殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

やけどう

2011年08月12日 11時04分09秒 | みりこんぐらし
子供の頃、やけどのことを

「やけどう」と言う同級生が何人かいて、なぜか憧れていた。

私も言ってみたくなり、家族の前で、何度か試験的に使用。

そのたびに「違うよ、やけど。もう1回言ってごらん、や・け・ど」

と訂正を求められる。

だんだん語気が強くなっていき

このままだと本格的に怒られそうなので“やけどう”は封印した。


他に同じ系列で「血がが出た」というのがある。

血が出たでなく、チガガデタ…ああ、なんと魅惑的な響き…。

でもこれは“やけどう”より怒られそうなのが

なんとなくわかったので、未遂に終わる。


憧れはもうひとつあった。

“私”でなく、自分の名前を主語にすること。

「○○ね~、これ好きなの~」とか言っちゃうのだ。

友達が言うのを聞くと、かわいくてうっとりしちゃう。

こういう甘ちゃんぽいことをしたら、すっごく怒る家族だったので

なおさらやってみたい。


が、この案件に関しては、早々に挫折。

古典的な我が名は、その行為に違和感をもたらした。

おのれで発声してみて、ちっともかわいくないことがよくわかったのだ。




さてこの間、鶏の手羽先を唐揚げにしていたら

油がはねて、ひどい目に遭った。

正真正銘のやけどうだ。


義父アツシが「手羽先を当分食べてない」と言ったので

さっそく作った優しい嫁であった。

アツシはふだん、鶏肉をばかにして食べないが

これだけは好きなのだ。


「食べたい」じゃなく「当分食べてない」と言うのがアツシ流。

自身の要望をストレートに表現せず

誰かさんが気が効かないという形に持って行く。

なんでか…礼を言わなくてすむから。


しかも直接ではない。

夫や子供達の前でつぶやき、まかない係の私に伝わるよう

数回にわたって根回し。

若い頃は、こういう変化球が無性に腹立たしかったけど

年を取るというのは、ありがたいものだ。

今は「よっしゃ、よっしゃ」と言える幸運を味わう。


手羽先の唐揚げは簡単。

買ってきた手羽先を、そのまんま熱した油の中に突っ込む。

その間にザラメ糖、醤油、みりん、ゴマ、ニンニクを適当に合わせた

甘辛いタレを煮詰めておき、揚がった手羽先にからめたら終了。

他に唐辛子やハーブ、酢などのバリエーションも色々楽しめ

どうやってもそれなりに仕上がるのが、手羽カラのいいところ。


塩分制限が厳しいアツシのは、醤油を控えて酢を入れたタレを別に作る。

酢が飛ぶようにしっかり煮詰めると、おいしく仕上がる。

タンパク制限のあるアツシが食べられる量は

小さいのを2本までだが、彼はこれが大好きなのだ。


その日、私はいつになくスケベ心を起こし

揚げる前の手羽先に塩こしょうを振りかけた。

アツシの2本にはかけないが、他のは暑いから塩分を多めに…と思った。


塩をかければ、水分が出る。

粒の粗い黒こしょうもいけなかったのかも。

とにかくそれに衣をつけず、素揚げにしたらどうなるか…

私の想像力は、欠落していた。

袖なしの服を着ていたのが災いし、我がたくましき腕は

パンパンと景気よく飛んだ油を的確にキャッチ。

痛いのなんのって、あんた…。


油の鍋は向かって右側にあったため、右腕が赤い斑点だらけよ。

これじゃ水ぼうそう。

それなのに、ああそれなのに、顔だけは左側。

低い鼻を飛び越え、左の目頭と頬に飛びやがった。

いまさら売り物になる身でもなし

少々傷がついたって、どうということもないけど

なんか、いまいましいのぅ。


すぐに冷やしたけど、2~3日痛かった。

治ってくると痒くなって、つい掻いてしまう。

すると、あちこちから血がダラ~リ…。

みりこん、やけどうをして、血がが出た話。
コメント (54)
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