蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

幸せのレシピ

2008年05月25日 | 映画の感想
幸せのレシピ

「ターミナル」で、ちょっと3枚目、隙が見えるお気楽型(?)スチュアデス役で新境地(?)を開いたと、私が勝手に思っていた、ゼタジョーンズ。
DVDのパッケージの短い紹介からは少々コメディ風に見えた本作も、似たような役柄かと期待して見た。

しかし、本作では料理界のエリートシェフ役で、ツッパリ型の性格、キャリアを築くこと以外興味なし、といった感じの役で、表情も「眉間にシワ」的な場面が多かった。

そういうかたくなだった女性を、親戚の子どもとくだけた男がもみほぐして、やがて・・・みたいな、ありふれたストーリー。

恋愛ものであり、キャリアウーマンものでもあり、育児(?)ものでもあり、そこにレストランの裏事情的なものも盛り込もうとして、中途半端になってしまった感じ。
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しゃべれども しゃべれども 

2008年05月24日 | 映画の感想
しゃべれども しゃべれども 

小学生のころ、八千草薫さんが主婦役だった「岸辺のアルバム」を毎週欠かさず見て、八千草さんのファンになった。
小学校で「好きなタレントは誰か」と尋ねられて「桜田淳子」「山口百恵」なんて答える同級生が多いなか、私が「八千草薫」といったら、先生がずっこけてたのをよく覚えている。マザコンだったのだろうか。
その八千草さんもさすがに老けた。この映画ではちょっと痛々しいほどに。(ほんわかとした独特のオーラはまだ健在だが)

伸び悩み気味の落語家が、ひょんなきっかけから、若いOL、小学生、元プロ野球選手に”話し方教室“をやることになる。三人ともアクが強い性格で、主人公を悩ませる。
落語家のくせに常識豊かで世間ずれした主人公は、三人のヘンテコな弟子(?)と接していくうち変容していき落語家として一皮むける、というストーリー。

後段の部分は、原作を読んでいないと映画だけでここまで読み取るのは難しいかもしれない。
しかし、主人公役の国分太一さんは、ただ立っているだけで「落語家にはむかないなあ。サラリーマンの方が良かったのでは?」と思わせる雰囲気があって良かった。
クライマックスシーンではかなり長い時間、国分さん自身が落語をしゃべる部分があるが、けっこううまい(少なくとも同じTOKIOの長○さんよりは、落語らしく見えた)。師匠役の伊東四郎さんは、当然ながらうまい。カルチャーセンターで話すシーンはストーリーを離れて笑えた。

小学生役の子役の関西弁はかなり無理があった。生粋の関西人の子にやらせればいいのに。それはまあ、しかたないとして、美人OL役の人は、なんだかなあ、って感じだった。
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トラや

2008年05月18日 | 本の感想
トラや(南木佳士 文藝春秋)

昔、あるお金持ちの自宅を訪問したことがありました。
お金持ちだけあって立派なお宅でしたが、猫を十匹以上飼っていらっしゃって、玄関をはいると独特のケモノくささがあって、廊下には猫の毛らしきものがチラホラ。
猫を飼ったことがないので、化け猫屋敷に来てしまったような気がして、立派なソファに座っていても何やら尻のあたりがムズムズしてきたような記憶があります。

本書は、パニック障害、うつ病を患った著者が、飼い猫のトラになぐさめを得て回復していく過程を描いています。
トラは、完全に家族の一員であり、寝るのはいっしょの布団だし、自立した息子たちも実家への電話でまず聞くのはトラの消息、といった調子。
「オレは猫といっしょの布団じゃ寝られないな~」と思ったが、冒頭の愛猫家のお金持ちのように長年飼っていると誰でもそうなってしまうのでしょう。

トラは安売りのペットフードだと見向きもしない、というのもけっこう驚いた。著者の家の軒先へエサを求めて集まった子猫たちは残飯でも何でも食べた、というエピソードが添えられていて、ぜいたくな環境に馴れてしまうのは人間と同じだなあ、と思った。

著者は医者なので、パニック障害やうつ病の恐ろしさ、患者としてのつらさが、とても分析的にわかりやすく表現されていた。描写がリアルなので、「オレも明日突然こうなるかも」と少し怖くなった。
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名短編、ここにあり

2008年05月17日 | 本の感想
名短編、ここにあり(北村薫 宮部みゆき 編 ちくま文庫)

北村さんが編んだアンソロジー「北村薫のミステリー館」を読んだ時、その選択のシャープさ、並のアンソロジーにはない非凡さ、センスのよさにすいぶん感心したおぼえがあります。(特に奥泉光さんの「滝」は素晴らしい小説だと思いました)

「北村薫のミステリー館」でも巻末に北村さんと宮部さんの対談形式の解説がついていたので、同じような性格のアンソロジーかと期待して読んでみたのですが、どうも選ぶ対象に限定があった(小説新潮の特集から選んだものらしい)ようです。

そのせいか、どの作品も、まあ確かに面白いのですが、ちょっとモッサリした感じというか、有体にいうと古くささがありました。
その中で吉村昭さんの「少女磔刑」は、かなり古い作品ですが、現在の感覚でよんでも新鮮さとか斬新さがあって良い小説でした。
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プロトンの中の孤独

2008年05月11日 | 本の感想
プロトンの中の孤独(近藤史恵  「Story Seller 2008spring」所収)

自転車ロードレーサーを描いた「サクリファイス」の主人公がチームに入る前の、主人公のチーム内のライバルである石尾とそのアシスト役である赤城を描いた同作品の外伝。

「サクリファイス」の感想でも書いたが、石尾のキャラクターがよくたっていて魅了的だ。本作の主題も「サクリファイス」と似通っている。
アシストとは何で、誰が誰をアシストしているのか?それは作品の最後で鮮やかに明かされる。
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