蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

検察側の罪人(小説)

2019年06月29日 | 本の感想
検察側の罪人(雫井脩介 文春文庫)

映画を見た後に読んだ。

映画と違って、小説全体がテーマ(正義とは何か)に収斂するような構成になっていて、自らの目的のために有り得ないほどの手段を用いる最上の動機も、最後まで読むと、納得できるものになっていた。

検察・警察は裁判を維持するためにストーリーを構築するが、一度構築してしまうとそこから軌道修正するのが難しくなって、結果として現実とはことなる主張になってしまう。そのことの恐ろしさがよくわかる内容にもなっている。
エンタテインメントとしても飛び切りだが、高踏的ともいえるテーマとともに社会的な課題も提示されている上出来の小説だった。

原作では映画ほどの出番はないが、犯罪ブローカー?の諏訪部は、小説の中でもやたらとカッコよかった。
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検察側の罪人(映画)

2019年06月29日 | 映画の感想
検察側の罪人(映画)

若手検事:沖野(二宮和也)は、老夫婦殺害事件を担当しているが、指導役の検事:最上(木村拓哉)が何かと捜査に介入してくる。最上は、事件の容疑者が過去の事件(被害者が最上の関係者で迷宮入りして時効)の真犯人であると信じ、あらゆる手段を使って容疑者を犯人に仕立てあげようとするが・・・という話。

上記のメインストーリーに、最上の友人でスキャンダルに巻き込まれて自殺した政治家、検察事務官として潜入ルポ中の女性、その女性と沖野の恋愛、最上の家庭事情、容疑者を擁護する人権派弁護士、などの話が絡んで(原作を読む前に見たせいもあって)筋を追うのが精一杯。盛り込み過ぎて消化不良気味。
特に、最上が(さすがにそこまでやらないでしょ)と思えるほどの手段を使う動機の説明がとても少なく(インパールの話とか唐突すぎるし)て、納得感がなかったのが残念。

ただの国家公務員である最上の自宅が大富豪のそれみたいだったり、自殺した政治家の葬式が前衛的演劇みたいだったり、貧乏弁護士の事務所が妙にエキゾチックだったり、と、美術が現実離れしているのもイマイチだった。

なぜか最上の言うがままにある犯罪ブローカー?諏訪部役の松重豊がとてもよかった。
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ヴァン・ショーをあなたに

2019年06月15日 | 本の感想
ヴァン・ショーをあなたに(近藤史恵 創元推理文庫)

「タルト・タタンの夢」に続く、フレンチレストラン「パ・マル」の三舟シェフが探偵役になって日常の謎を解いていくシリーズ2作目。

私にとって本シリーズの魅力は、「パ・マル」の雰囲気や料理の描写、従業員のキャラなのだったが、本作ではそもそも「パ・マル」が舞台ではない話が(7作中)3作あったりしてちょっと残念だった。(「パ・マル」とほとんど絡まない「氷姫」はなかなかよかったが)

「ブーランジェリーのメロンパン」に出てくる街中の(惣菜パンとかが置いてある)平凡なパン屋さん(店名は「ブラン」としゃれてるけど)も著者にかかるととても魅力的な、訪れてみたい店に思えてくる。でも「ブラン」や「パ・マル」みたいな店って現実にはあまり見たことないんだよなあ。
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ハード・コア(映画)

2019年06月15日 | 映画の感想
ハード・コア(映画)

右翼系組織の構成員:権藤右近(山田孝之)は(知的障害がある)牛山(荒川良々)とともに(組織の指示で)埋蔵金の発掘をしている。右近の弟:左近(佐藤健)は商社のエリートサラリーマンでとてもモテるが、右近と牛山はいつも女性に飢えていた。ある日突然牛山が住む廃工業にロボットが現れる。このロボットは現代の科学を超えた技術で作られていることがわかり・・・という話。

原作は狩野無礼さんで、確かに青年漫画誌にありそうなストーリーなんだけど、山田孝之や佐藤健がカッコよすぎて、ちょっとストーリーから浮いているような気がした。特に山田さんが演じる主人公は、(多分)情けないけど一途な男、というキャラのはずなんだけど、見た目やしぐさが立派すぎるんだよね。

右近が属する組織の狡猾な幹部:水沼(康すおん)がとてもよかった。全く知らない役者さんなんだけど、けっこうなキャリアがある人なんですね。
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探偵は教室にいない

2019年06月08日 | 本の感想
探偵は教室にいない(川澄浩平 東京創元社)

鮎川哲也賞受賞作で著者のデビュー作。

中二で170センチでバスケ部の海砂真史が、日常のちょっとした謎(真史の机にラブレターを残したのは誰?(love letter from)、真史の友人が合唱コンクールの伴奏役をやめてしまったのはなぜ?(ピアニストは蚊帳の外)、美人の彼女ができたバスケ部のモテ男が浮気をしたのはなぜ?(バースデイ)、家出して携帯の電池も切れてしまった真史は今どこにいる?(家出少女))を、幼なじみでスイーツ好きで登校拒否中の天才:鳥飼歩が解決する連作集。

日常の謎モノは、事件が刺激的出ないだけに、謎の強烈さ・不可思議さが勝負だと思うのだが、本作はその点がちょっと弱いかな、と思えた。
登場人物のほとんどが中二(14歳くらい)なのだが、皆おとなび過ぎているように思えた。皆、モノのわかっている大学生みたいな言動だ。
今ちょうど私の子供が中二なんだけど、思考や行動がこんなに洗練されていないぞ(我が子がボンヤリしているだけかもしれんが)

一方「バースデイ」という短編で主人公たちが海を見に行くシーンや、「家出少女」の妙な?緊迫感はよかった。
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