蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

竜とそばかすの姫

2022年10月24日 | 映画の感想
竜とそばかすの姫

そばかすの高校生すずは、母を亡くして父と暮らすが、折り合いが悪い。50億人以上が集うネット上の仮想世界Uで、アバターのベルになって自作を歌うと想像以上に大ヒットする。すずのUコンサート中に竜が大暴れする。竜はネット上の自警団に追われてアンヴエィル(実名を晒されること)されそうになるが・・・という話。

さえない女子高生が、モテ男の同級生になぜか見初められて・・・という少女漫画の王道(言い換えると陳腐)をいく主筋なのに、なぜかとてもよかった。
細田監督は今や日本のトップを争うアニメーターなのに、人物については、あくまで適切な省略をほどことした簡素な描写に終始していて、そこもまたいい。多分とてもおカネをかけたUの描写は、一般ウケするには不可欠なのかもしれないが、女子高生の純粋ラブストーリーの方が(私は)よかったなあ。

すずの友達で、大金持ちの家の娘でITマニアのヒロちゃんのキャラが最高。彼女を主人公にしてスピンオフがみたいな。
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時をかける少女(アニメ)

2022年10月24日 | 映画の感想
時をかける少女(アニメ)

筒井原作の主役:芳山和子の姪:紺野真琴は高校生。仲のいい同級生津田と間宮と野球のマネごとをするのが放課後の習いだった。真琴は、いつでも過去に戻る(タイムリープ)ことができること、しかしリープできる回数に限りがあることを知るが・・・という話。今まで見たことなかったが、「竜とそばかすの姫」がTV放映される前に細田作品がTV放映されたので見てみた。

本作の魅力は、省略された絵にあると思う。

アニメって絵が動くところに意味がある。だからピクサー風のポリゴン系?アニメはアニメーションじゃなくてCG映画に過ぎないと(私は)思っている。
例えば、名作のほまれ高いカリオストロだって省略されているけど、それで立派に動いてみえるところが素晴らしいし、現実にはありえないような動きがリアルに思えるのは、省略のおかげなんじゃないかと感じている。(予算使い放題?になってからの宮崎監督アニメは描き込みが行き過ぎて、省略があまり感じられなくなったのが(私は)残念だ)

本作の人物の省略ぶりは、晩年の熊谷守一の絵みたいで、下手すると小学生の絵なみなのだけど、ちゃんと人間が動いているように見えるのがいいんだよね。
(本作はいちおう商業ベースで制作されたそうだけど、かなり低予算だったそうで、単におカネがなかっただけなのかもしれない。でも大家となった後、最新作のそばかす姫でも人物は相当に省略されているから、やっぱり意識的なんだろうな)
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台湾流通革命

2022年10月19日 | 本の感想
台湾流通革命(佐宮 圭 ちくま新書)

台湾でセブンイレブンを5,000店以上のチェーンに発展させた他、宅配便、ドラッグストア、カフェなどの業種も成功させた徐重仁の評伝。

徐さんは、早稲田大学大学院に留学した後、台湾の大手企業のサラリーマンとなり、一度はセブンのチェーン展開に失敗したものの、数年後に再度指揮して成功させた。
その要因は、フランチャイズ化(希望者の家庭訪問までして適性を見極めたらしい)、PB開発(弁当で成功したとのこと)、IT化(日本のセブンのシステム基盤を作ったNRIと提携)の3つであると本書はいう。
いずれも、日本のセブンの成功要因と同様で、徐さん自身、コンビニに限らず、日本での事業をモデルとして現地化することが成功の秘訣だとしている。

本書は、徐さんへのインタビュウを中心にまとめられたもののようで、(最後の方で発言がネットで炎上したことに触れているくらいで)最初から最後まで彼の業績と人柄を褒め称える内容になっている。
もう少し、逆の面(功罪の罪の方)からみた視点があった方がよかったかな、と思えた。
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おいしいごはんが食べられますように

2022年10月17日 | 本の感想
おいしいごはんが食べられますように(高瀬隼子 講談社)

食品包装資材のメーカーの社員の二谷は、同僚の芦川とつき合っていた。芦川は料理は得意だが、仕事の要領が悪く休みも多いので、職場では評価されていなかった。後輩の押尾は二谷を憎からず思っていて嫉妬心がある上に、同僚が芦川に気をつかっているのが気に入らなかった。押尾は二谷を巻き込んで芦川に嫌がらせをしようとするが・・・という話。

私はNHKの番組「サラメシ」が好きで、録画して何度も見返したりする。
本書のタイトルとほんわかとした表紙の装画から「サラメシ」みたいな話なのかと思って読んでみたが、内容は正反対のギスギスした筋立てだった。

定期的に二谷の自宅を訪れて夕食をつくり、泊まっていくほど、芦川とは深い仲なのに、二谷の方はこれっぽっちの愛情も感じていない。
芦川の作る美味な料理を平らげた後でさえ、二谷は(常食にしている)カップラーメンが食べたくて仕方がない、というシーンが特に印象的。二谷は腹がくちればそれでよくて食事というものに無関心なのだった。

押尾みたいに感情を表出させて本音に近いことを漏らさずにはいられない人は、近頃はみかけないような気がする。
二谷みたいな、表向きは穏やかでも、何考えているかわからない人はたくさんいるけど、そういうキャラを主役にして物語を愉快なものにするというのはなかなか難しい。
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月の光の届く距離

2022年10月15日 | 本の感想
月の光の届く距離(宇佐美まこと 光文社)

高校生の柳田美優は、同級生のカレシの子を身ごもってしまう。カレシにも親にも冷たくあしらわれて自殺しようとした所を、盛り場でうろつく若者の相談相手になるNPOのメンバーの野中千沙に救われる。千沙の紹介する奥多摩のゲストハウスで暮らすことになる。ゲストハウスの経営者は、井川明良と西村華南子の兄妹の二人で、彼らは里親となって3人の子供を育てていた・・・という話。

「塔の上のラプンツェル」に、ちょっと似た設定だったので、同作のような展開を期待したのだが、そこまでのドラマチックなストーリーというわけではなかった。
終盤で明かされる、明良と華南子の関係性の秘密は、「さすがにそれはムリがあるのでは」と思ってしまった。
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