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殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

ヌートリアより愛をこめて

2009年02月05日 11時45分00秒 | みりこん童話のやかた
            「みりこん、ヌートリアになるの図」


ヌートリアという動物をご存じか。

ちょっと大きめのビーバーといった出で立ち。

河川のほとりに穴を掘り、群れで棲む。


旧日本軍が毛皮にする目的で輸入し、それが繁殖したとかいう説もあるが

とにかく彼らは増えた。増えすぎた。

そこらへんの川と名の付く場所には必ず登場するほどに。

雑食性のため、近年では農作物の被害が甚大らしい。

私の住む町にもいる。

家に入り込んでいた、いや、台所で食べ物をあさっていた…

などという噂も聞こえてくる。

真偽は不明。


そのうち子供が襲われるのでは…と言い出す心配性の親も出現するであろう。

人食いではないと信じたい。



ある農村でも、ヌートリア退治の話が持ち上がった。

どげんかせんといかん…と言ったかどうかは知らないが

日曜日、近隣の男性が集まって決行することとなった。


なにしろ初めてのことなので

事前に隣町の経験者に指導をあおぎ、網やワナを用意して臨んだ。

各自分担した役割を見事にこなし、老いも若きも一丸となって頑張った…。


           大漁。


たくさんのヌートリアが、網に捕獲された。

日頃疎遠になりがちな近隣住民は、昔のような連帯感を取り戻し

おのおのの活躍を誉め讃える。

炊き出しの奥さんたちも手を取り合って喜んだ。

各自満面の笑みで、囚われの身となったヌートリアを前に記念撮影。


そこであることに気付いた。

「捕ったはいいけど、これ、どうする?」

一同、そのことは考えていなかった。

捕まえることだけに全身全霊をかたむけたのだ。


「そりゃ、駆除だろが」

「駆除って、殺すことかい」

「まぁ、そうとも言うな」

「…どうやって…」

「さぁ…」


代表が、教えを請うた隣町の経験者に電話をかける。

      「あ~、そりゃね、棒で頭を叩いて殺すんじゃ」

気軽に言われ、青ざめる一同。


「…○山さん、若いんだから、やってや」

「○田さんこそ、力が強いんだからお願いします」

「これからは○岡さんのような若い人が率先して…」

「いや、こういうことは○村さんたち人生経験豊かな人のほうが…」 


なすりあいはどこまでも続く。

あんたは草野球の4番だから棒は扱い慣れているだろう…

いや、寺が親戚のあんたこそ、今後の供養は万全だろう…


やがてクジ引きということになったが

用事がある…と帰り支度を始める者、それをとがめる者も出てきて

険悪なムードが漂い始める。



あみだクジが出来上がる頃には、ヌートリアは網を噛みちぎり

全員脱走していた。


       みんなホッとしましたとさ。

          
コメント (12)
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