蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

私の男

2009年12月23日 | 本の感想
私の男(桜庭一樹 文藝春秋)

震災で幼くして家族をなくした主人公の少女は親戚の若い男に引き取られる。
男は少女に精神的にも肉体的にも依存するようになり、少女もそんな男を受け入れる。二人の世界になんの問題もなさそうだったが、二人の保護者的な立場にあった人が二人の関係に気づいたことから悲劇が発生する。

主人公と男の絡みの描写がねっとりと濃密だけれど、エロティックというより禁忌に近づいていくことへの恐怖を感じさせるものだった。
もう少し昔なら広く世間に受け入れられるテーマではないと思うが、大きな賞を受けたということは、この手のテーマに対する許容範囲が広がってきているということだろうか。

主人公が成長して結婚する場面から物語が始まって、章ごとに過去にさかのぼっていく構成になっている。著者の叙述のうまさで、このような構成であってもあまり違和感はなく読み進めるが、特段すごい効果を生んでいるようにも思えなかった。

コメント
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