蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

光秀の選択

2021年06月19日 | 本の感想
光秀の選択(鈴木輝一郎 毎日新聞出版)

2020年7月の出版なので、(大河ドラマとの関係で)「選択」というのは本能寺に係ることだろうな、と思ったのだが、実際には、足利義昭と織田信長という二君に使えた光秀がどちらを選ぶのか?という意味だった。

といっても、本書での光秀は、板挟みになって煩悶したりせず、積極的にどちらかを支援するというこもなく、流されるまま、という感じ。ラストでも「選択」したのではなくて、信長が義昭を追放するのを眺めているだけだった。

マーケティングのために「光秀の・・・」というタイトルにしたものの、実際にテーマとしているのは、(一般には日和見の無能な人物と見られている)義昭の再評価だと思う。
自身は財力も兵力も一切保有していないのに、諸大名や一向宗徒を糾合して、信長をあわやというところまで追い込んだ、交渉力と粘り強さが(本作では)高く評価されている。
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アンダードッグス

2021年06月19日 | 本の感想
アンダードックス(長浦京 角川書店)

キャリア官僚の古森慶太は、農水省の裏仕事に関わってたことが露見してクビになり証券会社に勤める。そこで担当したマッシモというイタリア人富豪に見込まれて、1997年英国から返還される直前の香港から運び出される予定の機密書類を強奪するよう依頼される・・・という話

と、ここまでの冒頭の筋だけでも荒唐無稽といえそうなのだけど、そのあとの展開はさらに現実離れしていて、単なる公務員だった主人公があまりにもスーパーマンすぎる。
作者が開き直って思いっきりぶっとんだホラ話にしているのならまだいいんだけど、変にリアリティを持たせようとしているのが鼻について、どうにも面白くなかった。(本書は、2020年の各種ミステリランキングで上位に選出されており、私の読み方が悪いんだとは思います)
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透明人間(映画)

2021年06月19日 | 映画の感想
透明人間(映画)

最先端の光学技術者で大金持ちのエイドリアンの妻?セシリアは、夫の過剰な拘束に嫌気がさして?厳重なセキュリティを越えて夜中に逃げ出して、知人の警察官の家に身を寄せる。その後、エイドリアンは自殺したとされるが、セシリアは信じられず、エイドリアン自身が開発した(光学技術を利用した)透明化スーツを利用して自分に復讐しようとしていると疑う・・・という話。

人間関係の描写とか、背景の説明は最低限に抑えて(ウエルズ原作の)「透明人間」というアイデアを目一杯エンタメ化した、という感じの作品で、とても楽しめた。主人公のセシリア(エリザベス・モス)はちょっとたくまし過ぎたけど。
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蜜蜂と遠雷(小説)

2021年06月19日 | 本の感想
蜜蜂と遠雷(小説)(恩田陸 幻冬舎)

日本で開催された国際ピアノコンクールに出場した4人(マサル、栄伝亜夜、風間塵、高島明石)のピアニストを描く。

クラシック音楽やピアノ演奏の良し悪しをわかる人は(私を含め)あまりいないと思うし、それを文章で表現するのは難しいと思うが、本書を読むと、それがわかるような気がしてくるのだから、著者の筆力はすごいなあ、と思った。

1〜3次予選、本選と4人(途中から3人)の演奏ぶりを4たびも描写するのだけど、くどさや飽きを感jさせず、それぞれに趣があってスイスイと読み進めることができ、2段組で500ページもあるけど、いつまでも読み続けていたいような気分になった。
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ウナギが故郷に帰るとき

2021年06月12日 | 本の感想
ウナギが故郷に帰るとき(パトリック・スヴェンソン 新潮社)

アリストテレスが自然発生説を唱えるなど、ウナギの生態は謎に包まれてきた。ヨーロッパのウナギは、サルガッソー海で産卵して8ヵ月もかけてヨーロッパの川に戻るらしい、という仮説があるが、サルガッソー海でウナギの成体は発見されていない。
川についたウナギはシラスウナギから黄色ウナギさらに黒ウナギへと変態していく。
といった、ウナギの科学的描写と、ウナギ漁が趣味だった父の思い出話が交互に語られる。

ウナギの7割が日本で消費されているそうだが、日本人としては、日本人以外にもあんな不気味なみかけの生物を食べている国があるんだ、などと思ってしまう。
また、ウナギは生命力が強く、井戸の底で数十年も生き続けた例もあるそうだ。

長らく道路舗装の仕事を続けてがんに冒されてしまった父とのエピソードが素朴で、ほのぼのしてとてもいい。
余談だが、あまり高収入とは思えない著者の生家は、広々して家族一人一人に部屋があってあまり使われない部屋すらあって広い庭もあればサウナもあったそうである。スウェーデンの住宅政策のおかげらしいが、うらやましい。
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