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殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

コールドケーキ

2010年04月06日 09時40分10秒 | みりこん胃袋物語
夫と県北の公園に赴いた。

いつも二人で出歩いているようだが

仕事先までの距離を測ったり、交通事情を把握しておく必要があり

そのついでに足を伸ばすのだ…と言い訳しておこう。


広い公園は、地域の物産を扱う店や飲食店などがあって

ちょっとした観光地になっている。

そこで私は、オシャレな感じのカフェに入りたくなった。

漂うカレーの香りに誘われてしまったのだ。


我々の間には、経験に裏打ちされた定説がある。

田舎、第三セクター、洋風建造物、おぼえにくい名前…

これらの条件を満たした飲食店はハズレ…というものである。

その理由はさまざまあるが、第3セクターという

責任の所在の不明瞭さからくるソフト面の不備が大きい。


「こら!待て!」

夫の制止を振り切り、フラフラと店内の人となる。

周囲には、陽気に誘われてやってきた人々がいっぱいだというのに

この店だけが閑散としている。

外から見て、そこそこ人がいるように見えたのは

客より大人数の店員であった。


洒落た籐製の椅子は、ヒザがテーブルの足につかえて

どうしてもまっすぐ座れない。

見回せば、もう一組いる客も斜め座りだ。


大柄は、こんな時に難儀じゃ。

私は上体正面・ウエスト90度ヒネリのワザにて対応。

夫は上体、下肢ともに正面を向くべく

大開脚の大ワザに挑むが、股関節の柔軟性に欠け、断念。

店は、デザインと予算重視の結果

客に不自由を強いる方針を選んだようだ。

そのほうが長居も防げるというわけである。


メニューは、飲み物の他に

スパゲティーセットとカレー、ハヤシライス

あとはホットケーキぐらいしか無い。

出ないものをどんどん削って行ったら、結局これらが残ったという感じ。

私は迷わずカレーを、夫はホットケーキとコーヒーを注文した。


カレーはどこで食べても、そう大きな失敗は無い。

ここのは、外まで香りが流れていたので手作りらしい。

厳密に言えば、出来合いのベースに野菜を投入してある。

私の好きなサラッとしたタイプで、けっこうおいしかった。


気の毒なのは夫。

どうもホットケーキがホットじゃないらしい。

いつまで待ってもバターは溶けずに、かしこまった正方形を保つ。

夫は仏頂面で、バターにはじかれたシロップが

ダラダラと皿へ流れゆくさまをじっと眺めている。


コーヒーにミルクはついていなかった。

いや、夫をひと目見るなり、コーヒーにミルクを入れない主義と察知したのかも。

さすがプロの勘と心配り…イヤミです。


ヒマそうな店員達に、ホットケーキがコールドケーキなのを言ってやりたいが

二人で目を見合わせて、我慢する。

「ダメな店に改善のチャンスを与えてはならん」

こんなところは、意見がピッタリ合う我々なのだ。

夫が手をつけないので、いやしい私はそれも食べた。

ひんやりと解凍未満の、斬新な味であった…イヤミです。


まっすぐ座らずにものを食べるのは、けっこうつらい。

早々にレジへ行くと、30代半ばの派手で美しい店員が電話中だった。

仕入れの注文を電話で話しながら、お会計。


ここでムッとするのは、人間道の初心者である。

山里で寄せ集められたパートという印象の、素朴な店員達の中で

髪もキャビンアテンダント風に結って

一人毛色をたがえ、君臨しておられるご様子。

この横柄…いや、風格は、リーダーの証であり

注意する者が誰もいないままにのさばっ…いや、栄華を極めたと察する。


誰一人、サポートに来ないのは、もつれた人間関係に加え

原則として、彼女しかお金の扱いと仕入れが出来ない立場が原因と思われる。

経営陣の誰かの女だと考えて楽しむ。

そのほうが面白いし、けっこう当たっているのだ。


レジ係様は、受話器を持ったまま、金額を指さす。

私は財布から5千円札を出そうとし、千円札があったので引っ込めると

「あ!それ、いるいる!」と言う。

5千円札がいるのかと思ったら、電話の相手に言っているのだった。


気が弱く!おとなしい!私は、レジ係様のお電話のお邪魔にならぬよう

ピッタリ1470円を置いて出口に向かう。

しかし、自動ドアが開かない。

つい今しがた、ここから出たはずの夫が魔法使いに思える。


夫はドアの向こうで、なかなか出て来ない私をいぶかしげに見ている。

早く二人で、この店の“感想”を話し合いたいのだ。

私もよ…待ってて…夫。


ダメな店に改善のチャンスを与えないと誓い合った我々であるが

出られないんじゃあどうしようもない。

お電話のお邪魔はしたくなかったものの、レジ係様にその旨を申し上げる。


「あら、また?」

と言いながら、さすがに受話器を置いた彼女。

しゃがんでドアをガタガタゆすると、無事、ドアは開いた。

…やっとシャバに出られた喜びを噛みしめる私。


はからずも「別の意味でお気に入りのお店」コレクションが

ひとつ増えてしまった。
コメント (24)
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