変える)の工事を督励するためだったとか、
石山本願寺が信長の攻撃を10年にわたって耐えられたのは、大阪城があった地形(台地の上にあり周囲は湿地帯)のためとか。

まあ、それも一つの理由かもしれないけど、それだけじゃないよね、というネタが多いし、やたらと「これしかない」的な断言口調がちょっと押しつけがましい感じ(おそらく、著者も仮説(にすらなってない感じだが)にすぎないことはわかっていても盛り上げようとしてわざとオーバーな言い回しにしているとは思うものの)でした。

気になった(というかおかしいと思った)のは、冒頭の章では、家康が関ヶ原後、江戸に戻ったのは治水工事をすれば耕作面積が広がると見込めるため、と言っているのに、最後の章では関西圏の森林資源が枯渇しそうだったため、と主張している点。別の本ならまだしも、同じ本の中でこれはまずいんじゃないかと。それに、平安京から延々と京都近辺の森林資源を消費し続けられるほど京都あたりの森林が豊富だったとは思えないし。
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ダラスバイヤーズクラブ

2014年12月27日 | 映画の感想
ダラスバイヤーズクラブ

ロデオが好きな生粋の西部男の主人公は、放縦な性生活の報いでHIVに感染してしまう。
最初はAZTという臨床実験中の新薬を不正に入手して克服しようとするが、体調は悪化の一途。
ウイルスを殺そうとするのではなく、免疫を強化する対症療法の方が有効と主張する医者と出会い、AZTは止めてその医者が勧める米国内では未承認の薬(その中には林原のインターフェロンもあったようだ。その林原も今では・・・それにしても林原社員として登場する役者の日本語はヘンテコだったなあ)を摂取し深刻な症状から回復を見せる。
主人公は、未承認薬を密輸し会員(HIV感染者)に譲渡するクラブを立ち上げる・・・という話。

自堕落な生活を満喫していた主人公が、感染を告げられると図書館で資料を漁り、麻薬や酒を控えめにする等、生活そのものを見直し、やがて世界各地を飛び回る有能なビジネスマンのような活躍を見せるようになる。そうした姿を描く、一種のビルドゥグスロマン。
ただ成長する前から、主人公の(不法行為もふくめて)どんな手段を使っても生き延びようとするガッツはすごいものだった。
実話に基づく話らしいが、ドキュメンタリータッチの演出もあり、本物の人が出演しているような錯覚をおぼえるほど迫力ある内容だった。

本作ではAZTは極め付けの悪者扱い。
(うろ覚えだが)AZTが登場したころは、HIVに対抗できる新薬として、開発した会社の株がずいぶん騰がったような記憶がある。
HIVが本格的に流行しだした頃の騒ぎは現在のエボラとはくらべものにならないくらいすごかったから、AZT(と製薬会社)はヒーロー扱いだったけど、実態はそうでもなかったんだね・・・
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