殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

みりこんゲーム

2010年04月15日 17時39分07秒 | みりこんぐらし
コトは先週末の京都にさかのぼる。

この旅行は、義母ヨシコには内緒にしていた。

週明けに、ヨシコの入院が決まっていたからだ。


気を使ったのとは違う。

去年、やはり京都に行った時、ヨシコの機嫌は悪かった。

完全に妬いていた。

行き先がどこかつまらぬ所なら、ここまでにはならない。

京都の二文字には、やはり女の情念を刺激する何かがあるのだろう。


その時、ヨシコは胆のうを摘出して、1ヶ月ほどであった。

夕食と朝食は私が作っていたため

病人を置いて遊びに出かけた…と、ヨシコの恨みは深かった。

姑のために泣く泣く取りやめる嫁の誠意を見たかったのだ。

もちろん、私にそんな気などさらさらない。

ホレ、もっとやってやろうか…と思う。


しかし今回、ヨシコは心の臟に問題が生じた。

また妬かせたら、うっかり止まるかもしれん。

万一の事態に陥ったら夢見も悪いし

せっかく行ったのに、急遽帰ることになったら困るではないか。

それで、こっそり出かけることにしたのだ。


しかし、悪いことは出来ないもんだ。

滅多に電話をかけてこないヨシコが、京都に泊った晩に限ってかけてきた。

携帯の着信を発見したのは、深夜であった。


用があれば車でサッと行ける距離なので

わざわざ電話があるのは、2ヶ月に1度くらいのペース。

その2ヶ月に1度が、たまたま京都の夜に当たった。

恐るべし…ヨシコ!


夜中なのでかけ直さず放置し、やがて完全に忘れた。

妬かせると危ないなどと言っておきながら、このありさまだ。

私が彼らに今ひとつ信用されない原因の一端であろう。


家に帰ると、留守電が3件…全部ヨシコ。

1分おきに入っている。

1回目…黙って切る。ゴトゴト…と受話器を置く音で、ヨシコとわかる。

2回目…「留守なの?留守ですかぁ?帰ったら電話ちょうだい」

3回目…もはや声が怒りに震えている…「どこか行ってるのっ?電話ちょうだい!」

バレて~ら…その後、携帯へかかったのであった。


翌日、夫の入れ知恵でかわいい歯磨きセットを買い

ミヤゲと共に渡すと、ヨシコの機嫌は良くなった。

後で夫に耳打ちする。

     「歯磨きのこと、教えてくれなかったら、どうなっていたか…

      ありがとう、助かったわ」

「だろ?入院の準備の買物メモを見たんだ」

夫は得意げ。

どうなるも、こうなるもないわい…平気さ。


そしてヨシコは一昨日入院した。

検査入院なので、数日で退院する。

本格的な入院は、来月だ。


久しぶりに夕食作りに通う日々が始まった。

義父アツシの糖尿はさらに進行したらしく、食欲が去年より落ちている。

さっそく家族会議…といっても、次男は車検の休みを利用して

ヨシコについているので、3人だ。


検討の結果、アツシの好物である雑煮を作ることに決定。

「餅はオレが買う」

      「他の材料は揃ってるわ」

「じゃあ僕は心で応援する」

       「ラジャー!」


アツシは、季節外れの雑煮を喜んだ。

朝食用に作っておいたホットサンドも嬉しかったらしく

なぜかその皿を自分で新聞紙にくるみ、会社にいた夫に手渡した。

アツシなりの感謝の表現ととらえる。


夫も似た所があるが、とにかく刹那的な感覚だけで生きている人なので

言動の意図がわからなかった昔は、実につらかった。

いちいち怯え、苦しんだのが嘘のよう。

でもアツシ…これは君んちの皿だよ…。


脳天気な夫でも、親がピンチとなると元気が無い。

優しい!私は元気づけてやるのだ。

     「大丈夫だからね。今度は食事療法を長く続けてみるわ」

病院の厨房で働いたのも、このためだったのねぇ…なんて言ってやる。

大サービスだ。


「うん、頼むよ」

単純な夫は、すぐご機嫌になる。

そうさ…明るく人に頼んで、自分は快楽をむさぼるのさ。


いっこうに構わない。

愛でも義務でもないからだ。

検査でドロドロと言われたヨシコの血をサラサラにし

すでに手遅れであるアツシの血糖値を安定させる…

これは私にとって、非常に楽しいゲームである。


きれいごとではない。

同じ遊びでも、多少の知識があると、いっそう面白い…あれだ。

誰にも譲るものか。

譲ってくれなんて、誰も言わないか。
コメント (25)
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