蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ローンレンジャー

2014年04月26日 | 映画の感想
ローンレンジャー

合衆国の法執行官?の主人公は、お尋ね者に兄と仲間たちを殺されるが、インディアンのトントに救われて一人だけのレンジャーとしてお尋ね者を追う。実は主人公は兄嫁にほのかな思いを抱いたのだが、その兄嫁と息子がお尋ね者一味(鉄道会社の実力者)に捕まっているのを知り、その救出に乗り出す。一方、トントもお尋ね者に一族を虐殺された過去を持っており・・・という話。

冒頭と終盤の列車が絡むシーンは圧倒的で、オリジナルでもBGMとなっていたというウイリアムテル序曲は今聞いても心躍らせるものがあった。
このあたりだけでも本作を見る価値は十分にあるが、中盤はやや間延びした感じ。オリジナルは見たことないが、本作は復讐譚のはずで、それなのに主人公とトントのルサンチマンの強さがあまり強調されないので、ややカタルシスに欠ける感じ。

オリジナルはもっとわかりやすい話だったんじゃないかと思うけど、それをいろいろな解釈を可能にしたというか、含みのある話に変えたりして、コミカルな味を出しながら大人向けというか玄人好みに作り変えようという、製作者の意欲を感じた。そういう方針をディズニーがよく認めたなあとも思った。そのせいかどうか、アメリカでの興行成績はふるわなかったそうである。
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資本主義の終焉と歴史の危機

2014年04月23日 | 本の感想
資本主義の終焉と歴史の危機(水野和夫 集英社新書)

先進国で相次ぐ低金利の定着は16世紀ころにも見られたことだが、フロンティアをなくしてしまった現代においてはその打開策はなく、資本主義はすでに終焉を迎えている。
従って、さまざまな資本主義的経済対策は無効であり、そうかといってこの先どうなるか、どうすべきかは、よくわからないので、とりあえず現状維持をめざしましょう、というのが本書の内容(だと思う)。

経済評論家と呼ばれ、一般読者向けに本を書いている人は、いわゆる一つのトンデモ系といえる人とそうでない人に分けられると思います。
トンデモ系といえば、浅●さんとか、副●さんとか、三●さんとかがそれに当たると思うのですが、本の売れ行きは、概してこうした人の方が良いようですね・・・

トンデモ系とそうでない人を分類する一つの方法(私の勝手な見方ですが)に、日経新聞がその人の評論等を載せているか否か、というのがあります。(そういう意味では、一時期、WEBのみ(だったはず)とは言え、日経系の代表的ビジネス雑誌が(どう見てもトンデモ系の三●さんの記事を連載していたのには少なからず驚きました)

さて、本書の著者水野さんは、日経紙上でもその寄稿を見ることしばしばでしたし、その内容もそれなりにアカデミックな印象があったのですが、本書の内容は少々、トンデモ系に近いものがあったような・・・(失礼)。
新書なので小難しい理屈は省いてあるだけなのかもしれませんが。
それにしても、悲観的な現状分析だけで、著者なりの解決案が全く示されないというのは、なんとも興醒めな読後感しか抱けません。
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転換期の日本へ

2014年04月23日 | 本の感想
転換期の日本へ(ジョン・W・ダワー、ガバン・マコーマック NHK出版新書)

共著者の一人、ダワーは、戦後の東アジア秩序は、サンフランシスコ条約によって形作られたが、同条約は参戦国のほとんど(ソ連、中国、朝鮮)が関与していない「片面講和」であり、このことが沖縄・米軍基地問題、曖昧な国境線問題、歴史問題、いわゆる核の傘論等、今に至っても解決しない諸問題の原因だとする。
一方、マコーマックは、日本はアメリカの属国であり、沖縄を中心とする南西諸島の人々に過大な負担を強いており、日本はこのような戦後レジームから脱却すべきとする。

***

ダワーさんのお名前はなんとなく聞いたことがあったのですが、お二人とも著名な歴史学者とのことです。しかし、その主張は、いささかナイーブすぎるというのか、学者臭すぎるというのか、現実感のないものに感じられました。

まあ、確かに日本って、アメリカ政府から見ると、(自らの連邦内の州に比べてさえ)ものわかりよい従順な同盟国なんだろうなあ、と思える現象は良くみかけますが、かといってちょっと前の政権党が、上記の主張をそのまま実現しようとして(本書の主張はこの党からでた最初の首相を代弁している(あるいはその後盾になっている)ような内容でした)、そんな人たちを選良としてしまった国民を赤面させるような結果を招いてしてしまったことからも、本書の主題は絵空事である、と言えるような気がします。

本書の後半は、共著者二人の対談がおさめらているのですが、考え方がほとんど同じ人を対談させても、あまり意味をなさないように思えました。
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桃さんのしあわせ

2014年04月19日 | 映画の感想
桃さんのしあわせ

映画プロデューサー?のロジャーは、家政婦の桃さんと二人暮らし。桃さんはロジャー家で4代にわたって家政婦として働いていましたが、ロジャー以外の家族は皆、海外移住?をしてしまっています。桃さんは脳梗塞?の発作で倒れ、自ら望んでわりと安めの老人ホームへ入ります。ロジャーは(費用を負担するから)もっと高いランクのところを薦めますが、桃さんは拒否します。
ロジャーは忙しい日程をぬって桃さんの面会に訪れ・・・という話。

おそらく生まれた時から間断なく桃さんの世話になっていたロジャーと桃さんには、実の親子に近い感情があったのでしょう。
桃さんが倒れてから、ロジャーが献身的ともいえるほど桃さんの面倒をみようとする理由の大半はそこにあると思いますが、二人が実の親子以上に親密さを維持できたのは、むしろ家政婦とその雇い主という本来の(主従に近い)関係性にこそあったように思えます。

実の親子(あるいは家族)だとお互いにナマの感情をぶつけられるので、かえってケンカになってしまって、それが長引くと関係性自体が崩れてしまうことがあるのだと思うのですが、桃さんには、実の息子同様のロジャーといっても、やっぱり、どこか遠慮があり、物言いも控えめです。

人間関係を良好に保つコツは、例え相手が、親(子)・上司(部下)・先輩(後輩)であっても、感情をむきだしにすることなく、さりげない礼儀、マナーを保つことでしょう。「親しき中にも礼儀あり」ということですね。
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パシフィック・リム

2014年04月19日 | 映画の感想
パシフィック・リム

深海の海溝の裂け目?から巨大怪獣が出現して世界各地を襲う。
軍隊を繰り出してなんとか撃退するが、効率が悪い?ので、そのうち怪獣なみの巨大な二足歩行のロボットを作りあげて対抗するが、今度は倒しても倒しても次々に怪獣が出現するので、都市の周りに防壁を設けて怪獣の侵入を防ぐ方針に変更される。
失業状態?のロボットパイロットは集結して最後の決戦を挑むが・・・という話。

日本の特撮怪獣映画・TV番組への思い入れが随所に感じられ(なんといっても「怪獣」を「kaiju」と表記+発音させるところが泣かせる)、無理目の筋書や設定なんて往年の特撮ファンにとっては全く気にならず、というか、そういう方面と無縁な人から見るとトンデモなストーリー自体が、製作者の怪獣映画に対するオマージュやリスペクトなんだろうなあ。

絶対壊されないはずの巨大な防壁をより強大化した怪獣があっさりと突破するシーンはもしかして「進撃の巨人」を早くもモチーフとしたんだったりして・・・

圧巻は香港での戦闘シーンで、怪獣とロボットが戦ううち、市街地を壊滅させてしまう破壊映像がすごい。この手のものでは「ガメラ3」の渋谷破壊シーン以来の興奮?を覚えた。
街を壊しまくったあげくに怪獣が(翼竜型に)変態する場面は(後から考えると定番の展開なのだが、その時点では)意外性があり、CGもよくできていて、「ここで終わりでもいいな」と思ったくらいだ。

ちょっと気になったのは、怪獣の見た目や行動がまさしく「モンスター」的で、なんというか、感情移入の余地がないこと。
日本の特撮映画に登場する怪獣ってどこか人間的というか、「君の言い分もわからないではない」という感じがあった、と個人的には思う。
ウルトラセブンに登場する、地球征服や人類絶滅を狙う宇宙人すら、どこか愛嬌?みたいなのがあったような気がする。
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