殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

バラの女

2010年03月08日 10時33分54秒 | みりこんぐらし
先日、とあるパーティーに行った。

まあ、庶民の私のことだから

宴会に毛が生えたようなものだと思っていただきたい。


こういう派手派手しい所、以前は好きだったけど

今はもうどうでもよい…出来れば行きたくない。

着飾ったって、変り映えしない年齢になったということだ。

しかし義理があって断りにくい相手だったので

友人のカズミを誘って行くことにした。


カズミは昔の私のようにハイテンションで

「何を着よう、何を履こう」と燃えていた。

夜なので、肌を露出したものもよかろうが

なにしろわたしゃ五十肩じゃん…湿布のアトやらお灸の焦げ目やら針の穴やら

都合の悪いものがイロイロあるわけよ。

冷やすと痛むしさ。


しかも私のたくましい肩には

子供の頃、妹と大げんかしてかじられた歯形が残っている。

海や山ならいざ知らず、ホテルのボウル・ルームでは気が引ける。

これまでは、胸元や背中は出しても

なにげに肩は隠れるデザインのものでごまかしてきた。


ああいう所で最新のドレスを着こなし、顔だけでなく体も綺麗な人を見ると

今までよく無傷でいられたものだなあ…と感心するが

よく考えれば、セレブは人を噛むような妹は持っていない。

しょせん私には場違いなのだ。


カズミは海外で買ったまま

チャンスがなくて着てないというワンピースを見せに来た。

総ラメで、胸を深く切り込んである大胆なデザイン。

着たのを見ると、白い肌によく映えて美しい。

    「あ、すごく綺麗!」

「そう?これにしようかな」

    「すてきよ!」


でも…とカズミは言う。

「ノーブラじゃないと着られないよね」

    「いいじゃん、ノーブラで」

「透けてない?」

    「うん、大丈夫」

こういうデザインは、若いピチピチでは着こなせない。

ほどよくアブラの乗った肌に

豊かな胸がちょっと垂れたぐらいが、ちょうどいいのだ。


透けるのが心配な時は、胸にシールみたいなのを貼るが

ここらにそんなしゃれたモンは売っとりゃせん。

気になりゃバンドエイドでも貼るだろうと思った。


久しぶりに賑やかな場所へ出たような気がするが、それなりに楽しかった。

いつも思うが、パーティーに必要なのは傷の無い肩でもドレスでもない。

エスコート役のカッコイイ男だ。


どんなに美しくオシャレしても、女だけだと格好がつかない部分というのはある。

ドレスは用意できても、男は用意できなかった…というところ。

男女一対で初めて絵になる。

ハナから絵になるつもりのない我々は、ひたすら食べることに専念さ。


お金のかかったステキな衣装や宝石を見るのも楽しいけど

ちぐはぐなのを眺めるのは、もっと楽しい。

ペラペラのチャイナドレスで場末のおミズみたいなの…

古くさい総スパンコールのタイトなロングドレスで大きな鯉と化したの…

売れない演歌歌手もどき…

以前は必ずそういった、別の意味で人目を引くおかたがいたものだ。

最近はそういうのも減って、ちょっと淋しい。


そこで私は懐かしい顔にバッタリ会った。

紀元前に知り合いだった男性…深いおつきあいではない。

某企業の息子で、当時は御曹司とかジュニアと呼ばれていたが

今はトップになっている。

年は取ったけど、メタボなんてどこの国の言葉?みたいなスレンダーを保ち

育ちの良さがにじみ出て相変わらずステキ。


この人とは15年くらい前にもやはり偶然会ったことがあり、その時言われた。

「結婚を考えた時、なぜか君のことが頭に浮かんだんだ。

 でも君はもうとっくに結婚していたよね。

 僕には薔薇より、自分と同じ蟻(アリ)のほうが向いてるんだと

 自分に言い聞かせたんだよ」


    おお!ピエール!(なぜかここはピエール)

    そんなにまでワタクシのことを…


薔薇に例えられて、ちょっくらいい気分だったわよ。

なんで早く言ってくれなかったんだ…と惜しかったわ。

が、後で考えると

私は大企業の社長夫人にふさわしくないということかい。

  
この夜紹介された蟻夫人は、控えめでとても感じの良い人だった。

蟻ってさ~、上品で清楚なことだったのね…

華奢な体で夫を支えるけなげな妻ってことなのよね…

彼の賢明な選択に心の中で賞賛をおくる

バラはバラでもバラ肉と化した私であった。


さて、悲劇は翌日起こった。

カズミが涙目で、パーティーの写真を持って来たのだ。

「私、もう生きて行けない…」


写真を見てびっくり。

カズミの胸に、大ぶりな二つの黒いマルが…。

肉眼ではまったくわからなかったのに

フラッシュをたくと、ノーブラだとはっきりわかる。

シャンパングラスを持つ楽しそうなカズミ。

ローカル有名人の隣で、すまして微笑むカズミ。

ほとんどの写真に黒いマルがふたつ。


「透けてないって言ったじゃん!写真撮った時、気がつかなかったのっ?」

     「気がつかんかった…」

子供を3人、母乳で育てた母の実態を甘く見ていた。

申し訳なく思ったが、すべてはあとの祭。

「ウワ~ン!」

おそるべし…フラッシュの威力。
コメント (26)
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