蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

アリスのままで

2016年04月17日 | 映画の感想
アリスのままで

言語学者のアリスは若年性アルツハイマー病と診断される。症状は確実に進む・・・という話。

かなり評判が高い作品のようですが、上品すぎるというか、突っ込み不足のような気がしました。

病気の恐ろしさの描写とか、本人の葛藤、家族との関係性といった点で、「明日の記憶」(映画)と似たような感じでした。メジャーな商業映画としては、あまりに生々しい描写はご法度で、このあたりが限界なのかもしれません。
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約束の森

2016年04月17日 | 本の感想
約束の森(沢木冬吾 角川文庫)

妻の死をきっかけに警察をやめた主人公は、かつての上司に誘われて、真の意図が不明のままふみという女性の監視・護衛を依頼を受ける。海岸近くの田舎町の宿泊施設に行くと、そこには、かつては警察犬としての訓練を受けたと思われるが今は虐待に近い扱いを受けていたド―ベルマンがいた・・・という話。

いつも会社からの帰り道に寄る本屋は、世間的にはあまり売れていなかった文庫本をプロモーションすることで有名な所で、本書もそこで長期に渡って平積みれている本だった。
なので、かなり期待して読んだのだけど、うーん、私には合わなかったというか、イマイチだった。

愛犬物語なのか、妻をなくした主人公が疑似的な家族愛にめざめる物語なのか、はたまた警察内部の暗闘を描く話なのか、最後まではっきりしない。良く言えばすべての要素を盛り込んでいるともいえるのだけど・・・。硬質なハードボイルドタッチが好みなので、全体に甘ったるいムードなのが好感をいだけなかった大きな原因のように思う。
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時をかけるゆとり

2016年04月10日 | 本の感想
時をかけるゆとり(朝井リョウ 文春文庫)

本書の見開きにある著者紹介(おそらく著者自身が書いたものと思われます)が代表的なんですが、読者を何とか面白がらせようと奮闘しようとしているものの、そのやり方がかなり素人くさいんですよね。
もしかして意識してやっているのでしょうか?
というのは、本書は元の本と文庫と合わせて相当な数売れているらしいので、若い世代にはこういうのがウケるのかもしれないですね。

このように、失礼ながら私としては語り口は気に入らないものの、体をはった?体験談はかなり面白かったです。
100キロハイキングとか500キロバイクのキツさはよく伝わってきましたし、「便意に司られる」という表現は、私もよく体験することもあり、切実さを共有できました。
「母がいろいろと間違う」も、よくある話なんですが、とても笑えました。
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ロビイング入門

2016年04月10日 | 本の感想
ロビイング入門(明智カイト 光文社新書)

ロビイストと聞くと、アメリカの大手企業や銀行から大金をもらって議員に影響力をおよぼし、黒いものも白くしてしまうワルモノ、というイメージしかなかった。

本書では、自殺・いじめ予防やひとり親、性的マイノリティといった社会的弱者といえる人々が日本の議員に働きかけて自らの目的のために政策を実現させようとするロビイストを描いており、「ロビイング」という言葉の印象が大きく変わった。
特に児童扶養手当削減を防ごうとした赤石千衣子さんの活動は、世間の大勢(小泉首相の骨太方針など)に逆らうような目的を地道かつ粘り強い活動でほぼ達成させていて感心した。

本書によると、ロビイングで大切なのは、資金力や影響力よりも、議員を納得させ、かつ、そのまま議員が使えるようなわかりやすい理屈(もしくは実証データ)であるという。また与党に働きかけるだけではダメで、国会で成立させるために野党に対する活動も重要だそうである。また、中心になって進めてくれる議員をいかに確保するかがキーであるとのこと。
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司馬遼太郎短編全集-1

2016年04月02日 | 本の感想
司馬遼太郎短編全集-1(司馬遼太郎 文芸春秋)

最初期(福田定一名義で発表されたものも含む)の短編集。

日本を舞台にした歴史小説は少なく、モンゴルもの、学者もの、大阪商人ものなどが収録されている。
司馬アディクションの私も読んだことがない小説がほとんど。

大阪商人ものは、昔懐かしい感じ(花登筺さんのTVドラマを思い出した)で意外と楽しめたが、本書収録の中では主力作?といえる「ペルシアの幻術師」などは、後の司馬さんの作品からは考えづらいような幻想的なストーリーで、初期作品に慣れていない私としてはかなり違和感があった。
同じモンゴルものでも、おおよそ史実に沿っているように思われる作品(テムジンを描いたもの)は面白かったのだが。

最後に収録されている「兜率天の巡礼」は、「ペルシアの幻術師」をはるかに超えたファンタジー。
何しろ秦氏=ネストリウス派のユダヤ人説というトンデモな(そうでもないか?)テーマで、ストーリー展開があっちに行ったりこっちに戻ったりといった感じで落ち着きがなく、若気の至りなのか、注文に応じたのか、原因はわからないけど、これまた違和感ありまくり。
司馬さんが書いたものという前提がなければ、普通の面白い小説なんですけどね。
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