Twitterでやたらと多くの人たちが『子供部屋おじさん』の話をしていて、
どうしてかなと思っていたら、ワイドショーで取り上げられたのがきっかけだったようだ。
年収1000万円でも実家暮らしの「子供部屋おじさん」 ネットで反響相次ぐ(しらべぇ)
私のイメージとしては、親の家から出る最初のきっかけは、
「地元から離れた場所に進学した」であるケースが多いのではと思う。
家から通えない学校に行こうと思ったら、下宿するか寮に入るかになり、
それが「親元離れた暮らし」のスタートになる人が多いのではないか。
そして彼(か)の地で就職したら、そのまま一人暮らし継続となる。
その後は、転勤や結婚で住まいが変わっても、親の家に戻る機会はなく……。
一方、ずっと親の家に居る人は、自宅から通える学校に進学し、
地元で就職した、ということだろう。
特に首都圏在住だと、学校も就職先も他のどの地域より格段に選択肢が多いので、
わざわざ遠くに行って一人暮らしを開始する必要は、なかなかないのではないか。
大学時代の私の印象としては、一人暮らし=地方出身、自宅住まい=東京出身、
というものが、抜き難く、あった。
だから私は、大人になって親の家にそのまま住んでいる、という状況自体は、
そんなに不自然なこととは感じない。
都会の人ほど、そうなる下地があるのでは?と思う程度だ。
ただ、私の考えとしては、社会人になったら、どこかで一度くらい、
一人暮らしを経験したほうが、全然しないよりは良い、という程度には思う。
自力で不動産屋を回って自分の住むところを探し、交渉し、契約をし、
何もない部屋に引越し、役所での転入手続や電気ガス水道の使用開始手続、
引き落とし口座の登録、生活必需品の買い物、etc.etc.を、
全部ひとりでやったことがあるのと、全く無いのとでは、
やはり、自立に関する経験値が違うだろう、と思うからだ。
何より、衣食住全般を自分の稼ぎでまかなう手応えは、
社会人としての自信にもなる。
掃除料理洗濯、その他の些細な家事でも、自分で手を下さなければ
かわりにやっておいてくれる人は、誰も居ない。
困ったことが起こっても、体調が悪くなっても、
どうしたらその事態を解決できるのか、まずは自分で考えなければならない。
気付いて何とかしてくれる人は家の中に居ないのだから。
そういう意味で、私は「子供部屋おじさん」「子供部屋おばさん」を
一概にオタクだとか親離れしていないとは思わないが
(むしろ一人暮らしのほうがオタ活動には有利かも?)、
「生活者としての経験がいささか足りないかもしれない」とは思う。
自分ひとりで自分自身の面倒をみる生活は、
やはり、一人暮らしをしてみなければ、体験することは難しいだろう。
そのスキルは、それなりに得難いものなのではなかろうか。
簡単に言うと、私自身は、18歳から29歳までの一人暮らしから、
実に多くのことを学び、それが後日の自分を支えてくれたと思い、
自分にとっては良かったと思っている、と言いたいわけですが(^_^;。
しかし一方で、実家に住んでいるからこそ、ゆとりある生活が実現でき、
そこで生まれた余裕を活かして、ほかの人以上に仕事をしたり消費活動したりできる、
という面もあるのだから、これはこれで社会貢献だとは思う。
社会の構成員としては様々な人たちが居るべきだし、
「成人してもなお実家に住んでいる」という一点だけで、
是非を論じるべきものでないことは、私にもわかっているつもりだ。
また、家庭の事情で、両親と同居せざるを得ない場合もあるだろうし。
「人間だれしも、いろんなことを経験できないままに、死ぬんですよ」
と書いたのは曾野綾子だったと思うが、それは確かにそうで、
一人暮らしの経験をしたことがないからと言って、それが何?
という考え方も「あり」だと思う。
ちなみに、「子供部屋おじさん」はあっても「子供部屋おばさん」は
聞いたことない、というtweetをいくつか見たのだが、
私は最初にこの言葉を知ったときから、両方を並列で覚えていた。
「こどおじ」「こどおば」という略語まであった。ネットで見たのだったと思う。
それゆえに私は、この言葉を男性差別の意味では捉えていなかった。
ずっと実家に住んでいるイメージが、取り立てて男性特有とか女性特有とかとは
私は今も全く感じていない。
ときに、私が大学を出る頃、つまり1980年代半ば頃は、
女子学生の就職はむしろ、自宅住まいの人のほうが有利だった。
一人暮らしの女子は身元がいい加減だし素行が悪い、と会社側が判断する、
と言われていた。
こっちのほうが明らかに差別だった。
当時、女子だけが、「きちんとした両親のもとで学生時代を過ごし、
そこから通勤するのが『良家の子女』」という基準を適用されていたのだから。
その場合、女子が親の家を出るのは、結婚するときが初めて、となるのだった。
父親から「もう長いこと家に居たことがなかったので、いつ嫁に行ったのか、
定かでない」と言われる私のようなのは、一番ヨロシくなかった。
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