蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

受験脳の作り方

2012年08月25日 | 本の感想
受験脳の作り方(池谷裕二 新潮文庫)

「脳科学で考える効率的学習法」という副題がついているが、内容は、王道をいく学習法が回り道でも結局一番効率的、というもの。逆にそれからこそ、中身に信用がおけるものになっている。相変わらずの著者の軽快な語り口でとても読みやすい。以下は備忘。

・脳は生きていくのに必須のものだけを優先して記憶し、そうでないものは積極的に忘れようとする。だから生存に必須でない学問の知識は(繰り返しインプットされるのでとても重要なものだと脳が錯覚するほど)何度も記憶を試みるしかない。

・予習より復習のほうが圧倒的に大事。復習することによって忘れる速度が遅くできる。復習は、翌日、一週間後、二週間後、1カ月後の4回でほぼ記憶に定着する。また同じ参考書・問題集を繰り返し行う方がよい。

・記憶するには入力(知識の詰め込み)より出力(問題やテストをやってみる)をたくさんやる方がよい。

・空腹時、歩行時に学習するとよい。勉強するときの室温は低めがよい。

・記憶の定着には睡眠が必要。また眠る直前に記憶して忘れる前に寝つくのがよい。

・人間の記憶はあいまいで柔軟な点に特徴がある。まず全体像をぼんやりと把握した後に細部を記憶する計画的な学習がよい。

・知識記憶より経験記憶の方が定着も活用もしやすい。声に出して憶える、手で書いて覚えるのは経験記憶に近づけるよい方法。

・成績は等比級数的に伸びる。はじめはなかなか伸びなくても継続することでどこかで大きく伸びる。(効果が出始めるまでに3カ月は必要)

また、本書では数多くの箴言が引用されているが、気に入ったもの2つを書いておく。

・登山の目標は山頂と決まっている。しかし、人生のおもしろさはその山頂にはなく、かえって逆境の、山の中腹にある。(吉川英治)

・人間は負けたら終わりなのではない。あきらめたら終わりなのだ。(ニクソン)
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リスク、不確実性、そして想定外

2012年08月25日 | 本の感想
リスク、不確実性、そして想定外 (植村修一 日経プレミア)

新書は入門書であって、それを読んでもっと詳しいことが知りたければさらに専門書を読む、という位置づけではあるにしても、本書はあまりに内容が初歩的すぎるし、ただ漫然と書き散らしていて整理や体系化が不十分だと思う。発行元が日経系ということからしても、買う方としては、もう少し高いレベルの内容を期待するとも思う。

数多く挿入されている歴史コラムも、あまりに有名すぎるエピソードばかりで、読む前から内容が想像ついてしまう。

ナイトが再注目される前なら、パクリっぽいタイトルもかっこいいと思うんだけど、リーマンショックで広く知られるようになった今となっては陳腐なだけ。
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シンメトリー

2012年08月25日 | 本の感想
シンメトリー(誉田哲也 光文社文庫)

目次を見たとき、これはもしかしてとてつもなく凝った趣向の短編集なのでは?と思ったが、左右対称になっているのは短編のタイトルだけであって、内容は、相対する2編に関連性があるわけではなかった(それとも、私が読み取れてなかっただけ?)。

たまたま姫川シリーズのテレビ番組を見て、案外面白かった(竹内さんが好みというのも大きいが)ので、原作を読んでみた。
主人公が美人の女刑事である必然性は全くないし、やたらとカンで事件解決の緒をつかむのもどうかと思うが、警察小説としてはちゃんと面白いし、すいすい読める。

表題作(シンメトリー)が一番良いと思った。左右対称を愛する犯人の心情が、簡潔ながらもうまく表現されていた。
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ツーリスト

2012年08月19日 | 映画の感想
ツーリスト

アンジェリーナ・ジョリー演じる主人公はイギリスのスパイで,ギャングの大ボスの資金を持ち逃げした犯人を追っているうち、その犯人にホレてしまって姿を消していた。
この主人公がベネチアにさえない数学教師(ジョニー・デップ)を伴って現れ、ギャング界、スパイ界がざわめき立つ・・・という話。

昔からジョニー・デップ出演の映画をけっこうな数見てきましたが、彼の魅力は、狂気と紙一重のところにいる人の役柄をやっているときに最大限に発揮されるように思います。
その点、この映画での役柄は「平凡でのんきな中年男」くらいの感じなので、別に彼でなくてもいいのでは?と思ってしまいました。

イタリア人が、アメリカ人を田舎者扱いする場面がいくつもあって、アメリカ人に(日本人が欧米人に対して抱くような)そういうコンプレックスがあるいうのは意外でした。
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SPACE BATTLE SHIP YAMATO

2012年08月19日 | 映画の感想
SPACE BATTLE SHIP YAMATO

原作は30年以上前の作品なので見たことがある人もだんだん少なくなってきていると思います。
私は原作アニメのかなり濃いめのファンだったので、本作はとても楽しめましたが、何の前提もなく見たら「ナニコレ?」ってなりそうな懸念も感じました。

アニメのTVシリーズと映画版の続編を2時間強に圧縮して、名場面、名セリフもぎゅっと詰め込んでいるので、筋書きが少々唐突に感じるところもあり(例えば、真田が死地に赴く前に古代に「おまえを弟のように思っていた」という主旨のことを言う場面がありますが、長いシリーズを経てこそ納得できるものであって、この映画ではイキナリ感があって、BLかよなんて勘違いがおきそう)ますし、SF的設定も(今となっては)かなり無理めのところが多いです。

一方、デスラー(声優がオリジナルといっしょというのがすごい)とスターシャの処理というか解釈はなかなか上手くいっていたと思います。特にスターシャの登場のさせ方には感心しました。

森雪も、戦闘機のパイロットにする必然性は感じませんでしたが、冒頭のシーンはよかったです。

繰り返しになりますが、原作アニメのファンの人にとって、本作は豪華キャストによるヤマトのコスプレみたいなものと考えれば、けっこういけると思いますが、それ以外の人にとっては駄作でしょう。

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