ユダヤ警官同盟(マイケル・シェイボン 新潮文庫)
イスラエルの建国に失敗し、世界中に離散することとなったユダヤ人の居留区の一つアラスカのシトカ。アメリカへの返還が間近にせまったシトカで起こった、かつて救世主に擬せられた青年の殺人事件を追うユダヤ人刑事を描く。
「高い城の男」を思わせる設定で、謎解きの要素はほとんどなく、ミステリというよりSF。
現実とは異なる歴史の設定の説明は、物語の中で少しずつ行われる(第二次大戦後ユダヤ人が中東から駆逐されたとか、満州国が存続しているとか、シトカは数百万人もの人口を抱え携帯電話などの産業が盛んであるとか・・ほのめかし程度で詳しい説明があるわけではない)ので、「この世界はどうなっているのか?」といった点でも興味をひく。
刑事に対する描写は粘着性を感じるほど濃密で、物語の中の時間の経過は恐ろしくゆっくり。
みずからのプライドだけを根拠に事件を追い続ける刑事の姿は、ハードボイルド調ではある。
ただ、作者は文学畑(?)らしいので凝った表現、迂遠な展開が好きなのかもしれないが、正直いって、上巻の終わりあたりから読み進むのに苦労した。(各種のランキングで上位に位置したのは、「難解だが、海外では売れているらしいから、まあいい点つけとくか」みたいな評者が多かったせいでは?と邪推したくなるほど)
このように、凝った設定や描写のわりに、物語の結末は妙に楽天的な、あっけらかん、と言っていいほどのハッピーエンディングなのもちょっと違和感がある。
と、けなしたが、そういった気に入らない点はあるものの、全体としては、読み終わった後もう一度読みたくなる、という私自身の良書の基準には十分あてはまる内容でだった。
文庫本のオビによるとコーエン兄弟監督で映画化されるらしい。物語の雰囲気が件の監督の作品にぴったりという感じなので、とても楽しみ。
イスラエルの建国に失敗し、世界中に離散することとなったユダヤ人の居留区の一つアラスカのシトカ。アメリカへの返還が間近にせまったシトカで起こった、かつて救世主に擬せられた青年の殺人事件を追うユダヤ人刑事を描く。
「高い城の男」を思わせる設定で、謎解きの要素はほとんどなく、ミステリというよりSF。
現実とは異なる歴史の設定の説明は、物語の中で少しずつ行われる(第二次大戦後ユダヤ人が中東から駆逐されたとか、満州国が存続しているとか、シトカは数百万人もの人口を抱え携帯電話などの産業が盛んであるとか・・ほのめかし程度で詳しい説明があるわけではない)ので、「この世界はどうなっているのか?」といった点でも興味をひく。
刑事に対する描写は粘着性を感じるほど濃密で、物語の中の時間の経過は恐ろしくゆっくり。
みずからのプライドだけを根拠に事件を追い続ける刑事の姿は、ハードボイルド調ではある。
ただ、作者は文学畑(?)らしいので凝った表現、迂遠な展開が好きなのかもしれないが、正直いって、上巻の終わりあたりから読み進むのに苦労した。(各種のランキングで上位に位置したのは、「難解だが、海外では売れているらしいから、まあいい点つけとくか」みたいな評者が多かったせいでは?と邪推したくなるほど)
このように、凝った設定や描写のわりに、物語の結末は妙に楽天的な、あっけらかん、と言っていいほどのハッピーエンディングなのもちょっと違和感がある。
と、けなしたが、そういった気に入らない点はあるものの、全体としては、読み終わった後もう一度読みたくなる、という私自身の良書の基準には十分あてはまる内容でだった。
文庫本のオビによるとコーエン兄弟監督で映画化されるらしい。物語の雰囲気が件の監督の作品にぴったりという感じなので、とても楽しみ。