蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ザ・センチネル

2007年05月30日 | 映画の感想
米大統領警護のシークレットサービスの中にモグラがいて、大統領暗殺を狙うグループと通じているらしいことがわかる。
主人公二人(マイケル・ダグラス、キーファー・サザーランド)はともにシークレットサービスのメンバーだが、マイケル・ダグラスはモグラであると疑われる。

実はマイケル・ダグラスは大統領夫人と不倫関係(この臆面もない設定がすごい。しかしマイケル・ダグラスならそんなこともしかねんな、と妙に納得できてしまった。キャスティングの妙??)にあり、それを隠しつつ疑いを晴らすのが難しいという状況にある。

と、この辺までが前半で、ここまではけっこう面白く見られた。しかし、マイケル・ダグラスが逃亡を始めてから(本来ならここから盛り上がってクライマックスへ・・・のはずなのに)急激にグレードダウンした感じになる。

普通、見ている人には疑いをかけられている者が無実であることが明かされている場合、その容疑者を追っているもう一人の主人公格(この映画ではサザーランド)が、真のモグラであるというパターンが多いが、この映画ではそんな単純なひねりすらなく、モグラは主人公たちの上司だという、なんとも陳腐なストーリーだった。
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アビエイター

2007年05月27日 | 映画の感想
だいぶ昔のことですが、私が勤めている会社のある先輩が役員になったとき、喜びのあまり「選ばれし者の恍惚と不安、我にあり、という心境です」と口走ったことがあり、周りにいた人は吹き出しそうになったり、ドッチラケだったりしました。

有り余るほどの才能か、資産か、運か、あるいはまた狂気を持ち合わせる人にしか、この言葉は似合わないと思うのですが、この映画を見て(おおよそは事実に沿っているそうなので)ハワード・ヒューズにこそ、この言葉は贈られるべきと感じました。

潤沢な相続財産を使って、みずから大作映画をプロデュースし、飛行機を設計して自分で操縦し(この、自分で試作機を操縦してしまうというのが特にすごいと思う。事故を起こして(多分、この場面がこの映画の最高の見せ場だと思うのだが、よくできていた)半死半生になっても、なお、操縦し続けたというのがさらにすごい)、世界有数の航空会社を成功させる。まさにおとぎ話のような生涯です。

光が強ければ闇が濃くなるように、輝かしい経歴のウラで、彼は強迫性障害にとらわれていたようですが、その狂気を演じる眉間に深いしわを刻んだディカプリオの表情はなかなか迫真のものでした。この作品がたくさんのアカデミイの部門賞を受けながら、主演男優賞だけはもらえなかったとうのは、ホント、意地悪かイジメとしか思えませんな。
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難儀でござる

2007年05月19日 | 本の感想
難儀でござる(岩井三四ニ 光文社)

戦国時代の将校クラスの侍や公家、農民、僧侶等の主人公が様々な難題に直面し、ある時は自らの工夫で局面を打開し、ある時は策もむなしく散り、時には何もしないのに問題が解決するさまを描いた短編集。武田家に絡んだ話が多く、時代順に並べられているので、シリーズもののようにも読める。

最後の「蛍と呼ぶな」が(この話だけは武田家と全く関係ない話なのだが)特にいい。主人公は京極高次の部将。舞台は関ケ原前夜の大津城。高次は東軍について大津城に籠城するが西軍に攻めたてられて落城寸前。

高次の姉は淀殿が現れるまで秀吉の最愛の側室、正室の姉は淀殿、正室の妹は秀忠の正室。東も西も最高権力者と最強の関係をもっていたわけだ。後世からみれば信じがたいほどの完璧な血縁・姻戚関係で、こんな人がなんで侍として合戦をしていたのかと思わずにはいられない。城が落ちようが落ちまいが命や禄をなくしてしまう可能性はほとんどない。
大津城が降伏したのは関ケ原の当日で、この本の中では、マヌケなタイミングとされているが、もしかしたら、万一西軍が勝った場合に備えての行動だったのかもしれない。
室町初期から続く名家の遺伝子が、完璧な姻戚と抜群のバランス感覚を与えたのだと考えられなくもない。

現在の総理大臣が共感した本である、とオビの宣伝文句にあった。真偽は確かではないものの、下級官吏ならともかく、国のトップに立つ人が、下積みの悲哀やしたたかさみたいなものを描いた本に共感してもらいたくない、と、その統治下にある国民としては思う。
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愚行録

2007年05月12日 | 本の感想
愚行録(貫井徳郎 東京創元社)

実際にあった一家皆殺し事件をモチーフにして、周辺の人物へのインタビュウ形式で、その人物と被害者夫妻との過去の「愚行」を描いている。

物語の中では慶大(特に付属校から進学した慶大生)生をかなり手ひどく批判している。著者が慶大卒というのならまだしも、早大出身のようで、「ここまで書いて大丈夫か?」と読んでいる方が心配になってしまった。

知り合いの人の悪口を言ったり聞いたりするのは楽しいこともあるけれど、それが「陰口」っぽくなると、全く楽しくなくなる(「陰口」は対象の人をおとしめようとする悪意みたいなのが感じられる悪口、といのが私の感覚です)。この本の大半がそういう意味での「陰口」から構成されているので、あまりいい気分で読むことができなかった。(最大の「陰口」の対象は先に述べたように慶大生)

最後に謎解きがあるのだけど、まあ、それが本書の目的というわけではなさそうなので、付け足しみたいな感じだった。
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キングス&クイーン

2007年05月08日 | 映画の感想
ヒロインは3度目の結婚を控えている。最初の夫との間には子供をもうけるが、夫とは死別。二度目の夫はエキセントリックな音楽家だが、連れ子とは仲がよかった。
ヒロインの父が末期ガンであることがわかり、ヒロインは、父宅で看病をする間、子供を2番目の夫に預けようとするが、その夫は(友人の陰謀で?)精神病院に措置入院させられていた。

いわゆるアート系の映画で150分の長尺ものだが、場面転換がテンポ良く進むので、あまり退屈しない。最初の3分の1くらいまでは、設定や筋を把握するのに苦労するが、それがかえっていい刺激になっていると思う。

レンタルビデオ屋では恋愛映画のコーナーに並べられており、カバーのストーリー紹介もそのノリで書かれているが、実際には家族の間の思いやりや愛情、その裏返しの憎悪などをテーマとした映画だと思う。

主筋とはあまり関係ないが、二度目の夫の父親がかっこよかった。見た目は太ってやる気のなさそうなコンビニ風の小さな店のオーナーだが、店がピストル強盗に襲われると、丸腰でこれを見事に撃退。次の場面ではアスレチックジムで重そうなウエイトを軽々と持ち上げていた。

以下は余談。日経新聞の夕刊のコラムで佐藤賢一さんが以下のような主旨のことを書いていた。「日本人にとって難しいといわれる、フランス語のラ行の発音は、ハ行で発音すると通じやすい。例えば「フランス」は「フハンス」と発音するとよい」。この映画の主人公の名は「ノラ」。確かに映画の音声では「ノハ」と聞こえた。(意識していたのでそう思えただけかもしれないが)
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