蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

コヴェナント

2024年09月10日 | 映画の感想
コヴェナント

2018年、アフガニスタンに駐留するアメリカ軍の曹長ジョン・キンリー(ジェイク・ギレンホール)は、新たな通訳としてアーメッド(ダール・サリム)を雇う。ウラの情報に精通するアーメッドの協力を得てタリバンの武器庫を探り当てて襲撃する。タリバンの増援部隊の反撃にあってジョンとアーメッドを残して部隊は全滅する。二人は100キロ以上先の基地への帰還を目指すが・・・という話。

この手の話だと、実話に基づくストーリーということが多いが、本作はフィクション。
なのだが、少人数部隊同士の戦闘シーンはとてもリアリティがあり、ギレンホール自身がベテランの兵士であったかのように思えるし、倒しても倒しても増援がやってくる敵に、観ている方もまさに手に汗握る迫力を感じた。
やや味方のタマが当たりすぎるきらいはあるが。

命の恩人であるとはいえ、除隊後に現地人の通訳を救出しにいくだろうか?

実話だと「そういうこともあるんだ、そういう崇高な人格もあるんだ」とでも思うことができる。
しかし、フィクションと知っている観客を説得?するには強力な筋立てか演出が必要だと思う。本作はその点がとてもうまくて、ジョンが必ずしも友人愛だけでアーメッドを(多額の借金をして命を再び危険にさらしてまで)救出しにいったわけではないことを上手に描いていて、納得性がとても高い。

ちょっとだけ登場するジョンの奥さん:キャロラン(エミリー・ビーチャム)も抑えた感情表現がうまくて良かった。

アフガニスタンの場面でやたらと犬が登場する。特に本場のアフガン・ハウンド?が印象的だった。

2時間くらいの長さもちょうどいい。


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茜色に焼かれる

2024年06月27日 | 映画の感想
茜色に焼かれる

田中良子(尾野真千子)は、夫陽一を交通事故で亡くしていた。その事故を起こしたのは高名な老人で、病気のために免責?されていた。良子は納得できず賠償金を受け取っていなかった。かつては喫茶店を経営していたがコロナで休業中。花屋のバイトと風俗嬢を掛け持ちして息子:純平(和田庵)を育てていた。口癖は「まあ、頑張りましょう」・・・という話。

コロナ、高齢者が起こした交通事故、みんなマスクしてる、といった世相を反映させた内容だけど、イマイチ活かしきれていなかったかな、という感じ。良子と純平の会話シーンがとてもいいので、この2人に絞ったストーリーの方がよかったかも。(風俗店の店長とか元同級生との恋?とかも余分な感じがした)

しかし、まあ、そんなことはどちらでもよくて、運命に弄ばれた女性の力強い(が、ちょっとヘンテコなプロセスでの)復活?を描くという、いかにも石井監督作品という、らしさ満点だったのはファンとしてはうれしかった。
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her 世界でひとつの彼女

2024年06月23日 | 映画の感想
her 世界でひとつの彼女

LAに住むセオドア(ホアキン・フェニックス)は、手紙の代筆業者で、妻と離婚協議中。寂しさをまぎらわすため、人工知能が受け答えしてくれるソフトでサマンサと会話する。サマンサとイメージ・セックス?をするほどの仲となったセオドアだが、サマンサの行き過ぎた配慮(人間の娼婦を紹介する)がきっかけで仲違いする・・・という話。

10年くらい前に公開された作品だが、今まさに起きようとしている事態を正確に予言?している。

生成AIを使って、架空人格をまさに生成していけば、サマンサを再現することは今すぐにでも出来そう。サマンサにように気がききすぎて不愉快になることはあるかもしれないが、少なくとも、AI側が人間をムカつかせるようなことを言わないだろうし、もし気に入らなければ、電源を落とせばいいだけで、人間のようにあと腐りはない。別のAIで(会話を異なるアプローチで行って)別の人格を一から作って試行錯誤するうち、理想の友人?を生成できるかもしれない。理想すぎる友人というのも、ある意味グロテスクだが・・・

SF映画だと、まずテクノロジーの素晴らしさを描いた後に、そのテクノロジーによって人間が復讐されるという結末になるこことが多いが、本作では破滅的なラストは用意されておらず、人工知能の友人もいいものかも・・・という感じで終わらせているのも、友人AIへの誘惑をかき立たせそうな気がした。
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こんにちは、母さん

2024年06月23日 | 映画の感想
こんにちは、母さん

神崎福江(吉永小百合)は東京下町で足袋の店を営み、近所の教会の牧師荻生(寺尾聰)に好意を抱いていた。息子の昭夫(大泉洋)は大企業の人事部長だが、会社の人員整理のため、会社の同期の木部(宮藤官九郎)にリストラを宣することを余儀なくされる。木部からは罵られ、悩んだ昭夫は、あまり寄り付かなかった実家に帰るが・・・という話。

山田監督を前に演技しているせいか、セリフが話し言葉っぽくない脚本のせいか、なんだか皆さん演技がぎこちないような気がした。

特に演出家&脚本家でもあるクドカンはなんだかよそ行きというか、役者としてのいつもの調子とは異なっていたように思えた。

あと、大泉さんに悩める人事部長の役は似合ってなかったなあ。多分コメディのはずなので、例え人事部長役でももう少しハメを外していつもの調子を出してくれるとよかったのだが。
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アンダーカレント(映画)

2024年06月22日 | 映画の感想
アンダーカレント(映画)

関口かなえ(真木よう子)は銭湯を経営していたが、夫(永山瑛太)が突然失踪してしまう。ほとぼりが醒めた頃、釜焚き用人員として堀(井浦新)を雇って営業を再開する。かなえは友人の紹介で探偵(リリー・フランキー)に夫の探索を依頼するが・・・という話。

サスペンス風な設定なのに、なぜ夫は失踪したのか、かなえと堀はどうなるのか、かなえの秘密の真相は何なのか、みたいな所の解決は一切ないし、全体にスローテンポで「このシーンが挿入される意味は?」と考えたりしてしまうことも多い。なので、若い頃にみたら退屈で仕方なかったと思うが、年を取った今となっては、その曖昧さがかえって楽しく感じられるのだった。

私の若い頃はどこにでもあった銭湯は、今では街なかではほとんど見かけなくなってしまった。でもいまだに銭湯を描く映像作品は多いし、私自身も銭湯が舞台というだけで見てみたくなるのは、郷愁というものなのだろうか。

リリー・フランキーって、どの役でも似たような感じだし、役者修行をしたわけでもないと思うのに、どんな役でもなんしかうまくこなして、それらしく見えてしまうのが不思議。真木よう子や井浦新も上手で見ていて安心感があるんだけど、リリーと比べると、演じてる感が見えてしまうような気がした。
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