蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

世界史を創ったビジネスモデル

2017年12月28日 | 本の感想
世界史を創ったビジネスモデル(野口悠紀雄 新潮選書)

歴史上の成功事例から学ぶことは難しいが、失敗から学ぶことはできる、というのが本書の主張。

成功事例はその中心人物の特異な才能や運の良さに依存することが多く、それをまねることは困難だとして、その例としてローマ帝国のアウグストゥス、エリザベス女王、アップルのジョブスなどをあげる。
一方、ネット企業への転進に失敗したATTや(ガースナー以前の)IBMなどを失敗例としてあげる。そして、金融市場において繰り返されるバブルの生成と崩壊を、最も典型的な過去の歴史に学ばない例としている。

もっとも、著者自身も言うように、歴史上の失敗例をしっていても、当事者は「私は違う」「今度は違う」と思い込んで結局自分も失敗例の通りに失敗する。歴史の教訓を生かすことはとても難しい。

本書で解説されている歴史上の事象は、誰もが知っているトピックで、テーマも、まあ、ありきたりだとは思うのだが、著者の手にかかると、とても魅力的なエッセイが出来上がるのが不思議だ。
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三度目の殺人(ノベライズ)

2017年12月26日 | 本の感想
三度目の殺人(ノベライズ)

「そして父になる」の時は、先にノベライズを読んでから映画をみたため、映画の感動が若干損なわれたような気がした。
それで「三度目の殺人」は、先に映画を見てから小説の方を読んでみた。

脚本を書いた監督が著者の一人になっているためか、非常に忠実なノベライズで、内容は映画そのものだったが、重盛(弁護士)が三隅(容疑者)にコントロールされている印象が映画より強かったし、映画では広瀬さんが演じていたせいか、おとなしい女子高生にしか見えなかった被害者の娘も、実は内面はドロドロあって純朴なばかりじゃないよ、という感じ(もしかしてこの娘が犯人なのかも、という疑いが映画より強めに押し出されていた)がした。

映画が先かノベライズが先か、という問題は、映画→ノベライズ→もう1回映画を見る、というのがよいかな、と思った。
ノベライズじゃなくて、原作があってからの映画化だとまた違うとは思うけど(原作と似ても似つかない映画は数多いので)。

そういえば「海街Diary」は、原作→映画→原作もう1回の順だったけど、原作からエピソードを取捨選択しつつも、原作のイメージがとてもうまく映像になっていた、と思い出した。
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スターウォーズ エピソード8 最後のジェダイ

2017年12月26日 | 映画の感想
スターウォーズ エピソード8 最後のジェダイ

その昔、エピソード4が公開された頃は日本でもSFがブームで、私も「SFマガジン」を毎月購読していた。このため、当時は、日本公開前から「アメリカからすごいSF映画が来る」という評判で持ち切りだった。確かにエピソード4は期待に違わぬ出来で、当時としては見たこともないSFX(だっかか?特撮のこと)の見事さには本当にびっくりしたし、「やっぱりアメリカは違う」なんて感心したものだった。
それに第1作なのにエピソード4から始まり、その後6まで作った後に1~3を作る予定という(わけの分からない)シリーズ構成が、とてもクールに見えた。

エピソード5までは、それなりに大人向け映画だったと思う(個人的にはエピソード5が一番好き)が、6あたりから大衆迎合路線?が強化されて残念だった。
エピソード1はまあまあだったものの、2、3を見た時は、正直言って(当時7~9が作られることが決まっていたわけではなかったものの)「7から先ができても見続けることができるだろうか?」と思ったものだった。

エピソード7から製作元締が変わってさらにイヤな予感がした。7は、ストーリーの骨格が1と全く同じで、細部にいくと(言葉を選ばずに言うと)子供だましとしか言いようがない展開が多かった。1と似せることでオールドファンの郷愁?を誘い、(よく言えば)わかりやすいストーリーで新しいファンを満足させよう、というもくろみなのかもしれないけど。

で、エピソード8。上記のように文句を言っていても、いざ公開されるといそいそと見に行ってしまう。そして、オープニングの演奏を聴くと、単純にも「さあ、これから面白いお話が始まるんだ!」という興奮をおぼえてしまうのだった。
本作もご都合主義な筋はたくさん見られたが、レイアとルークが出てくる場面は、やっぱり感慨深い。
特にレイアは、もう9で見ることはできないはずだと思うと、スターウォーズとともに馬齢を重ねてきたオレの人生も終わりに近づいたんだなあ、などと切なくなってしまう。
一方、ルークは、童顔というのか、老成したイメージが全くなくて「変わらないねえ」とこれまたしんみりしてしまった。

さあ、大団円(9)はどうなるのか?
それより気になったのは、8のラストシーン。これって10への布石??
それ(10の製作)だけはやめてほしいが、D社はそんなに甘く?ないよね。
せめて外伝としての位置づけにするか、全くの新シリーズにしてください。

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敵討

2017年12月24日 | 本の感想
敵討(吉村昭 新潮社)

天保期の松山藩:熊倉伝十郎が叔父の伝兵衛の仇討を10年以上の歳月を経て果たす話と、幕末の秋月藩の重臣:臼井亘理が藩内の抗争の中で守旧派の干城隊に自宅を襲われ妻とともに斬殺され、その息子の六郎が明治期に至って父母を殺害した一ノ瀬直久(当時は明治の司法高官になっていた)を仇射ちする話の2編からなる。

敵討と聞くとかっこいいイメージだが、実際には・・・(以下引用)
「敵討ちは、一般には美風とされているが、悲惨な所業ともいえる。敵にめぐり会えるのは極めて稀で、討手は、あてもなく敵を求めて歩きまわらなければならず、それはいつ果てるともない。(中略)討手が物乞い同然となり、飢えて行き倒れになる者も多いという。中には、あてもない探索の旅に気持ちがくじけ、絶望して両刀を売り払い、市井の中に身を埋もれさせる例もある」

敵討は私的制裁ではあるが、本書によると江戸期には届出制になっていて、敵討を果たすと届出書との検証が行われて敵討だと認められれば、罪に問われなかったという。明治期に実行した六郎も罪を問われて収監されるが、のちに恩赦により釈放されている。

江戸期のシステムは案外よくできているなあ、と歴史ものを読むと感心することがあるが、この敵討の仕組みもよく整備され、かつ運用されているなあ、と思った。
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千葉ロッテマリーンズ 2017年シーズンを振り返って

2017年12月23日 | 野球
千葉ロッテマリーンズ 2017年シーズンを振り返って

ロッテファンになってから約20年。最悪のシーズンでした。(以下、敬称略)
夏場以降タレて最下位とかならまだしも、シーズン開始からぶっちぎりで最下位独走とあっては野球自体から興味がなくなりそうになりました。
オープン戦首位だったのですが、たまたま過去同じことがあった年はやはり最下位だったそうで、選手や首脳陣も「今年はいけるぞ」と思って開幕したらSBに3タテくらって「ああ、やっぱりだめか」なんて挫けてしまったのでしょうか。そのSBにデスパイネを引き抜かれたのがすべてだったようで、軸がいない打線のもろさが露呈されてしまいました。やはり1発の怖さがある打者がいないとピッチャーは楽なんでしょうな。ペーニャが打ち出したらそれなりに形になってきたのもその証でしょう。

① 投手
WBSのせいなのか、そろそろ打たれる時期?に来ていたのか、石川の不調が痛すぎました。変に考え込まないでゆっくり休んで、来季は(多分涌井がいないので)エースとなってもらいたいです。

自慢だったブルペン陣もクローザーの益田が不調でガタガタになってしまいました。大谷、南もそうなんですが、絶対的な球威かもしくは決め球がないと、連年で好調を維持していくのは難しいのでしょうね。
その中で内が通年投げ切ったのは立派でしたが、来年以降の反動が心配でしかたないです。

涌井、二木は勝敗数ほど内容はひどくなくて、シーズン前半にもう少し援護があったらリズムができて10勝くらいはしてもおかしくなかったようにおもいます。
リリーフではさっぱりだったのに先発するとビシビシ投げられる酒居を見ていると、やはり(先発/リリーフに対する)適性とかがあるのでしょうか。昔、斎藤コーチが古谷を先発転向させてプチ覚醒させたことを思い出しました。その適性がそちらにあるのか微妙なのがチェンですが、先発に左が皆無なのでそちらでがんばってもらいましょうか。(リリーフにも一人しかいないけどね)

② 捕手
あまりに打たれるので田村がリードに自信喪失してしまったそうですが、特に楽天戦で感じたのですが、相手の研究がかなり上回っていて読まれているような印象がありました。
しかし、その田村も終わってみれば昨年並みの成績が残り、課題の打撃も捕手としては合格ラインでしょう。あっけない凡退も多いのですが、得点圏では「何とかしよう」という意欲が感じられました。
吉田は、特定の投手との相性が良さそうだったり、忘れた頃に長打を打ったりしていいのか悪いのかよくわからない人、という印象ですが、さすがに来年はそれなりの結果を出さないとそろそろ厳しいでしょう。

③ 野手
2016年はショートでベストナイン、今年はコンバートされたセカンドでゴールデングラブ、なのに来年はサードにコンバート。加えてそのサードにはドラ1ルーキーが来る可能性があり、さらにキャプテンも外されるとあって、鈴木がなんかとてもかわいそうです。性格的に表面に出すことはなさそうですが、煮えくり返るよね、普通。鈴木は今年もそれなりの率を残し、なぜか大谷、岸という球界屈指の好投手にめっぽう強い(今年も岸は完全にカモにしてた。8回裏の逆転2ランは今年唯一の良い思い出だ)のに不憫だなあ。腐らないでがんばって!

それ以外の野手はコメントするようなこともなかったかなあ、という程度だったかも。あ、加藤は来年飛躍してほしいなあ。

④ 編成・用兵
もう外国人選手のことは言い尽くされていますが、監督自ら文句を言っていたようにサントスの獲得は間が抜けてましたね。

どこのチームも似たようなものかもしれませんが、投手ばかり取っていて外野手がいなくなったらやたらと外野手を指名し、そうこうするうちに内野がガタガタになったので内野手ばかりが入ってくる、みたいな悪循環に陥っているような気もしますが、中村、平沢、安田というメンツは、まあ前評判ベースではこれ以上ないくらいの人たちを取ってきているので、あとは本人たちに力を出してもうらしかないです。

成績が最悪だったので首脳陣への風当たりも強烈でしたが、伊東監督は少なくとも戦術面ではすぐれた指揮官だったよおうに思いました。

今年初めてコボスタに行きましたが、球場周辺のムードがとても良かったです。野球に興味がない家族を連れてきても喜んでもらえそうな印象がありました。マリンは球場周りが広すぎてピンボケな感じがします。
これもどの球団も同じかもしれませんが、試合ごとにチケット代が大きく変動するのは、わかりづらいです。前売りがふるわない試合は思いっきりディスカウントしてくれるとかがあればまだしも、値上げのカモフラージュにすぎない感じ。

⑤ 来季の展望
涌井が残っても、不動のエースというほどの活躍は見込めそうになく、クローザーは行き当たりばったりになりそうだし、外国人も来てみないとからないし、「右を向いても左を見ても・・・」という感じですなあ。
そんな真っ暗闇のなかであえて期待できるかもしれないポイントをさがすと、
・FA権目前の角中がキャリアハイの大爆発(実現すると出て行ってしまいそうですが)
・ドラ1内野トリオが覚醒(安田はまだ寝てないか)
・西野復活
・二木が岩隈的大エースに成長
くらいでしょうか。昨夜の夢のようなものばかりで恐縮です。
とにかく、順位はどうでもいいので、なんとか勝率5割近辺でおさまるようにお願いいたします。
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