日曜日に家族揃って買い物するのが夢だった頃がある。
長年憧れ続け、求め続けたものは
その必要性を失った時から
イヤというほど恵まれることになるらしい。
「パパ、あれ買って」
「ママ、これがおいしそうだよ」
「待て待て、走ったら転ぶぞ」
「今夜は何が食べたい?」
あはは…おほほ…。
1人4役。あ~ばからし。
仕事を辞めてから、日曜日の過ごし方に困る。
今までは休みじゃなかったのだ。
あってせいぜい月1回。
成長した子供たちは、遊びに忙しい。
親なんかかまってくれはしない。
よって、今まで長時間一緒に過ごしたことのない夫婦が
朝から家に取り残される。
お互い息をひそめ、相手が出かけるのをひたすら待つ。
しかし、浮世を忘れて放蕩の限りを尽くした男と
働き詰めで休むことに慣れてない女に
そうそう世間からお呼びはかからない。
見せかけの平和を保つため
そして気まずい休日を早く終わらせるため
どちらからともなく苦肉の策を施行する。
…買い物だ。
その日は検討の結果、町内のスーパーへ行くことになった。
店に入ると、30代後半のお派手な女性が近づいて来た。
付けてないのは鼻輪だけ…といったあんばいで飾り立てているのが
いっそすがすがしい。
「あら~!お久しぶり」
口ではそう言いながら
ちっともなつかしそうじゃない、仇に会ったような目つきで夫のみを凝視。
「お買い物?」
見りゃわかるだろうに、とげとげしい口ぶりで聞く。
「どなた?」
わざと夫をつついて、にこやかにたずねる。
「…○○病院の先生の奥さん…」
夫は冷静を装って紹介する。
「○島ミチです」
女は歪んだ笑みを作って肩を揺らし、フルネームを名乗る。
わかってるくせに…と言いたいようだが
申し訳ない…知りません。
こいつ、絶対元ヤンだ…。
前髪の立ち上げの割りに、後頭部の盛りが少ないのが目印。
更正して玉の輿ってところか。
女も無言で私を上から下まで見る。
軽く会釈してその場を離れる。
微妙な間を置いて、夫が付いて来た。
買い物を済ませてレジに並ぶが
一緒に並んだ夫はソワソワと落ち着かない。
長身を利用して、商品棚のあちこちに目を配っている。
我々の後ろに人が並んだ瞬間
「ちょっと欲しいものがあるから…」
などとゴニョゴニョつぶやき
夫は脱兎のごとく乾物売り場の方向へ向かう。
不自然きわまりない。
後ろに人が並んで、私が動けなくなる瞬間を待っていたらしい。
レジが空いて、私の番になった頃
夫は走って戻って来た。
日高産ダシ昆布を手に…。
あのミチ夫人に、何かのっぴきならない用があったのだろう。
乾物売り場に行ったからには
何か手にして戻らなければ怪しまれると思ったようだ。
その努力は認めてやろう。
夫のTシャツの首が、びろんと伸びている。
強くつかまれたらしいシワも残っている。
プププ…ひそかにほくそ笑む私。
二人は以前にナンカあったらしいが
さっきの乾物売り場でもいろいろあったらしい。
そのまま何事もなく帰宅。
もちろん、何も聞かない。
私はヤサシイのだ。
買って来た物を冷蔵庫に入れる。
そしてにっこりと微笑み、夫にダシ昆布を手渡す。
「欲しかったんでしょ?召し上がれ」
こうして二人の日曜日は暮れてゆく。
長年憧れ続け、求め続けたものは
その必要性を失った時から
イヤというほど恵まれることになるらしい。
「パパ、あれ買って」
「ママ、これがおいしそうだよ」
「待て待て、走ったら転ぶぞ」
「今夜は何が食べたい?」
あはは…おほほ…。
1人4役。あ~ばからし。
仕事を辞めてから、日曜日の過ごし方に困る。
今までは休みじゃなかったのだ。
あってせいぜい月1回。
成長した子供たちは、遊びに忙しい。
親なんかかまってくれはしない。
よって、今まで長時間一緒に過ごしたことのない夫婦が
朝から家に取り残される。
お互い息をひそめ、相手が出かけるのをひたすら待つ。
しかし、浮世を忘れて放蕩の限りを尽くした男と
働き詰めで休むことに慣れてない女に
そうそう世間からお呼びはかからない。
見せかけの平和を保つため
そして気まずい休日を早く終わらせるため
どちらからともなく苦肉の策を施行する。
…買い物だ。
その日は検討の結果、町内のスーパーへ行くことになった。
店に入ると、30代後半のお派手な女性が近づいて来た。
付けてないのは鼻輪だけ…といったあんばいで飾り立てているのが
いっそすがすがしい。
「あら~!お久しぶり」
口ではそう言いながら
ちっともなつかしそうじゃない、仇に会ったような目つきで夫のみを凝視。
「お買い物?」
見りゃわかるだろうに、とげとげしい口ぶりで聞く。
「どなた?」
わざと夫をつついて、にこやかにたずねる。
「…○○病院の先生の奥さん…」
夫は冷静を装って紹介する。
「○島ミチです」
女は歪んだ笑みを作って肩を揺らし、フルネームを名乗る。
わかってるくせに…と言いたいようだが
申し訳ない…知りません。
こいつ、絶対元ヤンだ…。
前髪の立ち上げの割りに、後頭部の盛りが少ないのが目印。
更正して玉の輿ってところか。
女も無言で私を上から下まで見る。
軽く会釈してその場を離れる。
微妙な間を置いて、夫が付いて来た。
買い物を済ませてレジに並ぶが
一緒に並んだ夫はソワソワと落ち着かない。
長身を利用して、商品棚のあちこちに目を配っている。
我々の後ろに人が並んだ瞬間
「ちょっと欲しいものがあるから…」
などとゴニョゴニョつぶやき
夫は脱兎のごとく乾物売り場の方向へ向かう。
不自然きわまりない。
後ろに人が並んで、私が動けなくなる瞬間を待っていたらしい。
レジが空いて、私の番になった頃
夫は走って戻って来た。
日高産ダシ昆布を手に…。
あのミチ夫人に、何かのっぴきならない用があったのだろう。
乾物売り場に行ったからには
何か手にして戻らなければ怪しまれると思ったようだ。
その努力は認めてやろう。
夫のTシャツの首が、びろんと伸びている。
強くつかまれたらしいシワも残っている。
プププ…ひそかにほくそ笑む私。
二人は以前にナンカあったらしいが
さっきの乾物売り場でもいろいろあったらしい。
そのまま何事もなく帰宅。
もちろん、何も聞かない。
私はヤサシイのだ。
買って来た物を冷蔵庫に入れる。
そしてにっこりと微笑み、夫にダシ昆布を手渡す。
「欲しかったんでしょ?召し上がれ」
こうして二人の日曜日は暮れてゆく。