蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

七王国の騎士

2022年07月29日 | 本の感想
七王国の騎士(ジョージRRマーティン 早川書房)

正編の約90年前、後に王の盾総帥になる草臥の騎士(決まった君主がいない放浪の騎士)ダンクとその従士で異例王エイゴン5世になるエッグの物語3篇収める。

本書には魔法もドラゴンもややこしい陰謀も登場しないので、素朴な(西洋風の)騎士の日常生活?が詳しく描かれていて興味深い。
ちゃんとした?騎士は日本でいうと侍大将クラスで、一国一城の主であることも多いが、ダンクのようなのは素浪人で、馬上槍試合で賞金稼ぎをしたりしている。試合で勝つと相手の装備や馬を取り上げることができる、というルールになっている(普通の歴史上でもそうだったのかはよくわからないが)。

収録作の一つ「誓約の剣」の主人公”紅後家蜘蛛”(←これは訳に一工夫ほしいところ)という異名を持つレデイ・ローアンが特に魅力的だった。女君主であるがゆえの苦労と臨機応変のアイディアで自分の城と民を守る姿がカッコいい。

ダンクとエッグの物語も当初構想ではあと10編くらい予定されているそうだ。こちらも早く読みたいが、まずは正編の「冬の狂風」を仕上げてほしいな。

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マイ・ダディ

2022年07月28日 | 映画の感想
マイ・ダディ(映画)

御堂一男(ムロツヨシ)は牧師だが、教会活動だけでは食べて行けず、ガソリンスタンドでバイトしている。娘のひかり(中田乃愛)は白血病に冒され、治療中に偶然一男とは血縁がないことがわかる。白血病は悪化し、骨髄移植のドナーを探すため、一男は、探偵(小栗旬)にひかりの実父の探索を依頼する・・・という話。

見る前にノベライズを読んでいたせいで、既視感がじゃましてあんまり感情移入できなかった。ムロさんが主演だと真剣な顔をして演技していても次の場面では画面の端に「LIFE」って出てオチが待っているような気になってしまうのも一因かも。

ノベライズを読んだ時は、教会といっても自宅の一角でやっているようなこじんまりしたものをイメージしていたのだけど、映画では随分立派な教会で、「これならバイトしなくても専業でいけそうだなあ」なんて思ってしまった。
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光の犬

2022年07月25日 | 本の感想
光の犬(松家仁之 新潮社)

ハッカ製造で栄えた北海道・枝留の添島家の家族を3代に渡って描く。

ハッカ工場を創設した真蔵の妻よねは助産婦で多くのお産に立ち会う。
息子の真二郎は電気技師で神経質で几帳面。北海道犬の飼育と釣りが趣味。その妻の登代子は、同じ敷地内の隣家に住む真二郎の三姉妹との関係に悩む。
孫の一人:歩は枝留の教会の牧師の息子:工藤と恋仲になるが、宇宙物理学を志して上京する。しかし、若くしてガンに冒される。
もう一人の孫、始は歴史学者になるが、年老いて枝留に帰る。

特段、ドラマチックな展開はなく、登場人物の人生が淡々と語られるだけなのだけど、読み始めると中断するのが難しいくらい先が読みたくなる。
特徴的なのは時系列が無視されていることで、昭和初期から現代までの間をいったりきたりする。普通だったら読みにくくて仕方なさそうなのだけど、これもまた予告編的な?効果があってむしろリーダビリティを高めているように思えた。

添島家とは関係ないが、工藤の友人で、北海道の矯正施設的な農業学校から脱走しようとして遭難する石川のエピソードも印象的だった。
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祝祭と予感

2022年07月20日 | 本の感想
祝祭と予感(恩田陸 幻冬舎)

「蜜蜂と遠雷」の後日談的(前日談もあるが)掌編集。

「祝祭と掃苔」→マサルと亜夜子供時代のピアノの先生の墓参りを、塵も伴ってする話。コンクールの裏話。

「獅子と芍薬」→ナサニエル・シルヴァバーグと嵯峨ミエコが青春時代にコンクールで競り合う話。

「袈裟と鞭撻」→「春と修羅」の(作中の)作曲者:菱沼の弟子の小山内健次の話。「蜜蜂と遠雷」の主要登場人物が出てないけど、この話が一番よかったかな。

「竪琴と葦笛」→マサルがシルヴァバーグの弟子になった経緯。

「鈴蘭と階段」→亜夜の友達の奏が愛用のヴィオラを手に入れた経緯。

「伝説と予感」→父親に連れられて貴族の館に来ていた塵と師匠のホフマンの出会い。

本書を読んであらためて「蜜蜂と遠雷」を思い起こして見ると、やはり塵のキャラが一番だったかなあと思い出された。映画のキャスト(出始め?の鈴鹿央士)も良かったのも一因かも。
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百田尚樹の新・相対性理論

2022年07月18日 | 本の感想
百田尚樹の新・相対性理論(百田尚樹 新潮社)

時間の大切さを説く本。

刑務所にいる時間が人生には意味がある時間とはいえないように、物理的に長く生きても長生きとはいえない。

社会は時間の売買で成り立っているが、他人の時間を買うことはできても、自分の時間を取り戻すことはできない。年老いた富豪がそのすべての財を使っても彼の二十歳の一日を買うことができないように。

才能とは同じことを他人より短い時間でできることだ。

自殺は究極の時間の投げ捨てだ。

***
時間の大切さはよくわかったのだけど、その大切な時間を惜しげなく投入できるほどの対象が見つからないことが、多くの凡人の悩みなのだと思う。そうこうするうちにも時間は経過していくのだった。
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