蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

大名倒産

2021年11月28日 | 本の感想
大名倒産(浅田次郎 文藝春秋)
幕末、越後の丹生山松平家は多額の借金を抱えていた。十二代目当主は、現金を溜め込んでおいてからわざと改易されるといるという計画倒産?を目論む。その父から家督を譲られた十三代目信房(小四郎)はそんなたくらみは知るよしもなかったが、やがて藩内外の不穏なムードを感じだし・・・という話。

本書によると、大名貸しの返済に行き詰まると、大名は借金した商人を集めて一言「断る」といえばすべてチャラになってしまう(これを「お断り」という)らしい。
これが本当かどうかよくわからないが、はるか昔の日本史の授業では、大名貸しに傾斜しすぎて身代をつぶす大商人は珍しくなかったはずだ。
もっともいったん「お断り」をしてしまうと信用が落ちて二度と借金はできなくなりそうなものだが、これまた現実はそうでもなかったらしい。
そもそもなぜ大名貸しなどという危ういビジネスをしていたのだろうか?という疑問がわくが、現代でも何度も「お断り」に近いことをした国の債券をしょうこりもなく買う金融機関がたくさんあるからなあ。1つの大名に集中するからいけないのであって、分散すればそれなりに収益率が高い商売なのかもしれない。

浅田さんの江戸モノは(そういうのが一切ない中国モノと違って)ユーモア小説仕立て?のものがけっこうあるが、これまではイマイチかなあ、と思っていた。しかし本作は(後半ちょっとダレるものの)面白く読めた。多分、(お涙頂戴などに走らず)徹底的にお笑いにしたのがよかったのだと思う。

七福神のうち日本生まれは一人(恵比寿)しかいない(その他は中国とインド)、という豆知識と、
この世で医者の沈黙ほど恐ろしいものはない、
というギャグが印象に残った。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする