殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

同窓会それぞれ

2011年08月19日 15時49分02秒 | みりこんぐらし
夫の同窓会が、このお盆に行われた。

同窓会から帰って来るなり、夫は靴を脱ぐのもそこそこに叫ぶ。

「おい!おい!」

その剣幕に、何ごとかと思ったら、部屋に入ってきた夫は満面の笑み。

「みりこんのおかげで、すごく盛り上がった!」


出欠の返信ハガキを代筆したところ

「近況」という欄があったので、夫の似顔絵(もちろん変な顔)を

こっそり走り書きした。

幹事がたいそう喜んでハガキを持参したので

皆で回覧して笑い合ったという。


「オレ、嬉しかったよ!」

    「そう、お役に立てて嬉しいわ」

「ヒロシは幸せ者って、みんなに言われた」

    「なんのなんの、私のほうが幸せ者よ」

「オレみたいなバカには、しっかりした女房がつくんだって、言ってやった」

    「バカも突き詰めれば、賢いになるじゃん」

「フフフ」

    「ホホホ」

この時から、以前にも増して優しい夫である。


同窓会歴は私のほうが断然長いので、幹事の苦労はよく知っている。

返信ハガキに、幹事をねぎらう言葉を書くのは常識じゃ。

何でもいい、クスッと笑えるようなことを添えられれば、上級者。

年を取って気が弱り、急に同級生だ友達だと騒ぎ始めたあんたらとは

年季が違うんじゃ。




私の生まれた町の同窓会は、20才で発芽する。

年に一度、満20才になった男性によって行われる

祭の神事があるからだ。

この伝統行事に参加することが、大人になった証しである。


20才の女子は、祭には参加しないが

体力勝負の神事ゆえ、飲み物や氷を運んだりしてサポートする。

ここで恋が芽生える同級生カップルもいる。

独特の装束を着て、勇壮な行事に参加する男子は

元はどうあれ、かっこよく見えるらしい。


そして夜、女子には重要な任務がある。

町を練り歩いたご神体をお鎮めして、神殿にお帰りいただくために

浴衣に着替えて、特別な歌を歌うらしい。

らしい…が多いのは、私は長男を妊娠中で、参加しなかったからである。


現在は若者の人数が少ない上、20才といえば大学生がほとんど。

練習や本番のために、何度も帰省する情熱派は滅多にいない。

危険が伴うため、規定の奉納金を支払って回避する家庭も多い。

今では、昔20才だったおじさん達の中に

若者がちらほら混じっている状況である。


さて20才で芽生えた同級生の結束は、その後、静かに育まれ

10年後、女子が30才を迎える厄年に開花する。

20才の祭以来、初めて集まった同級生は

祭をした神社へ揃って参拝し、境内で集合写真を撮る。

それから会場に移動し、宴会だ。

その時、女子には男子から、和装用の腰ひもがプレゼントされ

女子はそれを生涯大切にする。


この時点で、同窓会の組織が機能し始める。

といっても、たいしたことをやるわけではない。

親の葬式の手伝いと、たまの飲み食いが主である。


やがて男子が40才の厄年を迎えると

男子だけで一泊旅行に出るならわしである。

出発の朝には、やはり男女揃って例の神社へ参拝し、集合写真を撮る。


旅行の前と後には、宴会がある。

「出船」といって、男子が旅行に出かける前の晩と

「入り船」といって、旅行から帰った晩だ。

出船の時は会費制、入り船では、女子は招待されるしきたりである。


60才になったら、また神社に参拝して

男女一緒に旅行へ行くことに決まっている。

男女一緒が心配な奥様達がいれば、同行させる。

今からハワイだグァムだ、いや国内だと、騒がしい。

こうして記述すると、ならわしだのしきたりだのと、なにやら田舎の因習めくが

地元で生息する我々は、心底楽しんでいる。


ところで先日、あのKから携帯に何度も電話があった。

中学の時に転校して行ったいじめっ子だ。

詳しくはカテゴリー“異星人”を見てちょ。

私の素っ気ない態度をツンデレ・ラブと勘違いして、はや5年。

たびたび接触してくる厄介な同級生である。

仲間というのを取り違えると、こういうあだ花も咲く。


無視していたら、家の電話にもジャンジャンかかってくる。

しまいにはメール。

「伯父が亡くなったので、急遽帰省しています。

 時間が余っているので電話してみたんですが」

だとよ。

余り時間で会ってやろうというありがたい申し出である。

けっ!無視、無視。
コメント (44)
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