「運命共同体」
次男がつかまえたウナギです。
この後、彼らはヨシコの手によってバラバラにされ
私の手によって蒲焼きになるのじゃ。
天然うなぎを柔らかく仕上げるコツは
先に素焼きにして、それから軽く蒸す。
フワフワが好きな人は、そのままタレをかければOK。
香ばしいのが好きな人は、蒸したものにタレをつけて、仕上げに軽くあぶる。
え?そんなの知ったってしょうがないって?
すいません。
あ、買ってきた蒲焼きをふっくらおいしく温め直すコツは
フライパンに横たえた蒲焼きに、料理酒を適当にふりかけ
そのままフタをして点火し、軽く温める。
え?そんなの知ってるって?
すいません。
さて、夫の姉カンジワ・ルイーゼの就職先が、とうとう判明した。
これは、かねてより夫家のトップシークレットであった。
ルイーゼがどこかで働いていることは、以前ここに書いた。
結婚前の1年弱、OLをしたきり、実家の家事手伝い一筋だったルイーゼが
このたび何を思ったか、30年ぶりによそで働き始めたのだった。
調べたのではない。
先日、夫が知人から聞かされた。
知人は、仕事でたまたまそこへ行ったら
制服を着たルイーゼとばったり会って驚いたという。
その足で夫の所へ来た。
「なんで?!」と何度も聞かれたが、夫は
「さあ…」としか答えられなかった。
「親に手がかかるようになって、実家に長居したくないとか~
いびり出した甥が復帰して、会社も居づらくなったとか~
女性経営者の会も、嫌われて辞めるしかなかったとか~
男がペラペラしゃべれんだろ?
実家が大事で帰ってたんじゃない。
あの女は、とにかく旦那の家に居たくないだけなんだ」
そんなに嫌な旦那なら、別れりゃいいのに…と思うのは
ルイーゼ道のしろうとである。
表向きの形式と、裏の逃げ場の両方を
同じ割合で無理にキープしようとするから、犠牲者が出るのだ。
彼女にとっての逃げ場が、弟一家の表玄関だったりするからである。
ルイーゼの職場とは、隣町の老人ホーム○○園であった。
彼女を雇う物好きの顔が見てみたいと思っていたが
あの○○園なら、うなずける。
一族経営で人間関係が難しい上、人里離れた不便な立地条件から
どんなに就職難でも、そこだけは常に募集広告の出ている
かの有名な○○園。
ああ、納得、納得。
しかし我が家には、それだけで終わらない事情があった。
なぜなら○○園には、私の妹の旦那が勤めているからだ。
彼は創業当時から、そこで事務をしている。
酔うとしつこいので、私も夫も、彼が苦手。
義弟とルイーゼの面識は、無いに等しいが
彼が○○園で働いていることは、昔からルイーゼも知っている。
よりによって…何でまた…
天敵の義弟シュンの職場に、天敵の義姉ルイーゼが…
運命とは恐ろしい…
我々一家、その日はこの話題で盛り上がった。
しかし我々は、肝心なことを忘れていた。
○○園で、ルイーゼがいったい何の仕事をしているか…だ。
人見知りが激しく、老人が苦手なルイーゼが、介護の仕事をするわけがない。
事務であれば、義母ヨシコが秘密にするわけがない。
ヨシコが次男に漏らした「頼まれて仕方なく行っている福祉のお仕事」とは
何を意味するのか、その時はわからなかった。
が、疑問は早晩明らかとなる。
ちょうど妹から電話があったので、持ち前のデバガメハートを押さえられず
私が妹にたずね、妹が旦那にたずねたからだ。
ルイーゼは、○○園が業務委託している給食会社から派遣され
厨房で給食調理員をしていた。
よりによって…何でまた…再度耳を疑う。
私がその職種に就いている時、ルイーゼは
「私にはとても無理…大学を出ていて、良かった」
などと言っていたからである。
しかし50も半ばになると、事務職を選り好みするわけにもいかないだろう。
ルイーゼの旦那は、市外の病院で会計係をしており
その病院にも同じ給食会社が入っているので
話はそこからもたらされたと推察する。
福祉のお仕事って、幅が広いのね。
「姉ちゃんに親のごはん作らせて、自分はよそのごはん作って金儲けかいっ!」
妹は憤慨していた。
週に3日、3時間程度では、たいした金儲けにもならないけど
なるほど、両親も隠したがるはずである。
気にしなくていい、と両親には言ってあげたい。
だが、彼らは秘密にしているつもりなので、触れないほうが賢明であろう。
もしかしたらルイーゼは、親の治療食作りを
私と交代するつもりで、勉強してくれているのでは…
かわいそうに、だから細い体であんな重労働を…
でも早くしてくれないと、間に合わ~ん…
私のつぶやきを、夫は「甘い」と断じた。
「みりこんには、まだルイーゼがわかってない。
ただの逃げ場探しじゃ。
ワシら一族のDNAじゃ!」
学習が足りないようであった。
次男がつかまえたウナギです。
この後、彼らはヨシコの手によってバラバラにされ
私の手によって蒲焼きになるのじゃ。
天然うなぎを柔らかく仕上げるコツは
先に素焼きにして、それから軽く蒸す。
フワフワが好きな人は、そのままタレをかければOK。
香ばしいのが好きな人は、蒸したものにタレをつけて、仕上げに軽くあぶる。
え?そんなの知ったってしょうがないって?
すいません。
あ、買ってきた蒲焼きをふっくらおいしく温め直すコツは
フライパンに横たえた蒲焼きに、料理酒を適当にふりかけ
そのままフタをして点火し、軽く温める。
え?そんなの知ってるって?
すいません。
さて、夫の姉カンジワ・ルイーゼの就職先が、とうとう判明した。
これは、かねてより夫家のトップシークレットであった。
ルイーゼがどこかで働いていることは、以前ここに書いた。
結婚前の1年弱、OLをしたきり、実家の家事手伝い一筋だったルイーゼが
このたび何を思ったか、30年ぶりによそで働き始めたのだった。
調べたのではない。
先日、夫が知人から聞かされた。
知人は、仕事でたまたまそこへ行ったら
制服を着たルイーゼとばったり会って驚いたという。
その足で夫の所へ来た。
「なんで?!」と何度も聞かれたが、夫は
「さあ…」としか答えられなかった。
「親に手がかかるようになって、実家に長居したくないとか~
いびり出した甥が復帰して、会社も居づらくなったとか~
女性経営者の会も、嫌われて辞めるしかなかったとか~
男がペラペラしゃべれんだろ?
実家が大事で帰ってたんじゃない。
あの女は、とにかく旦那の家に居たくないだけなんだ」
そんなに嫌な旦那なら、別れりゃいいのに…と思うのは
ルイーゼ道のしろうとである。
表向きの形式と、裏の逃げ場の両方を
同じ割合で無理にキープしようとするから、犠牲者が出るのだ。
彼女にとっての逃げ場が、弟一家の表玄関だったりするからである。
ルイーゼの職場とは、隣町の老人ホーム○○園であった。
彼女を雇う物好きの顔が見てみたいと思っていたが
あの○○園なら、うなずける。
一族経営で人間関係が難しい上、人里離れた不便な立地条件から
どんなに就職難でも、そこだけは常に募集広告の出ている
かの有名な○○園。
ああ、納得、納得。
しかし我が家には、それだけで終わらない事情があった。
なぜなら○○園には、私の妹の旦那が勤めているからだ。
彼は創業当時から、そこで事務をしている。
酔うとしつこいので、私も夫も、彼が苦手。
義弟とルイーゼの面識は、無いに等しいが
彼が○○園で働いていることは、昔からルイーゼも知っている。
よりによって…何でまた…
天敵の義弟シュンの職場に、天敵の義姉ルイーゼが…
運命とは恐ろしい…
我々一家、その日はこの話題で盛り上がった。
しかし我々は、肝心なことを忘れていた。
○○園で、ルイーゼがいったい何の仕事をしているか…だ。
人見知りが激しく、老人が苦手なルイーゼが、介護の仕事をするわけがない。
事務であれば、義母ヨシコが秘密にするわけがない。
ヨシコが次男に漏らした「頼まれて仕方なく行っている福祉のお仕事」とは
何を意味するのか、その時はわからなかった。
が、疑問は早晩明らかとなる。
ちょうど妹から電話があったので、持ち前のデバガメハートを押さえられず
私が妹にたずね、妹が旦那にたずねたからだ。
ルイーゼは、○○園が業務委託している給食会社から派遣され
厨房で給食調理員をしていた。
よりによって…何でまた…再度耳を疑う。
私がその職種に就いている時、ルイーゼは
「私にはとても無理…大学を出ていて、良かった」
などと言っていたからである。
しかし50も半ばになると、事務職を選り好みするわけにもいかないだろう。
ルイーゼの旦那は、市外の病院で会計係をしており
その病院にも同じ給食会社が入っているので
話はそこからもたらされたと推察する。
福祉のお仕事って、幅が広いのね。
「姉ちゃんに親のごはん作らせて、自分はよそのごはん作って金儲けかいっ!」
妹は憤慨していた。
週に3日、3時間程度では、たいした金儲けにもならないけど
なるほど、両親も隠したがるはずである。
気にしなくていい、と両親には言ってあげたい。
だが、彼らは秘密にしているつもりなので、触れないほうが賢明であろう。
もしかしたらルイーゼは、親の治療食作りを
私と交代するつもりで、勉強してくれているのでは…
かわいそうに、だから細い体であんな重労働を…
でも早くしてくれないと、間に合わ~ん…
私のつぶやきを、夫は「甘い」と断じた。
「みりこんには、まだルイーゼがわかってない。
ただの逃げ場探しじゃ。
ワシら一族のDNAじゃ!」
学習が足りないようであった。