蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

グラゼニ

2011年09月13日 | 野球
グラゼニ

「グラゼニ」という野球マンガがあって、先日単行本(1巻)を読んだが、とても面白かった(絵がナニなのは残念だが)。

グラゼニは「グランウンドには銭が落ちている」の略で、年棒という観点からみたプロ野球界を描いている。
主人公の中継ぎピッチャーは、引退後の生活を視野にいれて、常に年棒を気にしながらプレーしている。自分より年棒が低い相手には強いがそうでない打者には打たれる。しかし、非常に高年棒の打者にも強い。

実際、プロ野球の世界でも上場企業の部長クラス(1500~2000万くらい?)を超える年収を得ているのはほんの一握り。厳選されたエリートだけが入ることができる(プロになるのは東大を出て高級官僚になるより難しそうだ)世界で、現役期間が短くて、常にケガの危険と隣り合わせ、なのに金銭的見返りとしてはイマイチなのかもしれない。


それで、思いついて9月10日のソフトバンクとロッテの先発メンバー(投手除く)の推定年棒を調べてみた。(宝島社の「選手データ名鑑2011」による。伊志嶺とカスティーヨは私の憶測。単位万円)

ソフトバンク
1川崎(24000)2本多(11000)3内川(17000)4松中(20000)5小久保(30000)6松田(4200)7長谷川(4000)8福田(950)9山崎(2800) 合計(113950)
ロッテ
1伊志嶺(1000??)2岡田(1000)3角中(700)4カスティーヨ(2000??)5井口(18000)6福浦(10000)7里崎(12500)8根元(2330)9早坂(1350) 合計(48780)

うーん、3倍まではいかないけど、大きな差。
この試合は大差でソフトバンクが勝ったし、ソフトバンクは首位でロッテは最下位だけど、まあ年棒だけ見てたら、うなずけるよなあ。なにしろ、ソフトバンクのベンチにはこの他にもカブレラ(18000)や多村(18000)までいる。
レギュラーはほんの一握りで、大半の選手は1000万円未満だから平均年棒にすると差が小さく見えるけど、試合に出てるメンバーで比較すると格差は大きい。
だいたい、ロッテの合計より、ラミレスやダルビッシュの方が年棒高いってどうよ。
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夢をかなえるゾウ

2011年09月11日 | 本の感想
夢をかなえるゾウ(水野敬也 飛鳥新社)

「サッカーの神様お願いします。勝たせてください」

女子サッカーのワールドカップ準々決勝のドイツ戦を伝えるNHKのスポーツニュースの冒頭に流れた(おそらく日本チームの誰かが言った)言葉です。
今でこそ飛ぶ鳥も落とす勢いのなでしこジャパンですが、この時点で負ければ、(震災で有力スポンサーの電力会社が抜けるなど)もうプロスポーツのカテゴリーとしての存続すら危ぶまれる状況でした。

日焼けしてろくに化粧もせずに練習しているけど、国内の試合はガラガラで、相手は今まで勝ったことが一度もない相手で、悪いことに試合地はドイツ・・・。
やれることはすべてやったけれど、報われそうにない・・・そんな時、あと何かできるとしたら神頼みしかない・・・そんな切羽詰った気持ちが伝わる言葉でした。


神頼みには2種類あって、一つは上記のような人事は尽くし終えたから、後なにかするとしたら神頼みくらいしかない、と言う場合。
もう一つは、特に何の努力もしてないけれど何かいい事起こらないかなーという場合。後者は、例えば「神様、借金がたまってます。この宝くじが当たりますように」みたいなやつでしょうか。

この本に出てくる象の形をした神様、ガネーシャは現世利益をかなてくれる神様として有名らしいのですが、主人公に対しては、よく理解できないような抽象的なアドバイスをしてくれるだけで、神様自身は、タバコがやめられず、甘いものが大好きで、一日中寝転がってすごしています。
おそらく、「神様は助けてくれない。成功をつかむのはあなたの努力しかありません」ということがいいたいのだと思いました。

さて、本書でたくさん紹介されている偉人のエピソードで印象深かったのは、コカコーラの元社長ゴイズエタさんのものです。本書によると、彼は、在任中毎日欠かさずコカコーラの大株主であるバフェットに業況報告や相談の電話をしたそうです。

ガネーシャのアドバイスで、いいな、と思ったのは、
「(時間が)ぱんぱんに入った器から何かを外に出すんや。そしたら空いた場所に新しい何かが入ってくる。それは、勝手に入ってくるものなんやわ。たとえば、自分の周りで会社辞めたやつも、意外としぶとう生きてるやろ。それは、会社辞めることで空いた器に何か新しい仕事が入ってきとるからやねん」→ガネーシャの課題「一日何かをやめてみる」
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ソーシャルネットワーク

2011年09月03日 | 映画の感想

ソーシャルネットワーク

フェイスブック創業の内幕を描いた映画。

創業者のマークはハーバードの学生でいわゆるハッカー級のコンピュータオタク。ハーバードの伝統的なクラブには入れてもらえず、心を許す友達がいなくて彼女にはふられる。そのうっぷんをはらすように自らコーディングしたフェイスブックの改良と登録者の拡大に血道をあげる。

フェイスブックの成功が明らかになるにつれ、最初の出資者やアイディアを出した名家の御曹司の双子などが(分け前をよこせと)いいがかり(とばかりは言えず、マークにも大いに非はある)をつけてきて、あわよくば発展したフェイスブックを自分のものにしようとする。

マークはこうした人達と決して折り合おうとはしないが、やがて世界有数の金持ちになって大金を積んで(法的に)和解する。しかし、彼のもとには誰も残らず、昔の彼女に友達申請すら押す勇気がないのだった・・・という話。

 
(実際そうなのかもしれないが)マークの描き方は、相当にひどい奴、という感じで、むしろこの映画の公開もカネを積んでやめさせたいくらいじゃなかったのか、と思うほどだった。まあ、そんなことをしたら恰好の宣伝になって製作者を喜ばせるだけだろうが。

アメリカや資本市場に膨大な付加価値をもたらしそうな功労者に対して、少々冷たすぎる感じ。賛美するだけの内容でも誰も映画を見てくれそうにないけど。

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極北クレイマー

2011年09月01日 | 本の感想

極北クレイマー(海堂尊 朝日新聞出版社)

著者の作品は「チームバチスタの栄光」と「ジェネラル・ルージュの凱旋」しか読んだことがなかったが、ともに現実の医療現場で起こっていそうな問題をとりあげながらも、ミステリの味付けがあって、筋立てにも工夫があったし、主要登場人物のキャラクターも立っていた。

本作は、実際に起こった福島の産婦人科での事件(裁判では無罪という結果だったので「事件」と呼ぶのは適当でないかもしれない)を材料にしているけれど、ほぼ事実そのままのストーリーになっていて、ミステリ的要素はなく、工夫が感じられず、登場人物も薄っぺらな感じがして、少々失望した。

何かというと、ナントカ委員会が登場して登場人物たちが不毛な議論を繰り広げる、というのも(まあ、医療界の現実がそうなのかもしれないが)、ワンパターンだしなあ。

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