蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

世界に通じる、未来へ通じる「港湾」の話

2019年04月27日 | 本の感想
世界に通じる、未来へ通じる「港湾」の話(「港湾」の話 編集委員会 日本経済新聞出版社)

港へ行ってぼんやり海を見て、巨大な貨物船がゆっくり接岸するのを見るのが好きなので、
たまたま図書館で本書を見つけて借りてきた。

どうも港湾関係の役所や企業の志望者向けに作られたリクルート用資料みたいで、港湾で働く若者の体験談みたいなのがたくさん挿入されている。しかし、その他の部分はけっこうなハードなプロジェクト概要設計書的内容で、港でのコンテナ整理の話や大阪湾のトンネル工事(あらかじめトンネル部分を作っておいて海に沈めて繋ぐという工法。水密性を保つためのつなぎ方が興味深かった)などが面白かった。
日本の貿易量の99%以上が船によって運ばれている(従って港経由で持ち込まれる)そうで、港湾というのは想像しているよりはるかに重要なインフラだし、相応の予算が投入されていることがよくわかった。
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監督の問題

2019年04月22日 | 本の感想
監督の問題(本城雅人 講談社)

新潟を本拠地とするプロ野球チーム:OCアイビスは、冴えない成績が続き、毎年監督のクビがすげ替えられている。関西の人気チームの4番だった主人公の宇恵は、アイビスの新任監督になるが、コーチ陣は対立が目立ち、選手のやる気はイマイチで困惑気味・・・という話。

選手に関するエピソードはほとんどなく、オーナー、球団代表、コーチ、球団広報との間でのやりとりが話の中心で、野球小説だと思って読み始めたらサラリーマン小説だったという感じではあったけど、けっこうおもしろく読めた。

チームの大黒柱のエースのトレードが監督の電話一本で決まるとか、新外国人が一言のアドバイスで打てるようになるとか、美人の球団広報の不倫疑惑で監督以下のスタッフが動揺するとか、一見非現実的と思える筋もあるのだが、著者は元スポーツ記者ということなので、案外実態はこんなものなのかもなあ、なんて思えた。

現場で指揮をとっていると頭に血がのぼってしまい(監督をやめてから振り返ると)自分でも信じられないくらい愚かな戦法を採用してしまっていた・・・などという挿話もあったが、これなんかも実際にあった話っぽいなあ、と感じた。

人気選手が引退後すぐに監督になるのはよくないと、昔から言われているが、興行面の要請もあるのか、今でもそういう例はよくある。
宇恵も、指揮・指導経験がないまま監督に就任し、春季キャンプでは何をしていいのかわからず戸惑うばかりなのだが、これもよくある現実風景なのかもしれない。
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ジュラシックワールド 炎の王国

2019年04月13日 | 本の感想
ジュラシックワールド 炎の王国

ジュラシックワールドは閉園?してしまったが、恐竜たちはあいかわらず孤島で暮らしていた。しかし、その島の火山が壊滅的な大噴火をすることが予想され、ワールドの管理者だったクレア(ブライス・ダラス・ハワード)は、田舎にひっこんでいたオーウェン(クリス・プラット)を誘い込んで恐竜の救出に向かう。
いろいろあって何頭かの恐竜が本土(富豪のロックウッド家の屋敷)へ運び込まれるが、ロックウッドの部下は悪だくみを巡らしており・・・という話。

うーん、ジュラシックシリーズは、パークやワールドといった(遺伝子操作で蘇らせた)恐竜を展示?するテーマパークを、映画観覧者に疑似体験させる、というのが本旨だったと思う。
ところが、本作では主な舞台がロックウッドの屋敷になってしまい、そこで展開される恐竜と人間の追いかけっこは、平凡なパニック映画・怪獣映画程度の出来栄えのように見えて残念だった。

今時はどんな映画でも現実と見まごうような精細なCGが使われているので、現実に恐竜が動いているところを撮影したように見える、というくらいでは初代ジュラシックパークを見たときのようなセンスオブワンダーを感じられなくなってしまったこともあるとは思うものの。

まだまだ続編がありそうな終わり方だったけど、次は見ないかもしれないなあ・・・
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野良猫を尊敬した日

2019年04月12日 | 本の感想
野良猫を尊敬した日(穂村弘 講談社)

穂村さんの文章を初めて読んだのは「本の雑誌」の連載で、アメリカのハードボイルドの名作を解説したエッセイだった。今までに見たことがない斬新な視点で紹介されていて、それ以来、出版されているほとんどのエッセイを読んだ。
なので、たまに「これ、読んだことあるかな?」というネタも多いのだが、本書も楽しくよめた。

私小説が典型だけど、作家って自分の経験をネタにしていることがあって、自分の恥をさらすことと引き換えにおカネを稼いでいる、という側面がある。
穂村さんも割と言いづらいようなこと(例えば20年近く勤めた会社ではさっぱり仕事ができなかったとか)を告白?していることが、けっこうよくあって、似たような経験をしている同世代としては(ああ、俺だけじゃなかったなあ、なんて)共感できるのだった。
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