あるきメデス

あちこちを歩いて、見たこと、聞いたこと、知ったこと、感じたことなどを…

杉並・善福寺池の周辺を巡る(東京)

2015-03-01 23:12:21 | 江戸・東京を歩く
 2015年2月28日(土)

 西武新宿線の上井草駅で下車して10時10分にスタートする。ホームは上り下りが別
で、連絡通路はない。南側の下り改札口を出たところに、機動戦士ガンダムの「大地から」
と名付けられた銅像が立っていた。
          
 
 上井草にアニメ製作会社サンライズがあり、機動戦士ガンダムを町おこしに使用してい
るらしい。

 南西すぐ先に、上井草スポーツセンターがある。ここは上井草球場の跡地で、戦前には
巨人の大投手・沢村栄治投手が投げ、プロ野球公式戦も83試合行われたとか。


 戦後は拡張して4万5千人収容の球場となり、神宮球場が米軍に接収中は、2リーグ分
列直後のプロ野球や、東京六大学野球、高校野球などで盛んに利用され、私も中学時代に
観戦に来たような記憶がある。

 東京オリンピック開催の昭和39年(1964)に上井草給水所の配水池となり、4年
後には配水池上に軟式野球場を造成し、現在はプール、体育館、テニスコートなどもある
杉並区最大の総合体育施設。体育館の廊下には、球場時代の写真が掲示されていた。


  巨人 沢村栄治投手(昭和11年)   東京セネタースの名手 苅田久徳二塁手




 現在はサッカーなどに利用されているグランドの脇を少し進み、南側を西進すると、都
立農芸高校の農場があり、広大な果樹園などが望まれる。



 周辺の上井草四丁目には、広い敷地の古くからの農家も残り、そのひとつ西山家には、
杉並区有形文化財の穀櫃(こくびつ)があり、長い塀の一角が開かれて公開されていた。
        
 飢饉などに備えて雑穀を貯蔵するもので、江戸時代の村人たちは社会保障を領主政策に
任せず、民間でも積極的に整備したという。広い敷地内には、ケヤキの高木などがたくさ
ん残されていた。

 杉並工高の横から少しの遊歩道を進んで、切通し公園横に上がる。井草川の源流に位置
するこの辺りは、縄文時代の遺跡だったとか。


 すぐ先、青梅街道の走る五差路の南側一帯の森は井草八幡宮。東日本大震災で損壊し、
2年後に再建したという北鳥居から入る。


 八幡宮の周辺からは縄文中期の住居跡や多くの土器が発見されていて、中世初頭には武
蔵野台地の交通の要衝となり、文治5年(1189)に源頼朝が奥州征討の際には、戦勝
を祈願して境内に松を手植えしたとか。



 のち文明9年(1477)、太田道灌が石神井城の豊島氏を攻めた際には戦勝を祈願し、
慶安2年(1649)には三代将軍家光が社殿を造営させ、歴代将軍は朱印地を寄進した
という。


 社殿前に、源頼朝手植えの松の二代目の松が大切に育てられている。
      


 境内西側には井草民俗資料館があるが、公開日ではなかった。


 参道を挟み、区有形文化財の富士講灯籠(とうろう)2基が並んでいた。

 シダレウメの咲く南側を西進し、善福寺四丁目の善福寺境内へ。りっぱな本堂はコンク
リート造り。


 善福寺の開山時期は不明だが、本尊阿弥陀如来立像は鎌倉末期の作とか。「新編武藏風
土記稿」には「往古に善福寺池の池畔に善福寺という寺院があった」と記されているよう
だが、当寺が善福寺と改称したのは昭和17年(1942)のことで、関連はないらしい。

      
 本堂横に戦死者のための「鎮魂」碑と「清浄光塔」が立ち、南側の紅梅がわずかに開花
していた。門の周辺には、ソメイヨシノの古木が数本枯れ枝を広げている。


 周辺にはケヤキなど高木の多い農家が残り、新しい住宅地の一角に大和市(おおわし)
神社の小さな社殿がある。
        

 ご神体ははく製の大ワシで、大正14年(1925)に近くの一本松に止まっていたの
を散弾銃で撃たれとか。あまりにも大きかったのではく製にして、翌年村人が話し合って
お社を建てて祭り、大和市神社としたという。
    
 さい銭入れからのぞいたが見えず、デジカメを斜めに入れて撮ったら写っていた。

 南に下り、善福寺池を主とする都立善福寺公園の北端に入る。善福寺池は、かつて神田
上水の補助水源として利用され、武蔵野三大遊水池の一つとして知られていた。現在は上
池、下池に分かれ、両方で約3万7千㎡あり、公園全体の47%を占めるという。


 上池の西側を南に向かう。湖畔のネコヤナギがふくらみ、池にはカモが遊んでいる。


 斜面下に回ると、源頼朝が奥州征討から戻った際、干ばつだったので掘った「遅の井
(おそのい)」と呼ぶ湧水が枯れたので、井戸を掘ってポンプで汲み上げて復元したとい
う小さい湧水がある。
        
 「遅の井」とは、頼朝の軍勢が折からの干ばつで渇きに苦しんだのに、水が湧き出るの
が遅かったので出た言葉だという。

 そばの弁天島には、江戸時代、「善福寺の弁財天」といわれ、建久8年(1197)に
江ノ島の弁財天を勧請したのが始まりという市杵嶋(いちきしま)神社が祭られている。
      

      
 かすかに芽吹きの色づきを見せる対岸のヤナギなどを見ながら池畔を進み、渡戸橋で車
道を横切り下池へと進む。


 下池には枯れアシが茂り、湖の中の枯れ木に鳥が羽を休めていた。
    

 東端付近まで進むと、早咲きの桜が濃い色の花びらを見せている。
    

 善福寺池を離れ、善福寺川源流の橋となる美濃山橋から南下して、善福寺さくら公園か
らさくら児童遊園の横を通過する。

 都道113号に入って地蔵坂交差点や荻窪中の前を通り、原寺分橋から善福寺川右岸の
歩道へ。

 この辺り、川の両岸はコンクリート張り、そのうえ湖岸には住宅が接していて景観はい
まひとつだが、自転車も通れぬ細い歩道なので安心して歩ける。井荻橋で左岸沿いに回り、
西荻窪駅に延びる関根橋で善福寺川を離れた。

 西荻北二丁目の通りを東進し、少し先で左折して西荻図書館前を通過する。図書館前に
「城山と七ッ井戸」の説明板があり、近くの荻窪八幡神社周辺の台地上の、明治中頃まで
のことが記されていた。

 北側の杜橋から次の間中橋まで、再び善福寺川右岸の細い歩道を進む。左折して北に向
かうと青梅街道の手前右手の杉並会館に、「杉並アニメーションミュージアム」の表示が
出ていたので入館する。
      


 アニメーションミュージアムは3階。館内には、日本のアニメの歴史年表や、アニメが
できるまでの工程の説明、デジタルアニメの現状、アニメの原理の体験コーナーなどがあ
り、子ども連れの家族などで賑わう。
    





 中3階の企画展示室では、赤塚不二夫誕生80年記念の企画展(撮影禁止)が開催され
ていた(入館は無料)。

      
 道路を挟んだ西側の森は、旧上荻窪村の総鎮守だったという荻窪八幡神社。


 拝殿の前には、文明9年(1477)に太田道灌が石神井城攻めの戦勝祈願の際に植樹
したという、ご神木で「道灌槇(どうかんまき)」と呼ぶコウヤマキがあり、杉並区天然
記念物に指定されていた。
      


 都道4号・青梅街道の荻窪警察前交差点を渡り、すぐ東にある薬王院に行くが、門が閉
ざされていたので門のところからコンクリート造りのお堂を眺める。

 これから行く観泉寺の薬師堂らしい。

 交差点に戻って北へ、上井草駅に延びるバス道路を少し進むと、松乃家というそば屋さ
んがあった。もう13時半なので入り、つけとろそば(800円)で昼食とした。
    

 すぐ先左手には、広大な原っぱの広がる公園があった。

 杉並区立「桃井原っぱ公園」で、ここにはかつて大正14年(1925)に開設した中
島飛行機の原動機工場があり、国産第1号の飛行機用エンジンをはじめ、零戦のエンジン
も設計・製造されたとか。

 戦後は幾多の変遷を経て日産自動車荻窪工場となり、日本のロケット第1号も開発され
ているらしい。平成10年(1998)に工場が移転し、公園が開設されたのは平成23
年(2011)という。

 次の交差点から、中大杉並高の横を真っ直ぐに北進すると、たくさんの樹木が目に付く
広い境内の観泉寺である。


 観泉寺は、慶長2年(1597)に下井草村にて観音寺として創建された。それを今川
家十三代直房が上井草村のこの地に移転して、伽藍(がらん)を建立して寺領を寄進し、
今川家の菩提寺として観泉寺と改めたとか。

 慶安2年(1649)には幕府から10石の朱印状が与えられたという。


 どっしりした山門を入ると正面に大本堂があり、右手前にはシダレザクラの古木がまだ
枯れ枝で立つ。


 鐘楼のそばの紅梅が開花し始め、境内の植栽はよく手入れされていて気持ちよい。


 本堂左手の墓地の一角には今川氏累代の墓があり、都の旧跡に指定されている。


 墓地には、桶狭間の戦いで敗れた今川義元の子孫と、当地との関わりの説明板がある。


 寺域の東側から都道438号・早稲田通りに出て、ひとつ西の交差点から北へ、上井草
駅へ向かう。スタートした上井草駅には14時37分に戻った。

 今日歩いたのは東西、南北とも2・5㎞程度のエリアだったが、古代から近代までの種
々興味ある歴史を知ることができた。

(天気 晴、距離 9㎞、地図 (1/2.5万)吉祥寺、杉並区史跡散歩地図、歩行地
 杉並区、歩数 17,300)




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コメント (2)
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