殿は今夜もご乱心

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墓じまい

2020年05月23日 16時16分25秒 | みりこんぐらし
実家の母が墓じまいを言い出してから、1年ほどになる。

それまでは「入りたい子は、うちの墓へ入ったらいい」

と言っており、仏道上、それが可能かどうかを菩提寺にたずねて

「全く構わない」という回答をもらっていた。

そこで我々三姉妹は漠然と、死後の再会を楽しみにするのだった。


私はおそらく婚家の墓へ入るだろうから

そのお楽しみが叶わないのはどこかでわかっている。

わかってはいても、永遠の眠りに際して選択肢があるというのは

そこはかとなく嬉しいものだ。


私なんぞ、うっかり義父母の墓へ入れられたら

死後も働かされそうな気がする。

夫の姉カンジワ・ルイーゼも

嫁ぎ先でなく実家の墓へ入りたがっていて

義母も歓迎しているため、うかうかしていたら

今の環境が墓の下までも続きそうな感触。

彼らから永遠に解放されることが無いとなると

いくら呑気な私でもゾッとしてしまう。

死んだら、ごはんも掃除も洗濯もいらないだろうから

心配するほどでもないとは思うが

どこまでも我を通す彼らに、死後も屈する自分が嫌なのだ。


かといって今度は私が我を通し、義父母とは別の墓を作るとなると

子供たちの墓参りが増えて負担になる。

散骨や永代供養などの別ルートの他に

実家の墓へ入る手段もあるというのは

私にとって、一つのともし火であった。


しかし去年、菩提寺が納骨堂を作ることになった。

それまで菩提寺には墓地が無かったので

檀家は別の墓地に墓を建てるのが慣例だった。

例えばうちの場合、宗派の違う別のお寺の墓地に墓を置いた。

その宗派の違うお寺というのが、仲良しの同級生ユリちゃんの実家である。


母は菩提寺の納骨堂に魅力を感じ、申し込んだ。

一軒あたり6体まで納骨可能、永代供養付きなので

子孫が絶えても大丈夫というシステム。

うちの墓にはすでに5個の遺骨があるので、母が最後の6体目になる。


今年87才になる母は

自身の生命の終わりを気にするようになり

ちょうど同じ頃、何百年も墓地を持たずに来た菩提寺が

納骨堂を作ることになった…

こういうことは全て、巡り合わせという縁であり

生きた人間の気持ちでどうにかなるものではない。

そのことは家族が死にゆくたびに実感してきた。


先着6体なので、我々姉妹の入る余地は無い。

天だか、み仏だかは、我々姉妹が入ることを良しとしなかった。

「あんたはあんたの道を行きなさい」ということなのだ…

私はそうとらえた。

同時に母の意志を尊重し、できることを手伝おうと決めた。



改葬作業は母の希望により、先週から開始の運びとなった。

まず新しい納骨堂を見学に行って、入る場所を決め

住職の説明を聞くところからだ。

噂には聞いていたものの、墓を移転させるとは

人間の引越しと違って大変なことらしい。

墓のあったお寺と、新規に受け入れるお寺同士が

了解し合えばいいというものではなかった。


①まず墓のある自治体、つまり市役所で

改葬申請書や承諾書というタイトルの紙をもらう。

②同時に死者の死亡時の本籍がわかる戸籍謄本を

1人分ずつ発行してもらう。

③戸籍謄本を参考にして、改葬申請書と承諾書に

遺骨の主、つまり死者の死亡時の日付、本籍、住所、氏名を全員分

一体ずつ記入する。

④現在の墓地を管理するお寺から

改葬申請書と承諾書に住所、氏名、印鑑をもらう。

⑤受け入れ先のお寺に、遺骨受け入れ許可書をもらう。

⑥こうして仕上がった書類に戸籍謄本を添えて市役所に提出する。

⑦書類に不備が無ければ、後日市役所から改葬許可書が交付される。

⑧今までの墓から遺骨を取り出し、石材店に依頼して墓石を撤去し

更地にする。

⑧市役所から交付された改葬許可書を

遺骨を受け入れるお寺に提出し、納骨。


改葬の行程は以上の8段階だが、④の段階で

今の墓地の僧侶に読経をしてもらう必要がある。

墓石を単なる石に戻す儀式だ。

ユリちゃんのご主人モクネン君のスケジュールに合わせたので

儀式は先日、先に済んでしまった。

この時のことは、気が向いたら記事にしたい。

そしてもちろん新しい納骨堂へ入居したら

新居となったお寺の僧侶に読経をしてもらう手順も加わる。


さて、戸籍謄本の収集だが、1人だけや夫婦だけなら簡単でも

うちの場合、戦前から何十年にも渡ってポツリポツリと死んでいるので

その間に住所の改訂があったり、本籍を今住んでいる町に移したりで

死亡時の本籍の表記がそれぞれ異なる上

本籍や住所が市外に及ぶものもある。

難航するのは明白だった。


怠け者の私は、自力で取れそうな謄本だけ取り

難しそうなのは司法書士か行政書士に依頼して

戸籍を追ってもらおうと提案した。

しかし母は、家のことが他人に知られるのを嫌がる。

だからあっちの市役所、こっちの市役所とハシゴをするしかない。

やっと探し当てたら、今度は該当する謄本を発行するためには

私が直系の子孫である証明が必要だという。

役場の人が言うには、母は父の妻なので父の謄本は取れるが

亡き祖父母にとっては嫁という義理の関係であり

私の実母となると、赤の他人ということになるため

直接血の繋がった私の方が簡単に取れるという話だった。


そこで父以外の謄本は私が取ることにしたが

結婚で苗字が変わっているので

旧姓から今の名前になったことを表す謄本を提出しなければならない。

また最寄りの市役所へ戻って自分の謄本を取り

再度、別の市役所へ持って行く…

ここしばらくは、そんな作業をしていた。

そしてごく簡単だった父と祖父

ちょっと難航した私の実母と祖母の4人分の謄本までは

ようやく集めることができた。


残るは出生後、間もなく死亡した私の叔母、京子ちゃんの謄本。

遺骨はあるものの、出生届を出しているか…

つまり戸籍があるのか無いのか

それを知る人は皆死んでいるのでわからない。

母と祖母の謄本から

おそらく京子ちゃんも生まれたであろう町の名前が判明したので

今度はそこの区役所へ行ってみる予定。

私の心は早くも司法書士に傾いているが

顔を知らない叔母に、姪としてできることを

やってみたい気もしている。
コメント (2)
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