蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

船に乗れ!Ⅲ 合奏協奏曲

2013年04月29日 | 本の感想
船に乗れ!Ⅲ 合奏協奏曲 (藤谷治 ジャイブ)

同級生にふられて傷ついた主人公は、チェロでも自分の演奏技術に限界を感じて音楽家を目指すことを断念して普通の大学に進学することを決める。
受験勉強のかたわら最後の文化祭に向けて演目の練習をするが、当日、ふられた恋人が現れて・・・という話。

恋人にふられたからといって、多大な時間を投じてきたチェロをこんなにあっさり断念するというのは、小説としては、ちょっと肩すかし気味。
著者の自伝的作品らしいので、まあ、本当の人生の選択なんて、それが客観的には大変重要なものであったとしても、大半が思い付きやそのときの気分に左右されてしまうものというのが、自分の経験からも言えることなので、リアルといえばそうなんだけど、やっぱりここまで3冊続けて読んできた者としては、あっさりしすぎたストーリーだった。
一方で、高校生が女の子にふられたくらいで、こんなに引きずるというのも、現実離れしている気もするが。

1,2巻に比べて、主人公がチェロをやめることにした後はテンションが下がった感じがして残念だった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2013.4.27 ロッテ―ソフトバンク4回戦

2013年04月29日 | 野球
2013.4.27 ロッテ―ソフトバンク4回戦(QVCマリン)

今年初めて野球場で観戦した。
快晴のゴールデンウィーク初日にもかかわらず席には比較的余裕があったが、周囲の人の話ではこれでも開幕戦以来の入りとのことで、動員に苦戦してるなーという感じだった。(記録は21038人)

先発は成瀬と山中で、ともに球速表示がほとんど130キロに達しないので、スピードガンが壊れているのではないか?と思ったほどだった。しかし、千賀とか益田がでてくるとほとんど140キロ台で千賀は150キロ以上も時々出ていたので、先発両投手は単に遅いだけというオチだった。

ストライクをとるのに四苦八苦の山中にペースを合わせてしまったのか成瀬も(珍しく)ボール先行で、今年初めて出場の吉村に(今年初めての)被弾。特に内川には極端に投げにくそうだった。
7回8安打も打たれても、それでもなんとか2点におさめて勝利投手になるあたりは、さすがというべきか。

ロッテ打線は、3回までに5点取って安心したのか、あとは淡泊な感じだった。
角中が不調から抜け出せない感じで心配。一方、「今が旬」の鈴木は、先制につながるヒットを打ち、守備も難しいゴロをさばくなど絶好調が継続中。つられて?根元も無難だった。

松永はまだちょっと不安定だが、益田の球の勢いはまだ大丈夫、というところか。

5回だったか、2塁塁審がなかなか出てこず、しばらく試合が始まらなかった珍事があり、スタンドから塁審のコールが起こっていたのが面白かった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ジーノの家

2013年04月25日 | 本の感想
ジーノの家(内田洋子 文春文庫)

イタリアに通信員として長年滞在する著者の、イタリアでの経験を書いたエッセイ。
と、書いたけれど、読んでいて「これは本当にエッセイなんだろうか? フィクションではないのか」という疑問を抱かせるほど、著者の経験は波乱に満ちている。

「リグリアで北斎に会う」は、イタリアの片田舎で、まるで日本の浮世絵師にとり憑かれたような老人の話。

「僕とタンゴを踊ってくれたら」は、キャリアウーマン(この言葉も最近聞かなくなったような・・・作中では使われていません)が、中世の貴族の家(買ったときは朽ち果てていた)を少しずつ修繕していって、やがてその庭で友人を招いてダンスパーティーを開催する話。

「黒猫クラブ」は、ミラノで住んでいた高層アパートの最上階で火事が起きて、住民同士が助け合い・・・という話。私としては、この話が一番気に入った。

「ジーノの家」は、イタリアの南端の貧困地域出身者の質素な家を著者が借りた話。ちょっと湿っぽいというか、陰惨な感じに読後感だが、心の揺さぶれ度合はナンバーワン。

「犬の身代金」は、知り合いの犬が誘拐されていまい、その身代金を深夜の公園に届ける話。イタリアの良いところと悪いところが綯交ぜに描かれている。文明が習熟すると人は犬を飼い、家族同様(あるいはそれ以上に)扱うものなのか。

「サボテンに恋して」と「初めてで、最後のコーヒー」は、南仏の苦悩を描いたもの。苦悩のように感じられるのは、私が日本人だからで、ナポリに住む人にとっては、私にとって苦悩と思われるものが、もしかしたら幸福のタネなのかもしれないが。

「私がポッジに住んだ訳」は、教会しかないような田舎の幼稚園の近くで暮らした話。かなりせつない。

「船との別れ」は、これは、あとがきと相まって、さずがにフィクションなんですよね、と言いたい内容。

多くの場面で、イタリアのバールでコーヒーを飲む光景が描かれる。とても魅力的で、日本の画一的なコーヒーショップ(私はほぼ毎日通っているのだが)が色褪せて感じられた。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

金の仔牛

2013年04月16日 | 本の感想
金の仔牛(佐藤亜紀 講談社)

18世紀のフランス、追剥稼業の主人公は、故買屋の娘に一目ぼれ。娘にいい思いをさせてやりたいと、追剥より効率良く儲けられそうな商売をさがす。追剥の獲物だった怪しげな金融ブローカーとしりあい、1カ月で5割増にして返すという約束で資金をかき集めてブローカーの元へ運ぶ。このブローカーは、バブル史に残るミシシッピ事件の首謀者の一人で、集まった資金で国営会社の株を買い集める・・・という話。

主人公は大成功するが、金主の貴族は主人公が破たんするまで金をつぎ込むつもりで、相場の成熟とともに主人公は追い詰められていく。その主人公が、ある日、儲けた金で買っただだっ広い屋敷の、その無駄な広さ、豪華さにかえってうんざりして、貴族に金を返して株から手を引くことを決める場面が、印象に残った。

いつものように、時代背景が良く調べられている感じがしたが、「天使」シリーズとか、「ミノタウロス」に比べると、ちょっとうす味だったかな、という感じ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

降霊会の夜

2013年04月12日 | 本の感想
降霊会の夜(浅田次郎 朝日新聞出版社)

「当り屋」という商売?を私が知ったのは、少年ジャンプに連載されていた「リングにかけろ」(途中で暴走?して「聖闘士星矢」につながるファンタジー?になってしまう作品なのだが、はじめのうちは普通のボクシング漫画)だった。この中で主人公のライバルの貧しい少年が、昔父親に当り屋をやらされており、そのせいでグラスジョーになってしまった、という話があった(と思う)。
本書の前半も、父親に当り屋を無理強いされている少年の話で、お涙ちょうだいの浅田節全開で、まあ、確かに泣かせる。

後半は、著者の作品でよく見る、戦後の東京山の手の裕福な家に育った学生たちの話。
主人公の幼なじみで、主人公に片思いしている女の子が、主人公への思いがかなわず、他の男の子ができて堕胎し・・・という筋で、こちらもどこかで読んだような話だった。

著者:浅田次郎さんが執筆する日経新聞連載「黒書院の六兵衛」、まもなく終わろうとしているが、依然として六兵衛の正体は明かされない。どうもこのまま謎解きはなしで終わりそうだ。ここまで引っ張ってもそれなりに読ませるというのもすごいとは思うが、どう見ても短編ネタで、これほど長くする必然性は(今のところ)感じられない。

本書も、2つの話ともせいぜい50ページくらいの短編ネタだと思う。著者のストーリーテリング能力は確かにすごくて、それでも楽しく読める(だから、もし本書が例えば新人の作品だったら「すごい」と思えるかもしれないい)が、六兵衛の件もあって、まあ、ちょっとネタ切れなんですかね、と思えなくもない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする