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殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

ゆったりウィーク

2020年05月08日 15時59分02秒 | みりこんぐらし
外出自粛のゴールデンウィークが終わり

会社にも日常が戻った。

我ら夫婦にとって今年のゴールデンウィークは

例年に無いゆったりとしたものであった。


思えば結婚以来40年、ゴールデンウィークには

あまり良い思い出が無い。

結婚して最初の年はつわりでゲーゲー

翌年からは誰かの結婚式や引っ越しの手伝いが続き

以後は夫がよそのおネエちゃんと

おデートをするようになったため、別々に過ごすようになった。

合間には家族で九州の親戚の家へお邪魔して

楽しく過ごしたこともあり、その思い出のみ光り輝いているが

それはたまたま夫がフリーの時か

たとえ一日でも離れがたいような相手でなかった時である。


やがて時は過ぎゆき、義父の会社が左前になると同時に

夫の両親が弱ってくると、夫婦で実家へ通い

世話や家の片づけ、庭仕事の手伝いに

休みを費やすのが6年ぐらい続いた。

船が沈みそうになると、まずネズミが逃げ出すというが

ゴキブリもそうであるらしく、会社が潰れそうになると

アパートへ泊まらせてくれるほどの親密を許す女子が

いなくなったに過ぎない。


本社と合併して倒産を免れて以降は

ゴールデンウィークといえば仕事。

ちゃんとした出勤ではなく、完全なるサービスだ。

我が社の経理をサポートする本社の経理部長

ダイちゃんが原因である。


新興宗教の信者である彼は、毎年ゴールデンウィークに

滋賀県だかにある『本山』へ行きなさる。

夜行バスで行き、雑魚寝しながら修行をして

ゴールデンウィークの最終日に帰って来るのが習慣。

強行軍なので疲れるらしく、休み明けはドライブがてら

我が社に来て、一日ゆっくりすることになっている。


それでも一応、請求書作成のための〆は行われるので

私は夫に手伝わせ、その前日までに集計を終わらせる必要がある。

会社の方は4月末日まで稼働しているので

休みの間に何日か出勤してケリをつけておくのだ。


そのため過去8年、連休を満喫したことは無かった。

本社に助けてもらったのだから

「休みでもゆっくりできない」なんて言ってはいられない。

せめてもの誠意と思って、黙ってやらせていただいていた。


が、ダイちゃんは去年、定年を迎えてパートになり

我が社の経理は彼の後輩がやるようになった。

その人たちは本山なんか行かないから疲れないし

立場上、まだ自由な外出を許されていないので

休み明けにこっちへ来たがることもない。

よって、初めて仕事をしないゴールデンウィークになった。


私もホッとしていたが、夫はもっとホッとして

伸び伸びと休みを過ごしていた。

というのも、連休直前にひと悶着あったのだ。


原因は、やはりダイちゃん。

パートになって、我が社の仕事から外された彼は

何につけ夫に嫌がらせをするようになった。

気持ちはわかる。

宗教の勧誘が社内で問題になりさえしなければ

彼は今頃、取締役の一人になっていたはずだった。

我々が彼の熱心な勧誘を断ったのも恨みの対象で

塩のきいていない…つまり逆襲の爪を持たない夫は

ダイちゃんのやるせない気持ちをぶつける格好の的であった。


事務系の人間が、自分を守りながら社内で意地悪をするには

数字で責めれば簡単だ。

ダイちゃんは我が社の仕事から外れたとはいえ

本社全体の経費に係わる仕事をするようになったため

全体の中の一社として、我が社に関わることもままある。

そこで重箱の隅をつつくように

注意だの指導だのと言っては夫にいちゃもんをつけていた。


数字にシロウトの夫は、なぜそんなことを言われるのか

わからないままのことも多かったが

事務経験のある私は、夫から話を聞くたびに

嫌がらせだとはっきりわかった。

昔、夫の姉がやっていたのと同じ手口。


しかしこの時は、夫にもわかりやすかった。

ダイちゃんが、夫に貸与されている社用車の

ガソリン代にクレームをつけたからだ。

暇になったダイちゃんは、過去1年間に

夫が使ったガソリン代の集計を出して、使い過ぎだと言った。

そして、毎日どこへ行って何をしているのか

レポートを提出するように命じた。


レポートと言われて、意気消沈の夫。

こやつは数字も苦手だが、字を書くのも嫌い。

ラブレターだけは昔、どこかのおネエちゃんに書いていて

どうやったのか美しい字だったのを見たことがあるが

基本、普段は字や文章は下手だ。


このことを聞いた私は、「事務あるある」と思った。

経理事務をやってる人の中には

勘違いをする者がよくいるのだ。

会社のお金なのに、なぜか自分が出しているように錯覚するのと

節約の精神とを混同し

そこへ個人的感情を混ぜ込めば、こういう嫌なヤツになる。


夫のガソリン代がかさむのは当たり前だ。

彼は昼に家でごはんを食べるので、人より1往復多い。

それに夫の車は社内で唯一、ハイブリッド車ではない。

ダイちゃんの宗教勧誘を断わった直後だったので

彼の差し金により、ダサいガソリン車が購入され

夫に貸与されたのだ。

そもそも夫のようないい加減な男に

社用車を与えるのが間違っている。


ともかく4月の末、ダイちゃんは夫に注意すべく

久しぶりに我が社へ来ることになった。

裏はわかっている。

口実をもうけてやって来て、しばらく食べてない〇〇園の

背油ギトギトラーメンを食べたいのだ。

その証拠に定休日の木曜日を避けていた。

《続く》
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