殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

サングラス

2010年03月23日 07時43分26秒 | みりこんぐらし
ずっと通販で買っている化粧品が何点かある。

肌の調子が良くない時は、内容を変更してもらうために時々電話をかける。

このメーカーはオペレーターの教育が行き届いており、人柄が良い。

たくさんいるらしいけど、誰が出ても「心から対応している」という姿勢が

ありありとわかる。


先日も電話をして、ついでに他のシリーズについて質問した。

「そうですね~…みりこん様は敏感肌でいらっしゃいますので

 やはり従来のもののほうがよろしいかと思います」

    「あ~、そうですか~。

     ツラの皮は厚いのに、肌だけ敏感というのがねぇ!

     いつもワガママ言って、ごめんなさいねぇ」


一瞬の沈黙…そして

「そんなことはございません…

 あの…みりこん様、お声が優しくて、控えめで温かい雰囲気が

 お電話からも伝わってまいります…

 ツラの皮が厚いだなんて、そんな…」

ものすごく一生懸命…むしろあわてている。


「あら、やっぱり?」と言えるわけもなく

おほほ…と笑ってごまかすしかない。

聞き流してもらえない相手に向かって、自虐ネタを口にしてはいけないのだ。

また善良な人を苦しめてしまった。

自責の念にかられる私であった。


昨日は、毎年恒例の春の行事、サングラスを買いに行った。

春は風や陽射しが目にしみて涙が出やすいので、サングラスは必需品だ。

化粧が取れるからだ。

毎朝丹念にこしらえる仮面を

涙の一滴や二滴で台無しにしてなるものかっ!


昨シーズンは、息子のはからいで偏光グラスを使っていた。

釣り道具屋で買うのだ。

太陽光の反射が無いので、川の中の石ひとつひとつまではっきり見えて面白い。

でも機能優先のためにレンズの色が濃くて、とっても人相が悪く見える。


若い知人の店に行き、地味なデザインで薄い色のレンズを探すことにした。

しかし今年は、さりげない自然な感じのものが少ない。

年々増してゆく紫外線と黄砂から

年寄りこそ目を守らなければいけないというのに

若者しか出来ないサングラスが増えてもらっては困るのだ。


「みりこんさん、やっぱり今主流の大ぶりなのがいいと思うよ」

プラスチック素材で、大きな黒いレンズの派手なデザインだ。

戦時中の空軍みたいなのや、昔のナントカ組の姐さんみたいなやつなら

いっぱい並んでいる。

     「え~!私、似合わないわよ~!

      すごく意地悪そうに見えるもんね」


この手のサングラスは、白く小さい顔のために存在すると私は思っている。

インパクトの強いサングラスであればあるほど

強調されてしまう鼻と口、フェイスラインは

すっきりと格好良くなければならない…

そしてはずしたら、そこには美しい目があって当然でなければならない…

着る物だって、それなりでないといけない…。


若けりゃ勢いでなんとかなるし

「若気のいたり」で片付けてもらえる可能性もあるが

中高年の無理とちぐはぐは社会悪…とすら思っている。

つまり田舎に住むカタギのオバサンには、難易度の高いものなのだ。


「そんなことないよ~、絶対似合うよ~」

と言われたのに気をよくして

     「元々意地の悪いのが、さらに強調されるのよ~」

黙ってりゃいいのに、そんなことを言いながらかけてみる。


やはり一瞬の沈黙を経て、知人とそばにいた店員は同時につぶやいた。

「…ほんとだ…」

付近に気まずい雰囲気が漂う。


これじゃまるで、タチの悪いトムキャット(知っとるけ~?)

加齢でたるみ、くすんでいる分

根性の悪さといやらしさがにじみ出ているではないか。

“ふられ気分でRock’n Roll”どころか

“たるみ気分でRock’n Roll”歌っちゃうぞ。


20代の彼らは、まだ人間が練れていないのだ。

見たもの、感じたものがストレートに出る。

ひととし取ってくると、その気持ちをおし隠して誠意で対応する技能というか

思いやりが身についてくるのであろう。

人は…いやオバサンは、その誠意に対して金銭を支払うのかもしれない。

もちろん、サングラスは買わずに帰宅した。

沈黙は金なり。
コメント (26)
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